第十五章

 

4-226:訂正〔14歳:LEVEL40〕
目が覚めると、俺は親父と闘った部屋に転がっていた。そうか俺は負けたのか…。
いや、違う。まだ本調子じゃないからだ。だからこれをカウントに含める必要は無い。
〜帝城20階:展望の間〜
勇者「というわけで、貴様を殺して仕切り直そうと思う。覚悟するがいい。」
夜玄「…いえ、やめておきます。私の占いでは、今はまだその時ではないと…」
勇者「占いもクソもない。貴様には騙されてたわけだしなぁ、ムカつくから殺す。」
夜玄「大義のためなら手段は問わない…アナタならわかると思うのですが?」
勇者「じゃあなんとなく殺す。」
夜玄「こ、困った…。」
勇者「俺は何でも許されるがお前はダメだ。大人しく刀のサビとなるがいい。」
夜玄「やれやれ、仕方ない…少々、お相手しましょうガハッ!
勇者は相手を立てない。

 

4-227:一矢〔14歳:LEVEL40〕
その頃、盗子の所では―――。
ポタッ、ポタッ…(血)
帝雅「ぐ…ぐぉ…!ぐぉおおおおおおおお!ぬぉおおおおおおおおおお!!」
賢二「こ、これが…今のが何でも斬れる必殺技…!」
帝雅「命を賭して、我が右腕を奪ったか…!命懸けで、腕ごときを…!」
盗子「なんで…なんでなの…?」

盗子「ソボー!!」
ソボー「…ケッ。相変わらず…うざってぇクソジャリだなぁオイ。」
なんと!ソボーが現れた。
技を使ったのはソボーだった。
帝雅「まさか、生きていたとはな宇宙海賊よ。見事一矢報いたというわけか…。」
ソボー「安心しろやぁ、呪いの発動までにゃあまだ間がある。ちゃんと殺してやらぁ。」
盗子「そ、ソボー!」

ソボー「テメーをなぁ!!」
盗子「なんでっ!?」
恒例の流れだった。

 

4-228:復讐〔14歳:LEVEL40〕
驚くべきことに、盗子の代わりに一撃ブチ込んだのはソボーだった。
だが助けに来たのか殺しに来たのかはよくわからない感じだ。
盗子「あ…ありがとうソボー!助けに来てくれたんだね!命まで…懸けて…!」
ソボー「あ゛?勘違いしてんじゃねぇクソジャリ。俺・様・自・身の、復讐のためよぉ。」
盗子「う゛ぅ…そ、そういえば前に言ってたよね復讐とか。確か「左腕」と「顔」…」
帝雅「…と、「娘」の…だろう?」
ソボー「ッ!!!」
盗子「えっ、娘!?そんな話アタシは全然…」
帝雅「そうか、復讐を完璧に果たすため…私と塔子を引き合わせたというわけか。」
盗子「えぇっ!?じゃあ殺されちゃうのアタシ!?今ここで!?」
ソボー「フッ…あぁ、このジャリがテメェのガキと知った時ぁ、震えたぜぇ皇帝?」
盗子「ひぃいいいいいい!」
ソボー「…だが、違ぇんだわ。全然違ぇよ…コイツは、テメェのガキじゃねぇ。」
盗子「そ、ソボー…?」

ソボー「クソ弱ぇし。」
盗子「そっち!?」
だが説得力はあった。

 

4-229:脱出〔14歳:LEVEL40〕
なにやらそのまま戦ってくれそうな感じのソボー。
だが油断すると盗子も殺されかねないので注意が必要だ。
ソボー「さ〜て、じゃあやるとしようかぁ…時間も無ぇことだしよぉ。」
帝雅「なぜだ海賊よ、なぜ塔子を助けようとする?まさか自分の娘に重ねたか?」
ソボー「あ゛ぁ!?無礼なこと抜かしてんじゃねぇぞクソがぁ!」
盗子「無礼はどっちだよ!?アンタも相当だぶふっ!
ソボー「見ての通り、守る気なんざサラサラ無ぇ。テメェを殺してぇ…それだけだぁ。」
帝雅「そうか、ならば決着を付けるとしよう。早めに止血をせねば私も危ういしな。」
ソボー「おいクソジャリィ、テメェは邪魔だぁ…とっとと失せろやぁ。」
盗子「えっ!?で、でも…!」
ソボー「どうせ呪いで死ぬ身だ…最期の記憶にテメェがいちゃ、あんまりだろぉ?」
盗子「だからアンタの方があんまりだぶふっ!
ソボー「さぁ行けぇ!5秒以内に失せねぇとブッ殺すぞぉ! ゼロッ!!」
盗子「早いっ!!」
盗子はなんとか脱出できた。

