第二部

 

2-1:襲撃
マオが復活し、一年の月日が流れた。
大陸のほとんどは「魔王軍」に支配され、平和は消えた。
世界はもう、色々と大変な感じになっていたのである。

そんなある日…。
〜エリン大陸:スタト村〜
村長「…なるほど。 では賢二君は、洋上ではぐれた仲間を探して旅をしていると?」
賢二「あ、ハイ。僕が打ち上げられた海岸付近には見当たらなかったもので…。」
村長「まぁこの「エリン大陸」は、五大陸の中でも最大の大陸ですからなぁ。」
賢二「そうですね。僕も無駄に広いなと感じましたよ。」
村長「む〜。 しかし嵐の海という過酷な状況となると、無事とも限らんのでは?」
賢二「いいえ、きっとみんな生きてる…そんなイヤな予感がします。」
村長「イヤなんかい。」
バンッ!(扉)
村人A「た、大変だ村長!ついにこの村にも魔王の魔手が伸びてきやがった!」
村人B「今は外で護衛団が応戦してる!だが敵の強さはケタ外れなんだ!」
(「うぎゃあああああ!!」)
村長「あ、あの声は伍助…!」
(「くたばれ魔人めぇえええ!!」)
賢二(どうして僕の行く先には毎回こう…。)
(「誰が魔人だ!!ちゃんとさっき名乗っただろうが!)
村長「むっ!敵は魔人ではないのか!? では一体…」
(「誰が信じるか嘘つき魔人め!どこの世界に魔剣を携えた勇者がいぶはぁ!!」)

賢二「Σ( ̄▽ ̄;)!?」
イヤな予感が駆け抜けた。

 

2-2:決断
突然の魔人の襲来に、スタト村は大混乱に陥った。
未知なる敵の脅威に怯え、震える村民達。
偶然居合わせた賢二もまた震えていた…が、その理由は違っていた。
「未知じゃ…ない!!」
(うがぁあああああ!!)
村長「な、なんたることだ…! ワシは一体…一体どうすればいいんだ…!」
賢二(僕こそ一体どうすれば…。)
(「ウザいんだよ雑魚どもめが!」)
(「ぎょへぇえええ!!」)
(「た、田吾作!?田吾作ぅーー!! この人殺しめぇえええ!!」)
(「フッ。 安心しろ、峰打ちだ。」)
賢二(えっ、峰打ち!?あの勇者君がそんなこと…。も、もしかしたら他人じゃ…)
(「アホか!頭蓋骨割っちゃったら同じだから!)
賢二(なさそうだなぁ…。)
村長「くっ!私もあと五十歳若かったら…十歳くらいなら戦えたのに…!(チラッ)」
賢二「…それは遠回しに、僕に「行け」って言ってますか?」
村長「おぉ、行ってくれるのか賢二君!なんとも予想外!」
(「残るは貴様一人だが…まだやる気か。いいだろう、ブッた斬ってやる!」)
賢二「(う〜ん、この状況で会うのは恐ろしいけど…仕方ないよね。)わかりま…」

(「この「ユーザック・シャガ」の名に懸けて!!」)

賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
「ユーシャ」の方だった。

 

2-3:再会
どういうわけか寂れた農村に現れた「魔王:ユーザック」。
なんとか逃げようとした賢二だったが、村長がそれを許さなかった。
窓から放り出された賢二は、魔王と久方ぶりの再会を果たすことになる。
賢二「え、えっと…。ども、しばらく見ない間に随分と大人な感じに…なりましたね。」
魔王「なっ…!き、貴様はあの時の賢者!?何故こんな所に…!」
賢二「それを言うなら魔王のアナタこそ何故こんな所に…?」
魔王「フッ、「魔王は玉座に」という定義を根本から覆してみた。」
賢二「いや、それだけはやっちゃいけない暗黙の…」
魔王「まぁ気にするな。 それより前回の雪辱戦…受けてもらおうじゃねーか!」
賢二「いやいや、もう全然相手にならないんでホント勘弁してください。」
魔王「ほぉ、俺が相手じゃ物足りんと?大した自信じゃねーか!」
賢二「いやいやいや!まったく逆の意味で…!」
声「こっちだー!魔人はこっちだぞー! みんな、応戦してくれぇーー!」
賢二(え、援軍!? ダメだ、このままじゃ犠牲者がもっと増えちゃう…!)
魔王「真剣勝負を邪魔されたくはないな…先にあっちを片付けるか。」

