第二十一章

 

4-316:泥酔〔14歳:LEVEL40〕
皆の料理は食えたり食えなかったりだったが、晩餐会は一応盛り上がった。
だが「子供酒」が入ったこともあり、場は次第に乱れ始めた。
勇者「よーしなんか楽しくなってきたぜ!オイ双子、お前ら何かやれ!」
盗子「イェーイ!やっちゃえ双子ちゃ〜ん!」
ポルカ「ハ〜イ、かちこまりまちた〜☆ えと、ポルカが奏でて♪」
ワルツ「ワルツが踊りゅ♪」
勇者「俺は特に邪魔はしない。」
ワルツ「こ、困りまちた!それはそれれ何か物足りない感じが…!」
ポルカ「洗脳されちゃいまちたー!」
無職「洗脳…うん、真っ当な職が無理なら、いっそそういうダークな…ウフフ…。」
絞死「私はね?グスン、お酒とか初めてで、えぐっ、こんな酔っ…うぇええええん!」
土男流「師匠見てくれー!私一人れこんなデカいボトル空けう゛ぇえ゛え゛え"え"!」
賢二「なんかみんな…めんどくさいね…。」
賢二は酔うに酔えない。

 

4-317:用件〔14歳:LEVEL40〕
メシはともかく酒はうまい。だが俺は何かを忘れてる気がする。あ、そうだそうだ。
勇者「ぃっく。そういやお前ら、えっと…バルスとムスカ。何しに来たんらっけ?」
ワルツ「あ、ひゃい。ワルツ達は、お手紙を持ってきたのれす〜♪」
ポルカ「お読みくらはい勇者様〜☆」
勇者「手紙だぁ? どれどれ…チッ、読めん。古代文字か。」
賢二「いや、普通の文字だよ?勇者君の視界が大変なことになってるだけだって。」
盗子「ねぇねぇ〜、どこのだ〜れが、な〜んて書いちゃってあるのさぁ〜?」
姫「大魔王からだね。プログラム…最後の戦闘の日時、ルールが書いてあるよ。」
賢二「姫さん…。毎度のことだけど、やっぱ慣れないねそのシッカリ具合…。」
勇者「プログラム…らとぉ?運動会か何かと勘違いしてねぇか?ナメやがって!」
賢二「きっとゲーム感覚なんだよ。僕らなんかに負けるはずないと思ってるんだ。」
姫「絶対に、負けられないね。そのためにはもっと上を目指さなきゃ、上を…」

土男流「う゛ぇえ゛え゛え"え"!」
水飲め土男流。

 

4-318:指定〔14歳:LEVEL40〕
聞けば双子は、大魔王のおつかいれ手紙を持って来たらしい。良い子ちゃんかよ。
盗子「でぇ〜?手紙にはな〜んて書いてあるのさぁ?読め姫ぇー!」
姫「えっと、「こっちの主要メンバーは6人だから、そっちも6人で来い」…らしいよ。」
勇者「んぁ?大魔王、帝雅、暗黒神、竜神、女神、夜玄、俺…7人じゃらいか?」
賢二「いや、なんでそっち側に入っちゃってるの?全然違和感は無いけども。」
盗子「えと、アタシと勇者、賢二、姫、絞死、無職、土男流…1人多い!勝ったー!」
勇者「じゃあな盗子。」
盗子「はいキター!やっぱりそうキター!いやらよアタシ離れたくないよぅ!」
賢二「え、もしかして素直に従う気?勇者君は逆に大軍を用意するタイプかと…」
勇者「フン、こう言われちゃお前、多勢で乗り込んれ勝っても誇るに誇れんらろう?」
賢二「うわー…思いっきり敵の思惑に…」
勇者「そんなことより、だ。俺はそれよりも言いたいことがあるんら、なぁ賢二。」
賢二「ん?なに勇者君…?」

勇者「飲め。」
賢二は溺死しかけた。

 

4-319:目覚〔14歳:LEVEL40〕
よく考えたら俺は、賢二が酔ったのを見たことがらいことに気付いた。
シラフの冷めた目れ見つめるのが趣味に違いない。らからムカついて飲ませた。
勇者「ハッハッハー!飲め!飲むがいい賢二!胃袋がブチ破れるまれ飲めぇー!」
賢二「ゲホッ!グハァ!ちょっ、ヤメて勇者君…僕、飲んだことないから…げふっ!
勇者「フッ、安心しろ。これは「チュピリタチュ」…そんらに強い子供酒らない。」
賢二「最強種じゃん!余裕で火が付くお酒…むしろ「燃料」じゃん!ノドあっつい!」
勇者「まぁ今日くらい付き合えよ賢二。他の奴らもホレ、潰れて眠っちまった。」
賢二「いや、らったらなんれ僕まれ潰そうと…うぐぅ、ダメらもう…酔いが…!」
勇者「オイオイ、何を情けな…」