 

4-230:激戦〔14歳:LEVEL40〕
邪魔な盗子達を追い出し、ソボーと帝雅の一騎打ちが幕を開けた。
どっちも悪だがそれを言い始めたらキリが無い。
ソボー「やれやれ、やぁっと邪魔くせぇのが消えた…せーせーしたぜぇ。なぁオイ?」
帝雅「同意を求めるな。 にしても貴様…やはり重ねていたのだな?塔子と娘を…」
ソボー「ケッ、全然似てねぇよぉ。俺様のガキを、あんなブサイクと一緒にすんなぁ。」
帝雅「ほ、ほほぉ…実の親を前に、娘を愚弄するか貴様…!」
ソボー「だがまぁ、ガキなんて似たようなモンかもなぁ。ギャーギャーうるせぇしよぉ。」
帝雅「結局似てるのか似てないのかどっちなんだ。」
ソボー「殴られても蹴られても、家臣すら怯える俺様の周りを…ウロチョロとよぉ。」
帝雅「オイ貴様…私を無視するな。」
ソボー「ったく、ウゼェったらねぇよなぁ…。ウザすぎて、調子が狂っちまうわぁ。」
帝雅「む…無視するなぁあああああああ!!」
ソボー「二度と会いたくねぇ…地獄まで追ってきやがったら、殺すぜぇ…盗子ぉ…!」

ジャッキィイイイン!!(激突)
激しいバトルはしばらく続き、そして唐突に止んだ。

 

4-231:本気〔14歳:LEVEL40〕
そしてその頃、最上階の頂上決戦もまた、終わりへ向かおうとしていた。
〜帝城最上階:天帝の間〜
父「よっしゃー!魔人は全て倒したぞ!嬉しいぞー!父さん嬉しくてウワァーーン!」
大魔王「ど、どうしよう…。段々面倒なキャラになっていく…。」
父「ぐっ…ふぅ、まぁすまんが慣れてくれ。私もこれでも苦しんでるんだぜイェーイ!」
大魔王「全然そうは見えないけどね。」
父「そろそろ限界も近いし…終わりにしようか。あ、終ってのは父さんの奥さんで…」
大魔王「いや、聞いてないし。でもまぁ、終わらせようって意見には賛成かな。」
父「ならば…いくぞ!燃え上がれ十字の炎、「十字放火(クロスファイア)」!!」
大魔王「いいねぇ!じゃあ僕は…「魔界深淵流」、奥義!「摩訶不思斬り」!!」
ズゴォオオオオン!!
ズガァアアアアアン!!
ドッゴォオオオオオオオオオオオン!!
城への配慮は一切無かった。

 

4-232:躊躇〔14歳:LEVEL40〕
怪物同士の闘いはなんというか凄まじく、ドッカンドッカンもう大変。
いい加減にしないと城が崩れそうな感じだった。
大魔王「ハァ、ハァ、参ったなぁ…。これが「人類最強」か…予想以上だったよ。」
父「ふぅ…貴様こそ、この状況でまだ余裕があるように見える。父さん限界近いぞ。」
大魔王「だけど…」
父「だが、しかし!」
ダダッ!(駆)
二人は同時に駆け出した。

なんと!大魔王は剣を投げつけた。
ミス!父は奇妙な動きで剣を避けた。
父「ハッハー!もらったぁ!!」
大魔王「…おっと、いいのかなぁ?」
父「なっ…!?」

勇者「むっ、親父…!」
なんと!剣の行方には勇者がいた。
父「うぉりゃああああ!!」
ズバシュッ!!(斬)
大魔王「うぎゃあああああああ!!
父は躊躇せず斬った。

 

4-233:膝折〔14歳:LEVEL40〕
占い師に逃げられ、仕方なく最上階へと向かうと、そこでは親父達が闘っていた。
着いた瞬間剣が飛んできてビビッたが、驚異的反射神経で避けた俺はさすがだ。
大魔王「ぐっはぁ…! な、なんで…?普通、親なら…子をかばうでしょ…?」
父「フッ、我が子なら絶対避けられる…父さんは信じていたのさ。」
勇者「フン、親父が俺をかばう?全く信じられん話だ。」
大魔王「か、噛みあって…ない…!」
大魔王は片ヒザをついた。
勇者「よし、じゃあ最後は俺がトドメを刺してハッピーエンドだな!」
父「いやちょっと待て勇者、今は父さん史上最大の見せ場だと思う。」
勇者「却下だ。この俺以上に誰かが目立つくらいなら、みんな死ねばいいんだ。」
父「お、お前…。」
父もガックリとヒザをついた。

