第一章

 

2-16:二年〔12歳:LEVEL15〕
俺の名は「勇者」。職業も「勇者」。この春で歳も12になり、現在思春期真っ盛り。
あの屈辱の敗戦から二年が経ったが、血の滲む特訓を経て俺も随分と強くなった。
ちなみに今は、賢二と二人でエリン大陸(無駄に広い)を旅している最中だ。
賢二「おーい、勇者くーん!やっと村が見え…って、どうかしたの?考え事?」
勇者「もう二年半…二年半も経つんだなと思ってな…。」
賢二「え、二年半?それって僕らがカクリ島を旅立ってからってこと?」
勇者「違う!姫ちゃんと離れ離れになってからだ!」
賢二「あぁ、そういえば盗子さんとも…」
勇者「二年前、なんとかお前とは会えた。だが残る姫ちゃんは未だ見つからん。」
賢二「そうだね。あと盗子さ…」
勇者「俺達三人…一丸となってかからねば今後の敵はヤバいかもしれんのに…。」
賢二「アレッ、勇者君も含めて三人なの!?違うよ盗子さ…」
勇者「早く三人揃いたいものだな。」
賢二「あ、うん…(四人なんだけどなぁ…)。」
宿敵はどうした。

 

2-17:金欠〔12歳:LEVEL15〕
二年半も歩き回ったおかげで、やっとこのエリン大陸にも終わりが見えかけてきた。
船が使えれば楽なのだが、今は大魔獣がウジャウジャいるため航路は使えない。
噂では、五錬邪が現在いるのはタケブ大陸…。一刻も早く斬りに行きたいものだ。
賢二「もう少しだよ勇者君!もう少しで村に…一ヶ月ぶりにお布団で眠れるよー☆」
勇者「そうだな。それにちょうど金も尽きかけてきたところだし、少し稼いでいくか。」
賢二「あ〜。でも魔物いなきゃ無理だけどね。僕らの仕事って「魔物退治」だし。」
勇者「いざとなったら雇えばいい。」
賢二「魔物を!?それは「勇者」のセリフじゃないよ!?」
勇者「…フッ、冗談だよ。そんなことできるわけ無いだろ?」
賢二「そ、そうだよね…。」

勇者「なにしろ金が無いんだ。」
賢二(あったらどうしたんだろう…?)
そうしたんだろう。

 

2-18:大変〔12歳:LEVEL15〕
ここ最近山道ばかり通ってきたのだが、久々に村で一休みできそうな感じだ。
が、平和すぎると金がヤバい。なんとかうまいこと魔物でも来ないものだろうか。
…などと考えていると、なにやら村の方角から男が猛ダッシュしてきた。もしや…。
村人「た、大変だべー!誰か助けてくれやー!」
勇者(おっ、ホラ来た!恐らくカモだぞ賢二、うまくやれよ?)
賢二「え、えっと…どうかしましたか?僕らで良ければ力とか貸しちゃいますけども。」
村人「ホントかよオイ!?いや〜、マジ助かるべ!オラは「奮虎(フンコ)」って名…」
勇者「挨拶はいい、早く要点を話せ。」
奮虎「お、おうよ。実は…腹が痛いのに紙ぐわっ!!
勇者「そんな個人的なことで大騒ぎするな!紛らわしい雑魚めが!」
賢二「だ、ダメだよ殴っちゃ!これでも一応苦しんでるんだよ!?」
奮虎「いや…大丈夫だべ。 もう…」
賢二「「もう…」何ですか!?うわっ、なんか薄っすらクサいんですけど!」
勇者「フッ、その程度の変装で…俺を騙せると思ったのか!?オナラ魔人よ!!」
賢二「違うって!今は同種の生き物だけど別人だって!」
奮虎「…ハッ、そうだべ!そんなことより大変なんだや!」
勇者「安心しろ、今のお前も十分大変な状況だぞ。」
奮虎「き、聞いとくれや!村が…村が魔物に襲われとるんだべさ!」
勇者「それを先に言えよ!!お前は村よりウンコが大事なのか!?」
奮虎「もちろん大事じゃなや!だども「一大事」だったんよ!!」
賢二「いや、そんなうまいこと返されても!」
勇者「おいコラそっちに立つな!風にニオイが乗っ…クセェ!!」
奮虎「いいから来とくれや!村まではオラが案内するでよぉ!」
勇者「しかし貴様…ホントに助けを呼びに来たのか?次の村は随分遠いだろ?」
奮虎「う゛っ。そ、それは…。」
賢二「まさか逃げて来たんですか!?最低ですよそれ!!」
いろんな意味で風上に置けない。