賢二「あ゛ぁ?」
「裏賢二」が目を覚ました。

 

4-320:突入〔14歳:LEVEL40〕
超強い酒を無理矢理飲ませたら、なんと賢二の裏人格が覚醒したっぽい。
これは堪能しないともったいない。とりあえず俺は水を飲んれ酔いをさますとしよう。
勇者「プハァ〜、スッキリした。にしても、そうか…賢二は酔うと邪悪な感じに変身し」
賢二「勇者君は…勇者君は、酷い!酷いのよ!いっつも酷すぎるわっ!」
勇者「と思ったらそっちか。そっちにいっちゃうのか。オカマちゃんモードに突入か。」
賢二「私にもそうだけど、もっと酷いのが…盗子さん!彼女の扱いは最悪だわ!」
勇者「今のお前もなかなか最悪だけどな。」
賢二「うるっさい!! ねぇアンタ…彼女のこと、ホントはどう思ってるのよ?」
勇者「貴様…何が言いたい?」
賢二「ホントは好きなんでしょって、そう言いたいのよっ!!」

勇者「そりゃ最高だろ、姫ちゃんは。」
賢二「そっちじゃない!」
そんなことより賢二がキモい。

 

4-321:秘想〔14歳:LEVEL40〕
酒のせいで暴走が止まらない賢二。最初は面白かったがウザったくなってきた。
勇者「というわけで賢二、もういいから水でも飲んで酔いをさますがいい。」
賢二「飲まないわ!今のテンション維持しないと、きっと言いたいことも言えない!」
勇者「じゃあ「苦汁」を。」
賢二「余計に飲めるかっ!私のことはいいから彼女の…あっ、ちょ、ヤメ…ぐぼっ!」
賢二は水を飲まされた。
勇者「ふぅ、やっと落ち着いたか。どうだ賢二目は覚めたか?」
賢二「僕は…怒ってるんだ。今まで我慢してたけど、この際だから言わせてもらう!」
勇者「一体お前は何に怒っているんだ?アイツの扱いなんてどうでもいいだろ。」
賢二「よくなんてないよ!彼女は本気で好きなんだよキミのことが!キミのことが…」
勇者「…賢二、お前まさか」
賢二「う、うるさい!自分の気持ちにも気づけないようなおバカは、黙っててよっ!」
勇者「フッ…ハハハハハッ!面白い冗談だ、あやうく笑い死んじまうところだぜ。」
賢二「僕のことなんてどうでもいい!今は、キミ達の話をしてるんだよ!」
勇者「さっきから随分と偉そうだなぁオイ。まさかこの俺に喧嘩でも売る気か?」
賢二「人ってさ勇者君、負けて初めて素直になれるってこと…あると思うんだ。」
勇者「ほぉ…それはまた、更に笑える冗談だなぁ…賢二。」
賢二が珍しくやる気だ。

 

4-322:開戦〔14歳:LEVEL40〕
なんだか妙な展開から、賢二と闘うハメになってしまった。まぁムカつくからいいか。
勇者「そういや賢二、お前とは最も長い付き合いだが…やり合うのは初めてだな。」
賢二「いつもは一方的にサンドバッグだしね…。でも、今日は違うよ!」
勇者「本気でこいよな。負けた言い訳にされちゃかなわん。仲間だからとか…」
賢二「擬似大魔王として、勇者君以上に相応しいキャスティングは無いよ。」
勇者「フッ、言うじゃないか雑魚めが。賢二の分際で俺に挑もうとは笑止!」
賢二「勇者君こそ、伝説の偉人達に鍛えられた僕を…あまりナメない方がいいよ。」
勇者「ならばいくぞ賢二。折角の勝負だ、どうせやるなら正々堂々と…む?」
賢二「え?」

勇者「隙ありぃいいいいいい!!」
勇者はいつも通りだ。

 

4-323:進化〔14歳:LEVEL40〕
なんと、意外にも賢二はかなり成長していて、この俺がまさかの苦戦をしいられた。
賢二ごときに1時間以上粘られるとか、末代までの恥…目撃者がいなくて良かった。
勇者「くっ…この俺の攻撃をことごとく防ぐとは、やるじゃないか賢二の分際で。」
賢二「ハァ、ハァ、長い付き合いはダテじゃないよ。勇者君の手口なんて、大体」
勇者「大体?」
賢二「いつも想像の…何歩か上を…。」
勇者「そう、俺の戦闘は常に進化している。対策なんて考えても無駄だぜ?」
賢二「そうだね…だったら、圧倒的な攻撃で押さえつけるのみ!」
賢二の両手に激しい炎が。
勇者「ハハッ、生意気にも凄い炎じゃないか。まともに食らったら、死ぬかもなぁ。」
賢二「あぁ、確か言ってなかったよね?実は僕…もう、「賢者」なんだ。」
勇者「なっ!?ま、まさか貴様が、この俺を差し置いてそんな上級レベルに…!?」