勇者「誰が魔人だ失敬な!!」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
村人B「黙れ!そんな禍々しい魔剣を携えて何を言うばっ!!
勇者「よーしわかった!こうなったら皆殺しにしてくれるわ!!」
村人C「お、おのれ魔人めぇえええ!!」
誤解だが無理も無かった。

 

2-4:支配
正義の味方であるはずが、魔王とカブッたノリで現れた勇者。
だがしかし、勇者と魔王…遭遇するにはあまりにも急なタイミングである。
賢二「ゆ、勇者君!やっぱり生きてたんだね!」
勇者「…誰?」
賢二「ウッソ!たった半年なのに!?」
勇者「貴様は…ユーザックか。マオのニオイがプンプンするよ。」
魔王「お前は勇者だな?お前から…は、コロンの香りがプンプンするな。」
勇者「フッ、5銀もしたんだ。(約5万円)」
賢二「武器とか買おうよ!」
勇者「まぁとにかく! 貴様のような悪の支配者は俺が倒す!「勇者」として!!」
魔王「支配…? 俺は放浪の旅に夢中でまだ何もしていないが?」
勇者「あん?嘘をつくな!今や世界中で魔王軍がルンルン気分じゃねーか!」
賢二「いや、そんな楽しそうな状況じゃないけどね。」
魔王「ん〜、じゃあアレだな。城を任せてきたアイツが勝手に何かやってんだな。」
賢二「あ、アイツ!?じゃあ今は誰か違う…陰の支配者がいるってことですか!?」
魔王「そうらしいな。 確かアホ…違う、「バカなんとか」って名前の奴だったか。」
勇&賢「…バカなんとか??」

〜その頃、魔王城では〜

赤錬邪「へっくし!!」
魔王は豪快に間違えた。

 

2-5:混乱
魔王の口から明かされた衝撃の真実。
なんと実質の魔王はユーザックではなく、二代目赤錬邪だという。
〜魔王城〜
兵士「失礼致します! 魔王代理、何か御用でしょうか?」
赤錬邪「聞かねばわからんのか…? 魔王様の所在についてに決まっとろうが!」
兵士「ハッ、申し訳ございません!しかし残念ながら、その件に関しましてはまだ…」
赤錬邪「あの御方が大人しく旅するはずが無い!血の噂を追えばすぐだろうが!」
兵士「そ、それが…。 あるにはあるんですが、情報が少し混乱しておりまして…。」
赤錬邪「混乱!?どういうことだ!!」
兵士「じ、実は似たような影が…二つありまして…。」
赤錬邪「な、なんだと!?(くっ、奴め…この俺の計画に気づきおったのか!?)」
勇者の功績だった。

 

2-6:計画
現在、魔王代理として魔王軍を率いている赤錬邪。
だがそれは表向きだけで、内には魔王に対する反逆心が渦巻いていた。
赤錬邪「おぉ、来たかお前達。意外と久しぶりだな。」
群青錬邪「ったく、何だよいきなり呼び出しやがって?こっちゃ忙しいんだよ。」
桃錬邪「まったくだね。しかもいい歳こいてなんて格好してんのさ。」
群青「いや、鏡見ろよ。」
赤錬邪「実はな、少し状況が変わっ…ところでブラックはどこだ?」
桃錬邪「あ〜、確か「星を見てくる」って外へ…ね。」
群青「まだ真っ昼間だけどな。」
赤錬邪「相変わらずか…。 あぁ、そういえば三代目黄錬邪の件はどうなった?」
群青「ヘッ、それなら俺に考えがある。そこは任せて話を進めてくれよ。」
赤錬邪「むぅ〜。しかし全員揃っとらんと二度手間になるしなぁ…。」
桃錬邪「だったら城下の茶店にでも行っとく?少し時間潰しに。」
群青「おっ、それいいねー!」
赤錬邪「そう…だな。 じゃあ行くか!」
桃錬邪「アタシあそこのパフェ好きなんだよな〜。」
群青「ん〜、俺は…」