 

2-19:交渉〔12歳:LEVEL15〕
臭くてたまらん村人に連れられ、俺達は魔物に襲われているという村に到着した。
これから村長と会い、退治料金の交渉をせねばならない。少しでも多く稼がねば。
〜エリン大陸:ウシロシ村〜
奮虎「オーイ村長!旅の退治屋をスカウトしてきたべー!」
村長「なぬっ!?お、おぉ…神の助けだべ!まさか助っ人が来てくださるとは…!」
勇者「貴様が村長か? 俺の名は勇者、金と引き換えに平和をもたらす男だ。」
賢二(相変わらず惚れ惚れする程あからさまだなぁ…。)
村長「なんと、名前が勇者とはまた随分とふてぶてしぐぇっ!!
勇者「…次の村長を。」
賢二「いるわけないから!ストックとかあるモノじゃないから!」
村長B「お呼びですか?」
賢二「なんでいるの!?」
勇者「まぁ挨拶はもういいだろ。面倒は早く済ませたい、敵の情報を知る限り話せ。」
村長B「あ、ハイ。敵は小さく、全く凶暴に見えません。ですが本性は「人食い」の…」

村長B「魔草「血色草」です。」

さて、どう逃げるか…。
勇者はオチが読めた。

 

2-20:大群〔12歳:LEVEL15〕
考えたくはないが、話の展開からして敵の正体は「血子」っぽい。なんてこったい。
よし、こうなったら長居は無用だ。ややこしいことになる前に、どこか遠くへ逃げ…
血子「キャー!ダーリーン!会いたかったぁ〜ん☆」
勇者「…さて、どう誤魔化すか。」
賢二(あ、あちゃ〜…。)
勇者(フッ、まぁ安心しろ。こういう時の誤魔化し方は熟知してる。)
奮虎「な…なんだや!?まさかオメェら知り合いなんだべか!?」
勇者「ち、違うんだ!コイツは…その…い、妹なんだ!」
賢二「それは「浮気がバレた時」の…しかも間違った対処法だよ!」
村長C「こりゃ…どういうこったクソガキども!?事と次第によっちゃ村長許さんぞ!」
勇者「ほぉ、この俺に喧嘩を売る気か…って、アイタタタッ!噛むなよ血子!」
血子「だってダーリン、血子を置いて行っちゃうんだもん!ムキィー!」
村長D「このまま帰しては死んだ村人達も浮かばれん。村長として見過ごせんよ。」
賢二「ご、ごめんなさ…というか村長さんは何人いるんですか!?」
村長E「助っ人かと思ったのに逆に悪の仲間とは…。なんて報われないんじゃ…。」
奮虎「まったくだべ!これじゃ何のためにウンコまで漏らしたのかわかんねーべ!」
賢二「それは僕の方がわかりませんよ!!」
老人「おやおや…。そげに大騒ぎさして何さあっただ?」

村長達「だ、大村長!!」
賢二「親玉キタァーー!!」
大村長は三人いる。

 

