第二章

 

2-31:奇襲〔12歳:LEVEL15〕
ついつい調子に乗って罠で遊んでしまい、気づけば俺は独りになっていた。
マジーンに至っては勢い余って普通に斬ってしまったが…まぁいっか。魔人だし。
〜そして二時間後〜
勇者「ふぅ〜、コレが最後の部屋の扉か…。さすがに少し疲れたな…。」
ではこの二時間をダイジェストでどうぞ。
コツッ、コロンコロン…。(転)
雑魚1「ん?なんだコレ?」
雑魚2「あん?馬鹿だなぁオメェ、そりゃ「手榴弾」に決まっ…え゛ぇっ!?」
ドカァーーーン!!(爆発)
雑魚3「むっ!どうした!?一体ナニゴトだ!?」
勇者「フッ、「ワタクシゴト」だ。」
雑魚3「えっ?ぎゃああああ!!
雑魚4「こ、こちらE班!ただいま謎の爆…はっ!」
勇者「そうだ、そのまま黙って無線を切れ。引き金を引くぞ?」
雑魚4「わ、わかった!大人しくす(パァン!)」
雑魚5「撃つのか!結局撃つの(パパァン!)」

無線「班長!地下二階倉庫付近でF班を発見!コチラも全滅!」
G班長「くっ!よりによって上位班が居ないこんな時に…!」
無線「全員背後から…しかも傷口にためらいが無ガハッ!
G班長「ど、どうした!?何があった!?よし、今すぐ援護を…!」
無線「焦るな、貴様もすぐだ。(プツッ)」
G班長「なっ…!?」
雑魚6「班長!知らぬ間にこの階全域に火が…!もはや逃げられません!」
G班長「て、敵は鬼かぁあああああああ!!」

D班長「ハッ!動くなお前達、ここから先は「地雷原」だ!元軍人の血がそう騒ぐ!」
雑魚7「地雷!?そ、そういえば変な線が…。これは一体どんな地雷なんです?」
D班長「シュプレングミーネ…線に触れると鋼鉄の弾丸が飛び散る対人地雷だ。」
雑魚8「な、なんてマニアックな…!」
雑魚9「うげっ!は、班長!前方より野ウサギが放たれましたぁー!!」
勇者「フッ…。」
バシュッ!ドバァーーーン!!(散弾)
雑魚達「うぎぇええええええええ!!

雑魚10「ぐふっ!なんだこのニンニク臭は…!?」
雑魚11「前にD班長から聞いた!確かこれは…糜乱毒「精製マスぐへえっ!
雑魚10「あぐっ!ぐごああああっ!

雑魚12「う、撃つな…撃たないでくれぇー!」
ズダダダダダダダダン!!(連射)
雑魚達「ぶばぁああああああ!!

雑魚達「い、いやぁあああああ!」
チュドォーーーーン!!
(爆発)


ズバシュッ!!(斬)
雑魚達「うごはっ!ゲハッ!ぐわああ!!

ドゴォオオオオオン!!(大爆発)
雑魚達「ぎょへあああああああああ!!
悪魔の所業だった。

 

2-32:名轟〔12歳:LEVEL15〕
二時間も掛かったが、なんとかゴクロが居そうな部屋に辿り着くことができた。
敵は切れ者と聞くが、まぁなんとかなるだろう。なんなら俺が「斬られ者」にしてやる。
魔人「フッ…よく来たなクソガキ。一人で乗り込んでくるとは見上げた度胸だよ。」
勇者「焦るな、もうじき地ベタから見上げることになるんだ。貴様がゴクロか?」
魔人「…まあな。お前は勇者だろ?話は聞いてるよ。」
勇者「なにっ!?やれやれ、名声が轟きすぎるのも考えモノだな。」
ゴクロ「いや、轟いてるのは「悪名」だぞ。」
勇者「ちなみに誰経由でどう聞いた?内容によってはそいつも斬らねばならん。」
ゴクロ「名は言えん。青でもなくて紫でもない、恐ろしい御方なんでな。」
勇者「群青か!その微妙さ加減は群青錬邪か!」
ゴクロ「貴様の情報は分析済みだ。剣が予想よりデカい以外は情報通りだよ。」
勇者「フッ。コイツはどういうわけか、俺の成長に合わせて育つ呪われた剣なのだ。」
ゴクロ「答え出てるじゃねーか。呪いのせいだろ。」
勇者「Σ( ̄□ ̄;)!!」
ゴクロ「さて、そろそろ処刑といくか。おっと、お前は動くなよ?」
勇者「む? ハッ!そいつらは…!!」
賢&血「う゛、う゛ぅ…。」
勇者「け、賢二!血子! 貴様…なんて酷いことを!!」
ゴクロ「お、オイ、これでも手当てしたんだぞ?」

