第九章

 

2-136:王都〔13歳:LEVEL17〕
ブレーキが壊れたまま、さらに走ること一時間。王都っぽい大都市が見えてきた。
このギマイ大陸は一国統治。だから一応、ローゲ国内にはずっと居たことになる。
でもやはり、「王都」となると何かが違う。かもし出す雰囲気というか、なんというか。
僕は王都に来たのは初めてなのだろうか?それとも他国ではあったのだろうか?
王様に頼まれ、ドラゴン的な何かを狩りに行ったこととかあったのだろうか?
偉そうな王様に、「死んでしまうとは情けない!」とか言われたりしたのだろうか?

そんなことを考えながら僕は、遠ざかる王都を眺めていた。
誰も何も言えなかった。

 

2-137:省略〔13歳:LEVEL17〕
結局、制御機能を無理矢理壊してなんとか止まることができたのは数時間後。
車は外壁に激突し、みんな重傷。その後、歩いて戻ったら一日かかってしまった。
やっぱり乗り物は怖い。でも、今回はまだマシだったと安心した自分がもっと怖い。
勇者「…というわけで、この扉を開ければ多分「王の間」になるわけだけど…。」
盗子「どういうわけで!?なんかメッチャはしょってない!?話飛び過ぎだよ!?」
姫「ページの都合だよ。」
盗子「なんだよそれ!わけわかんないし仮にそうでもそれは言っちゃダメだよ!」
姫「ぶっちゃけ説明が面倒なんだよ。」
盗子「それはもっと言っちゃダメだよ!」
勇者「仕方ない…。じゃあ栗子、ここに至るまでの経緯を簡単に説明してあげて。」
栗子「えぇっ!?えと、とりあえず邪神の王様が知る手掛かりが旅のセオリーで!」
盗子「むしろ難解になっちゃってるから!王様が邪神扱いになってるから!」
博打「神の手掛かり…こういう思わせぶりな情報は大抵キングが知ってるもんさ。」
盗子「だ、だからって許可も取らずに不法侵入はどうかと思うけど…。」
勇者「事態は急を要する。 不法侵入なんて、後で話せばわかってもらえるさ。」
盗子「ん〜、まぁそっか。そだよね。」
勇者は父の過去を知らない。

 

2-138:異変〔13歳:LEVEL17〕
王は何かを知っていると思う。でも僕らがここへ来たわけはそれだけじゃなかった。
一見何事も無いように見えた街の空気は、何かがおかしかった。静かすぎたんだ。
気になって王宮まで来てみたんだけど、兵士の一人も見かけない。明らかに変だ。
勇者「僕の読みに間違いが無ければ、この中で何かが起こっているはずだ。」
姫「大丈夫だよ勇者君、謝ればきっと許してくれるよ。」
盗子「誰も怒ってないから!そういう意味じゃな…」
声1(「貴様ぁー!ブッ殺してやるーー!!」)
盗子「わー!怒ってるぅー!!」
勇者「良かった、まだ生きてる奴がいる!さぁ、すぐに助太刀に向かうよ!」
声2(「や、ヤメろ!ヤメてくれ!も…桃錬邪様ぁああああ!!」)
声3(「ギャアアアアアアアアアアッ!!」)
勇者「なっ…!?」
盗子「えっ、桃錬邪様!?どういうこと!?仲間割れか何かってこと!?」
博打「どうするブラザー?同士討ち希望なら待つのもアリだぜ?」
勇者「行くに決まってる!誰であれ、無駄な血は流させちゃいけないんだ!!」
勇者は扉を開けた。

血に染まった桃錬邪が見えた。

 

