第二十五章

 

3-376:健康〔13歳:LEVEL33〕
将との戦闘開始から半刻が経過した頃から、かわし続けるのがキツい感じに。
折れない剣さえあれば、自慢の剣技で華麗にブッた斬れる自信はあるんだが…!
勇者「ハァ、ハァ…!フッ、軽く死にそうだとは意地でも言えん状況だぜ…!」
将二「お前の意地の存在を疑うぞ。いや、意地っ張りなのはわかるんだが。」
勇者「フン、まともな剣さえありゃ貴様なんぞに遅れは取らん。あったら売ってくれ。」
将二「一体どこから来るんだその尋常じゃないふてぶてしさは。」
勇者「フッ、空からさ!天に選ばれた俺(ザクッ!)ぬぉっ!?」
なんと!空から剣が降ってきた。
勇者は間一髪避けた。
勇者「な、なんで空から剣が…むっ!?こ、この剣は…!」
将二「バカな、剣を召喚したとでもいうのか…?だが、振らせはせんぞぉーー!!」

シャキィーーン!
将二「ぐっ…ぐぉおおおおおおおおおおおお…!

将二「…お?」
勇者「やっぱりな!あーやっぱりな! さすがは伝説の珍剣、「肩叩き剣」…!」
将二は肩コリが治った。

 

3-377:強運〔13歳:LEVEL33〕
なぜか空から降ってきたのは、大昔に泉の精霊から奪った「肩叩き剣」だった。
まったく期待してはいなかったが、効かないどころか肩コリに効いちゃうとは何事か。
将二「ふぃ〜、おかげで五百年分のコリが取れたぜ、ありがとなぁ勇者よ。」
勇者「フッ、なぁに。感謝するならちょっくら腹をかっさばいて死んでくれ。」
将二「悪いが断るよ。貴様は最後の希望に裏切られた絶望を抱いて死ぬがいい。」
勇者「いや、むしろ一つの可能性が見えたが?やはり俺は強運の持ち主らしい。」
将二「フン、強がりもここまでくると尊敬に値するな。そんな孫の手で何ができる?」
勇者「ん?いや、コレのことじゃないさ。「なぜコレが今ここにあるのか」って話さ。」
カチッ、カチカチッ…
将二「なにを意味のわからん…むっ、なんだ今の音は…?」
ガコンッ!
勇者「俺の記憶を探れんのか?ホレこの剣、俺の「武器庫」に入れといただろ?」
ギュィイイイイン…!
将二「う、上かっ…!!」
勇者「だからコレがあるってことは、その武器庫が…いや、“奴”が…!」


チョメ「ポピュッパーーー☆」
「破壊王」が降臨した。

 

3-378:恒例〔13歳:LEVEL33〕
予想通り近くにいたチョメ太郎。そして当然の如く武器を装備し(ちゅどぉおおん!
五百年も眠(ドンッ!)にとって(ガガガガガッ!)武器の山はそれなりに恐怖だろう。
いや、なんかもう俺すら(ズドドドドド!)もない武器が(バキューン!)ら次へと…。
だが気を付け(どっかぁああああああ「ぎゃあああああ!」ああああああああん!!

…ふむ、死ぬかもしれん。
敵味方の区別は無い。

 

3-379:最期〔13歳:LEVEL33〕
爆煙が晴れると、そこに将の姿は無かった。逃げる隙は…となると、消し飛んだか。
勇者「ふぅ…よくやったなチョメ太郎。いや、俺までよくやられちまったけども。」
チョメ「プティペポプ。ペポプ。」
勇者「で、お前は見てたか?奴はどうなった?」
チョメ「チュピポ。」
勇者「死んだか?」
チョメ「パプーピポー!」
勇者「あっはっは。やっぱりわか(ドスッ!)…なっ…?」
将二の拳が胸を貫いた。
将二「フッ、油断したなぁオイ。貴様ほどの強者が…こんなあっけない最期だとは。」
勇者「き、貴様…!」
将二「バカな奴よ。こんな…こんな、小生意気な小僧をかばうとはなぁ。」

義母「ちょぉ…マズったってゆ…かぁ〜…。」
チョメ太郎は帰った。

 