チッ、余計なことを。
なんて酷いことを。

 

2-33:詐欺〔12歳:LEVEL15〕
運良く拾われたらしく、賢二と血子は生きていた。まったくしぶとい奴らめ。
ゴクロ「クッ…!聞いてはいたが、まさか人質作戦が通じないほど冷酷とは…!」
勇者「甘いな。俺がそんな手に掛かるとでも思ったか?「策士」が聞いて呆れる。」
賢二「いや、僕らの方が呆れたけどね…。」
ゴクロ「あ?策士だぁ? バカ言うな!俺は「力士」だ!!」
勇者「へ…?あ、すまん。ウッカリ聞き間違えちまったよ。って嘘付けっ!!」
ゴクロ「ケッ、なら技で証明してやるよ! 行くぜぇ!必殺「猫騙し」!!」
ゴクロは「猫騙し」を放った。

だが宣言してどうする。
賢二「なんだかとっても勝てそうな気が。」
勇者「ふざっ…そんな技じゃ猫だって騙せんわ!なにが「猫騙し」だこの野郎!」
ゴクロ「…ニャ、ニ゛ャァーーー!!」
勇者「「魂」か!「猫魂」だったのか!?」
血子「だ、ダーリン!?ちょっと騙されちゃってない!?」
ゴクロ「ヘッヘッへ引っ掛かりやがったな!これぞ必殺「子供騙し」よ!!」
血子「名前コロコロ変えないでよ!」
やっぱり勝てそうな気が。

 

2-34:倒技〔12歳:LEVEL15〕
「策士」だと思っていたら実は「力士」だったというゴクロ。 いや、どっちでもいいし。
もう今日は疲れた、早く帰って休みたい。とっとと片付けて撤収することにしよう。
ゴクロ「さぁ気を取り直して行くぜ! はっけよ〜い…のこったぁ!!」
勇者「し、しまった!組まれっ…!」
ゴクロ「ヘッ!組んじまえばこっちのもんだ!食らえ必殺「浴びせ倒し」!」
勇者「うぐっ…なんの!俺も負けじと必殺「送り倒し」!」
ゴクロ「むっ、やるなガキのくせに…!なら今度は必殺「寄り倒し」だ!」
勇者「フン!ならば俺は意表を突いて…必殺「勇み足」だ!!」
ゴクロ「なにっ!?な、なんて大胆な…!」
血子「ねぇ賢ちゃん、「イサミアシ」って何!?そんなスゴい技なの!?」
賢二「えっと、確か「勢い余って自分から出ちゃった時」の決まり手…だったかな?」
血子「ダメじゃんそれ!ダーリン負けちゃうじゃん!」
勇者「フッ、安心しろ。こんな非力な力士に負ける俺ではないぞ!」
ゴクロ「ほぉ、言うじゃねーか!だが俺の「真の姿」を見たらどうかな!?」
血子「し、真の姿!?そのすんごいお約束的な展開はアリなの!?」
ゴクロ「アリに決まってんだろがぁ!うぉおおおおおおおああああああ!!」
ゴクロは力を溜めた。
ゴクロは見事なマッスルバディになった。
〜三分後〜

ゴクロ「いや、もうホント…ごめんなさい。」
決まり手は〜、「見掛け倒し」〜。

 

