第三章

 

2-46:空気〔12歳:LEVEL16〕
洞窟の奥の間…その中に見えたのは、なんと「スイカ割り魔人」。あのウザい奴だ。
よし、こうなったら一瞬で終わりにしてしまおう。喋る間も無いうちに砕いてやろう。
勇者(よし開けるぞ。俺が一撃でカタをつける、お前らはのんびり茶でも飲んでろ。)
ギィイイイイ…(開)
勇者「うぉおおお!派手に砕けろっ!それがスイカ割りの醍醐味だぁー!!」
スイカ「…ぬぅっ!?」
バスコーン!(叩)
勇者はカウンターを食らった。
勇者「い゛…いってぇー!!」
賢二「えっ!なんで割りにいった勇者君が割られかけてるの!?」
スイカ「フッ、ワシを誰と思っ…お?誰かと思えばカクリ島のスイカどもではないか。」
商南「誰がスイカやねん!ってお前がスイカやないかい!!」
スイカ「久しいな小僧。相も変わらずヌシのスイカは壮健か?」
賢二「ごめんなさい初対面です。」
姫「初めまして姫だよ。」
勇者「いや、キミは何度も会ってるぞ。つい2・3分前にもだぞ。」
スイカ「御託はいい!勝負だ小僧!! ここで逢ったが…ひぃふぅみぃ…。」
勇者「いちいち数えるな!そこは「百年目」と言っときゃいいだろが!」
スイカ「三年目!!」
勇者「しかも間違ってるし!つーかなんで貴様はいつもすぐ挑んでくるんだ!?」
スイカ「フンッ、知れたこと。闘いこそが…闘いこそが我がスイカだからだ!!」
勇者「聞いた俺がアホだったぜ…。」
声(勇者!ちょい勇者っ!)
勇者「あん?なんだよ商南、俺は忙しいんだ。愛の告白なら顔を改めろ。」
商南(誰がするか!って「日」ちゃうんかい! …やのうて、ウチが言いたいんは…)
勇者(なにっ、盾を見つけた!?でかしたぞ商南!)
商南(なんで通じとんねん!まだ何も言うとらんがな!)
勇者(フッ、ナメるな。俺は必要以上に空気の読める男だ。)
商南(読めすぎや!気色悪いわ!!)

賢二「・・・・・・・・。」
スイカ「・・・・・・・・。」
ちっとも読めてなかった。

 

2-47:危険〔12歳:LEVEL16〕
金の亡者の力により、「勇者の盾」の在り処はわかった。あとはゲットするだけだ。
勇者(というわけで賢二、後は任せた。一足先に夏を満喫してくれ。)
賢二(え゛ぇっ!?む、無理だよ僕じゃ…の前に、逃げられないんじゃない?)
スイカ「どこへ行く気だ小僧?このワシから逃れられるとでも思っておるのか?」
賢二(ほらやっぱり…!)
勇者「スイカを買ってくる。」
賢二「いや、バレバレだから!さっきの話聞こえてたから!」
スイカ「ワシの分も頼む。」
賢二「やっぱりですか!やっぱりそういうノリですか!」
スイカ「さぁ来い小僧!あの日からどれだけ育ったか…そのスイカ見せてみよ!」
賢二「だから初対面ですってば!」
スイカ「いくぞ!「スイカ流棒術」奥義…「百連パンチ」!!」
賢二「棒はどこへ!?」

〜その頃〜
マジーン「よぉ!遅かったな「黄緑錬邪(キミドレンジャ)」。一体何日待ったと…」
黄緑錬邪「オイ、なに偉そうにタメ口きいてんだよテメェ?煮るぞコラ。」
マジーン「…ハイハイ悪ぅございましたよ。ホレ、お目当ての勇者はこの中だぜ。」
黄緑錬邪「あぁそうかよ。じゃあテメェはもう用無しだ、帰って糞して寝やがれ。」
マジーン「だがよぉ、いいのか?群青のダンナは殺すなっつってたぜ?」
黄緑錬邪「私は私の好きなようにやる。テメェは大人しく草でも食ってろ。じゃあな。」
新たな危険が迫っていた。
スイカ「ならば「スイカ流棒術」最大奥義…「百連パンチ…と見せかけてキック」!!」
賢二「やっぱり棒は無視!?」
だが緊迫感は無かった。

