第十八章 |
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256:始業〔9歳:LEVEL5〕 | |
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春…。 9歳になった俺は、今日から六号生として学校に通うことになる。 やはり最後ということで、今年はちゃんと始業式にも出られるよう早起きした。 今まで散々ビビらされた分、ここで校長に仕返しでもしてやらねば気が済まない。 勇者「…なのに、なんでまだ始まらないんだーー!!」 盗子「お、落ち着いて勇者!とりあえずそのマシンガンは仕舞ってくれる!?」 勇者「くそぉ…俺がこの時のために、どんだけ準備してきたと思ってやがるんだ!」 暗殺美「よく考えるさ!校長に一矢報いるなら卒業式でもオッケーなはずさ!」 賢二「た、確かに三時間は待たされ過ぎだけど、きっと何か理由があるんだって!」 姫「きっとポックリ逝っちゃったんだよ。」 盗子「物騒なことをサラッと言わないでよ!」 放送「えー、大変長らくお待たせいたしました。これより44年度始業式を…」 賢二「あっ、始まるよ勇者君!だから落ち着いて!」 放送「…始めるにあたり、まずは校長先生のお色直しを…」 勇者「結婚式かよ!! つーかまだ一度も登場してねぇじゃねーか!」 姫「じゃあ次はお焼香だね。」 盗子「それは結婚式じゃないよ!?対極に位置する行事だよ!?」 勇者「さっさと出て来やがれ校長!今日は貴様が地獄を見る番だ!!」 〜その頃、舞台袖では〜 校長「妃后の子…あの子は相当マズいな。もはやマオに汚染されきる寸前だ。」 教師「ハイ。 半身とはいえ、やはり子供には荷の勝ち過ぎる存在のようです。」 校長「…ならば計画は変更だ。早速明日にでも術式に取り掛かれ。」 教師「なっ! で、ですが「霊体封印術」の解読はまだ…!」 校長「仕方ない。「肉体封印術」の方を用い、あの子の肉体ごと封印するんだ。」 教師「しかし…!!」 |
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257:手掛〔9歳:LEVEL5〕 | |
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春の行事といえば、まずは遠足がある。 俺達にとっては最後の春遠足だ。 きっと無謀な冒険を強いられるはずなので、気を引き締めてかからねばなるまい。 …などと思っていた矢先、何故かしばらく学校は休みになると告げられた。 これは何か裏があるに違いない。「勇者」の勘がそう言っている。 勇者「というわけで、わざわざ我が家へ来てもらった理由は他でも無い。探るぞ。」 賢二「な、なんでキミは、いつもそうやって自分から危険に飛び込んでいくの…?」 盗子「イヤッ!イヤだよ!今度こそ絶対にイヤァーー!!」 勇者「やれやれ…まぁとりあえず落ち着け。 血子、お茶を。」 血子「あ、うん。 隣のでいい?それともお向かいさん?」 勇者「いや、「おっちゃん」じゃないから。」 賢二「でもさ、探るって言ったって手掛かりは何も…」 声「ふぅ〜…ったく、どこ行ったんだあの人は?参ったぜ…。」 勇者「む? どうしたカルロス、誰か探してるのか?」 剣次「うぉっ!?な、なんでもないぜ勇者!別に凱空さんなんか探しちゃいない!」 勇者「凱空!?お前、凱空を知ってるのか!?」 盗子「てゆーか、この辺に住んでる人なの!?」 剣次「だ、だから違うっての! そんなことより勇者、親父さん知らないか?」 勇者「親父が凱空なのか!!?」 剣次「ぐはっ!ウッカリ!!」 勇者「うわっ!ガッカリ!!」 |
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258:馬鹿〔9歳:LEVEL5〕 | |
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うっかり漏らしたカルロスの一言により、なんと親父が「凱空」なのだと判明した。 だがそういや親父は「歴史全書」を知っていた…。いま思えば可能性はあったのだ。 勇者「親父が…そうか親父が…。」 盗子「まさかあの勇者親父が元「勇者」だなんて、ビックリだね!」 賢二「僕は親の名前を知らなかった勇者君にビックリだけどね。」 勇者「…この話はとりあえず後回しでいい。まずは計画通り学校へと急ぐぞ。」 剣次「いや、悪ぃがここは通せねぇ。学校はもっと…な、なんでもねぇが。」 勇者「そうか、やはり学校で何かが起こってやがるのか!」 剣次「Σ( ̄□ ̄;)!!」 盗子(ちょ、ちょっとバラし過ぎじゃない?もしかして作戦なんじゃ…?) 賢二(彼はいつでも真剣にお馬鹿さんだよ。) 剣次「恨むなら自分を恨めよな。全ては事実を知ったお前が悪いんだ。」 盗子「アンタが教えたんじゃん!!」 勇者「ならば押し通る!!食らえ「刀神流操剣術」、壱の秘剣「一刀両断剣」!!」 剣次「おっと甘いぜ!絡み合え十字の呪縛!「束縛十字(ソクバクロス)」!!」 |
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勇者「くっ…! さすがはカルロス、一筋縄にはいかんか!」 剣次「ヘッ、お前も腕を上げたじゃねぇか。」 勇者「だがいいのか?こっちにはお前が崇拝する賢二…「賢者」がいるんだぜ?」 賢二(えっ!なんでここで僕が出てくるの!?) 勇者(コイツは単純バカだ、脅せば脅すほど素直にビックリする。お前も脅せ。) 剣次「た、確かに賢者殿には勝てるかわからねぇ…。 だが俺は…!」 賢二「どいてください剣次さん!でないと…必殺魔法「大吹雪」が火を噴きますよ!」 盗子(アホ賢二! いくらハッタリったって、「火を噴く吹雪」ってどんなだよ!!) 賢二(あ゛…。) 剣次「なんてこった!!」 |