賢二(嘘だとバレたら殺される…。)
勇者「殺すっ!!」
どのみち殺される。

 

4-324:命取〔14歳:LEVEL40〕
そんなこんなで闘いは続いたが、この辺りで締めようと思う。まぁ編集上の都合だ。
勇者「貴様ごときに、これ以上時間はかけられん。次でキメてやるから覚悟しな。」
賢二「MPの絡みもあるし、長期戦は僕も勘弁だよ。僕も次に全力を注ぐ!」
勇者「ハァアアアアアアッ! さぁうなれ魔神剣!奴を闇へと葬り去るのだ!!」
賢二「お願いですお師匠様、僕に力を…!」
勇者「噂に聞いた変態師匠か…だが甘いなっ、俺は揉ません!!」
賢二「そっちじゃない方の!! 今のは変人じゃない方の…くっ、どっちもか…!」
勇者「さらば賢二!刀神流操剣術、千の秘剣…ぬぐっ、なにぃ…!?」
なんと!勇者は足にきていた。
賢二「勝機…!さぁ燃え上がれ煉獄の炎、火炎地ご…」

「まともに食らったら、死ぬかもなぁ。」

賢二「ッ!!」
勇者「その一瞬の隙が、貴様の命取りだぁーー!!」
賢二「あっ!しまっ…うわぁああああああああああああああ!!

勇者、会心の一撃!
賢二は見事な放物線を描いた。

 

4-325:追放〔14歳:LEVEL40〕
俺の鉄拳が豪快にメリ込み、賢二は激しくフッ飛んだ。俺の勝ちだ。
勇者「どうだ参ったか賢二よ?この俺に逆らったアホな自分を悔いるがいい。」
賢二「ま、まだだよ!まだやれ…えっ…な、なんだろう…急に力が抜けて…?」
勇者「フッ、言ったろう?「時限式」だと。」
賢二「さっきのスープの…!? やっぱり…また想像の…上を…うぐっ!」
勇者「…去れ、賢二。貴様のような使えん雑魚は、どこへなり消えるがいい。」
賢二「くそっ、くそぅ…え、ちょっ、待っ…うわああああぁぁぁぁぁぁ…!」
賢二は窓から捨てられた。
勇者「ぐふっ…!チッ、賢二ごときが、この俺に手傷を負わせるとは…生意気な…。」
絞死「おやおや、随分とお疲れのようですねぇ。大丈夫ですか?」
勇者「む?なんだ絞死、起きたのか…。そういう不気味な登場は親にそっくりだな。」
絞死「凄まじく心外です。 にしても、剣じゃなく拳…手加減とはらしくないのでは?」
勇者「…フン。敵を討つのをためらうような雑魚に、振るう剣は無い。それだけだ。」
絞死「気づいていてあの一撃ですか。訂正します、容赦の無い人ですねぇ。」
勇者「フッ、勝つためならば手段は問わん。この世の全ては、勝ってこそだ!」
勇者はゆとりが無い。

 

4-326:思残〔14歳:LEVEL40〕
賢二を追い出したことで、仲間は図らずも敵の指定した6人になった。好都合だ。
まぁ残ったメンバーじゃ凄まじく不安なわけだが、そこはもう考えても意味が無い。
今日はもう疲れたし眠ろう。明日になればきっと、このモヤモヤした気持ちも…。
勇者「って時に、なんでお前なんかに会っちまうんだろうなぁ…。」
盗子「う〜ん、どんな時なのかはわかんないけど、絶対悪い意味なんだよね…。」
勇者「で、どうしたんだ?なんで酔った勢いで寝てないんだよアホが。」
盗子「あ、うん。なんかさ…もうじき決戦かと思うとちょっと、寝付けなくてさぁ。」
勇者「オーケー、協力しよう。」
盗子「いや、「永眠」はいいから!むしろ永眠が怖いあまり寝付けないんだから!」
勇者「何を恐れる?別に思い残すことも無いような、くだらん人生だったろうに。」
盗子「ば、バカにすんなよ!アタシだって、そんくらいあるもん!」
勇者「ほぉ、それは面白い。言ってみろ、ただし2文字以内でな。」
盗子「短いよ!そんなんで表現できる思い残しとか…いや、ううん、じゃあ言うよ!」
勇者「言ってみろ!!」

盗子「好き!」
勇者「死ね。」
勇者も2文字で返した。

 

