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【No.15:強敵】 【Side:快人】
なんだかんだで協力してくれることになった学園の警備員、通称ジロさん。
内情を知る人が味方についたのはなんとも心強い。 良かった…これで、戦える!

快人「ところでジロさん、敵の大将っていうと誰になるの?」
健二「一応自分が『敵』って自覚はあるようでなによりだわ。」
ジロ「あ〜、最高権力者は『理事長』なんだが、忙しくて滅多に来ない人らしい。まだ俺も見たことねぇや。だからまぁ、実質的なトップは『学園長』ってことになるかな。」
健二「あ、愛桜の学園長か…聞いたことあるわ。確かかなりのフェミニストで、そっちの活動家としても有名らしいぜ。前に雑誌に載ってた。」
快人「おぉ!さすがは愛読書が女性週刊誌というオバさん臭い趣味の男!」
健二「うっせーよボケ。俺はこう見えてイジめられたら泣くタイプだぞ?」
ジロ「フェミニストか…だが『ジェンダーフリー』っつーよりむしろ『女性上位主義』の色合いが濃い、タチの悪いババアさ。そんなのが相手じゃいくらなんでも分が悪い。そう思うだろ快坊よ?」
快人「ん〜、確かに熟女は守備範囲外だなぁ…。」
健二「いやちょっと待て快人、お前それ『相手』の意味が違う。」
ジロ「学園長より何より、問題はお前だよな…。」

 

 

【No.16:打開案】 【Side:快人】
ジロさんの話によると、敵の大ボスは学園長…男に厳しい困ったオバさんらしい。
これまでの情報だけでも、無計画で乗り込んで勝てる相手じゃなさそうだ。

快人「ん〜、よくわかんないけど、なんか手強い敵らしいね。どうにかできないもんなの?」
健二「俺はどうすりゃお前を鎮められるか知りたいけどな。」
ジロ「そうだなぁ…。まず学園長は無理だが、可能性は…ある。ここで出てくるのがさっき話した『理事長』なんだわ。 得体の知れない相手だが、あの学園長とやり合うよりは可能性がある。学園長としても理事長の決定にゃ逆らえんだろうしなぁ。」
健二「え?でもさジロさん、さっき理事長にはなかなか会えないって…。」
ジロ「そこよ健坊、そのなかなか会えねぇ理事長が…来るのさ、ちょうど今日、来年度の方針会議のためになぁ。」
快人「理事長か…何歳かによるかな…。」
健二「いや、だから目的がおかしいから。誰もお前にそっちの意味で落とせとは言ってない。」
快人「フッ、この僕を…ナメるなよ?」
健二「ほざくな99連敗。」

 

 

【No.17:問題と勝算】 【Side:快人】
難しいかと思われた状況から一転、なんとなく勝ちの目が出てきた。
今日来るっていう理事長をどうにかできれば、学園長を相手にするよりはなんとかなりそうな感じだ。
このタイミングの良さ…これはもう、神様が味方してくれてるとしか思えない。いけるっ!

健二「あのさぁジロさん、他にも何か問題あるんじゃないの?警備員がいるくらいだし、防犯設備だって色々あるよな絶対?」
ジロ「おーそりゃ山ほどあるさ。そこかしこに防犯カメラ、出入り口や窓には超一流のセキュリティ、緊急時にはドーベルマンまでスッ飛んでくぞ。」
快人「さすがに犬は守備範…」
健二「いーから黙ってろよもう!お前の目指す先はドコなんだよ一体!?」
ジロ「ま、なんにせよ問題は山積みだよ。そもそも狙いが狙いだ、相手が誰だろうと普通通じるわけがねぇ。ましてや中坊のお前らじゃ…」
快人 「ちょっとジロさん、ガキ扱いしないでよ。今の世の中、中学生っていえばもう大人だよ?」
ジロ 「む?そ、そうか、それはすまねぇ。 …とはいえ、やっぱし何のコネもねぇお前らじゃ、話し合う段階に行く前に捕まって終わりだと俺は思う。下手に暴れりゃ警察沙汰…わかってんのか?」
快人 「大丈夫、僕ら未成年だから。」
ジロ「べ、便利な年頃だな…。」

奥の手は『少年法』だ。

 

【No.18:備えあれば憂い】 【Side:快人】
目指すべき場所は決まり、問題の洗い出しも終わった。あとはこれからどう動くかを決めるだけだ。

快人「参ったね…さっき聞いた感じだと、忍び込むのは簡単じゃなさそうだ。 どう見る健二?」
健二「なぁ快人、最後にもう一度だけ言わせてくれ。 帰らね…?」
快人「僕は厳重な警備ほど実は穴があるんじゃないかなって思うんだ。」
健二「ノーでもいいからせめて聞いてくれよ…。」
ジロ「健坊お前…苦労してんだな…。」
快人「まぁ安心してって。なんせ僕には…名案があるんだ。」
二人「め、名案…?」

そして―――
健二「お、オイやめようぜ快人!なぁオイ!な!?」
快人「う〜ん…なんかスースーするけど、これはこれで新たな何かに目覚めそうな予感が…。」
二人の
ジロ「お、お前よく持ってたなこんなの…。その手の趣味まであんのか?」
快人「こんなこともあるかと思って、準備してみただけだよ。」
健二「どんだけ備えてんだよお前!この憂いありまくる備えはなんだよ!?」
快人「さぁ行くぞ健二…じゃない、行くわよ健子ちゃん♪」
『女装潜入作戦』が始まる。