2-139:侵略〔13歳:LEVEL17〕
中から聞こえた悲鳴。慌てて扉を開けると、そこには血まみれ桃錬邪がいた。
でも、それは返り血などではなく、彼女自身の血で…既にグッタリとしていた。
勇者「ど、どうしたんだ!?お前は桃錬邪なのか!?それとも赤錬邪か!?」
盗子「勇者!この状況でその問いはシャレんなんないよ!」
栗子「はわわわ!へ兵隊さんもみなさん血祭りワッショイショイですよぉ…!」
桃錬邪「う゛…はっ…!…初代…や、凱空のガキ…か。 …逃げな、勝てない…。」
勇者「か、勝てないって誰に!?というか逃げろって…お前は敵なんだよね!?」
桃錬邪「フッ…死に際ぐらい…正気に戻るさ…。だから早く…“奴”が来る前に…!」
声「なんでぇ…ここぁ随分と客の多い王室だなぁオイ。おちおち便所にも行けねぇ。」
一同「!!?」
桃錬邪「チッ…グズどもが…!」
勇者「だ、誰だお前は!?お前なのかこんなことしたのは!?」
男「あん?先に仕掛けたのはそっちだぜぇ?ま、先に居たのもそっちだったがなぁ。」
博打「ゆ、ユーの目的は何だい?できればキツい争いは避けたいんだが…。」
男「ククッ、目的は話すと長ぇ。だが俺様の趣味が「皆殺し」ってのは教えてやる。」
盗子「わーん!先生とわかり合えそうな人が出てきたよー!悪魔が来たよー!」
勇者「…そう、なら仕方ない。この「勇者」が、正義の名のもとに貴様を倒す!!」
男「勇…者?ギャハハハ!傑作だ、この星にゃまだそんなのが居たたぁな!」
勇者「こ、「この星」…?お前は一体何者なんだ!?」

男「俺様か?俺様は「ソボー」。悪ぃが「宇宙海賊」の正義は、この俺様自身だ。」
賢二のせいで来たっぽい。

 

2-140:生変〔13歳:LEVEL17〕
桃錬邪の軍をアッサリ滅ぼした、新たなる敵「海賊:ソボー」。とっても偉そうな奴だ。
盗子「ど、どうしよう勇者!前に賢二が言ってたよ、超有名な極悪人だって!」
勇者「でも海賊が…単身で?しかも街を襲った様子が無かったけど…。」
ソボー「たまにはのんびり、一人旅もいいもんだ。まぁ街は見飽きたら消すがなぁ。」
博打「強者ゆえの余裕か…だがそんなのはこの俺が許さないぜキャプテン?」
ソボー「…あ゛?」
博打「ぐっ!ま、まさかこんな時に持病の「深爪」が…!」
盗子「肝心な時には昔のまんまかよ!ちょっと期待したアタシがバカだったよ!」
博打「ち、違う!違うぜ!俺は昔の俺じゃない…いくぜ「ロシ銃・ルーレット」!!」
〔ロシ銃(ガン)・ルーレット〕
具現化した銃で、自分と相手を交互に撃つ。
弾を何発込めるかによって、その威力は変わってくる。
リスクを背負った技なため、与えるダメージはそれなりに大きい。
盗子「な、なんかヤバそうな技じゃない!?大丈夫なのアンタ!?」
博打「言ったろベイベー?思った逆に賭ければ、俺の読みは100%当たると!」

ズガガァン!!
(撃)
博打はパタリと倒れた。

 

2-141:職業〔13歳:LEVEL17〕
博打は一撃で倒れた。でもおかしい、確かに彼は敵に向けて撃ったのに…なぜ?
博打「ぐっ…はっ…!!」
勇者「だ、大丈夫か博打!?しっかりして! どうなの姫ちゃん、助かりそう!?」
姫「…午前中です。」
博打「そ、それを言うなら「ご臨終」…って、まだ生きてるから…回復を…。」
ソボー「ロシ銃か…なかなか面白ぇ技だなぁコレぁ。ありがたく頂いとくぜぇ。」
栗子「えぇっ!?なななんで海賊さんが同じ銃を持っちゃってはりますか!?」
勇者「それに「頂く」って…まさかそれで打ち返したっていうのか!?」
盗子「ハッ!もしかして宿敵と同じ「好敵手」ってヤツ!?「海賊」じゃないの!?」
ソボー「あ?「宇宙海賊」ってなぁただの肩書きだ。俺様の真の職は「技盗士」よ。」
〔技盗士(ぎとうし)〕
対峙する相手の技を盗み、自分の物にすることができる上級職。
「好敵手」が「反射」なら、「技盗士」は「記憶」の職である。
勇者「だ、大丈夫!この僕が本気を出せば、どんな敵だっておっちょこちょいだ!」
盗子「「ちょちょいのちょい」だよね!?てゆーかアンタ確か剣も抜けないんじゃ…」
勇者「フッ、抜かりは無いよ。前の街で新しい武器を買っ…って宿に忘れてきた!」
勇者はおっちょこちょいだった。

 

