第六章

 

2-91:相談〔12歳:LEVEL17〕
群青なんとかを倒すため、僕達は北西にあるという洞窟を探すことにした。
でもその前に、やはり記憶が無いのは痛いということで、策を練ることにしたのだ。
勇者「というわけで、いい案があったら挙げてほしい。何かない?」
盗子「う〜ん、やっぱ記憶喪失の定番って言ったら「ショック療法」かなぁ?」
勇者「ショック療法か…。でもどんな原因でなったのかも覚えてないしな〜。」
盗子「と、とりあえず…よくあるみたく、棒か何かで殴ってみよっか?」
弓絵「叩いちゃダメですぅー!勇者先輩はもう一人の体じゃないんですよー!?」
盗子「妊婦扱いかよ!てゆーか少なくとも勇者は産まないから!」
勇者「無理だね。悪いけど半端なことじゃ僕はショックは受けないと思う。」
賢二「姫さんは行方不明だよ。」
勇者「ショォーーーック!!」
盗子「えっ!なんで姫だけは覚えてるの!?アタシもショックなんだけど!」
勇者「というか賢二…そのショックはちょっとジャンルが別な気が…。」
賢二「ご、ゴメンつい…あっ、そうだ!女医先生に聞いてみようよ!島に電話して!」
盗子「あー!確かあの人脳外科専門だったよね!確かに名案かも!」

プルルルル…ガチャ。
盗子「あ、もしもし?盗子だけど女医先生いるー?勇者が大変なんだけどー!」
声「あら?久しぶりじゃない、どうしたの?勇者君が記憶喪失にでもなった?」
盗子「ってなんで知ってんの!?言っとくけど盗聴は犯罪だよ!?」
声「あら、当たっちゃった?冗談だったのに☆ でも残念ね〜、私の専門外だわ。」
盗子「そんな〜!このままじゃ今まで育んだアタシらの愛が記憶の底にぃ〜!」
声「イタ電なら切るわよ。」
盗子「こっぴどいよ!医者が乙女のハートに致命傷与えるってどうよ!?」
声「あ、そういえば私の知り合いに…彼ならもしかして…。 紹介してほしい?」
盗子「えっ!ホント!?やったー!これで二人の愛は守られるよー!」

ガチャ。 プー プー プー…
盗子は夕日が目に染みた。

 

2-92:名医〔12歳:LEVEL17〕
女医とやらのツテで、あらゆる難病に挑んできたという名医を紹介してもらえた。
しかも、偶然にもその医師はすぐ近くに住んでいた。なんだか運命的な偶然だ。
というわけで、早速僕達はその医師が勤める病院を訪れたのだった。
ガチャッ…(扉)
勇者「邪魔するよ。カクリ島の女医の紹介で来た者だけど…?」
医師「む?おぉ、キミ達が…。 ようこそ少年達。冴子君から話は聞いているよ。」
盗子「でもさ、ホントに治せるの?そんな簡単なモンじゃないと思うんだよね〜。」
医師「まぁ任せたまえ。これでも昔は、皆に「ゴッドハンド」と呼ばれた私だ。」
盗子「ゴッドハンド!?なんか期待持てそうな異名じゃん!いけそうじゃん!?」
医師「懐かしいな…よく言われたものだよ。「この死神っ!」…とな。」
盗子「そっちの神かよ!とっても不名誉な称号じゃん!!」
賢二「まさか一度の人生で、二人の死神に出会うなんて…。」
勇者「ほ、ホントに大丈夫なの?命より大事な記憶ではないんだけど…。」
医師「安心していい。私に治せる病は無い!!」
盗子「「ぬ」じゃないの!?一文字違いでえらい違いだよ!?」
勇者「ま、まぁいい。とりあえず任せてみよう。 ところでお前…名前は?」

医師「私かね? 私は「相原」。そこに患者がいる限り、私は闘う。」
「患者」と書いて「ぎせいしゃ」と読む。

 

