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【No.22:エデン】 【Side:快人】
警備室から中庭までの道のりは、あまり人に会わなかったからなのか、ジロさんがヨロシクやってくれたのか、僕らの変装が完璧だったのか、特に疑われてるっぽい気配も感じないで済んだ。

そして辿り着いた中庭。 そこは…まさに『エデン』と呼ぶに相応しい場所だった。

快人「お、おおおお、女の子…!しかもみんな、レベル高ぇ…!」
健二「え、えっと快子ちゃん?とりあえずその荒い鼻息は全力で止めようか。マジで。」
快人「そ、そうだね健子ちゃん。まずは落ち着いて…話しかける相手を探さなきゃね!」
健二「えぇっ!?は、話しかけるの!?なんでわざわざ危ない橋を渡ろうとするの!?」
快人「フフッ、知らないの?心理学には『吊り橋効果』ってゆーのが…」
健二「いや、その橋とこの橋は違う。」
快人「ッ!!!」
健二「まぁ適当に暇潰してから群集に紛れて…ん?どうしたの快…子ちゃん?」
快人「み…見つけた…。」
健二「見つけたって…あ、もしかして前の電車の子?」

Aランクが、5人も…!

別の子だった。

 

【No.23:突撃】 【Side:快人】
さすがは愛桜学園といった感じで、中庭には可愛い子の姿がチラホラ見られた。
これは最高だ。最高すぎる!テンションMAX! 

快人「…と、勢いに任せちゃうのが、ぼ…私の悪い所なのは大体わかってる。」
健二「あれ?なに、思いとどまったの?もしやビビッた?」
快人「冷静に考えれば私にもわかるよ。声とかならまだなんとかなるけど、セレブの話題に付いてける自信は無い。」
健二「いや、でもおま…アナタのお姉様はセレブ?」
快人「行ける気がしてきた。」
健二「あ、しまっ…!」
快人「意外と普通の子らだと思っていけば案外平気かも。あ、なんかあそこの3人組はみんな結構レベルが高…ゴホンッ、こんにちわ〜♪」
健二「ちょっ…!」
少女達「???」

その時だった。
少女A「ゴ〜メンゴメン、遅れちゃったよ。待ったー?」
健二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
快人「Σ( ̄□ ̄;)!!!!」

ね、姉ちゃん…!!

惨劇が幕を開けそうな感じ。

 

【No.24:暗雲】 【Side:快人】
イケてる感じの3人組に、意を決して話しかけたその時、そこに現れたのは…なんと、あの恐ろしい凛姉ちゃんだった。
もし正体がバレようものなら、制服の件とか、友達の前で恥かかされたとか、なんか今日ムシャクシャしてるとか、なんとなくとか、とりあえずとか、そんな理由でボッコボコにされるのは目に見えてる。死にたく…ない…!

快人(ガクガクブルブル…!)
健二(そ、そうだった、こんな危険性もあったはずなのに…俺としたことが…!)
凛「ん?なにこの子ら?誰かの知り合い?」
少女B「あ…ううん。初めてだけどなんか声かけられて…ねぇ?」
快人「あの、姉ちゃ…もごっ!」
凛「へ?いま何て?なんか『姉ちゃん』とか…」
快人「いや、その、違くて! えっと…ネイチャー!な、名前ね!『安藤ネイチャー』…ハーフです!」
健二(え!なにそのカツラメーカー!?つーかハーフの前に『ニュー』が付くだろ俺ら!)
少女C「あ〜、ハーフってことは、もしかして転校生さん?同じ2年のスカーフなのに見たことないなぁって思ったけど、それなら納得かも〜。」
少女D「でもさでもさ、ちっとも外人顔に見えないんだけど、何人と何人のハーフなわけぇ〜?」
快人「ゲッ、あー…えっと、静岡人と…名古屋人?」
凛「日本じゃん!純日本人じゃん! しかもウチの両親と同じ…構成…?」

怪しい雲が立ち込めてきた。

 

【No.25:限界を超えて】 【Side:快人】
姉ちゃんと愉快な仲間達との会話は凄まじくスリリングで、もう全身からほとばしるイヤな汗が止まらない。そして代わりに心臓が止まりそう。
なんとか誤魔化そうとは思うけど、これ以上話したら絶対バレる。早く…逃げたい…。

