第十二章

 

4-181:泥棒〔14歳:LEVEL40〕
城のちょうど半分…15階にあるヤケに静かな部屋には、ヤケに静かな親父がいた。
あの親父がこんなに大人しくしていられるはずがない。きっと、何かある。
〜帝城15階:閑散の間〜
勇者「よぉクソ親父。見かけんとは思っていたが、敵となって現れるとはなぁオイ。」
父「悪いな勇者、もはや私は…お前の知る父ではない。どうだ悲しかろう?」
勇者「死ぬほどどうでもいい。」
父「父さん悲しい…。」
勇者「ふむ、どうやら別人ってわけでもなさそうだ。となると…誰の差し金だ?」
勇者「フッ、いい勘してるじゃねぇか…勇者。」
勇者「そう言って解樹が現れるわけだな?」
解樹「フッ、いい勘…え゛ぇっ!?」
勇者は見せ場を奪った。

 

4-182:開戦〔14歳:LEVEL40〕
適当にカマをかけたら、やっぱり出てきた解樹。相変わらず惚れ惚れする読みだ。
解樹「まったく…前にも思ったが、やっぱ油断ならねぇガキだぜお前は。」
勇者「フン、「呪い」か何かの影響でもなけりゃ、こんな親父は説明がつかんしな。」
解樹「そういうお前も、ここにいるってことは…手に入れたんだな?「断末魔」を。」
勇者「さあな。全く自覚が無いからよくわからん。」
解樹「それは育ちのせいじゃないのか…?」
父「失敬な!父さんは清く正しく優しく育てたかった!」
勇者「どっちが失敬だよ!なんだ貴様ら、この俺の性格が歪んでいるとでも!?」
解樹「いや、歪みなく悪の方面まっしぐらだろ。」
勇者「オーケーまずは貴様から殺す!」
解樹「おっと、いいのか?俺が死んだら…テメェの親父は解放されないぜ?」
勇者「…ん?」
解樹「な、なんだよその「え、だから?」ってな顔は…。」
勇者「フン、まぁいい。望みとあらばまずは親父から…血祭りに上げてやろう。」
父「フッ、来い…勇者!」
壮絶な親子喧嘩が始まる。

 

4-183:契約〔14歳:LEVEL40〕
親父を惑わしてるのは解樹のようだが、話の流れでまずは親父を倒すことになった。
一度は本気で手合わせしてみたかった相手だ、この機会に乗じるのも悪くない。
勇者「さぁやるぞ…の前に、一つだけ教えろ解樹。親父にかけた呪いは何だ?」
解樹「あぁ、名は「生真面目」…かけられたら、おフザけが許されねっつー呪いだ。」
勇者「解かない方がいい呪いじゃないか。むしろ薬の類じゃないか。」
父「妙に晴れやかな気分だよ。まるで悪い夢から覚めたような気分だ。」
勇者「悪いな親父。これから貴様は、再び悪夢を見ることになるだろう。」
解樹「親子の会話じゃねぇな…。」
勇者「さぁ抜けぃ親父!だがハンパな剣ではこの「魔神の剣」には勝てんぞ!?」
父「フッ…確かにな。では私は呼ぶとしよう、我が最強の…「契約獣」をな。」
勇者「契約獣だぁ?フン、貴様ごときのペットが武器化したところで、この俺には…」

父「来るがいい、ペルペロス!!」
勇者「Σ( ̄□ ̄;)!?」
意外なビッグゲストが。

 

4-184:武器〔14歳:LEVEL40〕
親父が呼んだ契約獣とやらは、なんとあのペルペロスだった。そんなバカな。
勇者「ちょ、ちょっと待て親父!ペルペロスは校長のだったとかじゃないのか!?」
父「警備強化のため学園に貸していただけだ。もとは私の可愛い相棒だ。 なぁ?」
ペル「バウ!」
勇者「うぉっ、いつの間に!?」
父「さぁいくぞ相棒!久方ぶりに姿を見せるがいい、「三つ首の矛」よ!」
ペル「ワオォーーン!」
ペルペロスは怪しい光とともに武器化した。
勇者「くっ、なんて禍々しさ…!これが貴様の武器…かの「三神獣」の武器か…!」
父「フッ、あまり褒めるのはヤメてくれ。ペルは喜ぶと尻尾をプルプル振るんだ。」
勇者「フン…面白そうじゃないか。ますます相手にとって不足は無い感じだ。」
父「さぁ勇者!どこからでもかかってこい!!」
勇者「おぉ!いくぞぉ、親父ぃ!!」
勇者はマシンガンを構えた。

 