2-21:別案〔12歳:LEVEL15〕
続々と湧いて出る村長達に続き、奥から現れた大村長。もう何がなんだか。
こうなったからには仕事は無さそうなので、早くここから去りたいのだが…。
大村長「…なるほど、魔草の知り合いだったべか。そりゃ対処に困るなや…。」
村長F「もうこうなったら、ふん縛ってフクロにして日干しにでもするしかねーべ!」
勇者「ケッ!血子にすら勝てなかった雑魚どもが、この俺に勝てるとでも?」
血子「そうだよ!日干しにされて明日の食卓に上がるのはアンタらだよ!」
賢二「え゛っ!まさか僕らに振舞う気!?」
村長G「ハッ、そうだべ!したら“奴ら”を倒しに行かせりゃいいべさ!」
村長H「それは名案だや!それならチャラにしても惜しくねーべや!なぁ大村長?」
賢二(な、なんかイヤな展開になってきたなぁ…。)
大村長「だども、そげな大事となるとワシだけでは…。やはり「永久村長」の…」
賢二「まだいるの!?」
血子「もう誰が偉いんだかわかんないよ!」
村長I「実はこの村と東の港街「ソノマ」を結ぶ峠にぁ、「首無し族」ちゅう種族の魔…」
勇者「ちょっと待て!なに勝手に事情を話し始めてんだよオイ!」
村長J「ここは他の村からは孤立しとる。東に行けねば村は寂れる一方なんじゃ。」
勇者「俺は知らんぞ。今は名声よりも日々の糧が要るんだ。」
村長K「みんな参ったべ。けんどそんな中、立ち上がった若人がおったべや。」
勇者「ほぉ、なかなか勇敢な奴がいたんじゃねーか。ならそいつに託しゃ…」

村長L「おったべや…。」
血子「ゲプッ。」
賢二「いやぁー!!」
さすがの勇者も断りづらい。

 

2-22:同情〔12歳:LEVEL15〕
結局村人に押し切られ、俺達は東の峠に向かうことになった。まったく面倒だぜ。
まぁ聞けば敵は財宝もいくつか持っているというし、倒して損ということもないだろう。
勇者「ふぅ〜…。しかし一晩くらいゆっくり休みたかったんだがな…。」
血子「ゴメンねダーリン。あんまりペコペコだったから、つい4・5人ほど…。」
賢二(この体のどこにそんなに…。)
奮虎「あ、この先を右さ曲がれば峠だべや。んだばオラは…」
勇者「コラ、どこへ行く気だ?逃げると酷い目に合うぞ賢二が?」
賢二「なんで僕が!?」
奮虎「オメェらは奴らを知らねぇからそったらことが言えんべさ!」
賢二「そ、そんなに恐ろしい相手なんですか?」
奮虎「…さぁ?」
血子「アンタも知んないんじゃん!!」
奮虎「とにかく、オラはまだ死にたく…んにゃ、死ぬわけにはいかねぇんだべ!」
勇者「やれやれ…。まぁ聞け、奮虎よ。」
奮虎「誰がウンコだ!」
勇者「言ってねーよ!文句あるなら名付け親に言いやがれ!」
奮虎「…オラに親はいねぇ。たった一人の弟とも…もう…。」
賢二「そ、そんな…。」
奮虎「オラを育ててくれたのは村のみんなだ。恩を返すまで…まだ生きてぇんだ!」

勇者「…わかった、行け。」
奮虎「えっ…。 んだば見逃してもらえるだか!?村に帰ってもいいと!?」
賢二「ゆ、勇者君…。」
血子「ダーリン…。」
なんと勇者が情けを見せた
勇者「もちろん「前を」だ。」
…わけが無かった。

 