 

2-48:装備〔12歳:LEVEL16〕
賢二がスイカに割られかけてる間に、俺達は勇者の盾を探した。 そして…。
スイカ「さて、そろそろ茶番も終わりにするか。今からは地獄の「スイカ祭り」だ!」
賢二「そっちの方が茶番くさいですよ!!」
声「フッ、悪いなスイカ。その祭りは雨天中止だ。」
スイカ「ぬぅ…? ハッ!しまっ…!」
勇者「貴様の「血の雨」でなぁ!!」
勇者は「勇者の盾」を装備している。
スイカ「くっ!このワシの虚をつくとは…敵ながら見事な小僧よ!」
賢二「いや、あれで気づかないアナタの方がある意味見事ですよ。」
勇者「もうコレは俺のモンだ。返せと言われても返す気はサラサラ無いぞ?」
スイカ「…いや、良い。盾はヌシを選んだ、ならばそれが定めということなのだろう。」
勇者「ん?なんだ、やけにアッサリしてるじゃないか。「スイカだけに」ってか?」
スイカ「フンッ! だが心して扱えよ小僧?その盾はかつて、伝説の「勇者」が…」
勇者「安心しろ。意外にも大事にするさ。」
商南「自分で「意外にも」てオイ!」
スイカ「…この地に封じた、「呪われた盾」なのだからな。」
勇者「ってエッ!?そんな意味だったのかよ!!」
スイカ「む?知らぬと? 「勇者が封じた「破壊神の盾」」…略して「勇者の盾」だ。」
勇者「妙なところで略すなよ!全く正反対の意味じゃねーか!!」
姫「甘いね、私は知ってたよ。」
商南「どさくさ紛れに嘘吐くなや!ちゅーか知っとったんなら教えたらんかい!」
姫「勇者君それ呪われてるよ!」
商南「って今かい!!」
姫「あんまり細かいこと言ってるとハゲちゃうよ、賢二君が。」
賢二「えっ!なんで僕が!?」
商南「ちゅーか細かないわ!!」
勇者「つーか外れないぞこの盾!!」
勇者はまた一歩「魔王」に近づいた。

 

2-49:奇襲〔12歳:LEVEL16〕
ノリノリで装備した盾は、なんと呪いの盾だった。剣の次は盾とは…なんてこった。
散々期待していた分落胆も激しい。よし決めた!とっとと帰って今日はヤケ酒だ!
勇者「…じゃ、まぁそういうわけで。」
スイカ「待てぃ小僧!どこへ行く気だ!?決着はまだついておらんぞ!」
声「ケッ、ちんたらやってんじゃねーよ雑魚どもが!まとめて死にやがれ!!」
一同「!!?」
黄緑錬邪が現れた。
そして大地が二つに裂けた。
賢二「うわわっ!落ちっ!危なっ!おわっとっとー!!」
姫「う〜ん。キレがイマイチ。」
商南「ダンスちゃうわ!なに冷静に審査しとんねん!」
勇者「誰だ出て来い!こんなヌルい攻撃じゃ俺達は倒せんぞ!!」
スイカ「まったくだ!ガッハッハー…!!」
スイカは谷底へと消えていった。

 