バタン(扉)
世界は意外と平和なのか。

 

2-7:歴史
諸悪の根源の割に、妙にシリアス感の欠けている五錬邪。
格好が格好なだけに、茶店でも浮きまくりながら黒錬邪を待っていた。
そして全員が揃うと、赤錬邪は偉そうに話し始めたのである。
赤錬邪「お前達は…五百年以上昔に起こった「人神大戦」を知っておるか?」
群青錬邪「ジンシンタイセン…? 知らねぇな。ホントにあった戦なのか?」
赤錬邪「恐らくな。この文献を読んでみるがいい。」
黒錬邪「桃さん、頼む。」
桃錬邪「うぃ。「お、お兄ちゃん…ダメだよそんな…。」って、官能小説じゃねーか!」
赤錬邪「ぬぉっ!?こ、これは違うんだ!ただの俺の趣味だ!」
群青「それはフォローのつもりなのか…?」
赤錬邪「…ご、ゴホン! それじゃなくて、コレだ。」
―――旧星歴1024年、三体の神と全人類による大戦争が勃発。
神々の力は色々と強大で、人類は滅亡の危機っぽい感じになった。

しかし激戦の末、なんとかうまいこと勝利した人類。やったぜ人類。
神々はそれぞれ空・海・大地に封印され、とりあえず平和は戻ったとか。

人々はその戦いを「人神大戦」と呼び、その年を「新星歴元年」とした。
群青「な、なぜかこう…内容が壮大な割に文が適当な文献って多いよな…。」
桃錬邪「んで、今の話がなんなの?まさかただの歴史勉強ってことは無いよな?」
赤錬邪「フッ…フフ…フハハハハ!っと、すまんすまん。少々興奮してしまった。」
群青「なんだよ、もったいぶりやがって!気になるじゃねーか早く話せよ!」
赤錬邪「フッ。よし、いいだろう!三人とも耳をかっぽじってよーく聞けぃ!!」
三人「ご、ゴクッ…。」

黒錬邪「古代神を復活させ、ユーザックを叩く。」
お前が言うんかい。

 

2-8:守備
なぜか黒錬邪の口から明らかになった赤錬邪の計画。
いいとこ盗りされてヘコんだ赤錬邪は、立ち直るのに二時間かかった。
群青「オイ、いい加減機嫌直せよ!さっさと話済ませやがれめんどくせぇなぁ!」
赤錬邪「…ふむ。密かに調べさせてな、神の封印場所は完璧に…だいぶ絞れた。」
群青「「完璧」と「だいぶ」じゃえらい違いだぞ。」
桃錬邪「でもまぁ確かに、その神さんを味方につけられりゃ勝ち目は濃そうだな。」
赤錬邪「ユーザックの力は脅威だが、さすがに神には敵うまい。フフッ。」
群青「つってもな〜。そんなうまくいくもんかねぇ?ホントに味方にできんのか?」
赤錬邪「それは…アレだ。現地に着くまでに考えよう。」
群青「肝心な所が無計画かよ!」
桃錬邪「まぁいいじゃないか。とりあえず場所はわかってんだしさ。」
赤錬邪「うむ。「タケブ大陸」…のどこかに、神はいる!」
桃錬邪「そんな曖昧だったのかよ!!」
黒錬邪「大丈夫、みんなで行けば…夏までには。」
赤錬邪「おぉ、そうだよブラック!全員で行けばすぐに見つかるのだよ、うむ!」
黒錬邪「字余り。」
桃錬邪「俳句だったんかい!」
群青「だが任されてる城を空けるのはマズくねぇか?奴にバレたら殺されっぞ?」
赤錬邪「うぐっ…! た、確かに俺は信用されとるしなぁ…。」
魔王は名前も覚えてなかった。
赤錬邪「だが我が軍の守備範囲は広い。奴の情報が入り次第戻れば間に合うさ。」
群青「ホントかよオイ?俺はトバッチリ食うのはイヤだぜ?」
赤錬邪「心配ならコレを見てみろ。納得の守備範囲が描かれているはずだ。」
黒錬邪「桃さん、頼む。」
桃錬邪「どれどれ…「イヤッ、やめて!助けてお兄ちゃーん!」って、またかよコラ!」
赤錬邪「しまたー!!」
そっちの守備範囲は狭かった。