 

4-234:好機〔14歳:LEVEL40〕
トドメは是非とも俺が刺したかったが、親父がウザいので仕方なく譲ってやることに。
父「さて…改めましてこんばんは!今度こそ父さんが貴様を葬るぜチックショウ!」
勇者「や、やっぱり代われ親父!貴様じゃ台無しだ!」
大魔王「ハァ、ハァ…ネェいいのそんなにのんびりしてて?機を逃しちゃうよ?」
父「フッ、安心しろ。仮に呼んだとて助けは来んよ。 ではサラバだ、大魔王よ!」
ドスッ!(刺)
なんと!父は背後から刺された。
父「なっ、バカ…な…!人の気配など…無かった…はず…!」
勇者「お、俺じゃないぞ!?」
父「勇者…さすがにコレはちょっと…。」
勇者「いやマジで!突然あっちから剣が…!」
声「…ハハハッ、やってやったぜ!ざまぁみろ「勇者」よ!ハッハッハー!!」
父「な…なぜ貴様が…!?」

暗黒神「待ちわびたぜ…この時を。」
しぶといにも程があった。

 

4-235:異臭〔14歳:LEVEL40〕
親父を背後から襲ったのは、なんとあの時殺したはずの「暗黒神:嗟嘆」だった。
何度かブッ刺して死んだのを確認したはずなんだが…まったく困った化け物め。
勇者「お、オイ親父!親父大丈夫か!?チクショウ、こんなことなら…!」
父「ぐふっ! だ、大丈夫だ勇者。心配するな。」
勇者「こんなことなら、もっと保険金を…!」
父「父さんが心配になってきたぞ。特に「もっと」ってとこに…。」
大魔王「いや〜、これはまた意外なお客さんだねぇ。僕も驚いちゃったよ。」
暗黒神「ケッ、テメェに組する気はねぇよ。たまたま利害が一致しただけだ。」
勇者「ニオうな…。」
父「フッ、違うぞ勇者。これはむしろ、ほとばしる大人の魅力だ!」
勇者「いや、加齢臭的な話じゃねーよ!そもそも親父じゃなく…暗黒神、貴様だ!」
暗黒神「あぁ?何の話だ…小僧?」
勇者「貴様からは、薄っすらだが腐臭がしやがる。テメェ…「死体使い」だな?」
暗黒神「…フン、勘の鋭い小僧よ。」
コイツの方がしぶとかった。

 

4-236:同盟〔14歳:LEVEL40〕
俺の読み通り、暗黒神の中身は「死体使い」のジジイ…黒猫の野郎だった。
だが、死体の能力を自在に使えるってことは、脅威なのに変わりはないがな。
勇者「そうか、そいつの死体に乗り移り脱出したわけか。ウザいにも程があるな。」
暗黒神「損傷が激しく一時危なかったが、さすがは嗟嘆様…素晴らしい肉体だよ。」
大魔王「あぁ、暗黒神じゃないんだね。じゃあもしかして仲間になってもらえたり?」
暗黒神「断る…と言いたいところだが、いいだろう。持つ力は大きいほど良い。」
大魔王「決まりだね。んじゃ、行こうか。ハァ〜やっぱ夜玄の言う通りだったなぁ〜。」
勇者「夜玄…占い師か?奴が何だって?」
大魔王「終焉の時は今じゃないってさ。決戦は最初の予定通り、秋!また会おう!」
ガシャァン!(割)
大魔王達は窓の外に消えた。
勇者「チッ、待ちやがれクソが…!」
父「待て勇者!父さんを…父さんを一人にしたら、泣いちゃうんだからネッ!」
勇者「こんな時に副作用か!ちっとはTPOをわきまえやがれ面倒な奴め!」
父「…今のお前じゃまだ勝てん。決戦の時に向け、これから父さんと遊ぼっ☆」
勇者は怒りの矛先が変わった。

 

