第二十章

 

4-301:王様〔14歳:LEVEL40〕
絞死達が苦戦している頃、盗子と無職も困ったことになっていた。
暗殺死「オイオイ、そんな実力でこの俺を殺しに来たのか?あきれたものだな。」
盗子「あきれたのはこっちだよ!娘の女友達に襲い掛かるとかありえないよ!」
暗殺死「逆らうなら愛娘とて容赦はせんよ。「おヒゲすりすりの刑」とかしちゃう。」
無職「いや、確かに地味にイヤな技ですが…!」
暗殺死「まぁ安心しろ、お前達は普通に殺す。」
盗子「それで安心しちゃうドMがいたら会ってみたいよ!死にたくないよっ!」
無職「にしても、なんでいきなり支配です?「暗殺者」のイメージとは違うですが…。」
暗殺死「フッ、単に欲が出たのさ。とある者に進言されてなぁ、王になることにした。」
盗子「この大陸で王ってことは…大魔王と対立する気?だ、だったらアタシらと協力」
暗殺死「する気は無い。」
盗子「あ、暗殺美に嫌われてもいいっての!?」
暗殺死「もう…手遅れさ…。」
盗子はちょっと同情した。

 

4-302:協力〔14歳:LEVEL40〕
というわけで戦い始めた盗子達だったが、全然相手にならなかった。
盗子「ハァ、ハァ、全然、当たんない…!動きが、早すぎるよっ…!」
暗殺死「ふむ、「技盗士」か…。センスはともかく、熟練度が全然足りないなぁ。」
無職「ハァ、ハァ、ワチはこれでも、結構、鍛錬してるですが…!」
暗殺死「お前はセンスが全く無い。」
無職「死にたい…。」
暗殺死「それで大魔王に挑む気だったのかお前達?自殺したいなら自分で死ね。」
盗子「う、うっさいよ!それでもやんなきゃなんないんだから、しょーがないじゃん!」
暗殺死「…フッ、ならば仕方ない。協力してやろう。」
盗子「えっ!ホント…!?」

暗殺死「俺が、殺してやる。」
自殺の協力だった。

 

4-303:限界〔14歳:LEVEL40〕
そしてそのまま、数日が過ぎた。
無職「ゼェ、ゼェ、きっついです…!もうダメ、死んじゃうですよ…!」
絞死「ハァ、ハァ、ちょっと盗子さん、邪魔なんで下がってもらっていいですか?」
盗子「アンタらが床ブチ抜いて落ちてきたんでしょ!?邪魔なのはそっちだよ!」
土男流「うぉー!もう動けないんだー!自分の体じゃないみたいなんだー!」
忍美「し、しのみんも!しの」
暗殺死「ふむ、どうだママ?ぼちぼち…終わりにするというのは。」
麻音「ま、それが良さそうだよねぇ。そろそろ限界だし。」
絞死「フッ、甘くみるなと言ったはずですよ?私はまだ限界では…」
勇者「…いや、もうヤメておけ絞死。そういう意味じゃないんだ。」
かなり遅れて勇者が現れた。
盗子「ゆ、勇者!一体今までどこに…!?」
勇者「ん?風呂とか。」
盗子「何そのお客様気分!?」
勇者はツヤツヤ感がスゴい。

 

4-304:茶番〔14歳:LEVEL40〕
数日ぶりに合流した盗子らは、妙なオッサンらと戦っていた。そうかコイツらが…。
暗殺死「勇者…お前が凱空氏の子か。面白い、お前もかかって来」
勇者「茶番はそこまでだ。もういい、貴様らは休むがいい。」
麻音「あ、もしかして…何か聞いちゃったぁ?」
勇者「ああ。地下牢にいた猫ババアに聞いたよ、全てをな。」
暗殺死「やれやれ、さすがは猫耳族…「疫病神」の異名に偽りは無かったか。」
麻音「やっぱり用が済んだ時点で消しちゃうべきだったねぇ〜。」
勇者「あぁ問題無い、やっといた。」
土男流「さすが師匠だぜー!事情は知らないけど多分偶然のたまものなんだー!」
麻音「…ねぇキミ、ウチにお婿さんに来ない?」
暗殺死「ま、ママ!?俺は許さんぞ絶対!あさみんにお嫁さんはまだ早い!」
勇者「フッ、悪いが盗子との二択でもない限り断る。」
盗子「そーゆー身近な例えはかなりショックだからヤメてくれる!?」
絞死「勇者さん、つまりどういう意味なんですか?」
勇者「全ては仕組まれていたのさ。お前達雑魚どもを、鍛え上げるためにな。」
勇者は得意げに話し始めた。