2-50:非常〔12歳:LEVEL16〕
何者かの奇襲攻撃により、またもや谷底に散るハメになったスイカ割り魔人。
そして現れた黄緑衣装の敵。初めて見る奴だが、見るからに五錬邪の一派だ。
勇者「おいコラ貴様!その趣味の悪い衣装…五錬邪予備軍か!?」
黄緑「あ?予備じゃねーよ。縁起悪ぃ黄色は欠番になったんだ。文句あんのか?」
勇者「いや、文句以前に「興味」が無い。」
黄緑「持てよテメェ!ホラ、色とかツッコミどころあんだろーが!!」
勇者「フッ、安心しろ。今からウチの賢二が驚くほどのツッコミをかますぞ。」
賢二「え゛っ!僕!? じゃ、じゃあ…き、黄緑て!緑でも微妙なのに黄緑て!!」
黄緑「ブッ殺す!!」
賢二「言ったら言ったで怒っちゃうの!?」
勇者「ホラ驚いた。」
賢二「「僕が」って意味だったの!?」
黄緑「…もういい。やっぱテメェらは気に食わねぇよ。死ね。」
勇者「フン、甘いな雑魚めが。これ以上大地を裂いたらお前も死ぬぞ?」
黄緑「ざけんな!私の攻撃はアレだけだと思うなよ!?集いやがれ「炎の精霊」!」
黄緑錬邪は「炎の精霊」を呼び出した。
勇者「なにっ、炎だと!?うおっ!熱ぃ!!」
賢二「せ、精霊…女性の声…そして黄緑…。 ハッ!まさかあの人の正体って…!」

巫菜子だろ?先週予告編で見たよ。
勇者は何を見たのか。

 

2-51:私怨〔12歳:LEVEL16〕
黄緑錬邪の正体は、多分巫菜子だ。この俺の勘が言うんだから間違いない。
なんでコイツが五錬邪にいるのかは疑問だが、興味は無いので聞くのはやめよう。
黄緑「どうだ私の実力がわかったか?最後は「氷の精霊」で氷付けにしてやるよ。」
勇者「まぁ落ち着け巫菜子。死に急ぐにはまだ若い。」
黄緑「みなっ…!?」
勇者「残念ながらバレバレだぞ。プロをナメるんじゃねぇ!」
商南「何のプロやねん!」
黄緑「違っ…ひ、人違いだろ!?そそそんな女知らねぇなぁ!」
勇者「…フッ、まさかこうもアッサリ引っ掛かるとはな。我が誘導尋問に!」
黄緑「なっ、なにっ!?」
勇者「いつ誰が「女」だと言った!?」
黄緑「聞きゃわかる名だろうが!!」
姫「えっ…!」
黄緑「ってなんで驚いてんだよテメェ!!」
姫「ビックリだよね?盗子ちゃん。」
商南「商南や言うてるやろがい!!」
賢二「と、ところで巫菜子さんは…なんでまた五錬邪なんかに…?」
黄緑「あん?んなの私の勝手…って、巫菜子じゃねーっつってんだろが!」
勇者「まぁいい。俺の前に立ちはだかると言うのなら、たとえ親でも容赦はせん!」
賢二「むしろ親の時の方が容赦してないけどね。」
黄緑「・・・・・・・・。」
勇者「さて、じゃあそろそろ殺ろうか?」
黄緑「…やっぱ予定変更だ。やり合う前にコイツと話がある、他の奴らは消えろ。」
勇者「俺は話なんぞ無い!今すぐ死にやがれぇええ!!」
勇者の攻撃。

賢二に80のダメージ。
賢二「な、なんで僕に…グフッ。」
勇者「顔がムカついた。」
商南「んな理不尽な!ちゅーか何を今さら!」
勇者「まぁそういうわけだ、お前もちょっと席外せよ商南。パンでも買って来い。」
商南「はぁ?なんでウチが…って、こない山奥にパン屋なんてあるか!」
姫「パンが無ければケーキを食べればいいんだよ。」
商南「どこの女王様やねん!…まぁええわ、なんやわけありそうやしな。行くで姫。」
姫「そだね。大事な話は二人きりじゃないとね。」
だが賢二は放置された。
勇者「さぁ人払いはできた。何の用かは知らんが、とっとと言ってそして死ね。」
黄緑「…私が五錬邪に入ったのは、力を得るため…テメェを殺すためだ。」
勇者「殺す?悪いがお前にそこまで言われる覚えは無いぞ。特に何もしてないし。」
黄緑「あ゛?してねぇだと!?フザけんな!あの日の恨み…私は忘れねぇぞ!!」
勇者「ま、まさか…!」