4-185:連射〔14歳:LEVEL40〕
ペルペロスが武器化した姿は、見るからに強そうなものだった。これはヤバい。
まともにやりあったら大魔王戦の前に大怪我しちまう。ここは遠距離攻撃で勝負だ。
勇者「ハッハッハー!悪いな親父、見せ場の無いままにハチの巣になるがいい!」
解樹「ちょっ、おま…!この流れでその武器は無しじゃないのか!?」
勇者「ルールは俺が決める!それこそがルール!死ねぇえええええええ!!」
ズガガガガガガガガガッ!(連射)
勇者はマシンガンを連射した。
だが弾丸は全て叩き落とされた。
勇者「…チッ、どうやらこの程度の武器じゃ話にならんらしいな。やれやれだ。」
父「さぁ勇者!そろそろ本気でかかってこい!!」
勇者「おぉ!いくぞぉ、親父ぃ!!」
勇者はバズーカを構えた。

 

4-186:流派〔14歳:LEVEL40〕
その後バズーカも派手にブッ放したが、やはり親父には効かなかった。化け物め。
勇者「ったく、銃弾を打ち落とすとか型破りにも程があるぞ。普通死ぬだろうが。」
父「そんなのが効いたら軍隊が魔王倒しちゃうだろ。我々「勇者」の存在意義が…」
勇者「悪の手に堕ちた貴様が「勇者」を語るな!それは、俺だけの特権だっ!」
勇者の攻撃。

勇者は200のダメージを受けた。
勇者「ぐっ…! なっ…カウンターだと…!?それにこの十字の傷跡は…!」
父「ほぉ、この「十字迎撃(クロスカウンター)」を受けてその程度とは、さすがだな。」
勇者「クロス…ってそれはカルロスの…!貴様いつの間にそんな技を…!?」
父「ふむ…どうやら勘違いしているようだが、この技は我が一族に伝わる秘剣だ。」
勇者「ってことはじゃあ、貴様がカルロスに…!?」
父「まぁ全ては伝承しきれなんだがな。我が流派…「縦横無尽流」は、奥が深い。」
勇者「…テメェ、そんなのがありながらなぜ俺に教えなかった?それでも親か!?」
父「フッ…確かにお前がこの剣を継いだら、この私をも越えるやもしれん。 だが…」
勇者「だが…?」

父「それは、ヤダッ!!」
プライドの問題だった。

 

4-187:教育〔14歳:LEVEL40〕
なんと、あのカルロスに剣を教えたのは親父だという。そうかだから奴は地球に…。
にしても、一族の秘剣を他人に仕込むとはなんて奴だ。しかも理由が嫉妬て。
勇者「ったく…なんて情けない生き物なんだ。もういっそのこと死ねばいいのに。」
父「フッ…オイ解樹、ハンカチを。」
解樹「いや、泣くなよ!頑張れ父親!」
勇者「さぁ吠えるがいい魔神の剣よ!地獄の業火で世界を焼き尽くすがいい!」
解樹「息子は息子で容赦ねぇなオイ!しかも禍々しいし!」
父「甘いわ勇者!天地を十字の血で染めろ、「血染十字(ブラッディクロス)」!」
ガキィイイイン…ズバシュッ!(斬)
勇者は大ダメージを受けた。
勇者「くっ、バカな…!俺の攻撃がかすりもせんだと…!?」
父「お前は確かに強い。だが、上には上がいるということを、この父が教えてやる!」
勇者「イヤだ。」
父「フッ…オイ解樹、カミソリを。」
解樹「手首を切るな!生きろ父親!」
父は威厳が足りない。

 

4-188:想像〔14歳:LEVEL40〕
その頃、遅れて現れた賢二は―――
〜帝牢:最下層〜
賢二「ゼェ、ゼェ、ゼェ…。」
オロチ「ハァ、ハァ、ハァ…チッ!」
賢二「ハッ!えっと、あ…〔絶壁〕!?それとも〔鉄壁〕!?」
商南「いや、攻撃せーや!なんで暗黒神戦からちっとも成長してへんねん!?」
暗殺美「そ、それが賢二君のいい…いい…い、いい加減にしろさクズが!!」
賢二「無事に生き残れたら…死のう…。」
オロチ「だが、この僕の攻撃をこれほどに防ぐとは…その点は認めざるをえんな。」
商南「まぁ確かに、おかげで命拾いしたわ。そこだけは褒めたるわタレ目っち。」
賢二「あ、ところで、今さらですがこの大蛇の方はどなたですか…?」
オロチ「僕か?僕はオロチ…神獣パジリスキュと融合した、史上最強の大蛇だ。」
賢二「聞くんじゃなかった…。」
商南「ビビるなや!アンタもこの日に向けて修行してたんちゃうんか!?」
賢二「え?あ、ハイ…」