 

4-305:真相〔14歳:LEVEL40〕
地下牢で会った、故・猫ババアの話によると、暗殺美の両親は敵じゃないらしい。
それどころか、大魔王に挑もうとする俺達を、こっそり鍛えようとしていたのだという。
勇者「つまり、最初っからお前らを殺す気なんか無かったってわけさ。雑魚どもめ。」
忍美「ひ、酷いのだ!だったらもっと優しく修行つけてくれれば良かったのだ!」
暗殺死「フン、甘えた状況では人は育たん。真剣勝負に勝る修行は無いのだよ。」
麻音「だから私達は、ここで悪の王様を演じてたってわけなのぉ〜♪」
盗子「え、いや、でもそれって…別に王になる必要性は全然無くない?」
勇者「ああ、全然無いな。」
無職「確かに、普通に道端で襲えば済む話と思うです。」
勇者「まったくもってその通りだ。」
絞死「もしかしたら、その「王佐」とやらが巧妙に操ったのかも…」
勇者「単にバカだからじゃないか?」
暗殺死「て…テメェらぁあああああああ!!」
暗殺死はしばらく暴れた。

 

4-306:不幸〔14歳:LEVEL40〕
その後暴れ続けたオッサンだが、なんとかみんなで押さえつけた。面倒な奴め。
暗殺死「やれやれ、最初から疫病神だったのか…。信じた俺達がバカだった。」
麻音「あの帝雅って彼の王佐をやってた時点で、気づいてれば良かったよねぇ〜。」
盗子「て、帝雅…!?オジさん達その人知ってんの!?」
暗殺死「ああ、かつてこのシムソー国を支配した王だ。魔王に潰されたと聞いたが。」
麻音「王佐が「思い切って側近を遠征に出すが吉」とか言ったらしいよ。超ウケる☆」
勇者「そこまで知っててなんでそいつを信じたんだ。」
麻音「キミ達も猫耳族に会ったら気をつけてね〜。不幸になっちゃうからねっ☆」
勇者「ああ、賢二がなぜ不幸なのかよくわかった気がするよ。」
バンッ!(扉)
賢二「ゆ、勇者君おかしいよ勇者君!」
勇者「おっと噂をすれば…って、まるで俺がおかしいみたいな言い方はヤメろ。」
賢二「いや、あながち間違っぶふっ!
賢二はやっぱり不幸だ。

 

4-307:厄介〔14歳:LEVEL40〕
遅れて来た賢二が言うには、なにやら空に怪しい雲と魔法陣が見えたらしい。
というわけで仕方なく、俺達は空の見える場所まで移動したのだった。超仕方なく。
ゴゴゴゴゴゴゴ…(轟)
勇者「ふむ、あっちの空か。確かにそれっぽいモノが見えるな。アレは何だ?」
暗殺死「むっ、アレは「業火竜召喚の陣」…!大魔王軍め、厄介な奴を…!」
勇者「業火竜…授業で聞いたことがあるな。確かすんごい炎を吐くと。」
無職「それは聞かないでも大体予想できる内容ですが…。」
麻音「頭が出てきたねぇ。この距離じゃ、この辺りは完全に火の海…かなぁ?」
暗殺死「まぁ炎を吐くまでには少し時間がかかる。その前に討てばいい話さ。」
勇者「よし、そうとわかれば善は急げだ。サクッと殺しに向かうぞ。」
賢二「いや、無理だよ!いま行ったら死んじゃうよ!」
勇者「やれやれ、また臆病虫が沸いたか…」
賢二「じゃなくて、〔超望遠〕で見てみたんだけどなんか…凄まじい「放射能」が…。」
盗子の仕業だった。

 