 

2-9:決着
五錬邪が茶店で和んでいた、ちょうどその頃…。
勇者達の戦いは既に始まっていた

…というか、既に終わりかけていた。
勇者「ぐぉっ!うぐぅ…!!」
賢二「ゆ、勇者君!大丈夫!?ねぇ大丈夫!?」
魔王「フンッ、たわいも無い。その程度の力で俺に挑もうとは片腹痛いわ!!」
勇者「ち、違っ…! 今日は…その…「あの日」だから…。」
賢二「いや、苦しいから!性別の壁は越えちゃダメだから!」
勇者「二日目…だから…。」
賢二「日数の問題じゃないし!」
魔王「そ、そうだったのか…。」
賢二「コント!?コントなの!?」
魔王「だが安心しろ。今お前を殺す気は無いんだ。」
勇者「なにっ…!? ど、どういう意味だ!」
魔王「まだマオの完全体を制す自信は無い。だからもう少し貸しといてやるよ。」
勇者「くっ!俺なんぞいつでも殺せる…とでも!? な、ナメやがって…!」
賢二「ホッ。でも良かった…。とりあえず今は無事に…」

魔王「まぁ賢者は殺すがな。」
賢二「ですよね…。」
そんな予感はしていた。

 

2-10:再戦
アッサリ魔王にやられていた勇者。
しかし幸運にも、今回は見逃してもらえるらしかった。

だが賢二は頑張れ。
魔王「さぁ賢者よ、四年越しの再戦…存分に楽しもうじゃないか!」
賢二「イヤー!イヤですー!楽しめる要素なんて一つも無いですー!」
勇者「ま、待て!俺を無視して賢二を相手になど…ぐおっ!
魔王「少し寝ていろ。起きた頃には全てが終わっている。」
賢二「終わらせないで!そんな簡単に人の人生を終わらせないでー!」
魔王「じゃあじっくり料理してやる。」
賢二「そそそそういう意味ではー…!」
魔王「三日三晩煮込んでやる。」
賢二「煮込ん…えっ!マジ料理なの!?」
勇者「・・・・・・・・(ぐぅ〜)」
賢二「なんでそこでお腹鳴るの!?僕は美味しくないよ!?」
魔王「では行くぞ賢者!貴様には最初から奥義を味あわせてやる!」
賢二「そんな買いかぶらないでー!!」
魔王「食らえ!最大奥…」
賢二「はわわわ!え、えっとえっと!とりあえず…「沈黙」!!」
賢二は〔沈黙〕を唱えた。
賢二(って、「技名」には効かないし!全然意味無いじゃん僕のバカー!)