4-237:残留〔14歳:LEVEL40〕
大魔王達は、一瞬の隙を突いて逃げていった。俺としたことが不覚だった。
まぁ親父も手負いだし、俺一人で二人を相手にするのはどのみちキツかったがな。
勇者「ふぅ〜…さて、じゃあ俺らも戻るとするか。」
父「ふむ…いや、お前は先に帰っていなさい。父さんにはまだやることがあるんだ。」
勇者「やることだと?何言ってやがるんだそんな体で…」
父「いや、財宝を漁りに。」
勇者「ゆ、「勇者」の鑑だなお前…。」
父「この帝城は、想い出深き場所でな。少し…見て回りたいのだよ、久々に。」
勇者「フン、まぁいい。今後の作戦を練るんだ、晩飯前には戻ってこいよな。」
父「…ああ。」
勇者は去っていった。
父「さて…そろそろ出てこないか?あまりのんびりしていられる傷でもないんだ。」
声「…さすがだなぁ人類最強。気配を消すのは自信あったんだけどなぁ〜。」
父「何者だ貴様は?とりあえず名を名乗るがいい。」
声「名前かぁ、そうだなぁ…」

マジーン「まぁ、「マジーン」でいいわ。」
その晩、父が戻ることはなかった。

 

4-238:点呼〔14歳:LEVEL40〕
最上階から一気に下ると、戦闘の跡は見られたが、敵も味方も誰もいなかった。
どうやら今回の戦いはこれで終わったらしい。ヤベェ…俺、ほとんど何もしてねぇ。
〜酒場〜
勇者「というわけで、とりあえず生存確認をしようと思う。番号ぉー!」
盗子「イーーチ!」
土男流「ニィーー!」
忍美「サーーンなのだー!」
勇者「チッ、一人か…。」
忍美「うわーん!いくら敵だったとはいえ無視はあんまりなのだー!」
盗子「いや、ず〜っと一緒なのに無視されたアタシの方が酷くない!?」
賢二「暗殺美さんもいるけど、傷が深かったから今はまだ眠ってるよ。」
無職「ワチもいるですけど、太郎さんと愉快なお仲間達は…その…」
賢二「えっ!ま、まさか…!」
勇者「逃げたんだろ?」
無職「ええ…。」
勇者「やれやれ、思ったよりも厳しいな…。こりゃ、滅んだな世界。」
勇者は希望が見えない。

 

4-239:苦境〔14歳:LEVEL40〕
皆の話を総合すると、大魔王、帝雅、夜玄、竜神、女神の死は確認できていない。
だがこちらの生き残りはどう考えても雑魚ばかり。これでどう戦えというんだ。
大魔王が言うには最後の決戦は秋…今は夏だから、そう長くもない。時間は無い。
これまでは、ピンチには強い誰かが助けに来たが、もうみんな死んだ。誰も来ない。
これからが本当の俺達の戦いってことか。「守られる側」じゃない、「守る側」の…

いや、「やられる側」の。
勇者は希望が見えない。

 

4-240:旅立〔14歳:LEVEL40〕
数日後、旅立ちの準備は済ませた俺だったが、まだまだ不安は消えずにいた。
敵は恐らく本拠地…メジ大陸で待ち構えている。ならばとりあえず向かっておこう。
だが、今の戦力で勝てる相手とは到底思えない。それを補う手段も考え付かん。
勇者「ま、なるようになるか…いや、ならないか…やれやれ…。」
盗子「おっはよー勇者!いよいよ出発だね〜なんか緊張するねー!」
勇者「よぉ盗子、今日も朝から絶望的な顔面だな。頑張れ。」
盗子「うっさいよ!もうじき死んじゃうかもなのになんで相変わらず手厳しいの!?」
賢二「おはよう勇者君。いよいよだね…でも大丈夫!ちゃんと遺書も書いたし…。」
勇者「よぉ賢二、いつ見ても清々しい諦めっぷりだな。なんか逆に頼もしいぞ。」
賢二「アハハ…まぁ今度ばかりは、本物になるかも…しれないけどね…。」
勇者「賢二…。」
盗子「ねぇ勇者、希望は…あるんだよね?これで終わりじゃ…ないよね?」
勇者「盗子…。」

勇者「フッ…ああ、終わらない!俺達の未来は、希望で満ちている! そう―――」



俺達の戦いは、まだ始まったばかりだ!

こうして勇者は歩き出した。


あてどない、遥かなる旅路を…。





〔キャスト〕

勇者
賢二
盗子

盗子「えっ!ちょ、ちょっと待って!?なにこの「打ち切り」みたいな感じ!?」
勇者「いや、もう心が折れたし。」
賢二「が、頑張ろうよ!ここまできてうやむやってあんまりじゃない!?」
盗子「そうだよ!やってみなくちゃわかんないじゃん!ね!?」
勇者「フン、やらんでもわかるさ…」
盗子「ゆ、勇者…。」

勇者「最後は絶対、この俺が勝つってことはなぁ! やってやるぜぇーー!!」
もうちょっとだけ続くんじゃ!

 

外伝(陸)