凛「んー、よく見ると見たことある顔なんだよね〜二人とも。どっかで会ったっけ?」
健二「Σ( ̄□ ̄;)!!」
少女B「どっかでっていうか、なんか凛に似てない彼女?」
快人「Σ( ̄□ ̄;)!!」
少女C「あー、それなんかわかるかも〜!」
健二「いや、その、世の中には似た顔の人が何人かいて…」
快人「そ、そうそう!7人集めると願いが叶うとか!」
凛「それ何ゴンボール!?話変わってきちゃってるし!」
少女D「な〜んか、怪しくね?」
少女B「うん…怪しいね。」
健二(もう限界だ。なんかキッカケ作るから、その隙に逃げよう。)
快人(オケー!!)
健二「あ、アーーーーッ!!あ、あんな所に歩く金のシャチホコがっ!!」
凛「いや、いつものことだし。」
快&健「え゛えぇっ!?」
少女D「どーせまた『会長』のコスプレっしょ?いちいち驚いてたらキリないしぃー。」
凛「にしても…やっぱアンタら怪しいよね。もしかして、ウチのガッコじゃないとか?」
健二「ッ!!! い、いや、あの…!」
凛「あーあー大丈夫大丈夫!意外といるんだよね〜そういう子。 ホラ、ウチってセキュリティ厳し過ぎで中見えないからさぁ。」
少女D「まぁあのセキュリティ超えてきた子は初めて見たけどね、キャハハ☆」
健二「そ、そう!そうなんです!一度でいいから気分を味わってみたくて…!」
快人「でもやっぱり悪いコトですよね!わかりますわかります!そしてごめんなさい!もはや生まれてごめん! んじゃそろそろ私達は…」

そう言って颯爽と逃げようとした僕達。今逃げれば、まだ作戦は立て直せるはず…!

凛「…待ちなよ。」
快人「こ、殺さないでぇえええええええ!!」
凛「いや、ちょっ…なに勘違いしてんの!?そうじゃなくて、付き合うって言ってんの!」
快人「え…?」
凛「面白そうじゃん学校探検。アタシらが、案内したげる♪」

 

 


【No.26:そして侵入】 【Side:快人】
ひょんなことから、姉ちゃん達に学校を案内されることになった僕達。
なんというか、もう引き返せない所まできてしまった気がする。こうなったら、もう腹をくくるしかないのかもしれない。もしくは首をくくるしか…。

ちなみに、『姉ちゃんズ(仮)』の構成員は大体こんな感じ。

A:凛姉ちゃん・・・言わずと知れた僕の姉ちゃん。一言で言うなら『鬼』。
B:孝美さん・・・一番常識ありそうな感じの人。でもたまに見せる冷静な目が少し怖い。
C:秋穂さん・・・巨乳。イメージ的にはチョットほんわか天然な感じで、あと巨乳。
D:佳奈さん・・・ギャルっぽくて、頭は良くなさそうなイメージ。正直苦手なタイプだ。

昼休みが終わり、とりあえず中庭から校内に入った僕達は、ちょっと用があると言って消えた姉ちゃんを待っていた。

凛「ハ〜イお待たせ〜。さっ、行こっか!」
快人「あの、その、やっぱいいんで…あ!ホラもうすぐ授業始まっちゃうし!ね!?」
凛「あ〜問題無いよ。さっきチョット先生んトコ行って、午後イチの授業は自習にしてきたから。」
健二「えっ、『してきた』って何!?一体何をしてきちゃったの!?」
孝美「高橋先生…いい人だったのに…。」
健二「それ『午後イチ』だけで済む話!?」
快人「と、ところでみなさん…これって今、ドコへ向かってるの?あんまり危険な所は…」
健二「そう!もしバレたら大変だし、あんまり無茶はしたくないんだけど…」
秋穂「アハハ♪ 大丈夫だよ〜、そんなに目立つ所とか行かないし。ねぇ佳奈ちゃん?」
佳奈「そそ。 あ、まずは便所ね。」
快&健「キャーーーー!!」

 

 

