第五章

 

2-76:食逃〔12歳:LEVEL17〕
パンシティを離れ、地図を頼りに神を探すこと数ヶ月…。季節は冬になっていた。
最初は半信半疑だった神の話も、調べるにつれ少しだけ信憑性が増してきた。
とりあえず、一応調べる価値はありそうだ。もしガセだったら盗子の命は無いがな。
〜ギマイ大陸:カヨミ村〜
勇者「ふぅ〜。 やれやれ、この村でも大した成果は無しか…。 ん?賢二は?」
盗子「あ、なんかお昼買ってくるってさ。適当に待っててって。」
勇者「そうか。じゃあ俺達は武器屋でも狩ってくるか。」
盗子「狩らないから!たまには普通にお金出して買おうよ!平民ぶろうよ!」
勇者「オイオイ、無茶を言うな。俺達のどこにそんな金が…」
声「金が無ぇだとぉーー!?」
勇&盗「!?」
女「そう声を荒げるな。確かに今は無いが、後でちゃんと弟子が払いに来る。」
店主「誰が信じるか糞アマぁ!食った分いますぐ払いやがれってんだ!」
盗子「なんか荒れてるっぽいね、あの露店。あれ助けたらお金になんないかな?」
勇者「…いや、関わるな。弟子が払うとかどうとか聞こえた。」
盗子「ふ〜ん。ま、そだね。当人同士の問題だよねやっぱ。」
店主「金が無ぇなら洗え!皿を洗っていきやがれ!そしてその心も洗ってけ!」
勇者「あの店主、いいこと言いやがるぜ…。」

麗華「だーかーらー!!」

俺は、払う気は無い。
勇者は逃げ出した。

だが周りを囲まれてしまった。

 

2-77:弱味〔12歳:LEVEL17〕
不覚にも見つけてしまった、もう二度と会わないと思っていた悪魔の師匠「麗華」。
当然逃げようとしたのだが、なぜか捕まってしまった。やはりタダ者ではないようだ。
勇者「くっ…!は、放せ! とりあえず鼻はやめろ!もげるっ!」
麗華「心配をかけたな店主。コイツが今話していた我が愛弟子だ。」
店主「なんだとこの野郎!テメェか!?テメェが悪の落とし子か!?」
勇者「ふ、フザけるな!誰がこんな性悪の…! 俺の母は元「魔王」だ!」
盗子「いや、そっちの方が「悪」っぽいよ!?もはや究極だよ!?」
勇者「とにかく!俺はビタ一文払わんぞ!たとえどんなに脅されようともな!」
麗華「おぉ、奇遇だな。ワシも脅すのは面倒だと思っていたんだ。(抜刀しながら)」
勇者「おいくらですかっ!さぁ、おいくらですかっ!?」
盗子「ちょっ、アンタ!アタシの勇者をイジめないでくれる!?何様のつもり!?」
麗華「ワシか?ワシの名は麗華。「麗しい華」と書く、乙女チックな「乙女剣士」だ。」
勇者「くっ…!お、覚えてろよ。いつかこの上下関係を覆してやる…!」
麗華「フフッ、ナメるでない。このワシには死角なんぞ皆無…」
賢二「オーイ、ただいまみんなー!お待たせ…って、このおネェさんは??」
勇者「に、逃げろ賢二!たったいま新たな「魔王」が降臨しぶべっ!
麗華「お、おおおおお姉さぁあああんっ!?」
麗華は激しく取り乱した。
勇者「ん?どうした貴様?メチャメチャ動揺してるようだが…。」
麗華「い、いや、なんでもない。少々乙女のツボを突いたセリフだったものでな…。」
勇者「おねえさん。」
麗華「さぁ勇者、素敵な墓石を選びに行こうか。」
勇者「なぜだ!この扱いの違いはなんなんだ!?」
賢二「え?え? い、一体何がどうなって…??」
麗華「う、ううん。なんでもないのよ♪ うふふ☆」

こ、コイツまさか…!
勇者は麗華の弱みを握った。

 