2-142:味方〔13歳:LEVEL17〕
せっかく武器を買ったのに、なんと忘れてきてしまった。結構高かったのに…!
勇者「くっ…!思い切ってリンダの腕輪を質に入れたというのに…!」
盗子「え゛ーっ!?なにしてくれちゃってんのさアンタ!後で殺すよ!?」
栗子「わわ、私がななんとかしちゃいますよ!出ればいいのさ「機関土偶」!!」
〔機関土偶(カラクリどぐう)〕
その場の土からカラクリ人形を作り出す。
材質は土なので、雨が降ると面白いことになる。
土偶「ポポ…ポポパポポプパポ…。」
ソボー「弱そうな奴だな…。だが「技盗士」は「コピー」じゃねぇ、俺様が使えば…。」
土偶2「ギョガー!ギギャゴゴグガー!」
栗子「わー!もももっと強そうなお方がご登場ですかー!?」
盗子「や、ヤバいよ勇者!コイツなんでもアリだよ!」
姫「とんでもない敵だね。」
盗子「アンタの方がなんでもアリだけどね!」
勇者「やはり僕がやるしか無さそうだね。博打、その剣を借りるよ。」
盗子「だ、ダメだよ戦っちゃ!下手したら使った技盗まれちゃうんだよ!?」
勇者「安心しろアポカリプス、僕は記憶喪失…技なんて覚えてない。」
盗子「もっと不安なこと言わないでよ!」
勇者「だ、大丈夫。こういう時は、頼もしい味方が現れるのが世の常だよ。」
盗子「んな他力本願な「勇者」なんて聞いたことないよ!それにそんな都合よく…」
ソボー「いや、そうでもないみたいだぜぇ? 誰だよ、そこに居るのはぁ?」
盗子「えっ…?」
声「…ほぉ、まさか気づかれておったとはなぁ。油断したわ。」
盗子「わー!? そ、その声はまさか…!!」
ソボー「名を名乗れよ。覚える気ぁサラサラ無ぇが、聞くだけ聞いといてやるわ。」

スイカ「フンッ、弱者に名乗るスイカは無いな。」
喜んでいいのか悪いのか。

 

2-143:開戦〔13歳:LEVEL17〕
ピンチに現れたのは頭がスイカな変な人で、またもやバーバラの知り合いらしい。
前の先生な人は強かったけど、この人はアテにならなそう。というか敵っぽい。
勇者「み、見るからに怪しい人め!何しに来たんだ!?お前は敵なのか!?」
スイカ「我はスイカを砕きし者。荒ぶるスイカ魂に導かれ、やって来たのだ。」
ソボー「この俺様に気づかれず、こんな近くまで来るたぁテメェなかなかヤルなぁ?」
スイカ「フッ、割られぬために気配を殺す…それがスイカの本能よ。」
盗子「どっちなんだよ!割る側なのか割られる側なのかハッキリしてよ!」
ソボー「ターゲット変更だ。テメェの技はうまそうだぜ。」
姫「残念だけどまだ旬じゃないよ。」
盗子「スイカの話じゃないから!まぁ気持ちはわかるけども!」
スイカ「己が力に溺れし者よ。その邪なスイカ、我が棍棒がサビにしてくれよう。」
ソボー「ケッ、偉そうだよテメェ!焼きスイカにしてやるぁ!火炎魔法〔炎殺〕!!」
スイカ「甘いわぁ!スイカ流棒術、「猛烈バックドロップ」!!」

ガキィイン!!
効果音がおかしい。

 

2-144:展開〔13歳:LEVEL17〕
意外にもスイカの人は強く、二人の強さは拮抗していた。全く展開が見えない。
二人「うぉおおおおおおああああああっ!!」
キィイイン!
ガキィィン!
ザシュッ!
ズバッ!!
キィン!
ギッ、ギギギギィ…!
チュィン!

ズォオオオオオッ!
ササッ!
ダンッ!
ガィイイイン!!
キン!キン!カキン!キュィン!