4-308:助言〔14歳:LEVEL40〕
業火竜の出現地は、なんと盗子が絞死の核自動車を送り込んだ場所っぽい。
勇者「放射能か…行くに行けんな。だがまぁ、放っといても死ぬんじゃないか?」
暗殺死「いずれはそうかもしれないが、その前に一発吐くだろうなぁデカいのを。」
勇者「じゃあ盗子、責任取って来い。」
盗子「い、イヤだよなんでアタシだけの責任なの!?ああしなきゃアンタだって死」
暗殺死「盗子…経験が足りない分は、勘と運に頼れ。意外性はお前がトップだぞ。」
盗子「へ?何さいきなり…?意外性とか言われても喜びづらいんだけど…。」
麻音「絞死ちゃんはちょっと独りよがりだよねぇ。あと幻術にも頼りすぎかなぁ。」
絞死「言いたいことは、まぁ少しはわかりますよ。少しだけ…ですがね。」
暗殺死「土男流は、もう1段階上へと行ける資質を秘めていると見た。頑張れ。」
土男流「なんかありがたい話っぽいけども漠然とし過ぎてて意味不明なんだー!」
麻音「しのみんは素早いけど…もっとおっきくならないと力がねぇ。牛乳飲みな?」
忍美「それはもう何年か前に聞きたかったのだ!今さらお手上げなのだ!」
暗殺死「無職はセンスが無い。」
無職「オチに使わないでほしいですが…。」
勇者「お前達…死ぬ気か?いくら強くても、放射能相手じゃ生きては…」
暗殺死「フッ、心配」
勇者「してないが。」
暗殺死は続きが言えない。

 

4-309:誤解〔14歳:LEVEL40〕
死の大地へは、暗殺美の親が向かう流れになった。よくある流れだが気にしまい。
勇者「行ってくれるなら好都合だ、頑張れ。まぁ暗殺美には適当に伝えとくよ。」
賢二「えっ!もしかしてこの方達って暗殺美さんのお父さんと」
暗殺死「誰がお義父さんだぁああああああ!!」
麻音「あ、もしかしてキミが賢二きゅん?そっかぁ〜、そぉなんだねぇ〜♪」
賢二「へ?へ?なんで僕のこと知って…?」
勇者「依頼したんじゃないか?暗殺の。」
賢二「やるせないな、それ…。」
絞死「アナタ方は…死ぬのが怖ろしくはないのですか?他人なんかのために…」
麻音「他人じゃないよぉ。あさみんのためでもあるし、未来を守るためでもあるし。」
勇者「いや、「暗殺者」が何を言う。」
暗殺死「未来は託したぞお前達。絶対に、大魔王を倒し…未来を守っておくれ。」
賢二「お、お父さ」
暗殺死「誰がお義父さんだぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!」
暗殺死は引きずられて消えた。

 

4-310:方便〔14歳:LEVEL40〕
暗殺美の両親が城を出てしばらくすると、魔法陣からは巨大な火竜が現れた。
だがその竜は炎を吐くことなく倒れ、姿を消した。そして二人が戻ることもなかった。
勇者「さて…じゃあ、これからのことを考えるとしようか。」
無職「まだ指定された秋には早いですし、みんなで修行でもするです?」
勇者「修行か…悪くない案だが、一人はタケブ大陸へと戻ってもらう。」
盗子「へ?なんでここまで来て戻んなきゃなんないのさ?」
勇者「この城を散策してる時、気になる文献を見つけたんだ。忍美、調べてこい。」
忍美「えぇっ!?な、なんでしのみんなのだ!?仲間外れはイヤなのだっ!」
勇者「お前のような優秀な忍びにしか頼めん、重要な用件だ。フッ、嘘も方便だが。」
忍美「本音が!本音が全然隠しきれてないのだ!イヤなのだイヤなのだ絶対に」
勇者「ならば…殺す!!」
忍美は泣きながら出て行った。

 

4-311:空腹〔14歳:LEVEL40〕
ウザい忍美を追い出し、また人数が減った。だが姫ちゃんが戻ってくれば俺はいい。
賢二「ただでさえ少なかったのに、6人になっちゃったね…。どうしようね…。」
勇者「ま、無職が言ったように修行が妥当だろうな。」
姫「酒豪…相手にとって不足は無いよね。」
盗子「それじゃ勝負の方法違ってくるよね…って、姫!?アンタいつの間に!?」
姫「お風呂とか?」
盗子「いや、何してたかは聞いてないよ!てゆーかなんで勇者と一緒なの!?」
勇者「くっ、そうだったのか…!ドサクサに紛れ損ねた…!」
賢二「また本音出ちゃってるよ勇者君…。 あ、ところで夕飯はどうしよう?」
勇者「ん?あぁそうだな、食おうか。お前らも数日飲まず食わずで腹ペコだろう?」
無職「いや、3食出てたですが。」
勇者「その時点で疑問を感じろよ。どう考えても殺す相手にする対応じゃないだろ。」
土男流「ち、違うのだー!「太らせて食べる」とか言われてたんだー!」
勇者「フン、まぁいい。とりあえず一段落ついたし、晩餐会といくか!」
盗子「やったぁーー!!」
忍美が聞いたら泣く。

 

