第二十三章

 

4-346:無礼〔14歳:LEVEL40〕
忍美のピンチに駆けつけたのは、置いてけぼりにされた暗殺美だった。
帝雅「小娘…貴様は確か、前にも見たな。あの子の…塔子の友人か。」
暗殺美「ハァ?冗談は娘の顔だけにしとけさ。名誉毀損で訴えるさ。」
帝雅「き、貴様…!」
忍美「ハ…ハハ…やっぱり、あさみんは…頼もしいのだ…。やっぱ、しのみんじゃ…」
暗殺美「…フン、まぁもう用無しだから寝てるがいいのさ。ポックリ休めさ。」
忍美「いや、その擬音はちょっと…。」
帝雅「相も変わらず無礼な娘だ。悪い影響を与えるなぁ…死んでもらう他ない。」
暗殺美「無礼?ナメんなさ、ウチのポチを可愛がってくれた礼は…たっぷり返すさ!」
なおのこと無礼だった。

 

4-347:演技〔14歳:LEVEL40〕
そしてやっと舞台は主人公のところへと。
久々に会った邪神の実力は、前にやり合った時の比じゃなかった。
前回は復活直後の不完全体だったってのはわかるんだが、別人にも程がある。
勇者「やはり一筋縄にはいかんか。だが!この俺もまた前回とはぐはぁ!違うぜ!」
邪神「豪快に血を吐きつつ言われてものぉ。」
勇者「ハッハッハ!まんまと騙されおっぶはっ!バカな奴…かはっ! ぐおぉお…!」
邪神「そんな体を張った演技なら騙されて悔い無しじゃが。」
勇者「…ふぅ。 やれやれ、まさか前座でこれほど苦労させられるとはなぁ。」
邪神「諦めるがいい小僧よ。痛みを感じぬ今…わらわの力は限界を超えておる。」
勇者「フッ、わかってないな。それは「体の異常に気づけない」のパターンがはっ!
邪神「おぬしこそ気づけてないじゃないか。痛覚が無いのか貴様は?」
勇者「そう余裕ぶっていられるのも今のうちだ。この闘いは、長くは続かない。」
ピンチ的な意味で。

 

4-348:時間〔14歳:LEVEL40〕
邪神の言う通り、痛みを感じぬ敵ほどやりにくいものはない。一体どうすれば…?
カルロスの時は首を飛ばしたら止まったが、今回も同じと考えていいかは不明だ。
勇者「やはり、五体をバラしてミキサーにかけてグイッとイッキしか手はあるまい。」
邪神「やれるものならやってみるがよい。イッキする理由は皆目見当も付かんが。」
勇者「ん〜、失った血液の補給?」
邪神「今さら聞くのもなんじゃが…貴様人間か?」
勇者「とまぁそんな冗談はさておき、そろそろ本気でいくぞバッキー!」
邪神「うむ。後悔無きよう、全力で来るがよい。」
勇者「フッ、いいだろう。我が「縦横無尽流」の奥義が見たいと言うんだな?」
邪神「なっ、縦横無尽流じゃと…!?」
勇者「ほほぉ、知っているのか。だが悪いな、まったくもって伝承されてないぜ!」
邪神「ならばなぜ言った!?」
勇者は回復時間を稼いでいる。

 

4-349:剛田〔14歳:LEVEL40〕
雑談で回復する時間を稼ごうとしている状況だが、さすがに長時間は無理そうだ。
本命は大魔王…こんな雑兵にこれ以上時間を割くわけにはいかん。もうキメるか。
勇者「よーし、それではいくぞ!我が必殺奥義…「大旋風葬」!!」
邪神「それはわらわのじゃ!」
勇者「お前のモノは俺のモノ…かつての偉人はいい事を言った!食らえぇ!!」
ブオォオオオオ!(風雪)
邪神「くっ、本当に放てるのか…!なんというセンスじゃ…!」
勇者「扇子持ってるのはお前だろ。」
邪神「そういう意味では…!」
勇者「更に隙アリぃいいいいいいい!!」
邪神「…フン、そう何度も隙を突かせるほど、わらわは甘くないわっ!」
カキン!ガッキィイイイン…! ジュバッ!
二人の力が激突した。
勇者「フッ…。」
邪神「・・・・・・・・。」

勇者「…チク…ショウ…(バタッ)」
勇者はパタリと倒れた。

 

