第五章

 

3-76:詐欺〔13歳:LEVEL26〕
見捨てられた勇者は攻撃の直撃を食らい、またフッ飛んでいった。
ヤナグさんはその後も大暴れ。辺りは地獄絵図と化していた。
商南「ハァ、ハァ、あかん!もう、逃げられへん!瞬速符も魔防符も品切れや!」
苦怨「ハハハ!ついに打ち止めですか、では後は大人しく死んで…」
商南「…ただし、「波動符」はあるがなっ!」
苦怨「なにっ!?ぐわぁ…!!
〔波動符(はどうふ)〕
使うと衝撃波を巻き起こす攻撃系の術符。
強力なものほど高いので、使った方も違った意味で痛い。
ちなみに「瞬速符」は、その名の通り素早く動ける便利な術符だったり。
苦怨「くっ、油断させるための芝居でしたか…!そうくるとは…!」
商南「術士を倒せばアイツは消える!さぁブッ倒れんかい、波動符2枚目ぇーー!」
鬼神「調子ニ乗ルナ、小娘!!」
商南「き、鬼神…!?」
ヤナグの攻撃。
商南は魔防符でなんとか防いだ。
暗殺美「無いと言っといて実はまだ持ってる…やっぱアンタ詐欺師の器充分さ。」
商南「でもこれでもうホンマに…!チッ、まさか鬼神が勝手に動きよるとはなぁ!」
鬼神「普段ハ任セテヤル契約ナンダガ…マァ死ナレチャ困ルンデナ。」
苦怨「フッ、どうやら油断したのは僕だけじゃないようだ。」
商南「…と見せかけて、波動符3枚目ぇーー!!」
苦怨「なっ…!?」
苦怨は身構えた。
商南は鮮やかに逃げ出した。

 

3-77:謎女〔13歳:LEVEL26〕
商南と暗殺美が大苦戦している頃…
他の場所でも色々と何かが動いてた。
〜観客席〜
女「オイ…さぁオイ、起きな小僧。逃げ遅れて瓦礫の下敷きとは情けないねぇ。」
戦仕「う、うぐっ…!だ、誰だアンタ…?オイラだって怪我さえしてなきゃこんな…!」
女「怪我さえしてなきゃ…ねぇ。そんな言い訳出るようじゃ、期待はできないか…。」
戦仕「う゛っ…いや、すまねぇ。弱気になってたよ。大丈夫、まだイケるぜよ!」
女「フッ…なら出してやる、行ってやりな。小娘だけには荷が重い相手だよ。」
戦仕「助かるぜよ。ところでさ、ホントに誰よオバババババババ!
新たな鬼が降臨した。
〜皇族専用席〜
洗馬巣「い、芋子様!早くお逃げください!皇族席とはいえあの破壊力では…!」
芋子「めんどいわ。それにこんな面白いイベント、見逃したら芋食いたい。」
洗馬巣「芋ならいくらでも用意しますから!全国の芋を買い占めますから!」
芋子「それに古代神と天帝…その因縁は切っても切れない、オレ芋食いたい。」
韻を踏んだようで踏めてない。

 

3-78:秘拳〔13歳:LEVEL26〕
そして…もうぼちぼち、年貢の納め時な状況になってきていた。
暗殺美「ハァハァ…アンタ逃げろさ。さっきの詫びとして、ここは私が引き受けるさ。」
商南「何言うとんねん?逃げ切れるとしたらアンタの方やん。アンタがお逃げ。」
戦仕「いや、逃げるのは二人ともだ。ここはオイラに任せてもらうぜよ。」
苦怨「おやおや、誰かと思えば負け犬君じゃないですか。え?またヤラれに?」
戦仕「フン、さっきは意表を突かれただけぜよ。今度は簡単にはいかせんわ。」
商南(だ、大丈夫なんかアンタ!?見るからに満身創痍やんか…!)
戦仕(正直きちぃがヤルしかねぇ。アンタは勇者連れてとっとと逃げな。急ぐぜよ。)
商南と暗殺美は勇者の方へ向かった。
苦怨「まったく懲りない人だ。キミの技が彼に効かなかったのは覚えてますよね?」
戦仕「「武神流」には七つの秘拳がある。一つ二つ破ったくらいで調子ん乗んなよ。」
苦怨「へぇ…なら見せてほしいものですね。神を討つほどの技があるのなら、ね。」
戦仕「いいぜよ、とっておきを見せてやる!「陸(ろく)の秘拳」、制約の秘奥義…!」
鬼神「どこヲ見テイル?オマエノ相手ハ俺様ダロウ?」
戦仕「おいオメェ!「手袋」の反対はーー!?」
鬼神「ア゛…? ロ…ロクブテ?」
戦仕「うぉおおおおおお!食らえ、「六・武・帝」!!」
戦仕、必殺の一撃!
二度と通じない技を繰り出した。