さて、どの日のことだろう。
心当たりが多すぎた。

 

2-52:懺悔〔12歳:LEVEL16〕
なにやら俺に恨みがあるという巫菜子。だが身に覚えがありすぎてよくわからん。
勇者「すまん巫菜子、悪いが心当たりが絞り込めん。率直に言ってくれ。」
黄緑「そうかよ、あくまでもシラをきる気かよ…上等だ。殺す!」
勇者「あ!もしかして…給食パンに無差別に毒を仕込んだイタズラの被害者か?」
黄緑「へ…?」
勇者「違ったか…。じゃあアレか?下駄箱にラブレター型の爆弾を入れた時の?」
黄緑「あ…アレはテメェの仕業だったのかよ!危うく死にかけたんだぞテメェ!」
勇者「違う!?…あぁ!誰かが乗ったら落ちるようにベランダを細工した時の…!」
黄緑「アレもか!なんでテメェのイタズラは人命を左右するほど大掛かりなんだ!」
勇者「そうか!校長室を荒らし、窓ガラスに「ミナコ参上!」と書き残した件か!」
黄緑「んなことしやがったのかよ!一歩間違えりゃ殺されてたかもしんねーぞ!?」
勇者「安心しろ、別の組のミナコが犠牲になった。」
黄緑「ホントに一歩違いだったんじゃねーか!」
勇者「ったく、じゃあ何だってんだよ?あと思い当たることなんて十もねぇぞ?」
黄緑「まだそんなにあんのかよ!それだけで十分に殺す動機になんぞコラ!」

あっはっは。ごもっとも。
勇者は激しく墓穴を掘った。

 

2-53:殺害〔12歳:LEVEL16〕
バレてなかった悪事まで散々暴露したが、結局巫菜子の求める答えは出なかった。
すると巫菜子は、いい加減痺れを切らしたのか、自分から語り始めたのだった。
黄緑「時間が無ぇから率直に聞く。なんで…なんで私の両親と弟を殺したぁ!?」
勇者「む?両親と弟…? 悪いがホントに身に覚えが無いぞ。人違いじゃないか?」
黄緑「ざけてんじゃねーよ!テメェだっつーネタは挙がってんだよ!!」
勇者「なにっ!?この俺が証拠を残しただと!?」
黄緑「死体の血で書かれてたんだよ!窓ガラスに…「勇者参上!」となぁ!!」
勇者「俺のイタズラと同レベルじゃねーか!そんなの信じるなよ!」
黄緑「黙れクソが!テメェならやりそうだろうが!」
勇者「フッ、照れるぜオイ。」
黄緑「どんだけポジティブならそう返せんだよ!?」
勇者「とにかく俺は知らんぞ。信じる信じないは貴様の勝手だがな。」
黄緑「なら話はここまでだ!出やがれ「風の精霊」、コイツを切り刻めぇええ!!」
勇者「カマイタチ!? よ、よし!さぁ今こそ出番だ「勇者の盾」どわぁあああ!!
なんと盾は攻撃を避けた。
黄緑「あははっ!装備に見放されるたぁ愚かな奴だぜ!こりゃ終わったな!」
勇者「ぐっ!な、何か他に防具は…ハッ!そういや前に武具屋から貰ったのが…」
黄緑「んだよソレ?んな珍妙なベルトで何が守れるってんだよ。バカかテメェ?」
勇者「甘いな!こういうアイテムこそ実はスゴいもんなんだよ! さてと説明は…。」
〔暗闇ガーター〕
太モモに装備するベルト型防具。
装着部周辺に謎の闇を発し、あらゆる盗撮からパンツを守る。
勇者「って何を守らせる気なんだ!!」
巫菜子「死ねぇええええええええ!!」