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259:真相〔9歳:LEVEL5〕 | |
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カルロスが下手なハッタリに驚いている間に、俺はコッソリと我が家から逃走した。 よし、急いで学校へ向かうとしよう。 結局一人になってしまったが、まぁ仕方ない。 勇者「さてと、やはりここは追っ手を撒くため山道から…むっ!?き、貴様は…!」 父「なんだ勇者、父さんの後を追ってきたのか?そんなに父のオッパイが恋し…」 勇者「親父…いや、「元勇者:凱空」か。 貴様は学校じゃなかったんだな。」 父「なぬ!? やれやれ、カルロスもとんだウッカリ者だな…父さんマイッチング!」 勇者「フンッ、狸が。バレるとわかっていたから、わざわざここで張ってたんだろ?」 父「…そうか、ならば話は早い。 早速本題に入ろうか。」 |
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父「もう「歴史全書」は一通り読んだな? じゃあその後日談から聞いてもらおう。」 勇者「できるだけ早く話せよな。また途中で壊れられちゃたまらん。」 父「…マオの半身を己に封じてから約十年後、妃后は一人の子を産んだ。」 勇者「ひこ…確か魔を滅するという「退魔導士」の女か。それがどうかしたのか?」 父「その日を境に、それまで妃后の内にあったマオの邪気が完全に消えた。」 勇者「…ってことは、もしや子供の方に受け継がれたとか?」 父「そう、マオは彼女の子供に乗り移ったのだ。」 勇者「むー。だがそれは十年も前の話だろ?それで今が大丈夫ならもう…。」 父「いいや。いくら妃后の子とはいえ、子供の身で耐え切れる程マオは甘くない。」 勇者「どういうことだ?」 父「十年の時をかけ、マオは少しずつ子供の精神を侵食していった。」 勇者「侵食…! ってことは、そいつはもうじきマオに乗っ取られるってことか!?」 父「そうだ。そしてそうなる前に、その子もろともマオを封じる。それが…」 勇者「それが「隔離計画」の最終目的ってわけか…。」 父「勇者よ。私がなぜ今、お前にこの話をしたかわかるか?」 勇者「!! ま、まさか…まさかそれは俺…」 父「姫だ。」 勇者「じゃなかった!!」 |
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260:変調〔9歳:LEVEL5〕 | |
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親父の口から語られた、衝撃の真実。 なんと、姫ちゃんの中にマオが居るらしい。 勇者「バッ、バカな! 姫ちゃんは「天使草」を使えるほど純粋なんだぞバカ!!」 父「だが確実に、あの子は蝕まれている。お前は彼女の変調に気づかんのか?」 勇者「変調?そんなものは無い! 姫ちゃんは昔から何も変わっちゃ…」 「よろしくね勇者君、私は「姫」っていうの。」 勇者「そういえば…最初は今ほど寡黙ではなかった…かも…。」 |
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261:反復〔9歳:LEVEL5〕 | |
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計画の全貌が明かされ、姫ちゃんが危ないとわかった今、じっとしてはいられない。 さっさとクソ親父を血祭りに上げて、颯爽と姫君を助けに向かってこそ「勇者」だろう。 勇者「さぁ親父、命が惜しくば黙って俺を通しやがれコラ!」 父「私に…父に手を上げるとは…! 後悔してやる!!」 勇者「お前がすんのかよ!させるんじゃねーのかよ!!」 父「フッ、息子に後悔なんぞ絶対にさせない…それが親の使命だ。」 勇者「いや、貴様の子に生まれた時から俺の後悔は始まったぞ。」 父「まぁ、アレだ。 とにかくここは通さんし、私は父さん! …プッ☆」 勇者「ほんとブッ殺す!!」 父「行かせんぞ! どうしても行くと言うのなら、この偉大な父の屍を越えぶっ!!」 |
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〜その頃、勇者の家では〜 剣次「荒れた大地も軽やかに駆け抜けろ!「自転十字(モトクロス)」!」 賢二「・・・・・・・・。」 剣次「あ〜、何だっけかな〜。ド忘れしちまったよ!「十字謎解(クロスワード)」!」 賢二「・・・・・・・・。」 剣次「ぐっ…! 何故だ!?何故こんだけ技出して手応えが無ぇんだ!?」 盗子(…ねぇ、行こっか?) 賢二(うん、そだね…。) |
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262:奥義〔9歳:LEVEL5〕 | |