4-350:決着〔14歳:LEVEL40〕
そんなこんなで勇者は競り負けたのだった。
勇者「ぐっ…!こ、この俺が…!」
邪神「既に見えていた勝負じゃろう?わらわの体にはまともな傷は付いておらぬ。」
勇者「…フッ、そう思っちまうあたりで…やはり貴様の負けなんだろう…なっ。」
邪神「ほぉ、まだ立ち上がれる…む?なんじゃ貴様、急に背が伸びたか?」
勇者「貴様が縮んだんだよ。貴様の胴体に傷が無いのは、狙ってなかっただけだ。」
邪神「なっ…!?こ、これは…!」
邪神は足首から下が無い。
勇者「死なないのなら機動力を奪う…それしかないだろう?」
邪神「き、貴様…!気づかれぬよう、足首だけを狙っておったのか…!」
勇者「だから言ったろう?「体の異常に気づけない」のパターンだとな。」
邪神「…ふぅ、やれやれ。一度は無様に殺された身…所詮この程度か。」
勇者「どうやら諦めたようだな。まぁ安心しろ、これから美味しく調理してやる!」
邪神「本当に飲む気なのか!貴様どこまで怖いもの知らずなんじゃ!?」
勇者「面倒だしこのまま放置だ。死体使いが果てるまで、そこで見ているがいい。」
邪神「くっ…!」
勇者は勝利した。

いぃぃよぉお〜!ポンポンッ!ポ・ポ・ポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がった。
今まで忘れていた分、盛大に上がった。
勇者はレベル45になった。

 

4-351:〔14歳:LEVEL45〕
勇者がなんとか勝利した頃、賢二は…まだ生きていた。
賢二「ハァ、ハァ、つ、強い…!それに速すぎて、全然捕まらない…!」
機械「フッ、俺ハ「剣士」と「賢者」ヲ目指シ見事に挫折しタ身…負けルハズが無い。」
賢二「え、なにその説得力の無い感じ…?」
機械「貴様は期待ハズレにも程がアルナ。ソレで本当に「勇者」ノ一味なノカ?」
賢二「僕は…僕はもう、勇者君なんかとは関係無いんだ!」
機械「…そうカ、逃げ出しタノカ。まっタク情けなイモノダ。」
賢二「ち、違う!僕が見捨てたんだよ!あんな奴、もう…!」
機械「見捨てた…か。成すベキことを放置シ、地球を見捨テタ愚かナ小僧か。」
賢二「ッ!!」
機械「貴様の親モ、そンナ息子を見たらサゾカシ悲しむことダロウな。」
賢二「…それが、お父さんの望みなの?僕に殺されることを…望んでるの?」
機械「言葉の意味ガわからンナ。俺は貴様達ヲ…勇者一行ヲ滅ぼすサイボーグ。」
賢二「わかったよお父さん…もう、迷いは無い!」
賢二は防御の陣を描いた。

 

4-352:親父〔14歳:LEVEL45〕
ってやっぱり防御かいっ!
そんなあきれた賢二が見せる、見事な死に方とは…!?
機械「チッ…この期に及んデマタ防御とハ情けナイ!もういい、死ぬガイイ!」
賢二「ぼ、僕をただの防御の人だと思ったら…」
機械「必殺変形、「ロリータ・コンバット・モード」!略しテ…」
賢二「い、言わせないよっ!?というかどんだけあるのそういうの!?」
機械「死ネェエエエエエエ!!」
賢二「くっ…!僕が今使える(でもよく失敗する)最強の防御魔法…〔金城鉄壁〕!」
機械「フン、そんナ防御魔法なンゾ…ムッ!?自分ニではナク、俺に…ダト…!?」
賢二「いくら素早くても、四方を囲んじゃえばもう…逃げ場は無いよね?」
機械「まサカ、最初カラそれヲ狙っテ…!?」
賢二「いっけぇえええええええええ!雷系高位魔法、〔雷親父〕!!」
どっちの親父が勝つのか。

 