賢二「オッパイ仙人さんと…。」
暗&オ「イヤァアアアアアアアアアアアアア!!
二人は色々想像した。

 

4-189:石化〔14歳:LEVEL40〕
賢二は相変わらず賢二で、例の如く防御しかしていなかった。
もしこのままが続くようなら期待外れもいいとこだが、果たして…?
オロチ「さぁそろそろ攻撃してこい小僧!貴様とならば、楽しい闘いができそうだ。」
賢二「いや、でもやっぱり殺生とか…ねぇ?できれば穏便に、話し合いとかで…」
商南「ハァ?何言うてんねんアホかボケ?世界滅亡目論む組織の一員やで!?」
暗殺美「そうさ!それに…それに私の兄上は、コイツに…殺されたのさ!」
賢二「えっ…?」
オロチ「うむ、お前の兄は実に強き男であった。実に楽しい殺し合いだったよ。」
賢二「も、もしかしてアナタは、楽しい楽しくないで人殺しができちゃう人…ですか?」
オロチ「フン、なんだ貴様、許せんなとでも言いたいのか?」
賢二「いや、身近にもっと凄い人がいるんで…。」
オロチ「で?やるかやらんかハッキリしろ。これ以上逃げる気ならキレるか泣くぞ?」
賢二「…やりますよ。だってアナタは暗殺美さんのお兄さんを、殺したんですよね?」
暗殺美「だ、だ、誰が「お義兄さん」さ!?勝手に婿に来てんじゃないさカスがっ!」
賢二「まさか怒られる流れになるとは…。」
商南「あ、せや暗殺美。そーいや勇者からこんなん預かってんねん。(ニヤリ)」
暗殺美「ん?何さこのメモ…?」

メモ『さぁ告れ。』
暗殺美は石になった。

 

4-190:決断〔14歳:LEVEL40〕
意外にも攻撃する気があるっぽい賢二。
そして追い詰められた暗殺美。
さぁ、どうなることやら。
商南「で?どないすんねん暗殺美?言わへんのやったら勇者にチクるで?」
暗殺美「ゆ…勇者の倍額出すさ。だ、だから見逃してほしいのさ。」
商南「ほっほ〜、ええ読みやん♪ま、ウチはそれでもええけど…アンタはええの?」
暗殺美「な、何が言いたいのさ?」
商南「ええ機会なんちゃうん?それとも、このままの関係…続ける気ぃなんかぁ?」
暗殺美「う、うぐぅ…。」
暗殺美は決断を迫られた。
オロチ「死ねぇえええええええ!!」
賢二「ひぃいいいいいい!!」
商南「急がな死んでまうで?」
暗殺美「くぉおおおおおっ…!」
暗殺美は決断を急かされた。

 

4-191:勇気〔14歳:LEVEL40〕
そして、ついに―――
オロチ「さて、そろそろ本気でこい小僧。それともただ身を護り続けるだけか?」
賢二「僕だって…防御だけ学んできたわけじゃないですよ!今日こそは…!」
商南「さぁどないすんねん!?タレ目かて勇気出してんねんぞ!?」
暗殺美「…私の死に様…見てろさ、商南。レモン100個分の勇気を振り絞るさ!」
商南「おぉっ!行くねんなついに…って、なんで死ぬ気やねん!生き様見せろや!」
暗殺美「すぅ〜〜〜…(吸)」

暗殺美「け…賢二きゅん!あのっ、その…す……好きさぁーーーー!!」


商南「うぉー!い、言いよったぁーー!!」
賢二「えっ…!?」

オロチの攻撃!
ミス!賢二は間一髪で避けた。
賢二「あ、ありがとう暗殺美さん!「隙」だらけだったんだね!」
商南「史上もっともベタな返しキタァーー!!」
暗殺美「ちょっと…しばらく立ち直れそうに…ないさ…。」
賢二「???」
オロチ「さぁまだまだいくぞ小僧ぉ!!」
暗殺美「この恨み…晴らさでおくべきかさぁあああああああああああああああ!!」
完全に逆恨みだが。

 

4-192:突進〔14歳:LEVEL40〕
決死の告白を台無しにされ、ブチ切れちゃった暗殺美。
もはや暴れるしかなかった。
暗殺美「ぬぉおおおおおりゃああああ!死ねやぁあああああああああああ!!」
商南「あっ、アカン!そない無防備な突進は…」
暗殺美「うるさい黙れさ!」
商南「告白だけにしとけや!」
暗殺美「ぶはっ!(鼻血)」
オロチ「フッ、遅い!遅すぎるわ!怒りに曇った技など食らうかぁーー!!」
ズバシュッ!(斬)
オロチの攻撃!