【No.27:追い風と向かい風】 【Side:快人】
学内侵入どころか、いきなりトイレに向かおうとか言い出した佳奈さん。これは絶対マズい。
別に個室の中を覗くわけじゃないから何が起きるってわけじゃないけど、もしこれから先、姉ちゃんに正体がバレた時のことを考えると、そんな冒険するわけにはいかない。
幸いなことに、僕にはまだその手の趣味は無い。トイレに興味を持つのは多分もっと『上級』の人達だ。僕には、まだ早い。

快人「いい!行かない!トイレは…チョット…!」
凛「へ?なんでそんなに拒絶すんの?トイレ嫌い…?」
快人「いや、あの、その…あ!洋式!洋式トイレが苦手なの!だから…」
秋穂「あ〜大丈夫だよ〜、和式のもあるし。」
快人「ゲッ!そ…それもチョット…!」
佳奈「いやいや、じゃあ何なのさ?」
快人「う゛っ…ちゅ、中華?」
凛「えっ、何それ!?回るの!?あのテーブル的な感じで!?」
健二「あの…えっと、折角の愛桜に来たのにいきなりトイレってのはイメージが…みたいな。」
凛「ん〜じゃあさ、逆に聞くけどドコ行ってみたい?できる限り協力しちゃうよマジで。」
健二「ど、ドコって言われても…」
快人「…じゃあ、理事長室!理事長室を、見てみたい!多分一番豪華なんだろうし!」
健二「ちょっ、快…じゃない、ネイチャー!?何を…」
孝美「そ、それは…ちょっとキツくない?今日ってホラ、理事長来るって日だし。」
佳奈「かもね〜。いくらなんでも、これからあの辺をウロつくのは…ねぇ?」

キタ!追い風キター! …ん?理事長室に行けないってことは向かい風か?
いや、もうこの際この場から逃げられるんなら追い風だ!これでなんとかなる!

凛「んにゃ、行こうよ。」
快&健「え゛っ!?」
凛「アタシってさ、『無理』って言葉と…アホな弟が、大嫌いなんだよ。」
快人(ひ、ひぃいいいいいいい!)

 

 

【No.28:悪寒が全力疾走】 【Side:快人】
ちょっとやそっとの無茶は物ともしない性格でお馴染みの姉ちゃんは、煽ったら案の定乗ってきた。もうここまできたら流れに身を任せるしかない。

健二「え、えっと…でもいいんですか?バレたらみなさん怒られるんじゃ…」
凛「ここからはアタシのわがままもあるし、みんなには無理にとは言わないよ。どうする?」
佳奈「ん〜〜…ま、オモロイかもな♪『死のクリスマス』よりかはレベル落ちるだろうけどw」
健二「え!何その女子高っぽくない黒いイベント!?」
孝美「近藤先生…いい人だったのに…。」
健二「そんなにしょっちゅう人が大変なことになる学校なの!?乙女なイメージはドコへ!?」
凛「まぁとにかく行こうよ。理事長室ならスグ近く…チッ、来る…!」

突如厳しい顔になり、振り返った姉ちゃん。耳を澄ますと足音らしき音が聞こえてきた。

健二「えっ!?い、一体何が…!?」
凛「授業に向かう先生達か…マズったね、誰かわかる孝美?」
孝美「時間割りから考えると、数学の橘先生と倫理の杉本先生だね。」
佳奈「厄介な二人だな…どうする凛?」
凛「…仕方ない、アタシらが囮になるから、二人は行って!」
快人「えっ、でも…!」
凛「ここまで乗り込んでくる程の、用事があるんでしょ?だったらさっさと行って、片付けてきな。」
健二(ど、そうする快人!?このままじゃヤバいって!)
凛「早く!理事長室はその角を右に行けばスグだから!」
快人「…ありがとう、行くね!このお礼は、いつか必ず!!」

そう言って走り出す僕は健二と走り出した。いろんな意味で早くこの場から離れたかった。

佳奈「ふぅ〜…さ、早く行こうぜ。でないと先生あの子らに気づいちまうよ。」
秋穂「でもさぁ凛ちゃん、なんでここまでやってあげるの〜?」
凛「…フン、まぁよく言うじゃん?『バカな子ほど可愛い』ってさ。」
秋穂「ほぇ?何それどういう意味??」
凛(何したいのか知んないけど、アタシにここまでさせたんだ。失敗したら殺すよ…快人?)

凄まじい悪寒が背筋を駆け抜けたけど、気のせいであってほしいと切に願った。

後に体で知ることになる。

 

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