4-353:教育〔14歳:LEVEL45〕
賢二の奇策(?)が炸裂し、賢二父はビビビッとなった。
どうやらなんとか勝てた模様。
賢二「グスン。お、お父さん…僕…。」
機械「…貴様、何ヲしてイル?」
賢二「グスッ…な、なんでもないよ。この涙は…なんでもないんだよ…。」
機械「…ソウじゃナイ。この大事ナ時に、こンナ所で何をシテイルんだ?賢二よ。」
賢二「えっ!?お、お父さん…記憶が…!?」
機械「最初カラあるが?」
賢二「あったの!?じゃあなんでこんな…こんなことになるまで…!?」
機械「勢いでヤッテみた。今は反省しテイル。」
賢二「もっと早くしてよ!そうと知ってれば、僕だって…!」
機械「お前ニハ、覚悟が足リナイ…そう感じタノダ。父とシテ最期の…教育ダ…。」
賢二「お父さん!お父さん…!?」
機械「行け、賢二ヨ。行ッテ…自分の成すべキことヲ成すノダ、愛しい…息子ヨ…。」
賢二「…わ、わかったよ!僕…僕、頑張る!頑張るから…!」
機械「遠イ未来に…天国デ会オウ…。母サン…そして賢一と…仲良ク……。」
娘とは多分無理だ。

 

4-354:決意〔14歳:LEVEL45〕
というわけで、父を倒して決意を新たにした賢二だった。
〜蒼茫号:船内〜
賢二「た、太郎さん!太郎さんいます!?」
太郎「ん…?あぁ賢者君、どうしたの?話によっては「いない」って言うけど。」
賢二「そんな堂々とした居留守は却下で! あのっ、急いで目的地変えて!」
太郎「今いません。」
賢二「だーかーらー!!」
太郎「だってさぁ〜、「大魔王城に向かえ」とか言うんでしょ?」
賢二「へ…?なんで知って…?」
下端「きっとそう言うと思って、ターボの準備はもう万全ッスよ!」
ライ「そうニャ!光の速さで飛んでけるのニャ!」
召々「殺人的なGだよね☆ 楽しそう〜♪」
賢二「み、みんな…。」
太郎「ハァ…まったく、しょうがないなぁ〜。それじゃ仕方ない、行こっか!」
太郎は置いて逃げる気だ。

 

4-355:不意〔14歳:LEVEL45〕
そんな頃、暗黒神(死体)とバトル中の絞死は…。
暗黒神「くっ、ば…バカな…!嗟嘆様の力を手に入れた私が…押されるだと…!?」
絞死「ハァ…拍子抜けですねぇ。怪物と聞いた暗黒神も、実際はこの程度ですか。」
暗黒神「お、おのれ…!小僧の分際で、ナメおって…ぬぐっ!?」
絞死「つまらないのでもう死んでくだ…あぁ、死んでるんでしたね。じゃあ砕きます。」
暗黒神「うぐぉ…ぐふっ!や、ヤメ…!」
絞死「今さら命乞いですか?死んでるのに…」

暗黒神「おヤメください、「嗟嘆様」!!」

絞死「ッ!!?」
ズッガァアアアアアアアアン!!
絞死は壁にメリ込んだ。
絞死「ぐ…はっ…!な、なんで…!?」
暗黒神「・・・・・・・・。」

勇者「ふぅ〜…間に合ったか。」
身内の攻撃だった。

 

4-356:感謝〔14歳:LEVEL45〕
対戦中の絞死を激しく蹴り飛ばした勇者。
いつも通りと言えばいつも通りだが、一体どうしたのか。
絞死「ゆ、勇者さん…これは一体、どういう…おフザけですか…?」
勇者「フッ、「ハットトリック」だ。」
絞死「他の2点はどこへ…!?」
勇者「…なんてな。 助けてやったんだ、感謝こそすれ…恨むとはお門違いだぜ?」
絞死「え…?」
なんと!絞死がいた場所が凄まじいことに。
絞死「そ、そんな…何も…見えなかった…。」
勇者「ったく、しつこいにも程があるぜ。「死体使い」を…乗っ取りやがったのか。」

暗黒神「ケッ…元気そうだなぁ、クソガキ。」
もうなんでもアリだった。

 

4-357:意地〔14歳:LEVEL45〕
邪神が片付いたので絞死の様子を見てみたら、これまた困った状況になっていた。
なんと、あの世から死体使いの体を乗っ取ったっぽい。そんな無茶はアリなのか?
勇者「チッ、貴様のしつこさにはほとほと呆れたぜ。もう特許取ったらどうだ?」
暗黒神「あ゛ぁ?何度も俺の邪魔しやがるテメェら親子だって似たようなモンだろ?」
絞死「ま、待ってください勇者さん。そういうことなら、私が…!」
勇者「下がっていろ絞死。あんな奴にそこまでやられるようじゃ、話にならん。」
絞死「いや、これはアナタが…。」
暗黒神「テメェこそボロボロじゃねぇか。あの日みてぇにやれんのかよ?」
勇者「フッ、問題ない。それにしても貴様、いつの間に分身なんて覚えた?」
絞死「完全に目の焦点が合ってないじゃないですか!そんな状態で…」
勇者「まぁ黙って見ているがいい。ピンチになるほど、俺よ強くなれ!」
勇者は願いを込めた。