ブバッ!!(鮮血)
賢二は寝たフリをしている。

 

2-54:残虐〔12歳:LEVEL16〕
薄暗い洞窟の壁面に、鮮血がほとばしった。だがそれは俺のものではなかった。
なぜか巫菜子が血を吐いたのである。一体何があっ…まぁ別にどうでもいいや。
黄緑「ゲハッ!ぐほっ…ブハッ!」
勇者「み、巫菜子…お前まさか…!」
黄緑「チッ、マズったぜ…。」
勇者「俺の…子か?」
黄緑「って、どう見たら「つわり」に見えんだよ!」
勇者「まぁ心当たりも無いしな。」
黄緑「ぐっ!じょ、冗談言ってる間があったら…心配でもしたらどうだよコラ…!?」
勇者「悲しいことだな…まさか旧友を手にかける日が来ようとは。」
黄緑「ホント容赦無ぇなテメェ!つーかもっと他に言うこととか無ぇのかよ!?」
勇者「じゃあ…最後に一つだけ聞いてくれ。 実は俺、ずっと前からお前のこと…」
黄緑「えっ…!ななな何言い出すんだよいきなり!?オイちょっヤメ…!」
勇者「忘れてたんだ。」
黄緑「ブッ殺す!!」
勇者「死にそうなのはお前じゃないのか?」
黄緑「…つぎ会ったら殺す!覚えてやがれぇええ!」
勇者「フンッ!誰が逃がすか!食らえ謎の秘奥義「ミドル・ハイキック」!!」
ズゴォオオン!!(蹴)

賢二「ぎゃぁああああああああっ!!
黄緑錬邪は去っていった。

 

2-55:可能〔12歳:LEVEL16〕
突如体調不良を訴えた巫菜子は、捨て台詞を残し去っていった。フッ、雑魚めが。
勇者「巫菜子か…。なぜアイツが五錬邪に…世の中わからんもんだな。」
賢二「僕はなんで蹴られたのかわかんないけどね!」
商南「おぉ勇者〜。用は済んだんか〜?」
勇者「商南か。ちゃんとパン買ってきたか?」
商南「ホンマに頼んどったんかい!こない山奥じゃ買えん言うたやろが!」
勇者「な、なにっ!?姫ちゃんが一緒でも不可能だったってのか!?」
姫「ごめんね勇者君。パンダしか買えなかったよ。」
勇者「ホラ見ろ!もっとスゴいことが起きたじゃねーか!」
商南「い、いつの間に買うて来てん!?」
パンダ「ピギャー!!」
賢二「それホントにパンダ!?」
商南「で、どないすんねんコイツ?サーカスにでも売り飛ばしたろか?」
勇者「いや、晩飯の線が有力だろう。」
パンダ「ピギョッ!?」
姫「ダメだよ勇者君!「丸焼き」ちゃんが可哀想だよ!」
賢二「その割にすんごい名前付けてない!?」
「丸焼き」が仲間に加わった。

 