2-23:隠処〔12歳:LEVEL15〕
嫌がる奮虎の首根っこを引っ掴み、「首無し族」が出るという峠を目指した俺達。
だが一時間歩いても、敵が現れる気配は一向に無かった。いい加減疲れたぞコラ。
勇者「オイ奮虎よ、一体いつまで歩かせる気だ?もしや迷ったんじゃあるまいな?」
奮虎「まぁ急かすなや。もうちっと歩きゃ奴らのアジトが見えるはずだべさ。」
賢二「あ、アジトに行くの!?どうせ襲われるんだから、わざわざ出向かなくても!」
勇者「アホ賢二。根こそぎ倒さねば真の目的は達せられんだろうが。」
血子「さっすがダーリン☆平和のためなら危険すら恐れないその勇敢なところ…」
勇者「行かねば宝が奪えんだろ?」
血子「…よりも、そんな自分本位なところがたまらないよね☆」
賢二「いや、「たまったもんじゃない」の間違いでは…?」
奮虎「むっ!見えたべ!!」
ダダダダッ!(駆足)
勇者「お、おいコラ!急にどうしたんだ…!?」
奮虎「ホレ、見るべ勇者。アレだべよ。」
勇者「なにっ!? おぉ、そうか!アレが…」

アレが…港町「ソノマ」…。
通過してどうする。

 

2-24:値切〔12歳:LEVEL15〕
どういうわけか、「首無し族」に襲われるはずの峠を何事も無く越えてしまった。
こういう展開はアリなのかどうなのか少し悩んだが、面倒なのでもう気にしない。
〜エリン大陸:港町ソノマ〜
勇者「というわけで、ご苦労だったな奮虎。さっさと帰…り道で襲われるがいい。」
奮虎「ま、待ってくれや!ホントにそうなりそうでオラ一人じゃ帰れねぇべさ!」
勇者「ガタガタ騒ぐな!この「人間異臭騒ぎ」め!」
奮虎「騒ぐのはオメェらだ!オラはひっそりと草陰で息を潜めてる側だべ!」
賢二「「異臭」の部分には一切反論しないんですね…。」
勇者「よし、とりあえず武具屋にでも行くか。このデカい街なら良い店もあるだろ。」
血子「あっ、でもお金あんま無いじゃん。どうすんの?」
勇者「任せろ。値切ったり値切られたりは俺の得意分野だ。」
奮虎「ふ〜ん。そげな交渉ごとが得意そうにゃ見えねぇがなや。」
血子「うっさいよ田舎モン!ダーリンは値切るってったら値切る男だもん!」
勇者「聞き分けの無い店主は、手足とか…こう…モギュッ!っと。」
血子「えっ!「千切る」なの!?」
賢二「アレはもう…見たくないな…。」
血子「実際あったの!?」
勇者「まぁとにかく武具屋へ行くぞ。今宵の魔剣は、血を欲してやがるぜ。」
血子「何しに行くの!!?」
買う気はゼロなのか。

 

2-25:買物〔12歳:LEVEL15〕
久々に大きな街へとやって来たので、とりあえず武具屋へ行ってみることにした。
魔剣の呪いがあるため武器を買う気は無いが、防具は新調しておきたいのだ。
ガラララン。(鐘)
店主「ま〜いらっしゃい。あらあら、随分と小さなお客さん達だこと。」
勇者「安心しろババア、貴様の小ジワほどじゃない。」
店主「Σ( ̄□ ̄;)!!」
血子「し、失礼だよダーリン!どう見てもまだ五十代だよ!」
店主「いや、まだ四十代…」
奮虎「そうだべ!まだ適当に「お嬢さん」とか言っときゃ付け上がる年代だべさ!」
店主「それは面と向かって言うセリフじゃ…」
勇者「ところでババア、この俺に似合うような素敵な防具は置いてないか?」
店主「あらら?それって…魔剣?こりゃまた随分と渋い趣味だわねぇ。」
勇者「趣味なわけあるか!どう見ても俺には不相応だろうが!」
店主「いや、どう見てもオーダーメイドですが…。」
勇者「剣のことはいい。何か「勇者」に似合う防具は無いかと聞いてるんだ!」
店主「勇者?う〜ん…あ!そういえば前にそれっぽい盾の噂を聞いたような…。」
勇者「ほ、ホントか!?それはこの辺にあ…」
(「出たぁー!魔人が出たぞぉー!!」)
勇者「!!?」
血子「魔人!?一見平和そうだったのに…!」
賢二「ゆ、勇者君!」
勇者「ああ、わかってる!!」