 

3-79:降臨〔13歳:LEVEL26〕
戦仕の秘拳は見事鬼神に炸裂した。
しかし、かなり効いたようだが残念ながら致命傷にはならなかったらしい。
まぁもう死んでるんだけども。
鬼神「グハッ…!ウグッ、ゲハァアア!チックショオオオオオ!!」
戦仕「チッ、やっぱこの体じゃ完璧は無理かよ…!仕損じたぜ!」
苦怨「ふ、ふぅ〜。少々脅かされましたがその程度ですか。もう終わりでしょう?」
鬼神「貴様ァ…!ブッ殺シテヤル!!」
ドカーーーーン!!(爆発)
暗&商「うわぁーーー!!」
突如謎の爆発が起きた。
暗殺美と商南がフッ飛んできた。
戦仕「ど、どうしたぜよアンタら!?なんであっちから爆発が…!?」
商南「わ、わからへん!とにかく急に勇者が目覚めた思たら…!」
暗殺美「そういや勇者のあの頭のが外れた姿は初めて見たさ。」
女「あの兜が…!? マズいね、恐れてた状況になっちまったようだよ。」
商南「ってアンタ誰やねん!?なに当たり前のように紛れ込んでんの!?」
苦怨「こ、この僕に気取られることなく現れるとは…タダ者じゃありませんね。」
女「今はアタイなんかに構ってる場合じゃないよ。気を抜きゃ“奴”に、殺される。」
一同「や、奴…??」
声「随分と久しぶりに出てきてみれば…なんだ満身創痍じゃないか。やれやれだ。」

ゴゴゴゴゴゴゴ…!

勇者「我が名は「マオ」、手向かう者は…皆殺しだ。」
勇者の中のマオが目覚めた。
だが違和感は無かった。

 

3-80:土産〔13歳:LEVEL26〕
無害かと思われていた勇者の中のマオ(半身)。
だが勇者がボロボロな隙を突いて、ついに出てきてしまった。
はてさてどうなることやら。
苦怨「な、なんで彼が…!?とても立ち上がれる状況じゃなかったはずだ!」
暗殺美「マオ…勇者が半分飼ってるとは聞いてたけど、なんで今になって…?」
戦仕「ま、マオ!?あの古代神…魔神のマオか!?どういうことぜよ!?」
女「勇者の抵抗がゼロになったからさ。どういうわけか超熟睡してるみたいでねぇ。」
商南「う゛っ…で、でも眠ったくらいで復活するなんてなんか簡単すぎへんか?」
女「もう一つあったのさ、奴を縛る枷はね。それがあの兜「守護神の兜」なんだよ。」
暗殺美「守護神…って、なんでアンタそんな詳しいのさ?勇者ファンか何かかさ?」
女「アタイかい…?フッ、それは知らない方がアンタらのためだよ。」
鬼神「マ、マオ…ダト!?あの巨大ダッタ魔神ガ、コンナ糞ガキニ…!?馬鹿ナ!」
勇者「ほぉ、誰かと思えばヤナグじゃないか。相変わらずクソみてぇな魔力だ。」
鬼神「…殺シテヤル!!」
鬼神は本気のパンチを繰り出した。
ミス!勇者は攻撃を片手で止めた。
鬼神「ナ…ニ…!?」
勇者「これでわかったか?いい土産になるだろう…「冥土」への、な。」
鬼神「マ、待ッ…!」
勇者「俺は待つのと盗子が大嫌いだ。」
鬼神「ヤ…ヤメ…グァアアアアアアアアア!!
勇者は「魔界の波動」を放った。
鬼神は跡形も無く消え去った。