2-56:北上〔12歳:LEVEL16〕
ババン山を降りた俺達は、エリン大陸の最北端「サブロ岬」へと向かうことにした。
その岬には唯一、大魔獣が出ない安全な航路をとることができる港があるらしい。
賢二「あっ!なんか見えたよ勇者君!あれじゃない!?」
勇者「あれか…やっと見えたぜ。誰のせいとは言わんが随分回り道しちまったな。」
商南「ったく。いつも急にどっか消えるわ、居たら居たで使えんわで最悪な奴やで。」
マジーン「ホント…ごめんな…。案内を買って出た俺が方向音痴なせいで…。」
姫「「ごめん」で済んだら「なさい」は要らないよ。」
賢二「いや、そういう使い方じゃないと思う。」
姫「あ〜…まぁどっちでもいいよ。ねぇミディアムちゃん?」
パンダ「ピギャ…?」
賢二「あれっ!?知らぬ間に「焼け具合」になってない!?」
勇者「フッ、いい名じゃないか。なぁウィリアム?」
商南「変わっとるし!しかも間違うとるし!どうせ言うなら「ウェルダン」や!」
勇者「ん〜、そういやちょうど腹が減ってきたな。食うか!」
パンダ「ピ、ピギャッ!?」
マジーン「おいおい、怯えてるじゃねーか。やめてやれよ。」
勇者「あっはっは!」
パンダの味は新鮮だった。

 

2-57:探物〔12歳:LEVEL16〕
二時間後、俺達はサブロ岬を望む港町「タッグ町」に到着した。さびれた田舎町だ。
…いや、だがその割には少し騒がしい。 例の如く魔人でも出たのかもしれない。
町人「キャーー!た、助けてぇー!!」
勇者「(やはりか…)フッ、困ってるようだな町人。助けてほしくば金をよこせ!!」
町人「わーん!挟まれたー!追い剥ぎまで来たー!」
勇者「そういう意味じゃねーよ!報酬を弾むんなら助けてやるぞって意味だ!」
町人「ホントですか!?じゃあ探しモノを手伝ってください!急がないと町が…!」
姫「それはちょっと嫌だよ。あんまり見ないでほしいよ。」
勇者「違うぞ姫ちゃん!多分それは「晒し者」だ!」
町人「お願いします!あの魔獣を鎮めるには…絶対子供の力が必要なんです!」
賢二「子供の力?僕らにしか探せない何かってことですか?」
町人「いえ、そういう意味ではなくて…!」
商南「まぁええわ、金さえ貰えりゃ何でも探すで。 何を探せ言うん?」

町人「あ、ハイ!「子パンダ」です!」
勇者はトイレに向かった。

 

2-58:助人〔12歳:LEVEL16〕
町で暴れる親パンダを鎮めるには、子パンダを連れてくるしか方法は無いらしい。
となると、鎮めるのは諦めるしかなさそうだ。幸い海は近い、「沈める」ことにするか。
勇者「まさかあのパンダに、親パンダがいたとはな…。」
姫「親パ…親パンダ子パンダ黄パジャミャ!」
賢二「最後の黄パジャマの意味がわからないよ!しかも言えてないし!」
町民「あ、あの〜、もしかしてみなさん、子パンダの居所をご存知…とか?」
勇者「すまない。出なかった。」
町民「出るっ!?」
マジーン「だからさっき便所行ってたのかよ!」
商南「ちゅーか出たら出たでどないしてん!?」
町民「えっ!?まさ…まさか食べ…!? あーん!もう町は終わりですー!」
老人「いやいや、なんとかなったぞ。安心しなさい。」
町民「ちょ、町長!?無事だったんですね!」
勇者「どういう意味だ町長とやら?もう退治できたとでも言うのか?」
町長「あ、ハイ。それが…先ほど颯爽と現れた女の子が倒してくれたんですわ。」
勇者「女だと?この俺の見せ場を…! 一体どんな奴なんだ?」
町長「あ〜、頭に緑のバンダナ巻いた女の子で…たぶん「盗賊」じゃないかなぁ?」
勇者「Σ( ̄□ ̄;)!!」
賢二「ゆ、勇者君…それってもしかして…!」
町長「すぐどっか行っちゃったからあまり見てないけど、結構可愛い子でしたわ。」
勇者「フゥ、人違いか…。」
賢二「あのさ、いつか刺されると思うよ…?」