2-78:病気〔12歳:LEVEL17〕
麗華の態度を見て、俺は気づいた。間違いない、コイツは賢二の姉…「賢一」だ。
そういえば奴は「乙女」という言葉を多用する。よっぽどその名がイヤなのだろう。
これは、チャンスだ。このネタで奴を脅せば、立場は一瞬にして逆転できるだろう。
だが奴もそう簡単には認めまい。なんとかうまい具合に奴から引き出さねば!
勇者「と、ところでだ師匠…こんな所で何してるんだ貴様?」
盗子「えっ!この人が勇者の師匠なの!?話と全然違うじゃん!美人さんじゃん!」
麗華「やれやれ。その様子じゃ、とんでもないブサイクと聞かされていたようだな。」
賢二「いや、髪の毛が「蛇」だと…。」
麗華「化け物じゃないか!ブサイクどころか見ただけで石じゃないか!」
勇者「ちょ、ちょっとしたジョークだ、気にするな。ところで質問の答えは?」
麗華「…ふぅ〜。 「神」を追っている。どうやらこの辺りにいるようなのでな。」
賢二「あっ、おネェさんも神を探してるんですか!?」
麗華「お、お姉さぁーんっ!!」
賢二「!!?」
勇者「気にするな賢二、ただの発作だ。コイツは末期の「おネェさん病」なんだ。」
麗華「へ?あ…そ、そうなんだ。そう言われると相手を抱きしめてしまうの、だっ☆」
賢二「うぐぅ。く、苦しいですよ〜。」
盗子「おネェさん病?聞いたこと無いけど…そんなんホントにあるの?」
勇者「何を言う?お前の兄は末期の「ラブリー妹病」じゃないか。」
盗子「痛い、痛いよ勇者…。現実って痛いよ…。」
麗華(あぁ…幸せだなぁ…。)
賢二は失神寸前だ。

 

2-79:作戦〔12歳:LEVEL17〕
俺達と麗華は再会を祝し、晩には宴を開いた。そして逃げた。(金が無いから)
そして深夜。物音にふと目が覚めると、麗華がいなかった。 そうか、行く気か…。
麗華(これ以上一緒にいたら、恐らく勇者にバレる。許せ、賢二よ…。)
声「む?なんだ、目的は同じなのに別行動なのか?つれない奴だなオイ。」
麗華「!! …お前か。若いうちから夜更かししとると背が伸びんぞ?早く寝ろ。」
勇者「なぁ師匠…いや、何でもない。気にしないでくれ。」
麗華「ん?どうした勇者、言いたいことがあるならハッキリ言うがいい。」
勇者「実はな師匠…いや、やっぱ何でもない。」
麗華「…ワシは煮えきらん男は嫌いだ。もう行くぞ? サラバだ。」
勇者「あ、そうだ賢一!」
麗華「だからなん…ハッ!!」

よっしゃ勝った!俺は勝ったぜー!!
勇者の誘導尋問が鮮やかにキマッ…
ドガッ!バキッ!バコバコッ!メキャッ!ドスッ!グゴバキッ!グキッ!ドスドスッ!
ババババシッ!ズゴッ!ドバシッ!ズババン!ドゴッ!ゴンッ!ガコンッ!バシッ!
ズガンッ!ズガガガガン!ズガガガガガガガンッ!ザシュッ!ドバシュッ!ザンッ!


ぼ、僕は…一体…。
勇者は記憶を失った。

 