盗子の影響力は健在だった。

 

3-81:継承〔13歳:LEVEL26〕
マオが出てきた勇者はとっても強く、鬼神を一発で葬り去った。
「魔界の波動」を放つその姿は、ありえないくらい似合っていた。
商南(な、なんちゅーこっちゃ!あのごっつ強かった鬼神が一撃で…!)
勇者「死んだはずのヤナグがいた…てことは霊媒師がいるな?どいつがそうだ?」
商南「えっ!?う、ウチはちゃうで!?」
暗殺美「わわ私も違うさ!」
苦怨「ぼ、僕も…。」
商南「うわ、汚っ!アンタが…」
姫「ふっ、バレちゃ仕方ないね。」
三人「えっ…!?」
姫「私が姫だよ。」
商南「状況考えてモノ言…える子やないんやったな…。」
勇者「…そうか、お前か。」
勇者の攻撃。

苦怨はフッ飛んでいった。
暗殺美「軽く叩いてあの威力…まぁしばらくは邪魔されなそうでいいけどもさ…。」
商南「アンタなんで今のやり取りでアイツてわかってん!?」
勇者「いや、勇者の記憶で。」
商南「じゃあなんで聞いてん!?」
気まぐれも勇者譲りだった。

 

3-82:正体〔13歳:LEVEL26〕
勇者の軽い一撃で、苦怨もリタイアとなった。
勇者の暴走はいつまで続くのか。
勇者「残るは勇者のお仲間と…見知らぬ女だけか。さーて、どうしてくれようか。」
暗殺美「ふ、フン!私らはともかく、アンタは姫には手は出せないはずさ。」
勇者「関係ないね。俺はマオであって勇者じゃない。 お前ら少しうるさいな…。」
商南「へ? うわっ、ヤメッ…!」
戦仕「待ちやがっ…ぐっ、ヤベェ目まいが…!」
勇者の攻撃。

ミス!攻撃は謎の女に受け止められた。
勇者「…ほぉ、俺の攻撃を片手で止めるとは、ただの女じゃないな。誰だ貴様は?」
女「フッ、相変わらずだねぇアンタ。気が早いのは昔のままだ。」
勇者「なっ、俺を知ってる!?貴様…一体何者なんだ!?」
女「今は名乗れない。でも敢えて呼びたいってんなら、アタイのことはこう呼びな。」

女「謎のお助け仮面…「母さん」と!!」
一瞬でネタバレした。

 

3-83:教育〔13歳:LEVEL26〕
謎の女は、実は全然謎にする気が無さそうな正体を明かしたのだった。
暗殺美「ま、前にソックリなこと言ったオッサンを知ってるさ。アンタ、まさか…!」
母「いい女ってのはペラペラ喋らないもんさ。わかったら黙って言うこと聞きな。」
暗殺美「全身全霊をもってあたらせてもらいますさ!」
商南「ど、どうしてん急に?アンタこのオバはぶっ!!
母「空気の読める奴は長生きする。その逆は…アンタわかるかい?」
商南「ワタクシが間違っておりましたですハイ!お姉様!」
母「いい子だねぇアンタ達。じゃあ二人してさっさと、あの兜とってきな。こっそりね。」
戦仕「お、オイラはどうすりゃいいぜよ?まだ何の役にも立ってねぇんだ!」
母「お前はアタイと、奴の足止めだよ。半身と言えど大した魔力だ、気をつけな。」
戦仕「事情はよく知らねぇが、やるべきことはわかったぜよ。手ぇ貸すぜアネゴ。」
勇者「その強引さ…そうか、お前か。 随分と世話になったが礼はまだだったなぁ。」
母「目ぇ覚ましな勇者。アタイはそんな寝ぼすけに、アンタを育てた覚えは無いよ?」
勇者「フン、育てられた覚えも無いがな。」
まったくその通りだった。