2-35:正体〔12歳:LEVEL15〕
巨大化して強くなるのかと思いきや、むしろ弱くなりやがったゴクロ。ナメてんのか。
まったく、こんな雑魚に怯えるとは…町民風情の雑魚さ加減には呆れてくるぜ。
勇者「さぁ、そろそろ処刑のお時間だ。俺に逆らったことを死んで悔やむがいい。」
ゴクロ「ま、待て!見逃してくれよ! た、頼む!頼む必殺「拝み倒し」!」
血子「しつっこいよ!!」
賢二「なんか結局、「策士」でも「力士」でもなかった感じだよね…。」
ゴクロ「てゆーか違うんだよ!実は俺は(ザシュッ!へぶっ!! (…ガクッ)」
勇者「なっ…ヘブ!? ま、まさか…お前があの「ヘブ」だったのか!?」
血子「えっ、ただの悲鳴じゃないの今の!?実は「伝説の魔獣」とか何かなの!?」
勇者「いや、悲鳴だろ。」
血子「あ、うん…。」
勇者「さて、くだらんこと言ってないで行くぞ。財宝漁りには時間が掛かるんだ。」
血子「そ、そだよ…ね…。」
賢二(不憫だなぁ…。)
いぃぃよぉお〜!ポンポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がった。
勇者はレベル16になった。

「非道」が10上がった。
「非道」はメーターを振り切った。
〜その頃〜
群青「…なるほど、全滅かよ。しかも惨殺とはやるねぇクソガキが。」
電話「で、どうすんだい?脅威になる前に始末しとくか?」
群青「いや、まだだ。ガキを殺せば親父が動く…それはまだ困るもんでな。」
電話「まぁいいがね、長引いた分だけ金は貰えるし。」
群青「にしてもテメェも鬼だよなぁ。実力見るだけのために部下を殺させるかよ?」
電話「雑魚の利用価値なんて知れてるしなぁ。他に使い道も無いんでね。」
群青「ギャハハ、確かに。 じゃあまぁ引き続き任せるわ、うまくやれよな…ゴクロ。」


マジーン「ああ、任せときな。」
さっきのゴクロは偽者だった。

 

2-36:忘却〔12歳:LEVEL16〕
ゴクロを倒し当面の生活費を確保した俺達は、「勇者の盾」を求めて北へ進んだ。
そしていくつかの村を越えた先で、ようやくそれらしい情報を掴んだのだった。
〜エリン大陸:タミ村の喫茶店〜
勇者「てなわけで、どうやら目的の盾はこの先の「ババン山」という山にありそうだ。」
マジーン「バッ…ババン山つったら「山賊」が出るって有名な山だぜ!?ヤベェよ!」
勇者「山賊…?フッ、面白い。山賊狩りというのもまた一興だろ。 行くぞ。」
賢二「えっ、すぐに向かう気!?少しは休もうよ! ちょっ…待ってよ勇者君!!」
ガタン!(倒れる椅子)
少女「ゆ…勇者やてぇ〜!?」
勇者「むっ…?」
勇者は振り返った。
背後で謎の少女が睨んでいた。
勇者「おいオヤジ、勘定はここでいいか?」
少女「ってシカトかい!ここはもっと食いついてくるとこちゃうんかい!」
勇者「何か用か小娘?俺の進路を妨げる気なら女であろうと容赦はせんぞ?」
少女「その傲慢な態度…まさしく勇者や…。 驚いたで、ほんま驚きや…。」
勇者「…ぬおっ!? そ、その口調…まさかお前は…!」
少女「借金チョロまかして逃げよった男が、こないノンキに茶ぁシバいとるとはなぁ!」
血子「えっ!借金て!?まさかダーリン借金取りから逃げてたの!?」
少女「ああ、そのまさかや。コイツはウチにドデカい借りがあんねん。なぁ勇者?」
勇者「…借金?」
少女「忘れとったんかい!」
勇者「ところでお前誰だ?」
少女「そこは覚えとかんかい!んならさっきの驚きップリはなんやってん!?」
勇者「フッ、冗談だ。覚えてるさ。 あれは忘れもしない、去年か一昨年の…」
少女「すっかり忘れとるやないかい!」
勇者「久しぶりだな、ゴンゾウ。」
少女「ひとカケラも覚えとらんのんかい!ウチん名は「商南(あきな)」やっ!!」
賢二「あぁーーーっ!! あ、ああ…アナタは「アキドン村」の…!」
商南「おっ、タレ目は覚えとったようやな。褒美にアンタは肝臓二つで手ぇ打つわ。」
賢二「二つも売れな…というか持ってないですよ!」
商南「じゃかーしぃわボケェ!借りた金は三代かけても返すんがスジやろがぁ!」
勇者「オイオイ、人聞きの悪いことを言うな。俺達は別に金など借りてないだろ?」
商南「品代踏み倒してんねんから同じようなも…なお悪いっちゅーねん!」
勇者「焦るな。ひたすら待てばいつかは戻る。「金は天下の回し者」と言うだろう?」
商南「誰の差し金で動いとんねん!それを言うなら「回りもの」やろうが!」
勇者「アイツらはよくやってくれてるよ。」
商南「お前が黒幕やったんかい!」
血子「ちょ、ちょっとアンター!血子のダーリンにイチャモンつけないでくれる!?」
商南「あ?なんやこの茶っこい珍獣は?中身くりぬいて朝市で売りさばいたろか?」
血子「ひ、ひぃーー!!」
マジーン「ま、まぁ落ち着けよ!つーか暴れる前に今の状況を説明してくれ!」
商南「うっさいわこの緑黄色魔人が!その緑がかった顔を鮮血で染めたろか!?」
マジーン「ひ、ひぃーー!!」
賢二「ど、どうするの勇者君?このままじゃ先へ進みようがないよ…?」
勇者「…仕方ない、とっておきをくれてやるか。珍品だし売れば結構な金になろう。」
商南「あん?なんや、ちゃんと当てがあったんかい。ならさっさと出しぃや。」
血子「だ、ダメだよダーリン!こんな女の言いなりになることないよー!」
勇者「いや、いいんだ。実は俺も…早く手放したかったんだ。」
血子「だ、ダーリン…?」