2-80:忘却〔12歳:LEVEL17〕
朝。目が覚めると、なんだか体中が痛かった。でもなぜか、全く心当たりが無い。
一体、僕の身に何が起こったんだろう。 …というかそもそも、僕は誰なのだろう?
盗子「おっはよー勇者!って、ギャー!なんて顔してるのさ!まるでオバケじゃん!」
勇者「…ゆうしゃ? なるほど、僕の名は勇者というのか…。」
賢二「へ…? ど、どうしちゃったの勇者君?なんかいつもと感じが…。」
勇者「どうやら僕は、鈍器以上の何かで殴打され、記憶喪失になったらしい。」
盗子「き、記憶喪失!?って、そんな自覚ある記憶喪失があるかー!」
勇者「だから悪いけどお前達、僕に僕のことを知ってる限り教えてほしい。頼む。」
賢二「えっ…ホントに覚えてない…の?ホラ、僕は賢二。親友だよね僕ら?」
勇者「けんじ…ゴメン、わからない。そうか親友なのか…。 ホントすまないな。」
賢二「勇者君…そんな…。」
盗子「あ、アタシは彼女!そう、勇者の彼女の盗子ちゃんだよ☆」
賢二(うわー。)
勇者「それは無い。」
盗子「あっさり否定されたー!!」
勇者「本能的な何かが、そう囁いた。勘弁してほしい。」
盗子「謝られたー!! なんかその方がかえって傷つくよ!うわーん!」
賢二「いや、この機に乗じて彼女と言い張った盗子さんも結構酷いよ?」
勇者「大丈夫、そう悲観するほど酷くはないさ。」
盗子「顔を見るな顔を!死ねっ!!」
賢二「ホントに、全部忘れちゃったんだね…。」

ところで、姫ちゃんはどこかな?
全部じゃなかった。

 

2-81:出発〔12歳:LEVEL17〕
記憶を失った僕は、賢二と盗なんとかって奴と、共に旅立つことになった。
なにやら今は、「神」を追っているんだとか。見つかるかは知らないけど頑張ろう。
勇者「朝食も済んだしそろそろ行こうか。日が暮れるまでに次の村に着きたいし。」
盗子「でもさ、平気なの勇者?記憶も無いのに旅するだなんて…。」
勇者「いや、安心してくれ。教えてもらったことは全て記憶したよ、ジェニファー。」
盗子「「盗子」だから!一文字も合ってないじゃん!根本から忘れてるじゃん!」
勇者「だ、大丈夫!大事なことは覚えてるから!」
盗子「フォローになってないどころか逆に傷つくよそれ!」
賢二「でもホントに大丈夫?生活に不都合とかは無いの?」
勇者「うん問題ない。生活習慣や時代背景的なモノは、なぜか都合よく覚えてる。」
賢二「じゃあ、そろそろ行く?とりあえず麗華さんが教えてくれた場所にでも。」
盗子「でも候補は二つあったよね?どっちに行こっか?西?北?」
勇者「間とって北西に行こうか。」
盗子「何も見つかんないじゃん!この選択肢で間をとる意味がわかんないよ!」
勇者「なら西だ。なんとなく、僕は西に何かがある気がするんだ、ナンシー。」
盗子「ワォ!ホントなのサム!?ってだから「盗子」だっての!!」
盗子は「ノリツッコミ」を覚えた。

 

2-82:崩壊〔12歳:LEVEL17〕
カヨミ村から西に向かった僕達は、「ニシシ村」という寂れた田舎町に辿り着いた。
いや、「寂れた」と一言で片付けられるレベルじゃない。なんか、「崩壊」してる…。
賢二「なんか…神探しどうこうって状況じゃないね。人っ子一人いなそうじゃない?」
勇者「ごめん。こっちじゃなかったようだね…。」
盗子「ま、まぁしょうがないよ。二分の一だもん、外れたって気にすることないよ。」
勇者「こんなことなら、最初から素直に北西に…」
盗子「いや、そうじゃないから!そっちは選択肢にすら入れてなかったから!」
勇者「まぁとりあえず、神は後回しにして…今日のところは宿と食事を探そうかね。」
盗子「うん、そだね。最近寒くなってきたから野宿はキツいしね〜。」
賢二「…あ!見て見て!なんかあの家だけ明かりついてない!?人がいるかも!」
勇者「ん、ホントだ! よし、じゃあ話を聞きに…」

表札『神様』

ええぇっ!!?
名前にしてはふてぶてしい。

 