 

3-84:職業〔13歳:LEVEL26〕
マオを再び封印すべく、暗殺美と商南は「守護神の兜」を取りに走った。
というか走らされた。
母「ホラ小僧、これ飲んどきな。それなりの魔法薬だ、少しは動けるようになるよ。」
戦仕「お、オウ助かるぜよ。でもできればもっと早くに欲しかったが…。」
勇者「さーて、じゃあやるとするか。あれからどう変わっているか…楽しみだよ。」
母「現役離れて久しいしねぇ、ピチピチの若い子ちゃんの相手はどうなることやら。」
戦仕「ところでアンタの職は何なんだ?共闘するなら知っときてぇ。」
母「アタイかい?アタイはただの「主婦」だよ、ありふれたね。」
勇者「ハハハ!かつての「魔王」も今は主婦か!堕ちたもんだなぁ「終(おわり)」!」
戦仕「ま、魔王!!?」
勇者の攻撃。
ミス!しかも母さんのカウンターが炸裂した。
勇者「ぐふっ…! チッ、腐っても元魔王ってわけか…簡単にはいかなそうだ。」
母「ナメてかかると痛い目見るよ。よく言うだろ?「母は強し」ってさ。」
姫「変わった名前なんだね、ツヨシ?」
母「いや、今のはそういう意味じゃ…。」
戦仕「ま、魔王って何だよ?アンタ、ホントに主婦なのか?」
母「まったく疑い深い子だねぇ、ホントに主婦だって言ってるだろう?」

母「ただの…「戦業主婦」さ。」
旦那の苦労が知れない。

 

3-85:作戦〔13歳:LEVEL26〕
母さん大暴れ。戦仕も負けじと大暴れ。
どうにかこうにか時間をかせいでいたが、さすがに母さん少し疲れたらしい。
母「お、オーイお前達ー!なにチンタラやってんのさ、パッパと見つけてきなー!」
商南(ったく、どこやねん!早くせんとあのオバはんにシバかれてまうで暗殺美!)
暗殺美「そんなこと言っ…あったさ!この見慣れすぎたフォルムは間違いないさ!」
母「見つけたのかいー!?上等だ、早く戻ってきなー!10秒で来なきゃシバくよ!」
二人は5秒で戻った。
勇者「ほぉ、やるじゃないか小僧。その歳で俺と渡り合えるとはなかなかだぞ。」
戦仕「悪ぃが今日はいいとこ無しでよぉ、ここでキバらんと立つ瀬が無ぇんぜよ!」
暗殺美「で、どうすんのさ?どう頑張っても戦闘中に被せるのはキビしいと思うさ。」
母「言ったろ?奴を縛る枷は二つあると。勇者を起こせば少なからず動きは鈍る。」
商南「せ、せやけどアイツの寝起きの悪さはハンパ無いで!?どうやって…」
母「やれやれ、モノを知らない子達だねぇ。こういう場合、一つしか無いだろう?」

母「目覚めの、「チュウ」さ。」
暗&商「チュウーーーー!!?」
ムードもへったくれも無いが。

 

3-86:葛藤〔13歳:LEVEL26〕
勇者に兜を被せるには、勇者を起こす必要があると母さんは言った。
そして、その方法も…。
商南「どどどどーすんねん!?マセ気味のウチやけどそんなん経験無いで!?」
暗殺美「私もそうさ!仮にあっても私には心に決めた賢…とにかくダメなのさ!」
商南「う、ウチは別に…アイツのこと嫌いっちゅーわけや…ないねんけど…なぁ?」
暗殺美「今のでアンタに決定したさ。」
商南「ちょっ、アカン!そそそそーゆーんはお互いの気持ちが大事やろ!な!?」
勇者「オラァー!くるならドンとこいやー!!」
暗殺美「思っきり誘ってるさ。」
商南「どうポジティブに考えたらそうなんねん!?今のは戦仕に言った言葉やし!」
暗殺美「頑張るさ商南、積極的な奴が勝利を得るのが男女の世界の常なのさ。」
商南「アンタは今のセリフを盗子に言えるか?アレどう見ても敗者の像やんか…。」