さらばだ、血子…。
勇者は「厄介払い」に成功した。

 

2-37:握飯〔12歳:LEVEL16〕
血子を売り払い、やっと自由を手に入れた俺。借金も返せたし一石二鳥だった。
まぁツッコミが減ったのは多少痛いが、ウザいよりはマシだ。気にせず行くとしよう。
〜ババン山(中腹)〜
勇者「で、商南よ…お前はいつまでついて来る気なんだ?もう用は済んだろうが。」
商南「あ〜。実はウチ独立してなぁ、今は流しの商人やねん。せやからよろしゅう。」
勇者「あぁっ!?何が「せやから」だ!全然意味がわからんぞ!」
賢二「そ、それってまさか…僕らと一緒に旅する気ってことですか?」
商南「せや。女の一人旅は物騒やでな。ホレ、「旅は道連れ世は情け」言うやろ?」
勇者「フザけるな!俺は「情け」と盗子が大嫌いなんだ!」
賢二「存在忘れてたのに、こういう時には出てくるんだね名前…。」
商南「別にええやん、ケツの穴のちっさい男やなぁ。大根突っ込んで広げたろか?」
マジーン「あれ?そういやあの子はどうしたんだ?まさかもう売っちまったとか?」
商南「あ、とりあえずウチの実家に送ったったわ。ごっつ泣きながら去ってったで。」
勇者「そんなことより俺は腹が減ったぞ。おい商人、何か持ってないのか?」
賢二「いや、その前に少しは悲しもうよ…。」
商南「メシか?せやったらここに握り飯があるで。1000銅(約1000円)でどうや?」
勇者「あん?まさか仲間から金を取る気…って、高ぇよ!そんな握り飯があるか!」
商南「ったく、ケチケチすんなや2000銅くらい。」
勇者「上がってんじゃねーか!一体この十秒でコイツに何が起きたんだよ!?」
商南「コイツ、成長期やねん。」
勇者「そうか、今後が楽しみだな…。」
商南「納得すんのんかい!!」
勇者「そんなの俺の勝手だろうが。とにかく腹が減ってんだ、さっさと寄こせよ。」
商南「まぁええけどな。こないな握り飯が3000で売れるいうなら。」
勇者「また上がってんじゃねーか!コイツのどこにそんな金が掛かってんだよ!?」
商南「コイツ、親に仕送りしとんねん。」
勇者「苦労してんだな…。」
商南「せやからなんで納得できんねん!!」
賢二「・・・・・・・・。」
マジーン「・・・・・・・・。」

山賊達「・・・・・・・・。」
さりげなく囲まれていた。

 