2-83:再会〔12歳:LEVEL17〕
唯一明かりのついていた家…しかもその表札には「神」の文字。まさかの急展開だ。
本来ならもっと苦労の果てに見つけるべき相手だと思うんだけど…まぁいいか。
ガラガラガラ…(開)
勇者「たのもー!ちょっと聞きたいことがあるんだけどー!」
声「はぁ〜い!どちら様ですかぁ〜?」
勇者「フッ、僕?僕はさすらいの記憶喪失…名前は思い出せない。」
盗子「「勇者」だから!なんで今になってソレを忘れちゃうの!?」
少女「えっ…? キャ、キャァーー!!ゆゆゆ勇者先輩!?勇者先輩だぁー☆」
盗子「うげっ!あ、アンタはっ…!!」
弓絵「あ〜ん☆ 会いたかったですぅマイダーリ〜ン☆」
なぜか弓絵が現れた。
盗子の中を嫌な予感が駆け抜けた。
勇者「なっ!? そ、そうだったのか…僕にはマイハニーがいたのか…!」
盗子「違っ、騙されちゃダメだよ勇者!ってかアタシん時と扱いが違くない!?」
弓絵「…あれ?なんか様子が変ですぅ〜。どうかしちゃったですかぁ〜?」
賢二「あー…それがね、勇者君ちょっと記憶を無くしちゃってて…。」
勇者「ご、ごめん。残念だけど記憶の片隅に塵ひとつの大きさも残ってないんだ。」
賢二「いや、そこまでハッキリと告げなくても…。」
弓絵「そんな〜!それじゃ弓絵と「弓者ちゃん」の将来はどうなるんですかぁー!?」
盗子「コラそこー!勝手に愛の結晶を創るなー!しかも命名まですなー!!」
勇者「そうか…僕達にはそんなラブリーな存在まで…!」
盗子「だから騙されるなってば!勇者にはアタシっていう妻がいるんだからー!」
勇者「ありえない。」
盗子「うわーん!!」

神「・・・・・・・・。」
神の立場が無い。

 

2-84:貧弱〔12歳:LEVEL17〕
どういう訳か、神の家にいた弓絵という元後輩。 なぜか必要以上に馴れ馴れしい。
そして、奥から現れた家主らしい老人。どうやらコイツが神様みたいだけど…。
勇者「お前が…神? あの旧星歴の伝説の…。」
神「あ〜、いかにもそうやで。なんや、ワシに何かアレかいな?」
盗子「な、なんかキャラ…軽くない?全然神っぽくないんだけど…。」
弓絵「盗子先輩に何がわかるんですかぁ〜?神クンを悪く言わないでくださーい!」
神「ええこと言うた。いま弓絵ちゃん、ええこと言うた。」
勇者「悪いけど僕も神らしくないと思う。」
弓絵「ですよねぇ〜☆」
神「ガーン。」
賢二「あ、あの…。実は違うとか?世界を滅ぼしかけたのは他の神様とか…?」
神「いやいや。ワシもこう見えて、いくつもの国を滅ぼしとったアレやで?」
盗子「嘘だー!絶対嘘だよそんなの!全然強そうに見えないもん!」
勇者「じゃあ聞くけど、一体どうやって…?」

神「あ〜、「財政難」で。」

ま、まさかコイツ…!
「貧乏神」が現れた。

 

2-85:神話〔12歳:LEVEL17〕
もっと偉大なものを想像していたのに、いざ現れたのは「貧乏神」。なんてことだ。
でもさすが古い神だというだけあって、昔のことは色々と知っているっぽい感じ。
話を聞いていると、色々と謎が判明してきた。意外にも頼りになる神だったらしい。
貧乏神「500年前ちゅーたら、アレやね。ワシら「十二神」がおった頃やね。」
盗子「えぇっ!?増えてんじゃん!実にその数4倍じゃん!」
勇者「聞いた話では、三体の神々がそれぞれ空・海・大地に封印されたと…。」
貧乏神「封印されたアレはね。 他は死んだんよ。あと、隠れた奴とかな。」
勇者「最後のは凄まじくお前のことっぽいね。だとしたらとっても潔くないよ。」
賢二「な、なんか結構イッパイいたんですね…。ちょっとありがたみが…。」
貧乏神「あ〜。この「神」ってのはな、宗教家らが言うようなアレとはちゃうんよ。」
賢二「へ?どういうことですか?よくある偶像崇拝的なモノではないと?」
貧乏神「まぁアレよ。「地球人の力を超越した存在」…平たく言やぁ「異星人」よ。」
勇者「…なるほど。それなら偶像説に比べれば多少は信憑性があるけど…。」
貧乏神「まぁよっぽどなアレ持っとらんと、「神」とまでは呼ばれんかったがね。」
勇者「いや、「貧乏神」が誇らしげに言うセリフじゃないと思うけども。」
貧乏神「ちゅーわけで、あの頃は荒れとったわ。 なんせワシら13人は…」
盗子「ちょっと待って!また増えてるから!さらにもう一人増えちゃってるから!」
貧乏神「あ〜。なんせ昔の話なんでな。 ま、話しとれば思いだす思うわ。」