ミス!というかオロチの頭が一つ落ちた。
オロチ「なぁっ…!? ぐわぁあああああああ!
暗殺美「あれ…?」
商南「いや、なんで暗殺美までビックリしてんの!?アンタが斬り落としたんじゃ…」
オロチ「き、貴様かぁ小僧ぉ!!」
賢二「補助系魔法、〔倍化〕…。 言ったでしょう、防御だけじゃないって!」
でも攻撃でもないって。

 

4-193:邪王〔14歳:LEVEL40〕
賢二の補助魔法で一瞬強くなった暗殺美は、オロチに一撃食らわせた。
さぁ次は、次こそは賢二の番だ。
賢二「ひぃいいいいいい!お助けぇーーー!!」
商南「って結局それかい!ここは「後は僕に任せて」の場面ちゃうんかい!?」
暗殺美「うぐっ、か…体がうまく動かないさ…!なんでさ…!?」
オロチ「無理はヤメておけ。急速に力を上げた反動がきたのだ。しばらく動けまい。」
商南「ハァ、やれやれやなぁ…。こーなったらウチが、やるしかないやんか。」
オロチ「フン、それこそヤメておけ。もはや貴様の攻撃なんぞ…」
商南「はぁ?何言うてんねん当たり前やろ。ウチにできるのは…コレくらいやわ。」
商南は賢二の口に何かを入れた。
賢二「あ、商南さん!?い、一体…何を…ぐぁああああああああ…!」
商南「コレな、“アイツ”の毛髪から成分抽出して、極秘で開発させた薬やねん♪」
暗殺美「なっ…あ、アンタ賢二君に何しくさってんのさ!?あとアイツって誰さ!?」
商南「ま、危のうて売り物にできひんのやけどな。この…「邪王丸(じゃおうがん)」。」
フシュゥウウウウ〜…(煙)

賢二「オーケー、テメェら…皆殺しだっ!!」
賢二は勇者化した。

 

4-194:暴走〔14歳:LEVEL40〕
商南の危ない薬により、賢二は黒賢二に変化した。
つまり〔反転〕の時と同じになる予感がビシバシと。
賢二「よぉ待たせたなぁ大蛇。お望み通り、これから貴様に地獄を見せてくれよう。」
オロチ「な、なんだその見事な変貌っぷりは…?多重人格的なアレか?」
暗殺美「アンタなんてことしてくれんのさ!優しい賢二君がまた勇者みたいに…!」
商南「ま、まぁなんちゅーの?ギャップ萌え…みたいな?」
賢二「食らえぇ〔熱血〕〔炎殺〕〔爆裂〕〔炎陣〕〔獄炎殺〕〔紅蓮〕!!」
暗殺美「ギャップ萌えどころの話じゃないさ!物理的に燃えに燃えまくってるさ!」
オロチ「ちょっ、限度が…!」
賢二「くたばれぇ〔大竜巻〕!死ねぇ〔氷点下〕!ヒャッハー!」
商南「うっぷん…たまっとったんやな…。」
賢二「滅びろぉおおおおおお!世界ぃいいいいいいい!!」
新たな魔王が降臨した。

 

4-195:責任〔14歳:LEVEL40〕
商南の劇薬で暴走した賢二は、ひとしきり暴れて去っていった。
残された三人は呆然とするしかなかった。
商南「い、行ってもうたな…あのまんまで…。」
暗殺美「な、なんで戻らないのさ!?アンタこの責任をどう取るつもりさ!?」
商南「あ〜ハイハイわかったわかった。ほな責任取って結婚したるわ。」
暗殺美「そ、そんなの認めるわけないのさ!豪快にちゃぶ台をひっくり返すさ!」
オロチ「ゲフッ…やれやれ、油断したとはいえ、この僕がこれほどまでに…なぁ…。」
商南「まったくやれやれやな…。んで?どないすんの?まだ続けるゆーんか?」
暗殺美「ぶっちゃけ私は今それどころじゃないさ!追わなきゃなのさ!」
オロチ「…フッ、もうよい。もう…よいわ。」
オロチは人の姿に戻った。
オロチ「お前達のおかげで楽しめた、もう思い残すことはない。あとは田舎で隠居…」
暗殺美「ハァ?なに勝手に終わらせてんのさ、私は兄上の恨みは晴らしてないさ。」
オロチ「くっ、いや、それは…。」
商南「せやなぁ、ほな用心棒させるゆーんはどやろ?それでチャラや。」
暗殺美「なんでアンタが決めるのか釈然としないけど私は別にそれでいいさ。」
オロチ「うぐっ…わ、わかった。力を貸そう。」
オロチが仲間に加わった。

 

第十三章