2-38:監禁〔12歳:LEVEL16〕
商南とモメていたら、知らぬ間に山賊達に囲まれていた。生意気なっ!皆殺しだ!
…と、いつもなら早速戦闘開始なのだが、今回は少し頭を働かせてみようかと思う。
どうせ盾はコイツらが隠し持ってるんだ、わざと捕まって案内させようじゃないか。
〜一時間後:山賊の隠れ家(牢獄)〜
マジーン「ぐっ、取れねぇ…!この枷(かせ)はかなり厄介だぜ、ヤバくねぇか!?」
賢二「どどどどうしよう!見張りが帰ってくる前に逃げなきゃなのにー!」
勇者「まぁ焦るな賢二、もう少しだ。むんっ!よっ…ホアァッ!! よし、外れたぞ。」
商南「ほ、ホンマか!?」
勇者「肩が。」
商南「手枷を外さんかい!!」
賢二「うわーん!もうお手上げだー!」
勇者「ば、バカを言うな!上げたら痛ぇよ!」
マジーン「いや、そういう意味じゃねーだろ。」
勇者「チッ、まさかこんな枷ごときが外せんとは…!」
賢二「人の道ならとっくに外れてるのにね…あ゛。」
勇者「よーしわかった!枷を外したらまず貴様から殺してやる!なぁお前達!?」
商南「アホか、逃げるんが先に決まっとるやないか。」
マジーン「だよなぁ。今はそれどころじゃねぇって。」
賢二「で、ですよね!そうですよね!」

チッ、仲間「外れ」か…。
うまいこと言ってる場合か。

 

2-39:変人〔12歳:LEVEL16〕
肩は外れたが肝心の枷を外すことができず、結局脱出することができなかった。
それどころか、今から「族長」とやらに会わされるようだ。少々ヤバいかもしれん。
山賊A「族長ぉ!妙な奴らがうろついてたんで連れて来やしたぜぇ!」
族長「ぬっ? おぉ、ご苦労ご苦労。後はオデがやるがら下がっでろや。」
勇者「貴様が長か。山賊の名にふさわしくムサ苦しいオッサンだな。」
族長「おいおい、囚われの身分で随分と威勢がいいでねぇが小僧っこよ。 名は?」
勇者「名乗れだとぉ!?貴様なんぞに名乗る名など無いほどに俺の名は勇者だ!」
商南「思っきし名乗っとるやないかい!!」
族長「勇者だぁ?ブハハッ!そげな妙な名さ付げる馬鹿親が他にもいだどはなぁ!」
勇者「ほ、他にも!?さすが大陸…広いな。親父と似た奴まで存在するとは…。」
族長「みでぇだな。まぁアイヅの方が変わっどるだろうがよぉ。」
勇者「あん?いやいや、ウチの親父の変人っぷりに勝てる奴などそうは居ないぞ?」
族長「馬鹿言うなオメェ、奴ぁ剣と間違えでゴボウで戦うような型破り野郎だど?」
勇者「フンッ、親父なんかアレだぞ!「勇者」のクセに「召喚魔術」を習得したぞ!」
族長「世界広しと言えど、「食い逃げ」だけで指名手配されだのは奴しがいめぇ。」
勇者「親父だって悪人だ!なんたって今をときめく悪人「五錬邪」の創設者だしな!」
族長「奴はよ、「天帝」の子…「皇女」の求婚を断っだような男だど?もっだいねぇ。」
勇者「ナメるな!親父なんか皇女どころか「魔王」と結婚したぞ!」
マジーン(…じょ、冗談だよな?)
賢二(ハイ、「生きた冗談」でしたよ…。)
勇者「つーわけでまぁ、親父の勝ちだな。」
族長「うんにゃ、まだまだあるど!奴が負げるはずぁねぇ!」
賢二(この場合、どっちが勝ちなのか負けなのか…。)
勇者「いいや!親父だ!!」
族長「凱空だ!!」
勇者「同一人物じゃねーかっ!!」
親父にはろくな印象が無かった。

 