2-93:治療〔12歳:LEVEL17〕
自称「ゴッドハンド」な中年医師、その名は「相原」。なんだか妙な名前だ。
あと性格も妙だ。かなり信用できないけど、ものは試し…少しだけ任せてみようか。
医師「ではまずは、「ショック療法」から入ってみるとするかね。」
盗子「ホラやっぱりー!やっぱアタシの読みが当たったじゃーん☆」
医師「…じゃあヤメます。」
盗子「なんで!?なんか気に障っちゃったの!?」
医師「私にも、医師としてのプライドというものが…あればなぁ…。」
盗子「無いの!!?」

〜一時間後〜
医師「仕方ない…じゃあ次はこのロケットランチャーで…。」
勇者「ま、待って!それはさすがにシャレにならないんじゃないの!?」
医師「フトンがだっふんだ。」
盗子「シャレ言えばいいってもんじゃないから!ってシャレにもなってないし!」

〜二時間後〜
医師「私の子供の頃はね、ラーメンが50銅(約50円)で食べられたんだよ。」
勇者「なにっ!?そんなに安く!?」
賢二「いや、「カルチャーショック」はどうでしょう…?」

〜三時間後〜
相原「…ただの風邪です。」
一同「待てぇーい!!」
待ったところで結果は同じだ。

 

2-94:請求〔12歳:LEVEL17〕
三時間も粘ったのに、結局治療は失敗した。どうやらかなり厄介な状態らしい。
勇者「残念だけどお前じゃ無理らしい。ラチがあかないから諦めることにするよ。」
相原「ま、待ちたまえキミ!最近の風邪を甘く見てはいかんぞ!」
盗子「あくまで風邪の線でいく気かよ!往生際が悪すぎるよ!」
勇者「まぁそう言わないで。コイツなりに頑張った結果なんだからさ、ナタリー。」
盗子「「盗子」だから!!まだ覚えてなかったのかよっ!」
相原「行く気かね?聞けば大きな戦いが近いらしいが…記憶無しで平気かね?」
勇者「問題ない。僕には頼りになる仲間達がいるからね。」
賢二(な、なんか未だに慣れないなぁこの勇者君…。)
相原「…そうか。 じゃあ受付前で待ちたまえ。会計は急ぐように伝えよう。」
盗子「えぇっ!?お、お金取るの!?なんにも解決できなかったクセに!?」
相原「何を言うんだ。命があるだけありがたく思いたまえ。」
盗子「ヘタしたら死んでたの!?」
賢二「え、えっと…。紹介だからてっきりタダだと思ってて、お金無いんですけど…。」
相原「それは参ったねぇ〜。一応決まりだから払ってもらわねば帰すわけには…」
弓絵「勇者先輩見てくださ〜い!ナース服を手に入れちゃいましたぁ〜☆」
勇者「ん…?」
相原「!!」
ナース姿の弓絵が現れた。
医師の目が怪しく光った。

 