3-380:母性〔13歳:LEVEL33〕
俺としたことが、油断した隙を突かれ…そして、なんとカマハハに助けられちまった。
奴の傷は見るからに深い。新手のドッキリでもない限り、もう助からんレベルだろう。
勇者「き、貴様…なに勝手なマネを…!この俺に恩を売ろうってのかよオイ!?」
義母「超…参ったしぃ〜…。終わっ…ちゃっ…」
勇者「カマハハ…!」
義母「ドラマ…。」
勇者「ってホントに見てきたのか!それはガチだったのか!」
将二「惜しかったなぁ。五体満足ならば、俺に勝てたやもしれん強さを持ちながら…」
義母「あのねぇ勇者ちゃん…ちょっとぉお願いがある…ってゆーかぁ〜…?」
勇者「な、なんだ!?言ってみろ!ホントに聞くだけだが聞いてやる!」
義母「最期に…最期に一度だけ…「ママ」って…呼んでほしい…みたいなぁ〜…?」

勇者「ママ…! バーボン、ロックで!」
義母「いや、そうじゃないしぃ…。」
だが異様に似合っていた。

 

3-381:男気〔13歳:LEVEL33〕
状況的に、よくある「最期の一撃でコイツは倒すから任せろタイム」に突入した模様。
もうどのみち助からん感じなので、最期は(も?)好き勝手やらせてやることにする。
勇者「だがカマハハよ、何か策はあるのか?どう見ても武闘派には見えんが…。」
義母「この「三日月の鎌」ってぇ〜、「男気」を吸い取っちゃう武器なんだけどぉ〜…」
将二「み、三日月の…確か以前聞いたことが特に無い。」
勇者「なら言うなよ。」
義母「一度だけぇ〜?その蓄えられた「男気」をぉ〜逆にぃ〜…?」
義母の体が怪しく光った。
義母「体に戻しっ、一撃に込める奥義があると聞いたぁああああ!!(←劇画調)」
勇者「うぉおっ!?な、なんだその今まで見せたことのないキャラは!?濃い…!」
義母「俺は「母親」にはなれなかった…。ならばせめて、「漢(おとこ)」として…!」
将二「フッ、いいだろう。この俺も全力を尽くしてトドメを刺してくれよう!」
勇者「やっちまえカマハ…カマオッサン!」
義母「うぉおおお!ど根性ぉおおおおお!!」
ズゴォオオオオオオン!!
義母、必殺の一撃!
将二を撃破した。

義母は暑苦しく散った。

 

3-382:弔問〔13歳:LEVEL33〕
墓標がわりに鎌をブッ刺し、カマハハへの別れは済ませた。 さて次はどうしようか。
俺のそもそもの担当は雪山だったわけだし、やはりそこに行くべきか?面倒だが。
いや、だが戦力的に考えればモロいのは賢二…奴の死に様を見に行くのも面白い。
奴の死骸の前に颯爽と登場し、高笑いで送ってやるのが俺の役目という気もする。
よし、そうと決まれば準備だ。その場に似合うきらびやかな格好に着替えるんだ。
帰ってパーティーセットを…いや、その時間は無い。葉っぱか何かで適当に作るか。

〜その頃、六つ子洞窟跡では…〜
賢二「・・・・・・・・。」
将三「ふぅ〜…意外と手こずったが、やっと片付いた」
賢二「・・・・・・・・。」

将三「…と、思っていたんだがなぁ〜。」
賢二「…う、う゛ぅ〜…。」

麗華「悔いるがいい魔神よ。貴様はワシを、怒らせた。」
勇者は死ぬかもしれない。

 

3-383:恐怖〔13歳:LEVEL33〕
勇者が木の葉で衣装を作り始めたその頃、地獄の雪山跡では…。
将五「フッフッフ…フハハハハ!どうした小娘ども、さっきまでの威勢はどこいった?」
観理「ゼェ、ゼェ…も、もう限界…!合体解けた時点で勝負は見えた感じれす…!」
将五「フッ、そりゃそうだろう。二つの生命力を三つに分けちまったんだからなぁ。」
盗子「し、死んでなかったもん!心臓止まってただけで細胞とかまだ…みたいな!」
将五「まぁどのみち死ぬけどな。小物らしくビクビクおびえながら死ぬがいい。」
盗子「こ、怖くなんかないし!アンタなんか勇者に比べれば優しいくらいだしねっ!」
姫「みんな大変そうだね。」
将五「な、なぜか一人だけ他人事なのが気になるが…まぁいい、全員死ね。」
盗子「ゆ、勇者ぁ…!」
声「…おっと、そうはさせないぜ?命に代えても、テメェは俺がブッ殺す。」
将五「き、貴様…なぜここに…?」