2-40:宴会〔12歳:LEVEL16〕
俺が旧友の息子だとわかり、上機嫌になった族長の号令で宴が催された。
山賊どもは意外と気のいい奴ばかりで、宴は和やかな雰囲気で始まったのだった。
族長「そうが、オメェが凱空の…。風の噂でしが聞いでねがっだがら驚れぇだわ。」
勇者「俺も驚いたぞ、まさか茶柱が立つとは。」
商南「会話する気あらへんのんかい!」
賢二「あ、あの〜…。ところで結局、僕らの安全は保証されてるんでしょうか…?」
族長「そりゃもちろんだ!旧友のガキどもに手なんぞ…おぉ、悪ぃな。とっとっと。」
マジーン「いや、気にしねぇでくれ。こういうのは前のバイトで慣れてんだ。」
賢二「あ、その注ぎ方ってなんかカッコいいですね!あれ?でも居酒屋っぽくは…」
マジーン「あ゛…いや、他にもやってたんだ。なんつーの?ほら、ホストってやつ?」
賢二「へぇ〜!もっと詳しく聞いてもいいですか?やっぱ大変だったんですか?」
マジーン「え゛っ!あ…あぁ、大変だったよ。雨の日も風の日も…手紙を待ったぜ。」
商南「そりゃ「ポスト」ちゃうんかい!」
賢二「ま、まぁいいじゃないですか。せっかくの席だし少しくらいハメ外しても…ね?」
勇者「フッ、まあな。」
商南「ってお前が答えるんかいっ!ハメやのうて肩外してただけのくせして!」
マジーン「ご、ゴメンな…。ホント、うぐっ、ゴメンなぁ…。」
商南「謝るんはお前なんかい!しかも泣き上戸か!」
勇者「まあな!アッハッハ!」
商南「おのれはメッチャ笑うとるやないかい!!」
賢二(このツッコミ、助かるなぁ…。)
盗子はポジションが危うい。

 

2-41:盗賊〔12歳:LEVEL16〕
夜もふけ宴も終わり、山賊どもが寝静まった頃、俺達は「宝物庫」の前に来ていた。
奴らが気を許している今がチャンスだ、目的の盾を奪ってとっとと逃げるとしよう。
賢二「ね、ねぇ勇者君、ホントに盗むつもり?あんなに良くしてくれたのに…。」
勇者「なかなか頑丈そうな扉だな。剣ねじこんで開けられるだろうか?」
賢二「勇者君…見えてる…?僕はここに居るよ…?」
勇者「開かんな…。よし、ならば爆薬で扉ごとフッ飛ばすか。」
商南「爆っ…!アホか!なに考えとんねんアンタ!」
賢二「で、ですよね!もっと言っちゃってくださいよ!」
商南「ウチに任せんかい。鍵開けならお手のモンやで。」
賢二「あれっ!?止めてくれるんじゃなくて!?」
マジーン「金が絡むと目の色変わるんだなこの子…。」
勇者「フン、まぁそこまで言うなら貴様に任せてやる。だが五分以上は待たんぞ?」
カチッ(開)
商南「ホレ、開いたで。バレへんうちに行こうや。」
三人(は、速い…。)
商南は妙に手馴れていた。
勇者「さてと、じゃあさっさと済ませ…」
声「…やれやれ、やっぱし来だがよ。血は争えんもんだなぁ。」
賢二「えっ!ぞ、族長さん!?なんでここに…!?」
族長「まさがど思っで張っどったんだぁ。実ぁ凱空の奴も同じことしくさったでよぉ。」
勇者「な、なにっ!? チッ、親父の奴め余計なことを…お、高そうな剣発見。」
商南「アホか勇者!そないなモン漁っとる場合やないやろが!」
族長「そうだど勇者、その嬢ちゃんの言う通りだぁ。こういう時は素直に…」
商南「狙うんやったら宝石や。剣なんかかさばっていかんわ。」
族長「・・・・・・・・。」
賢二「・・・・・・・・。」
賢二の土下座が炸裂した。

 