2-95:別離〔12歳:LEVEL17〕
治療に失敗したばかりか、治療費までふっかけてきた医師相原。なんて奴だろう。
…と思っていたら、なんと弓絵を置いていったら免除すると言い出した。
勇者「ねぇ医師よ、ホントにいいの?治療費の代わりがこんなもので。」
弓絵「ひ、酷いですぅ〜!愛妻に向かって「こんなもの」は無いですよぉ〜!」
相原「将来を考えれば釣りがくるよ。今はまだ若いが、五年も経てば立派な…」
弓絵「看護婦さんなんてイヤですー!弓絵は「弓撃士」なんですぅー!」
相原「立派な「白衣の堕天使」になれる。」
弓絵「しかも堕ちてるなんてあんまりですよぉ〜!!」
勇者「すまないね弓絵。金ができたら、いつか迎えに来るから。」
弓絵「えっ☆それってプロポーズですかー!?白馬に乗ったお迎えですかぁー!?」
盗子「絶対違うから!アンタなんか人体実験に使われちゃえばいいんだよ!」
勇者「というわけだ。じゃあ悪いけど、弓絵のことはよろしく頼むよ。」
相原「うむ。 あぁそうそう、行くのならばこの薬を持って行きたまえ。」
医師は「奇妙な丸薬」を取り出した。
飛んでたハトが地面に落ちた。
勇者「な゛っ、なにその怪しげな物体は…?秘伝の薬か何かなの…?」
賢二「なんか…見てるだけで目眩がするんですけど…。」
医師「勢いで作ってみた。」
盗子「勢いで作んないでよ!そんな物騒なモノを患者に手渡さないでよ!」
医師「まぁ持って行ってくれたまえ。私もどう処理していいか困っているんだ。」
盗子「餞別じゃなかったの!?困るほどいらないモノだったの!?」
勇者「…わかった、なんとか処理しよう。 じゃあ行くよ。元気でね弓絵。」
弓絵「わかりましたー!とっても辛いけど我慢しますー!待ち続けますぅ〜!」

そういえば治療費って、いくらなんだろう?
勇者は払う気が無かった。

 

2-96:技術〔12歳:LEVEL17〕
弓絵と医師に別れを告げ、僕達は群なんとかがいるという洞窟を目指した。
でも目的地までは結構な距離があるようで、何日経っても着く気配が無かった。
歩きの旅にも疲れてきた。やはり、何か乗り物を手配するべきなのかもしれない。
そんな時、「電力車」という乗り物があることを知った。さすが技術大陸ギマイだ。
勇者「ふぅ〜、こりゃ楽チンだ。こんな便利なモノがあるとはなぁ。」
盗子「ホントだね〜。獣車と違って揺れも少ないし快適〜☆」
ガイド「あ、皆様ァ〜。本日は当車をご利用いただき〜誠にありがとうございまァす。」
賢二「…あれ?もしかしてアナタは先輩の…案奈さん?」
案奈「こんな所で〜皆様にお会いできるとはァ〜少々感激で〜ございまァす。」
勇者「ぼ、僕は何かイヤな予感がするんだけど…それは僕の気のせい?」
案奈「…えー。左手に見えますのがァ〜…。」
盗子「えっ、なんではぐらかすの!?ねぇ、こっちを見てよ!ねぇ!?」
案奈「あ、大丈夫で〜ございまァす。この電力車は〜半自動操縦機能を搭載し〜…」
賢二「良かった…。じゃあ今回は運転手さん絡みで泣くことは無いんですね。」
案奈「今はこのリモコ(バキッ)…かつてはこのリモコンでぇ〜…」
盗子「「かつて」って何!?いま壊したそのリモコンが何!? ま、まさか…!」
案奈「その「まさか」でぇ〜ございまァす。」
一同「イヤァーーーー!!」
とりあえず何人か撥ねた。

 

2-97:窮地〔12歳:LEVEL17〕
案奈とやらのミスのせいで、突如暴走を始めた電力車。もう外は大惨事だ。
盗子「うっぎゃーー!ぶつかるー!ぶつかっちゃうー!死ぬぅーー!!」
賢二「もっと酷い目に遭ってるのは、通行人の皆さんだけどね…。」
案奈「あ、皆様ァ〜。シートベルトを〜…」
盗子「今はそれどころじゃないよ!このスピードで激突したら絶対死んじゃうもん!」
案奈「搭載しておらず〜誠に申し訳ございません。」
盗子「だからって無いのは問題だよっ!」
勇者「くっ!一体どうすればいいんだ…!!」
声「フッ、心配ない。運転は私に任せるがいいさ。」
勇者「なっ!?だ、誰だ今の声の主は!?」
盗子「ま、まさかこのお決まりの展開からして…ゆ、勇者親父!?」