魔王「チッ、こしゃくなマネを…!!」
賢二(え゛ぇっ!?)
魔王もバカだった。

 

2-11:危機
動揺して唱えた場違いな魔法で、なんとか瞬殺は免れた賢二。
しかし数分後、魔王もやっと「技名≠呪文」の方程式に気づいたのだった。
魔王「よ、よくもハメやがったなチクショウ!俺には効いてなかったんじゃねーか!」
賢二「悪いのは僕なんですか!?」
魔王「もうアッタマきた!ブッ殺してやる!!」
賢二「最初っからそのつもりのクセにー!」
魔王「食らいやがれ!秘奥義「暗黒乱舞」!!」
賢二「うわぁああん!もうダメだーー!!」

少年「秘奥義「暗黒乱舞」!!」
ガキン!!(相殺)
賢二「えっ…!?」
魔王「な、なにっ!俺の技を相殺しただと!? 誰だ貴様は!?」

宿敵「フッ、キミのライバルさ。」
微妙な助けが現れた。

 

2-12:相殺
絶妙なタイミングで現れた、もはや登場は無いと踏まれていた男「宿敵」。
賢二はまたしても命拾いしたのであった。

宿敵が勝てればの話だが。
賢二「ら、宿敵君!?なんで生き…や、やっぱり生きてたんだね!」
宿敵「いま一瞬、キミの本心が垣間見えたよ…。」
魔王「なにっ、賢者と知り合い…!?誰だ貴様、名を名乗れ!」
宿敵「そういうキミは誰なんだい?見たところ勇者君を倒したようだけど…。」
賢二「えっと…紹介します、「魔王」のユーザックさんです。」
宿敵「ウゲッ!魔王!?なんて奴を相手にしてんのさキミは!」
賢二「それは僕も神様に聞きたいよ…。」
宿敵「じゃ、じゃあとりあえず僕も一応…自己紹介でも…?」
魔王「フン!すぐ死ぬ者の名などに興味は無いわ!」
賢二(さっき思いっきり「名を名乗れ」と…。)
魔王「食らえ雑魚めが!「暗黒飛翔剣」!!」
宿敵「おっと、悪いけど僕には効かないよ! 「暗黒飛翔剣」!!」
チュイン!!(相殺)
魔王「くっ、またしても…! なぜ貴様が俺と同じ技を使えるんだ!?」
宿敵「フフッ、この「好敵手」に勝てる人間なんて存在しないのさ。」
魔王「こ、好敵手だと!?」
〔好敵手〕
対峙する相手に合わせ、同じ職種に様変わりする職業。
極めるのにはセンスが問われ、大抵は挫折して「芸人」で終わる。
戦闘においての能力は、一言で言い表すならば「拮抗」。
全く同じ技を返し、相手の攻撃全てを相殺できる能力を持つ高等職種。
魔王「…知らんな。」
宿敵「よく言われる…。」
だが知名度は低かった。

 

2-13:無敗
意外にも出オチで終わらなかった宿敵。
五錬邪にも恐れられる魔王を相手に、一歩も引けを取らなかった。

そしてそのまま、ダラダラと二時間が経過したのだった。
魔王「ハァ、ハァ、貴様…なかなか…ヤルじゃねーか…。」
宿敵「ハァ、ハァ、キミも…諦めの…悪い人だな…。」
魔王「あ、諦める…? フザけるな!貴様は絶対にこの俺が…!」
声「ユーシャ様、残念ですがお時間です。」
賢二「えっ!ど、どこから声が!?」
魔王「む…?なんだ、華緒か。今いいところなんだから邪魔するなよ。」
華緒「いえ、しかし今すぐ出なければ面接に間に合わないもので…。」
賢二(め、面接!?「魔王」が面接!?)
魔王「あぁ…そうだったな。今日は「第一回:四天王オーディション」の日だったか。」
賢二(オーディションて!「四天王」ってそうやって選ぶものなの!?)
華緒「この者ほどの実力があれば、再戦の機会はいくらでもありましょう。」
魔王「…うむ、まぁそれもそうだな。」
賢二(あぁ、また一人「ロック・オン」された人がここに…。)
魔王「というわけだ。この勝負は預けといてやるよ。」
宿敵「フッ、何度やっても結果は同じだけどね。」
魔王「いい度胸だ!つぎ会う日まで死なずにいるがいい! サラバだ!!」
魔王は去っていった。
賢二「す…スゴいよ宿敵君!あのユーシャさん相手にあんなタンカ切れるなんて!」
宿敵「まぁ能力が「拮抗」だからね。何度やっても負けることは無いと思うし。」
賢二「ほんとスゴいよ!もしかして「好敵手」って最強の職業なんじゃない!?」
宿敵「いや、でもこの「拮抗」…確かにスゴいけど実は大きな「縛り」もあってさ…。」
賢二「へ?縛り??」
誰にも負けないが誰にも勝てない。