〜その頃〜
盗子「…くちゅん!はーーーっくちゅん!!」
ソボー「るっせぇなークソジャリ!ギャーギャー騒いでっとブッ殺すぞテメェ!?」
盗子「し、しゃーないじゃん!きっと誰かが「盗子ちゃん可愛い」とか言ってんだよ!」
涙で前が見えない。

 

3-87:決断〔13歳:LEVEL26〕
商南がためらっている間に、結構時間が経った。
戦仕「ぐふっ…お、オイラもう…ギブアップぜよ…。(バタッ)」
母「どーなってんだいアンタ達!?母さんそんなヘタレに育てた覚えは無いよ!?」
商南「なんでみんなのオカン気取りやねん!人の気も知らんと勝手ぬかしよって!」
勇者「ハハハ!何を企んでるかは知らんが、この俺に攻略法なんぞ皆無だー!」
キィン!ガキィイイン!
母「ハァ、ハァ、強くなったねぇ勇者…母さん嬉しいよ。病に蝕まれた体じゃ、もう…」
勇者「ほぉ、なんだ貴様病気だったのか?どうりで動きが精彩に欠けるわけだ。」
母「体温は常に45度で…」
勇者「死んでるぞ!普通人間は42度超えたらタンパク質が固まって死ぬ!」
暗殺美「さぁ早く決めるさ商南。あの人強がってるけど限界はかなり見て取れるさ。」
商南「や…やっぱ無理や!こんなんでファーストキスなんて耐えられへーん!」
チュィイイイイン!
母「しまっ…オタマが…!」
商南「はわわわ!けど、そーこーしてる間に大ピンチがぁーー!!」
暗殺美「まぁオタマで今までよくもったと言いたいけどもさ。」
勇者「終わりだ!死ねぇーーーー!!」
商南「く…くっそー!もうどーにでもなれやーー!!」

ちゅぅううううううううう…!


商南「え…?」
暗殺美「へ?」
戦仕「なっ…!」
母「あら…。」
勇者「・・・・・・・・。」

姫「ちゅう。」
勇者は鼻血を致死量噴いた。

 

3-88:瀕死〔13歳:LEVEL26〕
出血多量で卒倒した勇者に兜を被せ、なんとか事態は終息した。
商南「ふぅ〜、やっとなんとかなったけど…なんや複雑な気分やわ。なんで姫が?」
姫「おかしいよ暗殺美ちゃん、全然甘くなかったよ。 季節じゃないから?」
暗殺美「いや、「勇者の口からは樹液が出てる」とさっきちょっと…。」
商南「そのことは勇者には伏せといたろな。知ったらさすがにショックやで。」
暗殺美「いや、奴にとっては最高の結果に終わったわけだしきっと大丈夫さ。」
商南「まぁキスした事実は変わらへんわけやしなぁ。死んでも悔いは無い…か。」
暗殺美「うん、死んでも…さ…。」

母「先生ぇーー!!この子は助かるのか!?それとも助かるのかー!?」
医者「いや、できれば選択権をもらえるととりあえず私は助かるんですが…。」
母「つーことはなんだテメェ、ウチの子が死ぬってのかいア゛ァン!?」
医者「いやあのそういうわけじゃ…!あっ、と、とりあえず彼の血液型は…?」
母「そんなん知るかーー!!」
知っとけ母さん。

 