謎「違う!私は謎のお助け仮面…「兄さん」だ!!」
なぜか微妙に若返った。

 

2-98:目的〔12歳:LEVEL17〕
僕達のピンチを救うべく、運転手を買って出てくれた謎のお助け仮面「兄さん」。
なんだかとっても懐かしく、そしてとっても会いたくなかった人物のニオイがする。
賢二「は、はぅ〜。死ぬかと思ったけど、これでなんとか一安心できそうだねぇ〜。」
案奈「あ、皆様ァ〜。右手に見えますのがァ〜…。」
盗子「って平然と続けるんかい!勇者親父が来なかったら死んでたんだよ!?」
勇者「なっ!コイツは僕の父親なのか!?」
謎「違う!私は「兄さん」だ!!」
勇者「なっ!僕にはこんな歳の離れた兄が!?」
盗子「信じないでよ!どう考えてもあり得ないから!」
黄錬邪「そして私がお姉さんです☆」
盗子「どっから湧いたー!!?」

〜一時間後〜
父「…そうか、勇者は記憶を…。どうりでいつものツッコミが無いわけだ。」
勇者「ごめん父さん。悪いけど少しも…思い出したくないんだ。」
父「思い出したくないのか。そこに対しての謝罪なのか。父さんショック!」
賢二「あのぉ〜。ところで、お二人はどうしてこっちへ?やっぱり目的は…。」
黄錬邪「ええ。 悪の道へと逸れた、かつての同胞を…滅ぼすために。」
父「なにやら最近、奴らに不穏な動きが見られる。これ以上野放しにはできん。」
盗子「フンだ!なにさ今さら!どうせ来るんなら今までなんで放っといたのさ!」
父「少々柔軟に時間が掛かってな。」
盗子「掛けすぎだよ!てゆーか戦闘前に柔軟体操なんて聞いたこと無いから!」
父「まぁとにかく、私が来たからにはもう心配いらん。安心してついて来なさい。」
盗子は「不安」が10上がった。
賢二は「不安」が10上がった。

 

2-99:見破〔12歳:LEVEL17〕
父さんと黄色い人と共に、僕達はついに目的の洞窟へと生きて辿り着いた。
〜ギマイ大陸:ガラン洞窟〜
勇者「ここか…ここにその、五錬じなんとかが居るんだね…。」
盗子「「五錬邪」だよ!そこまで覚えてんなら全部覚えようよ!あと半歩だよ!」
勇者「よし、じゃあ早速行こう。悪は早急に絶やさなきゃならない。」
父「いや待つんだ勇者! よく見てみろ、ホラその入口の手前…「落とし穴」だ。」
盗子「あっ、ホントだ!すんごい見えにくいけど確かにそれっぽい感じだよ!」
賢二「な、なんだかショボい罠だけど…でもよくわかりましたね。スゴいですよ!」
父「フッ。私にかかれば、この程度の罠を見破るなんぞ容易なことさ。」
盗子「よっ!見直したよ勇者親父!やっるぅ〜☆」
黄錬邪「まぁレッドが仕込んだ技ですけどね。」
盗子「アンタが根源かっ!」
父「だが群青の奴もまだまだ甘いな。こんな簡単にバレるようじゃああぁぁぁぁ…!」
親父は鮮やかに落ちていった。
一同「・・・・・・・・。」

勇者「やれやれ…。 どうやら僕の父はマヌケな生き物らしいなぁぁぁぁぁぁ…!」
勇者は〔遺伝〕を覚えた。

 