 

4-358:強気〔14歳:LEVEL45〕
邪神との闘いでかなり限界な俺だが、勢いで暗黒神まで引き受けてしまった。
しかし、男の意地は貫き通すことに意義がある。やってやろうじゃないか。
勇者「さぁかかってこい暗黒神!情報保護の観点から、粉微塵に裁断してやる!」
暗黒神「わけわからねぇこと言ってんじゃねぇぞゴルァアアアアア!!」
勇者「はぁあああああああっ!」
ジャッキィイイイン!
暗黒神「チッ…!その体でまだそこまでやれるのか、やっぱフザけたガキだわ!」
勇者「死んでも元気な奴もいるしなぁ、死など怖がっていられるかぁ!」
ガキィン!
暗黒神「だが、時が経つほどに流れは俺に傾くだろう!テメェも終わりだなぁ!」
勇者「そうかもしれんなぁ!」
チュィン!
暗黒神「おぉっと隙アリィイイ!」
勇者「隙じゃない!限界なだけだ!」
ガッキィイイン!
暗黒神「死ねぇええええ!!」
勇者「言われんでも死ぬわあああ!!」
勇者は強気に弱気だ。

 

4-359:反則〔14歳:LEVEL45〕
負けるのはとっても不本意だが、もう限界だ。いくらなんでも神と連戦はきっつい。
そろそろ「だ、誰だ!?」「久しぶりだな」「お、お前は…!」な展開が無いと死ねる。
暗黒神「やれやれ、仕方ねぇ…たった今思いついた奥の手を見せてやるかぁ!」
勇者「ってお前がパワーアップかよこの期に及んで!容赦無ぇなオイ!」
暗黒神「忘れたか?俺はなぁ、勝つためなら…手段は選ばねぇんだよ。」
邪神「むっ!?な、何をする貴様…!?」
勇者「ちょっ、まさか…そこまでなんでもアリなのか!?」
暗黒神「昔はアレだったが今は同じ死体同士…仲良くやろうぜ邪神よぉ!」
ピカァアアアアアアア…!(光)
なんと!暗黒神は邪神を吸収した。
暗黒神「ハハハハッ!スゲェ、この湧き上がるパワー…素晴らしいぜぇ!」
勇者「お、オイオイ…さすがにそれは反則だろオイ…?」
暗黒神「おっと、どうした小僧?さすがに強がる気にもなれねぇかぁ?ハッハー!」
勇者「くっ…!仕方ない絞死、こっちも負けじと変形合体だ!」
絞死「一人でやってください。」
勇者「ちっくしょおおおおおおおおおお!!」
勇者は心が折れた。

 

4-360:悪夢〔14歳:LEVEL45〕
暗黒神だけでもヤバかったのに、さらに奴は邪神をも取り込みやがったのだった。
勇者「すまないが…少し待ってくれ暗黒神。賢二に遺書の書き方を習ってくる。」
暗黒神「あ?オイオイ、ついに諦めちまったのか?まぁ気持ちはわかるがなぁ。」
勇者「ったく…邪神が、そして貴様が蘇り、更には合体だぁ?やりすぎだろうが…。」
暗黒神「ハハッ、知らなかったのか?時として「悪夢」ってのは、続くんだよぉ!」
暗黒神、必殺の攻撃!
勇者は避ける気力も無い。

ミス!勇者は幻のように消えた。
暗黒神「な…なぁっ!?こ、この先の読める展開は…まさか…!」

「いや〜、たまにはいいこと言いますねぇアナタも。」

勇者「ば、バカな!その声…貴様はあの日、確かに死んだはず…!」

「でも惜しい、続くのは「悪夢」じゃない…「奇跡」なんですよ。」

絞死「まさか…あ、アナタは…!」



教師「さぁ、授業の…始まりです。」

どう転んでも「悪夢」だった。

 

第二十四章