武史「フッ、盗子の…ニオイがしたんでな。」
盗子はおびえている。

 

3-384:出世〔13歳:LEVEL33〕
盗子達のピンチに駆けつけたのは、将四と闘っているはずの武史だった。
盗子を探したくて途中で逃げてきたのは間違いない感じだが…。
ズバシュッ!(斬)
将五「ぐふっ! き、貴様ぁ…!ぬぐぅううううっ!」
武史「ハァ、ハァ…!ちっくしょう、今のでその傷かよ…頑丈な体しやがって…!」
将五「チッ、先ほどまでの戦いで消耗していたとはいえ、貴様のような小僧に…!」
盗子「う、ウソ…。お兄ちゃんがこんなに強かったなんて…!」
武史「フフ…。いにしえより、代々の「天帝」を守ってきた部隊、「帝都守護隊」…」
盗子「て、帝都守護隊って確か暗黒神との戦いにも来てたような…。それが…何?」
観理「帝都守護隊れすって!?」
盗子「え、アンタ何か知ってんの?」
観理「いや特には。」
盗子「じゃあ変に思わせぶんないでよ!」
姫「甘いね、私は食べたことあるよ。」
盗子「アンタは知ったかぶんないで!」
武史「その最強部隊の…「総長」たる俺を、ナメんじゃねぇぞゴルァ!!」
シスコンは大出世していた。

 

3-385:勝者〔13歳:LEVEL33〕
意外にも武史は大いに活躍し、将五を追い詰めていった。
だが、武史のダメージも尋常じゃなかった。
将五「ふぅ…さて、そろそろ幕としようか。お互い遊んでいられる状況でもないしな。」
武史「ゲフッ、ゲホゴホッ!あぁ、そうしようぜ。俺も遊ぶなら盗子と遊びたい。」
盗子「その要所要所で名前出すのヤメてくんない!?戦闘に集中してよっ!」
将五「守るべき者…か。俺には無い力の源…これだから人間というのは恐ろしい。」
武史「フン、憐れな魔物よ…。お前も生まれ変わったら、いい妹を持てればいいな。」
盗子「別に妹じゃなくてもっ!」
将五「…ま、なにはともあれ…」
武史「ああ…やるか。」
シャッキィーーーン!!
二人の力が激突した!
武史「うぉおおおおおおおおおお…!」
将五「ぬっ、ぬぐぅうううう…!い、いい気迫だ…! だが、まだまだ甘い!!」
武史「ぶ…「武士道」とは、妹のために死ぬことと見つけたりぃいいいいいい!!」
盗子「勝手に見つけないでぇーーー!!」
観理「いぇーい!やっちまぇーーい!」
武史「ぬぉおおおおおおおおおおおおっ!!」
姫「むー!〔死滅〕!!」

将五「うっ、うぎゃああああああああああああああああああああ!!
やったのはどっちだ。

 

3-386:惜別〔13歳:LEVEL33〕
武史の頑張りなのか違うのか、とにかく将五は倒れた。
しかし…。
武史「ガッ…ガフッブハッ! …フッ、ど、どうやら俺も、ここまでのよう…だな…。」
盗子「い、イヤ…イヤだよお兄ちゃん…死んじゃイヤだよ…!」
武史「なぁに…死んでもサヨナラってわけじゃない。俺はいつでも、そばにいるさ…」
盗子「そ、そんな悲しいこと言わないでよ!死んだら…死んじゃったら…!」
武史「「背後霊」として…。」
盗子「そーゆーことならなおのことイヤだよぉー!」
武史「…なぁ盗子、お前…“アイツ”のこと…まだ好きなのか…?」
盗子「え…あ…うん、好き…大好きだよ。で、でもお兄ちゃんも…!」
武史「ったく…チクショウ…。 見たかったなぁ…お前の…ウェディングドレス…。」
盗子「そ、そうだよ!アタシお父ちゃんいないんだから、お兄ちゃんが…!」
武史「誰よりも…誰よりも…近く…で……(ガクッ)」
盗子「お…お兄ちゃん…? お兄ちゃあああああああん!!」
愛だったのか、恋だったのか。

 