2-100:包囲〔12歳:LEVEL17〕
知っていた落とし穴に落ちるという、なんとも耐え難い精神的苦痛を味わった僕達。
賢二やミリガンも後を追って降りてきた。黄色い人だけは上の方から攻めるらしい。
勇者「くっ、あんな見え見えの罠に…!僕はなんてウッカリ者なんだ!!」
賢二「大丈夫だよ勇者君。「落とし穴」って時点で、この展開は読めたから…。」
父「そうだぞ勇者、悔いても仕方あるまい。今は前に進むことを考えるんだ。」
盗子「もっともな意見だけどアンタに言われるとなんかムカつくよね。」
父「…まぁ、進むのは少し後になりそうだが…な。」
盗子「え…? あ゛っ!!」
魔獣達「グルルルルルッ…!!」
勇者達は魔獣の群れに取り囲まれた。
盗子「10…20…け、結構いるよ!?ど、どうしよ!!」
勇者「安心してクリストファー。僕がなんとかしてみせる!」
盗子「う、うん!頑張ってね勇者!「盗子」だけども!」
勇者は抜刀を試みた。
だが剣はビクともしなかった。
勇者「ぬうぅぅっ!抜けない!なんでなんだー!?」
盗子「ま、マジで邪悪な者にしか抜けないのそれ!? じゃ、じゃあ勇者親父!」
父「私は「元勇者」。基本的に何もしない。」
盗子「しろよっ!!」
賢二は飲み込まれている。

 

2-101:再戦〔12歳:LEVEL17〕
僕は剣が抜けず、賢二は飲み込まれ、父さんはヤル気が無い。状況はかなり悪い。
勇者「敵は多いけど…とりあえず賢二の救出を最優先に片付けよう!」
盗子「そ、そだね!じゃあアタシがなんとか敵を引き付けるよ!」
勇者「ダメだ!無理をするなジャックリーン!」
盗子「で、でも…! いや、「盗子」だけどね!?」
勇者「お前じゃ誰も惹きつけられない。」
盗子「ってそういう意味かよ失敬な!死ねっ!!」
声「甘ぇな!好き勝手させるかよクソガキどもがぁ!!」
父「むっ! その声は…!」

群青「ゲハハハハッ! よく来たなぁレッド…いや、“元”レッドか。」
岩陰から群青錬邪が現れた。
父「…フッ、久しぶりだな群青れ…うわっ!なんだその色は!?」
群青「テメェが決めたんじゃねーか!なに今更…しかも驚いてんだ!」
勇者「賢二が消化される前にお前を倒す。降参するなら今のうちだよ?」
群青「貧乏野郎から聞いたぜテメェ記憶が無ぇらしいな。そんなんで戦えるのか?」
勇者「心配無い。僕にはヤル気の無い父と、戦闘力の無い盗賊の仲間がいる。」
群青「メチャメチャ不安じゃねーか!そんなんでこの俺様に挑むってのか!?」
勇者「御託はいい、来い!お前のような外道は僕が刀の…拳のサビにしてやる!」
勇者は剣が抜けない。

 

2-102:失態〔12歳:LEVEL17〕
剣は抜けないが、やはり「勇者」として敵に後ろを見せるわけにはいかない雰囲気。
勇者「さぁどうした!?来ないならこっちから行くよ!?」
群青「フッ…焦るんじゃねぇよガキが。俺とやりたかったら、生きて上まで来な。」
勇者「なっ!?に、逃げるのか!?待て…!」
魔獣達「グルゥ。(ピタッ)」
盗子「アンタらに言ったんじゃないよ!?いや、大人しいのはいいことだけども!」
群青錬邪は去っていった。
勇者「父さん、奴を追ってくれ。僕は賢二を助けてから駆けつける。」
父「わかった。飲み物の買い出しは任せるんだ。」
盗子「ちっともわかってないじゃん!なんでピクニック気分なんだよ!?」
父「恐らくこの洞窟には様々な罠が仕掛けられているだろう。気をつけるんだぞ。」
勇者「わかってる。父さんも気をつけて。」
父「無論だ。もう二度と落とし穴に落ちるようなぁぁぁぁぁぁぁ…!」
親父は当たり前のように落ちていった。

 