3-89:逃亡〔13歳:LEVEL26〕
原因はともかく重体となった勇者は、救急隊に運ばれていった。
ちょうどその頃、帝都のはずれでは…
忍美「はふぅ〜。ここまで来ればもう平気なのだ。苦怨様は体は大丈夫なのか?」
苦怨「うぐぅ…だ、大丈夫ですよ忍美。それより例の盾はちゃんと持っていますか?」
忍美「もちろんなのだ!でもなんかプルプル動いてて気持ち悪いのだ!」
苦怨「くれぐれも護符は剥がさないように。でないと持ち主の元に戻ろうとしますよ。」
忍美「でも良かったのだ。気絶してる間だったからすんなり奪えたのだ、楽勝で!」
苦怨「フフフ…まぁ負けたのは計算外でしたが、目的の物は手に入りましたしねぇ。」
忍美「大丈夫、次は負けないのだ!「破壊神」を呼び出してブッ倒すのだー!」
苦怨「ええ、それなりの仕返しは…させてもらいますよ、もちろんね。」

〜武術会場〜
商南「あかん…やっぱおらへんわ。死体も見つからへん。絶対逃げてるわアイツ。」
暗殺美「フン、まぁ鬼神も失ったことだしもう雑魚さ。何をそんなに気にしてるのさ?」
商南「いやな、な〜んか裏がありそな気がすんねん。アイツのあの感じ…。」
霊魅「彼の目的は一つ…「破壊神の盾」ですよ…。」
商南「うわっ、いつの間におってんアンタ!? って、破壊神の?なんやのそれ?」
暗殺美「勇者が持ってた呪われた盾さ。鬼神の件から察するに嫌な予感がするさ。」
霊魅「うふふ…ご名答〜…。」
商南「ご名答〜やないわ!知っててんやったらアンタなんで…!」
霊魅「だから私が…阻止しに来たのですよ…。 でも…。」
商南「でも…?」

霊魅「屋台が忙しくて…。」
でもじゃない。

 

3-90:目覚〔13歳:LEVEL26〕
目が覚めると、そこは病室のような…というか集中治療室的なゴツい部屋だった。
決勝の記憶は、ヤナグとかいう霊にブン殴られたところで途切れてしまっている。
ガチャッ(扉)
商南「おぉ〜勇者〜!やっと起きたんかこの寝ぼすけめ。もう三日も経ってんで?」
勇者「商南…ハッ、そうだ!オイ!俺は勝ったのか!?それとも…勝ったのか?」
暗殺美「血の繋がりってのは怖ろしいもんさ。」
勇者「あん?血がどうしたって?いいからとにかく結果を教えやがれ雑魚どもめ!」
商南「あ〜…まぁ詳しい内容は後でな。とりあえずアンタの勝ちや、安心せーや。」
勇者「ああ、知ってた。」
商南「じゃあなんで聞いてん!?てかなんで知っててん!?」
勇者「あっ!そういえば苦怨は!?俺は奴をどうして奴はどうなった!?」
勇&商「逃げられた。」
商南「ってだからなんで知ってんねん!?んでアンタ、ウチのことナメてるやろ!?」
勇者「そんな卑猥なマネはできない。」
商南「そーゆー意味ちゃうわー!!」
勇者「奴が逃げ出す様は見えていた。他の記憶も…徐々に思い出してきたぞ。」
暗殺美「ふ〜ん、記憶は共有なのかさ。じゃあ昔の大戦の記憶とかも見れるかさ?」
勇者「いや、それは無理だな。あくまでも俺の目を通した記憶のみ共有っぽい。」
商南「あっ、でもあんま思い出したらアカンで?したらアンタ…」
勇者「ぶばっ!(鼻血)」
勇者の入院は延びた。

いぃぃよぉお〜!ぁいぃぃよぉお〜!ぁいぃぃよぉお〜!
ポポポポポポポポポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がっていた。

勇者はレベル27になった。
勇者はついでにレベル28になった。
勇者は勢い余ってレベル29になった。
今ならポイント還元がついてさらにレベル30になった。
倍率ドン!更に倍!
勇者はレベル120になった。

そんな夢を見た。

 

第六章