3-387:独占〔13歳:LEVEL33〕
全身を草花で華やかに装飾し、賢二をからかいに向かった俺は、そこで鬼を見た。
〜六つ子洞窟跡〜
勇者「れ、麗華…貴様がなぜ…?魔のニオイに懐かしさを覚えて寄ってきたか?」
麗華「フゥ〜…む?おぉ勇者か、なんだその乙女チックな衣装は?可愛いなオイ。」
勇者「い、いや…敵を油断させようと。」
麗華「お前が油断してるようにしか見えんがな。」
勇者「にしても、この状況…どうやら将はお前が倒したらしいな。だがその左腕…。」
麗華「ふむ…まぁ大事な弟が守れたんだ、腕の一本や二本くらいくれてやるさ。」
勇者「そうか、じゃあ俺にも一本くれよ。」
麗華「冗談にしても笑えん状況だがなんだその本気の眼差しは。」
勇者「ま、ご苦労だったな。その腕じゃもう役には立たん、雑魚は失せるがいい。」
麗華「ナメるな小僧。回復魔法で血は止めた、まだやれ(ドッ!)…き、貴様…!」
勇者「無理をするな麗華、貴様が死んだら賢二が悲しむ。姉とは知らずともな。」
麗華「お、おま…え…。」

勇者「コイツを苦しめるのは、俺の役目だ。」
歪んだ独占欲だった。

 

3-388:誤魔〔13歳:LEVEL33〕
邪魔な瀕死の麗華を無理矢理寝かしつけ、当初の目的地である雪山を目指した。
賢二は意外にも傷は浅かったので連れて行くことに。コイツには逆境がよく似合う。
賢二「う…う゛ぅ〜ん…ハッ!こ、ここは!?天国!?地獄!?」
勇者「よぉ、起きたか賢二。」
賢二「じごぶふっ!?
勇者「フン、寝起きにナイスギャグだなぁオイ。もっと永い眠りにつきたいのか?」
賢二「いや、遠慮しとくよ…って、そういえば魔神の将は!?何がどうなったの!?」
勇者「フッ、この俺が鬼の魔の手から救い出してやったんだ、感謝しろよな。」
賢二「そ、そうだったんだ!ありがとう!」
勇者「お前みたいなのが高い絵とか買わされるんだと思う。」
賢二「え、どういう意味…?」
勇者「まぁいい、とにかく起きたんなら早く背から降りろ。雪山へ急ぐぞ。」
賢二「あれ…?そこから戻ってきたんじゃないの…?」
勇者「話せば…長い話でな。」
「迷子」で済む。

 

3-389:期待〔13歳:LEVEL33〕
雪山へ行く途中で、あることに気づいた。そういやここからは「六本森」の方が近い。
あのシスコンごときなら、期待通り死んでくれてるに違いない…と思ったんだが…。
〜六本森〜
勇者「…こ、これは…どういうことだ…?バカな!こんなことはありえん!」
賢二「魔神の将が…倒されてる…。 す、スゴい!スゴいよ武史さん!」
勇者「…むっ、そこだっ!!」
勇者はナイフを投げつけた。
勇者「だが何も起こらなかった。」
賢二「って何がしたかったの!?何その「やっぱりな」みたいな顔!?」
勇者「いや、木陰から「フッ、久しぶりだな勇者」的な感じで誰かが…とかあるかと。」
賢二「そんな軽い思い付きでやんないで!鼻先かすめてたしね僕の!」
勇者「後悔なんかしたくない。俺は思い付いたらとりあえずやってみる男だ。」
賢二「「やるんじゃなかった」っていう後悔もあると思うんだけどな…。」
勇者「フン…まぁいい、後で奴に直接聞きゃわかる話だ。やはりまずは雪山だな。」
賢二「あ、うん急ごう!もしくは逃げよう!というか逃げようよ! …ダメ?」
勇者「死ね。」
賢二「だよね…。」
タッタッタ…(去)

?〔木陰〕「あ…危ねぇ〜…。 野郎ぉ…!」
勇者はツメが甘かった。

 

3-390:逃避〔13歳:LEVEL33〕
しばらく走り、やっと到着した雪山には、なんと学校地下ではぐれた姫ちゃんがいた。
地面には朽ち果てた将が一匹、そして同じく変わり果てたシスコンが転がっていた。
どうやらコイツが倒したらしい。となると六本森の将も…?いや、認めたくはない。
あぁ、あと近くには観理の奴もいた。見るからに雑魚の割には意外にしぶとい奴だ。

他には何も無かった。
勇者は現実から目を背けた。

 

第二十六章