2-103:奇術〔12歳:LEVEL17〕
残された僕達は、とりあえず魔獣達を倒すことに努めた。父さんのことは忘れよう。
武器がナイフしか無くて手間取ったけど、残るはあと一体…なんとかなりそうだ。
勇者「ハァ、ハァ…最後だ!アイツが賢二を食った奴で合ってるなジュリー!?」
魔獣「グ、グルルルッ…!!」
盗子「あ、うん!あの傷がある奴で合ってるよ!盗子そう思うよ盗子ぉおおっ!!」
勇者「ゴメンね魔獣。お前に恨みは無いんだけど…これも仲間のためなんだ!」
魔獣「グルォオオオオッ!!」
勇者「行くぞ!思いつき必殺剣、「帝王切開」!!」
勇者、会心の一撃。
元気な何かが生まれた。
盗子「やた!ちゃんと出てきたよ!まだ溶けてなかったみたい!」
勇者「オイ起きるんだ!大丈夫か賢二!?」

姫「…ほぇ?」
勇&盗「なんでぇーーー!!?」
奇跡のイリュージョンが成功した。

 

2-104:転送〔12歳:LEVEL17〕
賢二を食べたはずの魔物が、なぜか姫ちゃんの出産に成功した。 一体何が…?
勇者「ひ、姫ちゃん!?な、なんでキミが出てくるの!? ぃやっほーい!!」
盗子「やっぱ生きてたんだね姫! でも…どうやって逃げてきたのあの怪鳥から?」
姫「ワタシ 姫チガウ。 メカ姫チャン。」
盗子「えっ!ま、まさかまたお兄ちゃんからの刺客とかなの!?」
姫「こんにちは勇者君。今日も涼しいね。」
盗子「ってスルーかよ!!乗っかったアタシがバカだったよ!」
姫「今日も激しいツッコミだね、商南ちゃん。」
盗子「アンタまで忘れないでよ!アタシは「盗子」だっての!!」
勇者「まぁそう怒るなよ、「闘魂」。」
盗子「惜しい!少しだけ惜しいけど違うから!アタシそんな熱い名前じゃないから!」
勇者「にしても、賢二は一体どこへ行ったんだろう?まさか既に消化されて…?」
姫「きっと「移食獣」に食べられたんだよ。お腹が繋がってるんだって。」
勇者「へぇ〜、そんな魔獣だったのか〜。大陸には変わったのがいるんだね。」
姫「でも食べられちゃうってマヌケだよね、賢二君。」
盗子「アンタもだよね!?だからアンタここに居るんだよね!?」
そうとは限らないのが姫だ。

 

2-105:再会〔12歳:LEVEL17〕
愛しの姫ちゃんを仲間に加え、僕達は群青錬邪を追って上を目指した。
落ちた深さを考えると、ここは多分2〜3階層ある。奴は何階にいるのだろうか。
勇者「やれやれ…ここでもないか。意外と広いねこの地下洞窟。」
姫「スタンプ集めるのも一苦労だね。」
盗子「集まんないから!そんな楽しげな迷路とかじゃないから!」
勇者「それにしても、父さんはどこなんだろう?戦いらしい音は聞こえないけど…。」
盗子「う〜ん、違う道に行ったんじゃん?てゆーか落ちたんだからまだ下かもね。」
勇者「なんだかイヤな予感がするんだ。 父さん…何も無ければいいけど…。」

〜その頃〜
父「…まさかお前まで居るとはな。 本拠地はタケブじゃなかったのか?黒錬邪よ。」
黒錬邪「安心しろ、アチラはアチラで進んでいる。俺達はコチラでコチラなんだ。」
父「そうか…。ならばこんな所でグズグズしているわけにはいかんな。」
黒錬邪「フッ、相変わらずせっかちだな凱空…だがまぁいい。」

二人「行くぞっ!!」
二人は飲みに出掛けた。

 

第七章