ズバシュッ!!
いろんな意味で展開が見えない。

 

2-145:変態〔13歳:LEVEL17〕
二人の戦闘は小一時間ほど続いたけど、まだ終わりが見えない。僕の出番が無い。
勇者「あのスイカの人…敵だったんだよね?前からあんなに強かったの?」
盗子「う、ううん。よくわかんない。でもとりあえずインパクトは無駄に強すぎたよ。」
栗子「あっ、なななんか様子が変わりやがりましたよ!どどうしたでしょか!?」
二人の動きが止まっている。
ソボー「…なぁオイ、ぼちぼち遊びはヤメにしねぇか?カタぁつけようやぁ。」
スイカ「いいだろう、望み通り本気で参ろう。でなくばヌシのスイカは砕けまい。」
ソボー「ったく、この俺様に技ぁ盗む隙を与えねぇたぁ…厄介な変態野郎だぜぇ。」
スイカ「フッ、コチラこそ先程の非礼を詫びよう。久しく見ぬ強きスイカよ。」
ソボー「おっと、ならいい加減名乗りやがれよ変態。 俺様はソボーだ。」
スイカ「…剣を棒に持ち替えて、幾年月…。 今一度思い出すか…」

スイカ「「剣豪:秋臼(アキウス)」、そう呼ばれたあの頃をな。」
歴史上の偉人は変態だった。

 

2-146:手助〔13歳:LEVEL17〕
なんと、あのスイカ男は過去の英雄だったらしい…んだけど、とてもそうは見えない。
盗子「ガッカリだよ!勇者親父といい、なんで伝説の戦士は変人ばっかなんだよ!」
勇者「すまない栗子、弁護士を手配してくれ。」
盗子「冷静に怒んないでよ!なんか切なくなるよ!」
栗子「そそそんなことより助太刀した方がよくなくなかったりしませんですか?」
盗子「あっ、そだよね!いま五分五分なんだから手助けすれば絶対勝ちだよね!」
姫「じゃあ私がなんとかするよ。勇者君、目隠しある?」
盗子「どっちの味方する気だよ!アンタ思っきし割る気じゃん!」
勇者「でも手助けとは言っても、あのスピードについていける人間なんて…」
桃錬邪「こ…ここにいる…じゃないか。アタシに、任せな。」
勇者「も、桃錬邪!?でもお前は…!」
桃錬邪「フッ…、せめてもの罪滅ぼしさ。凱空にも…悪かったって伝えといてよ。」
姫「ダメだよ桃ちゃん。いま動くと死んじゃうよ。」
勇者「行っちゃダメだ桃錬邪!正気に戻ったんなら、生きて罪を償えばいいさ!」
栗子「そそそうですよ!ホントに悪いのはく黒幕の人とかなんですよね!?」
盗子「死んじゃったら終わりなんだよ!?無理はしちゃダメだよ!」
桃錬邪「アタシは、本気なんだ。」
勇者「桃錬邪!!」

桃錬邪「でも…そこまで言うなら。」
一同(あ、あれれっ!?)
桃錬邪は期待を裏切った。

 

2-147:空気〔13歳:LEVEL17〕
止めても行くのかと思ったら、結構アッサリと思いとどまっちゃった桃錬邪。
やはり僕が行くしかなさそうだ。死ぬかもしれないけど、挑むのが「勇者」だと思う。
勇者「というわけで、いい加減僕が活躍してもいい頃だと思う!みんな援護して!」
盗子「そうだよね頑張ってよ勇者!アンタ最近サボり過ぎだよ!」
勇者「確かに記憶を失って以来、僕は何もしていない。でも今日は…(ブォッ!)」
魔法弾が勇者の頬をかすめた。
勇者「…今日は、これで勘弁してやる。」
盗子「どれでだよ!?アンタ記憶と一緒に度胸まで忘れちゃったの!?」
勇者「ふ、フザけるな!お前のことは忘れても度胸は忘れないよ僕は!」
盗子「アンタこそフザけるなよ!アタシのことだけは死んでも忘れないでよ!」
栗子「ちょ、チョイとお待ちあれ!またお二人が止まりやがったですよっ!」

ソボー「・・・・・・・・。」
ヒュゥゥウウウウ…(風)
スイカ「・・・・・・・・。」

盗子「わっ!なんかシリアスモードだよ!状況と絵が合ってないよ!」
勇者「シッ!この勝負…次に動いた瞬間に決まる。空気を乱しちゃダメだ。」
姫「そうだよ盗子ちゃん。ちょっとのキッカケでまた動きdへっくち!」

ス&ソ「うぉおおおおおおおおおお!!」
姫がGOサインを出した。

 