早速探しに向かおう。
ちっともわかってなかった。

 

2-26:職歴〔12歳:LEVEL15〕
やっと面白い話になってきたのに、魔人が現れ話が逸れてしまった。やれやれだ。
とても面倒ではあるが、敵を前にして逃げるような真似はできん。「勇者」として。
勇者「ったく…行くぞお前ら。準備はいいか?」
賢二「う、うん!」
ガラララン。(退店)
魔人「いらっしゃいませー。」
血子「えっと、四人ですけど入れますか〜?って、いま出てきたんだよ!!」
魔人「ハッ、しまった!ついバイト時代の癖が!」
血子「バイトて!誰が魔人なんか雇うかっての!」
魔人「失敬な!土木作業なら魔人の方が非力な人間より使えるんだぜ!?」
賢二「まぁそれじゃ「いらっしゃいませ」とは繋がらないけどね。」
魔人「…コ、コロス!ニンゲン テキ!」
血子「さっきまでペラペラだったじゃん!」
勇者「よし奮虎、条件を出そう。この弱そうな敵を倒せれば村まで送っ…奮虎?」
賢二「見事な逃げ足だったよ…。」
勇者「あ゛ぁ〜!もういい!仕方なく俺が相手してやるよチクショウ!」
賢二「なんか最近「仕方なく」で戦うこと多いよね、「勇者」なのに…。」
勇者「さぁ!とっととかかって来い!」
魔人「ケッ、そっちこそかかっ…いらっしゃいませー!!」
血子「こだわるなー!!」
勇者「くたばれぇえええええ!!」
魔人「ハイ喜んでぇええええ!!」
居酒屋出身なのか。

 

2-27:説教〔12歳:LEVEL15〕
妙にバイト気分な魔人と闘うこと十秒…。俺はアッサリ勝利した。十秒てオイ。
いくらなんでも弱すぎる。こういう雑魚は、一度キッチリ説教してやらねばなるまい。
勇者「おいコラ貴様ナメてるのか?もうチョイ頑張ってもらわんとこっちの立場が…」
魔人「ひぇええええ!も、もうヤメてぇえええ!鬼ぃいいいい!!」
勇者「誰が鬼だ!魔人が言うな魔人が!あまり怒らすと金棒振り回すぞコラ!」
血子「鬼じゃんそれ!すんごいコテコテのイメージだけども!」
魔人「お、俺はただの使いッパで!ただ「ゴクロ様」の命令…なんでもなくて!」
勇者「五秒やる。そのまま全て話すか、二度と話せなくなるか…前者を選べ。」
血子「えっ!選択権は与えないの!?」
魔人「おお脅しには屈しないぜ!?魔人の誇りに懸けて口が裂けても…」
勇者「ほぉ、口を裂いても…?」
魔人「ゴクロ様です、ハイ。この辺りに巣食う魔人達の親玉でございます。」
賢二(ま、魔人も生きるのに必死なんだなぁ…。)
奮虎「フンッ、ヘタレが。」
血子「お前が言うんかい!!」
勇者「こっ…!今まで一体どこにいやがったんだこの腰抜けめがぁ!!」
奮虎「や、大丈夫。もう立てるべ。」
血子「ホントに抜けてたんかい!」
勇者は金棒を振り回した。

 

