最悪の場面で、最悪の奴に遭遇してしまった。いるならいると早く言ってほしかった。
勇者「フッ、まぁわかってたがな。俺がいる所にはお前が現れお前が俺で俺が俺で」
魔王「動揺が半端無いな。さっきのは見なかったことにしてやるから落ち着け。」
勇者「ふぅ…何をしていた？暇だったんなら、俺達の戦闘を見に来ていたはずだ。」
魔王「いや、こっちにもいたんだよ強ぇのが。あっちの泉の底から沸いてきたんだ。」
勇者「なるほど。金のオッサンと銀のオッサン…どちらを選ぶか迫られたんだな？」
魔王「だったら普通のオッサンでいいだろ。色付きの方がかえって怖ぇよ。」
勇者「で、お前はそのオッサンと闘ってたというわけだな？」
魔王「オッサンだとは一言も言ってないが。」
勇者「にしても、随分ボロボロじゃないか雑魚めが。そんなに苦戦したのかよ？」
魔王「なんとか撃退はしたが、このザマだ。アレが魔神の真の正体に違いないな。」
勇者「オイちょっと待て、それは俺が倒した奴だぞ。あんなのが二体はあり得ない。」
魔王「んだとテメェ、死にたいのか！？」
勇者「いや断る。」
魔王「え、あ…お、おう。」

ジャキィーーン！
勇者「死ぬのは、貴様だ！」

〜カイア塔：最上階〜
賢二「着いちゃったね…不気味なくらい何も無く最上階まで…。」
盗子「も…もう行っちゃおうよ！このままの勢いで行っちゃえば平気かもよ意外と！」
賢二「このまま勢いで天まで昇っちゃったり…。」
盗子「あーもうラチあかない！もう開けちゃうよ！？この扉の先に例の爆弾が…！」
賢二「や、やっぱり待って！なんか、人の気配がする…。絶対中に誰かいるよ…！」
盗子「いや、ビビり過ぎだってば！きっと大丈夫だって！」
賢二「小動物のそういう勘って、侮れないと思う。」
盗子「何その卑屈な自信！？もっと自信持っていこうよ！人としての！」
賢二「怖い…怖いけど…もう退けないよね…。　じゃあ、開けるよ。」
ガチャ（開）

激戦の末…なんとか魔王の撃破に成功した俺。詳しい話は聞かない約束だ。
まぁ重傷は負ったが致命傷はなんとか避けた、奴相手と考えれば大健闘と言える。
あとは予定通り島を爆破できれば、我がビクトリー・ロードも完成…もう少しだぜ。
勇者「というわけで、俺の方は準備万端だ。お前らも大丈夫なんだよなぁオイ？」
無線「うん、やったよ！やったよ勇者ー！無事に爆弾のとこまで辿り着いたよー！」
勇者「フッ、さすが姫ちゃんだぜ。」
無線「いや、何もしてないよ姫！？確かになぜかウチらより早く中にいたけども！」
無線「厳しい…戦いだったよ。」
無線「そーゆーのヤメてくれる！？勇者絶対信じちゃうから！」
勇者「よし、じゃあ急いで持ってこい賢二！事態は急を要するぞ！」
無線「え、いや、ちょっ…無理だよ？こんなの…無理だよ？」
勇者「あ゛ぁん？じゃあ何しに行ったんだ！？今さら無理もクソもあるかよ雑魚が！」
無線「だ、だってコレ見た感じ…５００キロくらいあるし…。」

あー、そういえば。

例の爆弾は一度見ていたはずなのに、肝心なことを忘れていた俺。大誤算だ。
あのサイズと重さじゃ、美咲に乗せてくるのは無理だろう。はてさてどうしたものか。
無線「どどどどーしよ勇者！？終わりなの！？せっかく来たのに手は無いの！？」
無線「投げちゃえばいいよ。」
無線「いや、無理だよバカ姫！持ち上げてちょっと動かすのだって無理だよ！？」
勇者「…いや、できるぞ！賢二のポケットにこっそり突っ込んどいた“アレ”なら…！」
無線「えっ、何を！？ちょっとそういうのばっかヤメてもらいたいんだけど！？」

勇者「それは何でも持てる魔法のグローブだ。ま、あとはコントロールの問題だな。」
無線「え、いや、ちょっ…無理だよ？そんなの…無理だよ？」
勇者「あ゛ぁん？またかよ貴様！？今さら無理もクソも無いと言っただろ雑魚が！」
無線「だ、だってまだ見た感じ…数百メートルあるし…。」