〜二時間後〜
貧乏神「んでな、そこでワシは言うたったわけよ。他の48人に…」
盗子「増えまくってんじゃん!!」
勇者は前言を撤回した。

 

2-86:仲間〔12歳:LEVEL17〕
ボケているのか、どうにも信憑性の薄い貧乏神の話。信じかけた僕がバカだった。
でもまぁ、神がどういう存在かわかっただけでも収穫としようか。多くは望むまい。
貧乏神「ちゅーわけで、アレよ。ワシ逃げ惑っとったでな、実はよう知らんのよ。」
盗子「って今さらかい!二時間語った後でそんなカミングアウトしないでよ!」
賢二「で、でもいくつか、ためになる話も聞けたし…良かったよね?」
勇者「そうだね。まぁ足りない情報はまた道中で集めればいいさ。」
貧乏神「そう言ってもらえると助かるわ。ありがとな。」
勇者「じゃあとりあえず今日はもう寝ようか。そして明日は早めに出よう。」
貧乏神「…なぁ坊よ。もう一人くらい仲間増えよっても…平気かなぁ?」
勇者「ん? うん。仲間は多いに越したことは無いけど、それが?」
貧乏神「ワシも無駄に生き過ぎた。どうせ死ぬんやったら、少しでも誰かの役に…。」
勇者「貧乏神、アンタ…。」
貧乏神が仲間になりたそうにコチラを見ている。
仲間にしてあげますか?

はい
いいえ

 

2-87:淡白〔12歳:LEVEL17〕
申し訳ないけど、貧乏神は置き去りにして旅立つことにした。貧乏旅はゴメンだよ。
盗子「みんな準備はできたー?次の村は遠いんだってさー。」
勇者「うん、準備は済んだ。別れを済ませたら向かうよ。」
貧乏神「弓絵ちゃんも行ってまうんか…なんや寂しくなるわな…。」
弓絵「そうですかぁ〜?弓絵は勇者先輩と居られれば幸せでぇーす☆」
貧乏神「いや、そこはこう…もっと名残りを…。」
勇者「じゃあそろそろ行こうか。貧乏神…微妙にだけど世話になったね。」
貧乏神「あ〜チョイ待ちぃや。最後に坊よ、その盾のことなんやけどな…。」
勇者「ん?僕の盾に何か?」
貧乏神「その盾…その見た目はアレよ。「破壊神」の牙から切り出したもんやね。」
勇者「なっ!?」
賢二(そんな本格的に呪われたモノだったなんて…。)
盗子「ま、まさか他にも似たようなアイテムがあるの!?神の力とか持った…!」
貧乏神「ワシも全部は知らんがね。まぁ神々とヤルんなら、探して損は無いやろな。」
勇者「わかった、ありがとう。今後は呪われてないヤツを探してみることにする。」
弓絵「まだですか〜センパァ〜イ?こんなお爺ちゃん放っといて急ぎましょうよ〜。」
貧乏神「ガーン。」
勇者達は村を後にした。
貧乏神「神の装備のアレがまた一人…。こりゃぼちぼち、アレがアレやなぁ…。」
結局どれなんだ。

 

2-88:悲鳴〔12歳:LEVEL17〕
ニシシ村を離れた僕達。でも、これといって行くあてもなく、正直困っていた。
勇者「さて、問題はこれからどこへ向かうか…だね。誰か案は無いのか?」
弓絵「弓絵は先輩と一緒なら地獄にだって喜んで行っちゃいますよぉ〜☆」
盗子「あ、アタシだって同じだもん!勇者となら地獄だってヘッチャラだよ!」
勇者「気をつけてね。」
盗子「見送らないで!!気遣ってそうなセリフだけど全然気遣ってくれてないよ!」
ァァァァァ…!!
勇者「!?」
賢二「ん?どうしたの勇者君?」
勇者「いや、いま何か…悲鳴のようなものが聞こえた気がしたんだ。」
盗子「悲鳴?う〜ん、気のせいじゃないの?」