 

2-14:種族
長時間の戦闘の末、見事に魔王を追い払った宿敵。
だがその能力には、「決して勝利を得られない」という欠陥があるらしい。
言うなれば、「究極の引き分け要員」なのだ。
賢二「そっか…やっぱうまい話にはオチがあるもんなんだなぁ…。 大変だね。」
宿敵「うん。正直この「好敵手」ほど一人旅に向かない職業は無いと思うよ。」
賢二「アリにも勝てないんだもんね…。」
宿敵「乳児と五時間の死闘を繰り広げた時には、正直死にたくなったよ。」
賢二「はぁ…。 じゃあ結局、彼を倒すなんて僕らには不可能ってことだよね…。」
宿敵「ん〜、まぁ今のままでは無理だろうね。」
賢二「でもさ、たった四年で思いっきり成長してたんだよ?差は開くばっかりじゃ…」
宿敵「大丈夫。察するに彼は「戦闘族バルク」…これ以上の急成長は恐らく無い。」
賢二「せ、戦闘族…?それがユーシャさんの種族なの?」
〔戦闘族バルク〕
普通の人間より早いペースで成長し、十歳前後で成人体となる種族。
全盛期の肉体・力を保つ期間が50年と長いため、「戦闘族」の名が付いた。
パッと見みんな若いので、ナンパは非常にリスクが高い。
宿敵「師匠から聞いたことがある。成長は早いが、潜在能力はそう違わないとか。」
勇者「…そ、そうか。ならば俺も育てば…可能性はあるわけ…だな。」
賢二「勇者君!気が付いたんだね!」
宿敵「でもあの魔王は厳しいかもしれないね。恐らくバルクの中でも類を見ない…」
勇者「ちょっと待て。まず先に…一つ、大事なことを聞いておきたい。」
宿敵「ん?なんだい勇者君?」

勇者「誰だ貴様は?」
お約束が炸裂した。

 

2-15:決意
お約束を実行するほど余裕がありそうに見えた勇者。
しかし実際は、敗戦の屈辱が心の内に深い傷を作っていた。
宿敵「どうだい勇者君、これからどうするかはもう決まったかい?」
勇者「うむ。奴は当分放置で五錬邪の駆除を優先する。これでどうだ旅の人よ?」
宿敵「いやいや、だから旧友の「宿敵」だってば!なにその新しいパターン!?」
賢二「でもさ、それでもやっぱ戦力不足と思うんだけど…レベル上げはしないの?」
勇者「フッ、俺もバカじゃない。そこら辺はうまいこと考えてるはずだ。」
賢二「えっ!なんで他人事っぽいの!?」
宿敵「じゃあさ、具体的にはどのくらいの期間やる気?」
勇者「う〜ん…2・3日?」
賢二「無理だよ!どう見積もっても単位は「年」だよ!」
勇者「まぁとにかく、修行だな!」
そして少年達は―――
赤錬邪「よし!では全員でタケブへ向かうぞ!」
桃錬邪「ガセネタだったらアンタ殺すけどね。」
群青「まぁ気にせず行こうぜ!全てはユーザックを倒すためだ!」
黒錬邪「勝てば王様…悪くないな。」
赤錬邪「そうだ!勝って我らが正真正銘の「魔王」となり、世に君臨するのだ!!」
悪と戦うために
勇者「行くぞ!!」
賢&宿「う、うん!!」
旅に出る。



第二部:「五錬邪討伐編」 始動。

 

第一章