2-42:宝箱〔12歳:LEVEL16〕
こっそりと宝を奪って逃げるつもりが、族長の奴に見つかってしまった。マズったぜ。
こうなりゃ殺るしかないか…そう思った時、意外にも族長はこう言ってきたのだった。
族長「悪いが全部はやれね。だが戦友のガキだぁ…一つだけ選んで持っでけや。」
賢二「えっ!怒るどころかくれるんですか!?ホントに!?」
勇者「む〜、一つかぁ〜…まぁ仕方ないか。じゃあ「勇者の盾」を寄こしやがれ。」
族長「勇者の盾だぁ?そりゃここにゃ無ぇだよ。噂じゃ山頂の洞窟にあるとか…。」
勇者「あん?なんだ、お前らが持ってたんじゃないのか。だが何故取りに行かん?」
族長「ブハハッ、族は「奪う」のが仕事だでな。探し行ぐのは面倒でよぉ。」
商南「ゆ、勇者ー!なんやごっつ高そうな宝箱めっけたでぇー!」
勇者「む?おぉ、確かに何かありそうな感じだな。 あれを貰ってもいいんだよな?」
族長「あれか…いや、あれはヤメとげ。 鍵が開かねぇでな、オデも中は知らな…」
カチッ(開)
商南「開いたで。」
族長「Σ( ̄□ ̄;)!!」
勇者「よし、じゃあとりあえず見るだけ見てみるとするか。」
マジーン「ちょ、ちょっと待てよ!何だかわかんねぇんだろ!?危なくねぇか!?」
賢二「そ、そうだよ!もしかしたら腰抜かすような恐ろしいモノが入ってるかも…!」
勇者「フンッ!たかが宝箱ごときにビックリするなど有り得んわ!見るがいい!!」

ギィィィィ…(開)

姫「…ほぇ?」
勇者「ビックリーー!!!」
勇者は腰が抜けた。

 

2-43:名前〔12歳:LEVEL16〕
宝箱を開けたら、なんと中から姫ちゃんがコンニチハ。う、嬉っ、嬉しljふぁl%pうpw
姫「ほへぇ〜…。」
勇者「ま、ま、まさか…ひ、ひ、ひっ、姫ちゃブゥーーー!!(鼻血)」
賢二「うわぁー!お、落ち着いて勇者君!その量は興奮して出す量じゃないよ!?」
姫「あ、勇者君お久しぶり。 こんな所で何してるの?」
勇者「い、いや、それはこっちが聞きた…相変わらず可愛いぜうっひょー!!」
賢二(しばらくこのキャラなんだろうな勇者君…。)
姫「勇者君は…ちょっと見ないウチに赤くなったね。」
勇者「フッ、照れてるんだ。」
商南「鼻血やろがい!どう照れたら真紅に染まれんねん!」
マジーン「つーかよ、誰なんだこの子は?まさか「宝箱の精」とかじゃねぇよな?」
賢二「あ、そうだった。えっと彼女は…」
姫「気のせいだよ。」
マジーン「え…。 そ、そうか。気のせいだったか…。」
商南「納得すなや!言葉の意味が明らかにちゃうやろが!」
姫「あ、盗子ちゃんお久しぶり。」
商南「誰やねん!ウチん名は商南や!!」
姫「…あ〜、あと一歩だったよ。」
商南「全然足りひんわ!ちゅーかそもそも方向がちゃう!!」
姫「…こっち?」
商南「こっちやない!指してもわからへん!もうええから名ぁ名乗れや!」
姫「すこぶる面倒だよ。」
商南「二秒で終わるがな!サラッと言や済むことやろが!」
姫「初めまして、「サラッ」だよ。」
商南「そういう意味ちゃうがな!あとどうせなら「ッ」は取らんかい!」
姫「二度目まして、サ…」
商南「言わんでええ!!」
姫「じゃあもう商南でいいよ。」
商南「そりゃウチん名やぁー!!」
姫「えっ…。」
商南「なんで驚いとんねん!なんで「衝撃の事実発覚顔」やねん!」
姫「鼻血…?」
商南「そこか!今さらそこに驚いたんか!」
姫「えへへ。引っ掛かった?」
商南「何が「引っ掛かった?」や!思っきし素の顔やったやないか!」
姫「私は引っ掛かったよ。」
商南「首謀者は誰やねん!!!」
マジーン「す、スゲーなあの二人…。」
賢二「止まらないね…。」
勇者「ああ、止まらないな…。」

鼻血が…。
勇者は死ぬかもしれない。

 