4-327:真剣〔14歳:LEVEL40〕
話の流れから、勢いで勇者に告った盗子。
普段から言ってることではあるが、改まって言われると響きが違うもの。
果たして勇者の心にはどう響いたのだろうか。
盗子「・・・・・・・・。」
勇者「盗子…悪いが…いや、悪いとも感じん程に興味が無い。」
盗子「ゆ、勇気を…死ぬほど勇気を振り絞ったのにバッサリ…。」
姫「勇者君、それは言いすぎだと思うよ。こっぴどいのは良くないよ。」
勇者「姫ちゃんいつの間に…だが訂正はしない。ゴミは捨てなきゃ増えるだけだ。」
盗子「…わかったよ。そこまで言うんなら、出てくよ!本気で言ってるんならねっ!」
勇者「俺ほど自分の気持ちに素直に生きている人間を、俺は見たことがないが?」
盗子「くっ、なんてゆー説得力…!」
勇者「話は済んだか?だったらもう消えてくれ、俺はもう眠いんだ。」
盗子「じゃ、じゃあ…最後に、選んで。姫もいる今この場で、ハッキリと選んで!」
勇者「あん?選べって何をだ?」

盗子「アタシか姫か、真剣に選んでっ!」

勇者「姫ちゃん。」
脊髄反射の一種だった。

 

4-328:選択〔14歳:LEVEL40〕
「興味が無い」とまで言われた状況で、なぜか「選べ」とか抜かした盗子。
空気が読めてないにも程があるが、引き下がる気は無さそうな感じだ。
勇者「というわけで貴様に興味は無い。ポヒュッと消えてくれ盗子。」
盗子「い、いや、もっと真剣に!そーゆーんじゃ無しに、もっとこう、マジでマジに!」
勇者「だから姫ちゃん。」
盗子「う…うわーん!少しくらい真面目に考えてくれてもいいのにぃー!」
姫「ちゃんとしようよ勇者君。私も興味あるよ。」
勇者「ひ、姫ちゃんまで…。何を言うんだ、俺はちゃんと考えた末に…」
姫「後悔の無いように、ね?」
勇者「くっ、今回のお酒マジックは長いな…いや、だが真面目に話すチャンスか…。」
盗子「勇者…。」
姫「勇者君…。」

俺は…俺は……。

 

4-329:決断〔14歳:LEVEL40〕
突如、重大な決断を迫られた勇者。
(実際に迫られたのは別の人達だがそれは気にしない決まりだ。)
この大事な場面で勇者は、果たしてどちらを選ぶのだろうか。
勇者「やれやれ、どちらかを選べか…なるほど、確かにそうすべきなんだろうな。」
盗子「ちゃ、ちゃんと真面目に考えてよね?」
勇者「フン、わかっているさ…。だが究極の選択だ、少し…考えさせてくれ。」
姫「自分の気持ちに、素直にね?」
勇者「ああ。」
勇者はしばらく黙って考えた。

そして―――
勇者「…よし、決めた。やはり夜が明けたら、消えてもらうことにしよう。盗子…」
盗子「えぇっ!?」
勇者「お前はついて来い。死ぬまでコキ使ってやるよ。」
盗子「え!?あ、うん!「死ぬまで」が引っ掛かるけど…うんっ☆ でも、じゃあ…」

勇者「悪いが姫ちゃん、キミとの旅は…ここまでだ。」

姫「え…。」


ここから先は、命の保証が無い。

 

4-330:誤解〔14歳:LEVEL40〕
別れを告げると姫ちゃんはしばらく押し黙り、そして諦めたように去っていった。
姫ちゃんのあんな寂しそうな顔は…初めて見た。酒さえ入っていなければ…。
盗子「姫、ちょっと泣いてたよね…。なんか…手放しで喜べないな…。」
勇者「辛い決断だった…。だが惚れた女を、死地へと連れて行くわけにはいかん。」
盗子「え…えぇっ!?さ、さっきのって、アタシが好きって意味じゃなかったの!?」
勇者「あん?なに血迷ったことを言ってるんだ。そんな奇抜な発想は一切無いぞ。」
盗子「一切なの!?いや、でもさっき「究極の選択」って…!」
勇者「彼女を危険にさらすか、お前を連れていくか…どちらも辛い選択肢だった。」
盗子「そんな負の理由で悩まれてたの!?」
勇者「ハァ、お前に血子、マー、賢二…誤解が絶えんようだからハッキリと言うぞ?」
盗子「いや、あの…もうわかったからトドメは要らないというか…」
勇者「俺はな…俺は!お前と、盗子が、大・嫌・い・な・ん・だっ!!」
盗子「う、うわーん! 死んじゃえー!みんな死んじゃえー!うわーん!!」
盗子も泣きながら去っていった。

 

外伝(捌)