 


【No.19:ブツの入手元】 【Side:快人】
作戦は決まった。その名もズバリ、『ドキッ!女装で潜入!女だらけの女子校大好き♪』。
健二に言ったら「後半お前の想いになってんじゃねーか」と突っ込まれたけど、細かいことは気にしない。

健二「あ、ところでよ快人、お前どんなツテ持ってんだ?一晩で愛桜の制服2着とか…」
快人「ん?あぁ、これ姉ちゃんのなんだよね。あの日もどっかで見た制服だな〜って思ってたんだけど、なんと姉ちゃん愛桜だったみたい。」
健二「いや、「なんと」じゃねーよ。姉ちゃんの学校くらい普通に覚えてるもんだろ?」
快人「姉ちゃんには興味ないし。」
健二「お前には恋愛できるかできないかって視点しかねーのかよ…。」
快人「困った姉ちゃんだけど、たまには人の役に立つんだね。今回ばかりは感謝したよ、まぁ黙って借りてきたんだけども。」
健二「黙ってなのかよ…。バレたら凛(りん)さん、クソ怒るんじゃね?」
快人「うん…。ヒビで済んだら明日はお祝いしよう。」
健二「どんだけハードな折檻だよ。いっつも聞かされてるけど冗談だよな?とてもそんなことする人には見えねーよ。」
快人「冗談じゃないってば。そもそも制服が3着もあるのとか不思議に思わない?」
健二「あぁ、そーいやそうだな…ん?あ、よく見ると所々に薄っすら黒い染みがあんじゃん。だから買い換えたんじゃねーの?」
快人「確かにその汚れのせいだけど、最初はそれ黒じゃなくて…『赤』だったよ。」
健二「返り血…!?」

学園には鬼が棲んでいる。

 

【No.20:女装にドッキドキ】 【Side:快人】
ホントはすぐにでも乗り込みたかった僕だけど、もう授業が開始してるだけに、どうにも目立っちゃうから昼休みまで待つよう、さっきジロさんに説得された。 昼休みには中庭で昼食する子もいるらしく、その流れに乗じて乗り込むのが一番安全っぽいとか。

快人「にしても…健二、意外とお前…女装似合うな。不覚にもドキッとしちゃったよ。」
健二「お、俺はその発言に違った意味でドキドキが止まらないが。」
快人「僕の方もそれなりにハマッてる気がするんだよなぁ。姉ちゃんの制服もちょっとキツい程度だし。」
健二「ん〜、まぁ俺ら成長期遅れてる方だから、男っぽいゴツさはあんま無いけど…でも、さすがに女の子に見られるってのは無理があると思わね?」
快人「よし、眉毛を剃ろう。」
健二「え゛っ!?イヤだよ!なんでそこまでしなくちゃなんねーの!?」
快人「だってホラ、やっぱ濃い眉毛が一番男らしさを主張してるじゃん?特に何を守ってるわけでもない毛のくせに生意気な。」
健二「いや、それを言うならワキ毛とかもそうだろ。スネ毛とか。」
快人「もちろんそれも剃る。あと、もしもの時のために『下の毛』も。」
健二「一体何があったらそんな時が訪れるんだよ。つーかもしそうなったら毛なんかよりももっと物騒な奴がコンニチハしてるだろ。」
快人「え?違うよ違う。 パンティーからハミ出るから。」
健二「パ…えっ!?」

快人は無駄に完璧主義だった。

 

【No.21:違和感】 【Side:快人】
カラーンコローン…♪ カラーンコローン…♪

そして、待ちに待った昼休みが訪れた。そう、機は熟したんだ。

快人「というわけで、早速行こ…あ、行くわよ健子ちゃん♪」
健二「いや、その前にちょっと待て快人。今のうちにお前に言っときたいことがある。」
快人「え、言っときたいこと?なに、ココから無事に帰れたら結婚とかするの?」
健二「あからさまな『死亡フラグ』じゃねーか!そんな予感するならヤメようぜ行くの!」
快人「じゃあ何なのさ?それ今じゃなきゃダメな話?」
健二「あ〜お前さ、漫画の読みすぎなんだよ。 よーく考えろ、語尾に『わよ』とか付ける女って身近にいるか?他にも『のよ』とか『だわ』とか、漫画とかじゃよく見かけるけど実際聞いたら違和感バリバリじゃね?」
快人「じゃあ…『ざます』?」
健二「お前はドコの教育ママだ。」
快人「確かに…そう言われてみればそうだね…。なんてこった、これじゃ女子になりきれない…!」
健二「んー、別に普通でいいんじゃないか?乱暴な言葉遣いだけ気をつけて、基本『ですます』調で話せば問題ないだろ?」
快人「えっと、じゃあ…この前発掘した『デスマスク』がぁ〜…」
健二「単語に『ですます』が含まれりゃいいってもんでもねーよ。それにそもそもどんなシチュエーションだよそれ。」
快人「ま、じゃあ普通でいこうか。」

『普通』なら行かない。

 

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