2-148:決着〔13歳:LEVEL17〕
姫ちゃんが出したキッカケで二人は動き出した。これが最後の攻防になると思う。
スイカ「食らうがいい!「刀神流操剣術」…」
ソボー「死ねぇ!「蛇頭剣技」…」
スイカ「百の秘剣、「百刀霧散剣」!!」
ソボー「あーあー…、名前なんだっけ!!」
ズバシュッ!!(斬)
盗子「えっ、なに今の!?肝心な場面を適当にやっちゃった!?」
栗子「でででもヤバいッスよ!スイカさんが斬られちゃりましたですわ!」
スイカ「ぐっ、不覚…!やはり歳には勝てぬか…!」
姫「やっぱり鮮度の問題だね。」
ソボー「ギャハハ!これで終わりだぁー!…なっ、何しやがる放しやがれっ!」
桃錬邪がソボーを掴んでいる。
桃錬邪「こう見えてアタシ寂しがりでね。悪いけど…一緒に死んでくれるか?」
勇者「も、桃錬邪!?お前いつの間に…!」
スイカ「悪く思うなよ女、ワシとて桃を割るのは趣味ではないが…好機は逃せん!」
ソボー「ち、チクショウがぁあああああっ!!」

ズババババシュッ!!(連斬)
スイカ割り魔人、会心の一撃。
桃錬邪ごとソボーを切り裂いた。

 

2-149:遺志〔13歳:LEVEL17〕
桃錬邪が命懸けでソボーを押さえつけ、なんとかソボーを撃破することができた。
ソボー「お…覚えてろテメェらぁ…。いつか、必ず、ブッ殺…グフッ!」
勇者「なんて奴だ、あれだけの技を食らってまだ息があるなんて…。」
スイカ「フッ、峰打ちだ。」
盗子「嘘じゃん!これでもかってくらい斬ってたじゃん!」
桃錬邪「ぶふっ…!ハァ、ハァ…。ヘッ、やって…やったぜチクショウが…。」
姫「喋っちゃダメだよ桃ちゃん。もうじき助けが来るよ。」
栗子「姫ちゃん先輩は!?せ先輩にしか回復はできないような気が…!」
桃錬邪「凱空に…伝えてくれ…「“奴”に気をつけろ」…て…さ…(ガクッ)」
栗子「も桃錬邪さん!?“奴”って誰で!?肝心な部分がオブラートに包まれれ!」
桃錬邪は思わせぶって逝った。
勇者「桃錬邪は…ダメだったか…。せっかく正気に戻ったみたいだったのに…。」
姫「とっても悲しいよ。だから…桃ちゃんの遺志は私が届けるよ。」
勇者「彼女は最期に何て?」
姫「勇者君…。」

姫「今日のオヤツは、要らないよ。」
その“ヤツ”じゃない。

 

2-150:発見〔13歳:LEVEL17〕
ソボーは気絶し、そして桃錬邪は旅立った。犠牲はあったけど僕らの勝ちだ。
勇者「終わったね…。 さぁ、本来の目的は王だ。早く捜して話を聞こうよ。」
盗子「あっ、でもまだ油断はできないよ!このスイカ、いつも喧嘩売ってくるし…!」
スイカ「フン、安心しろ。ワシが求めるは強きスイカのみ…今のヌシに興味は無い。」
勇者「なっ!?どういう意味だ!?この僕が雑魚だとでも…!?」
バンッ!(扉)
兵士A「貴様らぁ!この「王の間」で何をしている!?な、なんだこの血の海は!?」
兵士B「オイ見ろ!あそこに国王様が倒れてるぞ!早く救護班を!」
スイカ「おぉ、兵士どもか。ちょうど良い、このスイ海賊の始末は任せるぞ。」
兵士A「う、動くな!この見るからに怪しい奴め!」
スイカ「ぬ?」
盗子「…まぁコレが人として当たり前のリアクションだよね。」
スイカ「やれやれ、これだからスイカの多い街は好かん。 帰るとするかな。」
勇者「ま、待て!さっきの言葉を撤回するんだ!」
スイカ「焦るな弱きスイカよ。いずれヌシも、全てを知ることとなろう。ガッハッハー!」
スイカは窓の外に消えていった。
勇者「くっ、逃げられた!」
兵士A「集えー!衛兵、集まれー!!」

しかも、この状況で。
勇者は逃げ出した。

 

第十章