4-312:担当〔14歳:LEVEL40〕
やっと姫ちゃんと合流できたので、喜びのあまり晩餐会を開くことにした。はしゃごう。
勇者「と思ったのだが、そういえば料理人がいないな。食材はあるんだが…。」
姫「じゃあここは、私が猛威を振るうよ。」
盗子「腕を振るえよ!アンタは台風か何かかよ!?」
無職「やはりここは、皆で頑張って料理しちゃう…とかどうです?」
絞死「ですね。誰かに任せて食材全滅にでもなったら、目も当てられませんし。」
勇者「フン、軟弱者め。俺は姫ちゃんが作ったモノなら何でも食うぞ?」
姫「毒でも?」
勇者「ああ、皿までな。」
盗子「じゃ、じゃあアタシの…アタシの料理は!?」

勇者「皿だけな。」
盗子「えっ!陶器以下!?」
土男流は土をこね始めた。

 

4-313:料理〔14歳:LEVEL40〕
そうして急遽開かれたお料理大会。料理には不慣れだが、勝負なら負けられん。
勇者「よーし、じゃあ各自何か素敵なモノを頑張って作るがいい(盗子以外)。」
盗子「今「盗子以外」って思ったよね!?そーゆー目をしたよね!?」
無職「仕事じゃないなら…仕事じゃないなら、やれそうな気がするです!」
姫「ねぇ誰か、〔火炎地獄〕使える?」
絞死「いや、そんな無駄な火力は要らないかと…。」
土男流「うぉー頑張るぜー!すんごいのを焼き上げてやるんだー!」
勇者「オイ土男流、いい加減突っ込んでやるが食器は要らんぞ。」
賢二「ただの料理大会のはずなのに…なんだろ、何かありそうな予感が…。」
盗子「き、気のせいだよ!いくらなんでも、たかが料理くらいでそんな…」
ボガァアアアン!(爆発)

双子「わー!マヨネーズがー!!」
呼んでないのが混じっていた。

 

4-314:無視〔14歳:LEVEL40〕
なぜか知らぬ間に合流していた双子。だがお料理モードに入った俺には関係ない。
勇者「つーわけでお前ら、今は邪魔するな。とりあえずメシの確保が先決だ。」
ワルツ「そうはいきません!ワルツと♪」
ポルカ「ポルカの♪」
勇者「カルパッチョ。」
双子「食べないでぇーー!!」
盗子「ど、どーするの勇者?のんびり料理なんかしてる場合じゃなくない?」
ポルカ「そうなのです!ポルカ達は大事なお話を持ってきたのです!」
ワルツ「きたのです!」
勇者「今はそれどころじゃない。急がんとメシを求め姫ちゃんはまた旅立っちまう。」
姫「ふん、失礼しちゃうよ勇者君。私そんな食いしん坊じゃ(ぎゅるるる)…ないよ?」
勇者「みんな、急げぇーーー!!」
ワルツとポルカも手伝った。

 

4-315:試食〔14歳:LEVEL40〕
そんなこんなで時は経ち、皆の料理が出揃った。さぁこれから試食ターイムだ。
勇者「よーし、まずは俺の作ったスープからだ。盗子は「煮え湯」でも飲んでろ。」
盗子「もうお腹イッパイ飲まされたよそんなの!年がら年中だよ!」
賢二「このスープ…お、美味しい!意外にもとっても美味しいよ勇者君!」
勇者「フッ、時限性だ。」
賢二「何が!?ねぇ何がっ!?」
盗子「この煮物は…絞死君の?手が込んでるねぇ〜、ちょっと変わった味だけど。」
絞死「結構無茶しますね、盗子さん。」
盗子「何が!?ねぇ何がっ!?」
勇者「無職はセンスが無い。」
無職「まさか「永久就職」にまで壁が…。」
ワルツ「こちらはワルツと♪」
ポルカ「ポルカの♪」
勇者「遺作となった。」
双子「まだ生きたいですーー!!」
土男流「師匠ー!私のはどうなんだー!?とってもうまく焼けたと思うんだー!」
勇者「だから食器は要らんと言ったのに、なんでそんなプロ顔負けの腕前なんだ。」
姫「むぐぅ…うん、このお肉は…アリだね。」
賢二「あ、それ僕が作ったんだよ。まぁ単に塩コショウで焼いただけなんだけどね。」
勇者「こ、この過激な味は間違いなく姫ちゃんの…ぐふっ!美味びゃはふっ!
盗子「勇者!?ねぇ、ちょっ…勇者ぁ!?」
誰も盗子のに触れない。

 

第二十一章