2-28:出立〔12歳:LEVEL15〕
アッサリ負けた魔人の口からウッカリ漏れたボスの名前。なんてアホな奴なんだ。
もうなんだかとっても不愉快だ。こうなったらウサ晴らしに出掛けるしかないだろう。
勇者「決めた。その「お疲れ様」とかいう奴を倒しにいくぞ。」
魔人「うぇっ!?ダメだって!ヤメた方がいいってば!ゴクロ様めっちゃ強いし!」
賢二「ホントに強いんですか…?」
魔人「それがマジで強いんだよ、将棋とか。」
血子「インドア系かよ!!」
店主「ゴクロを倒しに行くって…本気かい?ボウヤ。」
勇者「あん?なんだババア、文句でもあるのか?」
店主「ゴクロの軍にはアタシらも参っててね。やるってんなら応援するよ!ホレッ!」
勇者「む?なんだこの短いベルトっぽいのは…?流行りのファッションアイテムか?」
店主「ちょっとした防具だよ。でも気を付けな?奴は正体不明の化け物だからね。」
勇者「フッ、俺を甘く見るな。我が家にも正体不明のペットくらい居たぞ。」
店主「あ、そうそう。例の盾の話だけど、多分もっと北に行けばわかると思うよ。」
勇者「そうか。 よし、そうと決まれば早速向かうぞ!案内しろ「マジーン」!」
マジーン「えぇっ!俺も行くのかよ!?って、なんか適当に名付けられてるし!」
奮虎「まぁ諦めるべ。コイツぁさすらいの「道案内コレクター」だでに。」

言われて気づいた。二人も要らんな。
奮虎は置き去りにされた。

 

2-29:策士〔12歳:LEVEL15〕
嫌がるマジーンを引き連れ、俺達は「魔人ゴクロ」の元へと向かうことになった。
聞けばゴクロは悪知恵の利く奴らしく、今まで倒しに出た奴は誰一人戻らんらしい。
ここはなんとしてでもブッ倒す。いい加減名を上げないと伝説になり損ねそうだしな。
勇者「おいマジーン、お前は部下なんだろ?だったら敵の能力とか教えろよ。」
マジーン「いや〜、あの人は用心深い人でさ。実は俺、会ったことすらねーんだよ。」
賢二「部下にも正体を明かさないなんて…。ホントに用心深い人なんですね。」
マジーン「マジ凄いぜあの人。玄関とかピッキング対策したいらしい。」
血子「思ってるだけかよ!」
マジーン「あ! あと、窓の鍵とかもシッカリ閉めてるって。」
血子「それは当然の行いだよ!」
勇者「そして将棋が強い。」
血子「だから関係ないって!!」
マジーン「まぁ、とにかく策士なんだわ。この先にある「罠」を見りゃわかると思うぜ。」
賢二「えっ!ななな何かおっかないモノとかあるんですか!?」
マジーン「毎日変わるんで俺にもわかんねぇ。だが、これだけは言える!」
勇者「な、何をだ…!?」

マジーン「迷いました。」
勇者「ブッ殺す!!」
まだ出発して五分だ。

 

2-30:道開〔12歳:LEVEL15〕
五時間後。激しく道に迷いながらも、なんとか敵の隠れ家付近までやってきた。
マジーンの話からすると、ここから罠がたくさんあるようだ。気をつけて進まねば。
勇者「よし、まずは俺が道を切り開く。お前らは俺の足跡を辿ってくるがいい!」
血子「そんなっ!自ら一番危険な道を行くだなんて…!」
勇者「俺は死なない自信がある。雑魚どもはのんびりとついて来ればいいんだ。」
血子「だ、ダーリン…☆」
カチッ(足元)
勇者は早速罠を踏んだ。
血子の足元が爆発した。
血子「ぷぎゃああああああん!
勇者「なっ!?ち、血子ぉおおおおお!! …さて、進むか。」
賢二「切り替え早っ!!」
マジーン「一番安全なはずの最後尾で被弾するとは…運がねぇ子だな。」
カチッ(足元)
勇者は再び罠を踏んだ。
賢二の足元も爆発した。
賢二「うわぁああああああああ!!
勇者「わー。賢二ぃー。」
マジーン「うわー!棒読みだー!」
勇者「おっ、あっちにもあるぞ。」
マジーン「ちょっと待て!えっ!?お前知っててやってたの!?」
勇者「フッ、台本通りだ。」
マジーン「台本!?」
勇者「ほい、ポチッとな。」
マジーン「おわっ!や、やめろぉおおおお!!」
勇者「と見せかけて…!」
ザシュッ!(斬)
お前が斬るのかよ。

 

第二章