2-44:誤解〔12歳:LEVEL16〕
姫ちゃんを仲間に加え、目的地も定まった俺達は翌日、山賊屋敷を去ることに…
しようかとも思ったのだが、別に焦ることもないのでノンビリ過ごしてやることにした。
なんでも洞窟には「番人」がいるらしいしな、英気を養っておくのも悪くないだろう。
商南「なぁ勇者、もう一週間やで?いつになったら出発しよんねん?」
勇者「ん〜、まぁもう少し待て。こっちは肩と腰と大量の血液が抜けたんだぞ?」
商南「ふ〜ん。ま、ええけどな。誰かてビビるっちゅーことはあるもんや。」
勇者「あ?まさか俺が逃げてるとでも…? そんなつもりは毛頭無いわ!!」
姫「えっ…。勇者君、「モーホー」じゃないの?」
勇者「うぇっ!? ち、違うぞ姫ちゃん!「毛頭」だ!!」
姫「やっぱりモーホーなんだね…。」
勇者「誤解だ!そういう意味じゃないんだ!毛頭…っつーか「やっぱり」てオイ!」
姫「お巡りさーん、モーホーがいますよー!」
勇者「なっ!罪なのか!?アレはアレで立派な愛の形なんじゃないのか!?」
姫「元気出してね。」
勇者「励まされたー!!」
商南(なんやオモロいことになってきよったで〜☆ なぁタレ目っち?)
賢二(ま、まぁ他人事のウチはね。)
姫「勇者君…今から言うことに正直に答えてほしいよ。」
勇者「お、オイオイ!なんだよ真剣な顔して! まさか本気で疑って…!?」
姫「モーホーって何?」
商南「って知らんかったんかい!!」
姫「モーホーって食べれる?」
勇者「ん?ああ、食う奴は食うぞ。」
賢二「いやいやいや!そんな誤解を招くような表現は良くないよ!」
勇者「だってホラ、アイツのお前を見る目ったら…。」
賢二「え゛っ…?」

山賊A「(☆∀☆ )」
昨夜からマジーンを見かけない。

 

2-45:番人〔12歳:LEVEL16〕
更に二日が経ち、ここでの生活にもいい加減飽きてきた。よし、旅立とう。
勇者「世話になったな。もう二度と会うことは無いだろうから、涙で見送るがいい。」
族長「…そが。なんだが寂しぐなるやなぁ。 ま、気ぃ付げで行げや。」
山賊A「オメェも元気でやれよな。」
賢二「あ、ハイ。みなさんもお元気で。」
山賊A「いつか遊びに来いよ。そんでまた、楽しくやろうな…色々と。(ボソッ)」
賢二「何をですかっ!その妙に潤んだ瞳は何ですかっ!?」

そして歩くこと数時間。俺達は山頂の洞窟内、謎の扉前に来ていた。
明らかに人為的に作られた扉だ、きっとこの中に「勇者の盾」はあるのだろう。
勇者「じゃあ開けるぞ。番人がどんな奴かは知らんが、ビビッて逃げるなよ?」
商南「フン、あんな緑魔人なんぞと一緒にせんといてほしいわ。ウチは平気やで。」
賢二「ホントにどうしちゃったんだろマジーンさん…。」
勇者「雑魚のことは気にするな、今は番人のことだけ考えてろ。 行くぞ!」
ギィイイイイ…(開)

スイカ「…ん?」
バタンッ!!(閉)
勇者「帰ろう。」
賢二「えっ!どうしたの!?なんでそうなるの!?」
勇者「い、いや。いま一瞬…見てはいけない何かを見たような気がしたんだ。」
商南「はぁ?何言っとるんや!「時は金なり」っちゅーやろが、早ぅ行かんかい!」
勇者「お、おう。」
ギィイイイイ…(開)

スイカ「粗茶だが。」
姫「今日もヌルいね。」
バタンッ!!(閉)
勇者「茶菓子を買って来よう。」
賢二「えっ!一体何を見たの!?何を見たらそんな穏やかな発想に至るの!?」
勇者「い、いや。いま一瞬…中で姫ちゃんがティータイムだった気がしたんだ。」
商南「はぁ?んなわけあるかい!姫ならホレここに…ってどこにやねん!?」
勇者「やっぱり中に居るのか…。」
姫「誰が?」
三人「え゛ぇっ!!?」
姫は〔神出鬼没〕を使えるのか。

 

第三章