あー、そういえば。

重さの件はクリアしたが、距離の件を考えていなかった。いくら軽くても遠すぎる。
勇者「チッ、手詰まりか…！もう手は無いってのか…！？」
無線「む？どうした…の、賢二君？困ってるのかなぁ？お姉さんに言ってごらん？」
勇者「おっ、その声は麗華か！？よしきた、そいつなら可能だ！投げさせろ賢二！」
無線「いや無理だよ！このグローブは持てるだけで、肩は強くならないよね！？」
勇者「やれるさ。そいつの化け物じみた怪力なら、たとえ彗星でも打ち落とせよう。」
無線「ゆ、勇者…君？言ってる意味がよくわからないんだけれども…？んん？」
勇者「フッ、脅そうったって無駄だぜ？いや、むしろ俺が脅してやろうか賢」
無線「いいだろう投げてくれよう！たとえこの右腕…粉々に千切れようともなぁ！」
無線「えぇっ！？なにこのお姉さん、急におぞましいオーラが…！」
無線「さぁそこの盗賊っ子、天窓を開けなさい。時間が無い。」
無線「あっ、このグローブを！コレがあれば持つのは持てるらしいです！でも…！」
無線「大丈夫、任せて。　スゥ〜〜〜…。」

無線「行くぞ！食らえぃ勇者ぁ…！」
勇者「え、食らえ…！？」
無線「Ｄｉｅリーグボール壱号…！必殺、乙女ストラーーーーーーーーーイクッ！！」

ズォオォォォォォオオオ！！

勇者「おぉ！来た来た真っすぐ飛んでき…過ぎだｒズドォン！！

生を諦め、帝都のために、俺は「爆々弾々」に魔力を込めた。そして島は大爆発を…
…となるはずだったのだが、なんと肝心の魔力が尽きたらしく、全く何も起こらない。
恐らく魔王との最後の決戦で、左目を潰されたのが原因だろう。俺としたことが…！
勇者「くそっ、なんてこった…！もうどうしようも…ぬわっ！？」
魔王「フッ…油断したな、勇者。」

爆弾が爆発しないどころか、今度は魔王に突き落とされかけてもう末期なヤバさ。
波乱万丈なのは慣れっこだが、ここまで畳み掛けられたのは初めてだ。超参った。
勇者「いいか、聞くがいい魔王！このまま落ちたらどのみち俺達は魔神と共に死…」
魔王「…安心しろ、話は途中から聞いていた。やるべきことはわかっている。」
勇者「な…にぃ…！？」
魔王「フッ…まぁ任せておけよ、やってやるさ。お前には…借りがあるんでな。」
勇者「か、借りだと…！？そんなもんくれてやった覚えは…！」
魔王「あぁ、前にメルパ山での…あの時のジャンケンな…俺、遅出ししたんだ。」

魔王「勝負の決着は地獄で着けよう！ま、貴様が来るまでのんびり待つさー！」
勇者「すぐに会えそうだけどなぁぁぁぁぁぁ…！」

ブォオオオン…！（起動）

魔王「ふぅ…悪ぃな勇者、コイツへのトドメだけは…誰にも譲れねぇんだよ。」

ゴゴ…ゴゴゴ…

魔王「ろくでもない両親の悲願…ダメ親の尻拭いは、出来た子の役目…ってか？」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…！

魔王「ったく、やれやれだぜ…。「魔王」が人間を救う…か…。　フッ、世も末だな。」

ゴゴゴ…ゴゴゴォオオオオ…！



ピカァッ！




ドッゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン！！（大爆発）

粉砕された魔神の破片は世界各地に降り注いだ。まるで巨大な花火のように…。
俺は間一髪のところを美咲に拾われ、なんとか事なきを得た。あの鳥やりやがる。
それにしても、魔王の奴…。悪党の分際でまさかあんな行動に出るとは驚きだった。
まさに地獄に仏…いや、地獄に鬼なわけだから、別段驚くべきじゃないかもしれん。
勇者「終わったな…。これで全てが…終わったんだ。」
賢二「うん…やったんだね…！ついに倒したんだね、魔神を！」

勇者「ああ、俺がやった。」

それにぶっちゃけ、飽きた。