〜その頃〜
貧乏神「ハァ、ハァ…な、なんやねんワレは…? うぐぅ!」
群青「黙れよ雑魚が。テメェにゃ聞きてぇことがある、大人しくついてきな。」
気のせいじゃなかった。

 

2-89:拉致〔12歳:LEVEL17〕
微かにだけど、確かに聞こえた何かの悲鳴。なんだか妙に胸騒ぎがする。
これは、貧乏神に何かあったのかもしれない。 よし、やはり一応戻ってみよう。
〜ニシシ村:貧乏神の家〜
群青「はぁ〜…拍子抜けだぜ。噂の神ってのはこの程度なのかよ、ったく。」
貧乏神「ヘッ…ナメるな坊よ。ワシぁ堕ちても神、あんさんごときにゃ従わんで。」
群青「あ゛ん?いい度胸じゃねぇかジジイ。」
貧乏神「…と、昔のワシなら言うたったと思うわ。」
群青「弱っ!弱いなお前!きっと昔もこうだったと思うぞ!」
貧乏神「ワシをさらって…どないするアレや?何を企んどんねんワレ?」
群青「世界を制すためにゃ神の力が必要だ。それにゃまず情報が要るんだよ。」
貧乏神「…無理やな。あんさんはアレやで。あの「勇者」の坊に潰されるアレやわ。」
群青「なっ!テメェまさかもうあの青髪のガキと…!?」
貧乏神「アレは結構やるアレやで。きっと今頃この事態にも気づいてる頃や。」
群青「チッ…! さっさと来い!でねぇとブッ殺すぞテメェ!?」

声「待ぁーてぇー!!」

群青「!! こ、この声は…!」


黒錬邪「お待たせ。」
群青「紛らわしいんだよ!!」
貧乏神は連れ去られた。

 

2-90:裏技〔12歳:LEVEL17〕
嫌な予感がして戻ってみると、貧乏神の姿は無く、床にわずかな血痕があった。
案の定、貧乏神の身に何かが起こったっぽい。もう少し早くに気づいていれば…!
勇者「荒らされた後…。 くっ、遅かったか…!」
弓絵「遅くなんかないですぅー!弓絵達の愛はまだまだ始まったばかりでぇーす☆」
盗子「ゆ、勇者!床にメモみたいのが落ちてるよ!なんかの手掛かりかも!」
勇者「ホント!?貧乏神の奴…意外とヤルじゃないか!早速見てみよう!」
手紙『アレを右に行ったアレの』
一同「わからないっ!!」
賢二「書きかけって要素を差し引いても、これはあんまりだよね…。」
盗子「まぁこんな目立つ場所にあるぐらいだもんね。ヒントだったら絶対隠滅され…」
勇者「…待って!この紙、ほのかにリンゴのような香りがする。もしかして…。」
勇者は紙に火を近づけた。
なんと文字が浮かび上がってきた。
盗子「あ、あぶり出し!?なんでわかったの!?」
勇者「以前聞いた覚えがあるんだ。リンゴの汁であぶり出しの真似事ができると。」
弓絵「スゴいです勇者先輩ー☆ とても記憶喪失とは思えませーん☆」
盗子「で!で!?なんて書いてあんのさ賢二!?」
賢二「あっ、えっと、「北西 洞窟 群青色」…ぐ、群青色!?まさか…!」
勇者「そ、そんな…奴が動き出しただなんて…!」
盗子「えっ!覚えてるの勇者!?」
勇者「いや、なんとなく雰囲気的に。」
盗子「紛らわしいよ!無理してそれっぽいセリフ言わなくてもいいから!」
勇者「ま、とりあえず行こうか。行くあての無い旅も不毛だしさ。」
盗子「はぁ〜…。 だね。とりあえず行っとこっか。」
貧乏神はどうでもいいのか。

 

第六章