声「勇者ーーッ!!」

町長「あぁ、あの子ですわ!あの子が今話した…!」
勇者「あん?どれどれ、一体どんな顔を…なっ!?お、お前は…!」
賢二「や、やっぱり盗…!!」

勇者「ロボ盗子!!」
メカ盗子「ロボチガウ!!」
ロ…メカ盗子が現れた。

 

2-59:救援〔12歳:LEVEL16〕
ロボ盗子の活躍により、どうやら親パンダの一件は片付いたようだ。一安心。
だが、なんだかイヤな予感がする。なにかしらの災いを持ってきた気がするのだ。
勇者「おい貴様、こんな所に一人…一体で何しに来たんだ?土男流はどうした?」
メカ「緊急ジタイ発生!アタシ アンタ呼ビニ来タ!盗子タイヘン!死ヌカモ!」
勇者「な、なにっ!?」
メカ「死ヌホド オ兄チャン好キカモ!」
勇者「クッ…!紛らわしいんだよ糞ロボットめがぁ!!」
メカ「ロボチガウ!」
賢二「なんか妙なデータがインプットされてるみたいだね…。」
勇者「フン!時間の無駄だ、ほっといて先を急ぐぞお前達。」
メカ「チョト待ツ! 違ッタ意味デモ死ニソウ!桃錬邪アラワル!」
勇者「なっ!桃錬邪が!?ホントなのかロボ!?」
メカ「ホン…ロボチガウ!」
賢二「そこだけは律儀に突っ込むんだね。」
勇者「…言え、盗子は今どこに居るんだ?」
メカ「ギマイ大陸、「ナンダの塔」…ソコニ盗子ハ居ル!」

ナンダの塔…そこだけは避けて通るか。
助ける気はサラサラ無かった。

 

2-60:求婚〔12歳:LEVEL16〕
盗子の居場所、そしてピンチだという状況を告げ、必死に救援を請うロボ。ウザい。
確かにちょうど行こうとしていた大陸ではあるが、手伝ってやる義理は無い。
勇者「助ける気は無いが…一応聞いてやる。盗子の身に何があったんだ?」
メカ「盗子 桃錬邪ニ逆ライ、売ラレタ。逃ゲタラ殺サレル。デモ逃ゲナイト…」
賢二「に、逃げないとどうなっちゃうの!?」
メカ「オ願イ勇者、盗子タスケル!デナイト盗子、「ナンダ」ニ オ嫁ニ貰ワレル!」
勇者「ぬぁっ、ぬぁにぃいいいいいいいっ!!?」

〜ギマイ大陸:ナンダの塔〜
ナンダ「フハハ!見たまえ盗子君、この景色を。素晴らしいとは思わんかね?」
盗子「ほ、ほーどーけー!!気取ってないで早く縄をほどいてってばー!」
ナンダ「フッ、すぐにほどくさ。キミが素直になってくれさえすれば…ね。」
盗子「だから素直にイヤだって言ってんじゃん!誰がアンタと結婚なんて…!」
ナンダ「アッハッハ!まったく照れ屋さんだなぁ〜。三ヵ月後の式が楽しみだよ。」
盗子「黙れポジティブおやじ!このロリコン!少女の敵!死ねっ!!」
ナンダ「おや?よく知ってたね。僕の職業が「ロリータ・コンサルタント」だって。」
盗子「どんな職業だよ!絶対食ってけないよ!」
ナンダ「僕はこの職業で今の財を築いたんだ。」
盗子「世の中間違ってるよー!」
ナンダ「三ヶ月後…僕の40の誕生日。楽しみにしてるよ、花嫁さん?」
盗子「いやーん!助けて勇者ぁーー!!」


勇者「…行くぞお前達。目的地は「ナンダの塔」だ!」
賢二「えっ!助けに行く気!?意外にもすんなりと!」
勇者「ああ。この俺が…絶対に助けてやる!!」
賢二「勇者君…!」

早まるなナンダ、女は選べ。
助ける相手が違った。

 

第四章