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その後まるでデジャヴの如きやりとりを繰り返し、俺達はようやく戦闘へと突入した。 だが魔剣はカルロスに封じられたため、しばらくは使えそうにない…どうするか。 父「フフッ、どうやらその剣は使えんようだな。そんな状態で闘えるのか?」 勇者「ケッ! 貴様を撒くくらい、剣など無くてもなんら問題は無いわ!」 父「ほぉ、ならば見せてもらおうか!」 勇者「あっ!水着のネェちゃん!」 父「ナメるな勇者!そんなヌルい手に引っ掛かる父と思ってか!!」 勇者「…が、脱ぎだした!!」 父「なんですと!?」 勇者「くたばれエロ親父!食らえ、謎の秘奥義「鶴の仇返し」!!」 父「ぬっ!木陰に隠れて一体何を…!?」 勇者「私がハタを織っている間…決して中を見るなよこの野郎。」 父「ひ、卑怯な!見るなと言われると見たくなるのが人の性じゃないか!」 勇者「かたかたかった〜ん。かたかたかった〜ん…。」 父「鳥!?鳥のシルエットが…!? ヤバい、気になる!」 勇者(さぁ見るんだ親父!その瞬間に俺は逃げるがな!!) |
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父「うぉおおお!ダメだ、もう辛抱たまらーーん!! …ハッ!!」 勇者「…ついに見てしまいましたね、バカ野郎。」 父「し、しまった!私としたことが、そんな「影絵」に引っ掛かるなんて…!」 勇者「こうなってはもうここには居られねぇ…。さよ〜なら〜ん。 パタパタパタ〜。」 父「あぁ、ゴメンよ鶴さん…私が見ちゃったばっかりに…ってバカ!騙されんわ!!」 勇者「くっ!さすがは親父…やるな!!」 |
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263:恨無〔9歳:LEVEL5〕 | |
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親父と闘い始めて一時間が経過したが、戦闘は依然として平行線を辿っていた。 するとそんな時、親父が穏やかに語りかけてきた。心理戦でも仕掛ける気だろうか。 父「勇者よ。 仮にここを抜けられたとして、お前は一体どうする気なのだ?」 勇者「何を?決まってんじゃねーか!姫ちゃんの封印を阻止するんだよ!」 父「だがそうしたところで、いずれ彼女はマオのモノになるのだぞ?」 勇者「バカを言うな!姫ちゃんは俺とくっつくんだ!」 父「いや、そういう意味じゃなくてだな。」 勇者「大丈夫!こういう時は結構なんとかなるのが世の常だ!」 父「だがもしならなかったら、マオが復活して世界はおっかなびっくりだぞ?」 勇者「そんな時に無理矢理なんとかするのが「勇者」の役目だ!任せやがれ!」 父「…そうか、もはや話し合いでは解決せんようだな。」 勇者「ああ。 とうわけで…こうなったら“アレ”で決めるしかないとは思わないか?」 父「なるほどな…。 いいだろう!だが負けても恨みっこ無しだぞ!?」 勇者「無論だ! じゃあいくぞ!!」 勇者「ジャン!!」 父「ケン!!」 |
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父「ブフォン!!」 | |
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264:親心〔9歳:LEVEL5〕 | |
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幻の禁じ手を繰り出し、なんとか親父に勝利した俺。後味は悪いが勝ちは勝ちだ。 父「あぅ…う゛がぁ…。」 勇者「悪く思うなよ親父、恨むなら自分の教育方針を恨んでくれ。」 父「ま゛、待で…勇者…。」 勇者「学校までは恐らく二十分…急がねばマズいな。 よし、猛ダッシュだ!」 父「ぐ゛っ……がふっ。」 |
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声「オイオイ…人にあんだけ釘刺しといて、結局アンタの答えはそれかよ?」 父「む゛っ…お゛、おぉカルロスか。油断したらこのザマ…情けない話だ。」 剣次「ヘヘッ、嘘つくなよ凱空さん。本気出しゃガキなんて一捻りだろうに。」 父「…まぁ、息子に後悔なんぞ絶対にさせないのが…親の使命だからな。」 剣次「それで世界が滅びようともか?フッ、随分と無責任な「勇者」だなアンタも。」 父「息子の天命に賭けてみたくなった。最後には親のエゴが勝ってしまったよ。」 |
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剣次「立てるか?」 父「ダメかも…。」 |
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265:激怒〔9歳:LEVEL5〕 | |
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重傷を負った親父を残し、俺は学校へと向かって走った。そして間も無く到着だ。 途中、カルロスを振り切ってきたという盗子達とも合流。事の顛末も軽く説明した。 勇者「というわけで、恐らく先公が最大の敵となるだろう。 覚悟はいいか?」 盗子「し、死ぬのはイヤだけど…そういう事情ならしょうがないよね!」 賢二「あっ!学校が見えてきたよ! 校庭に誰かいる!!」 勇者「その儀式、待ったぁーーー!!」 教師「えっ、勇者君!?なぜキミがここに…!?」 勇者「姫ちゃんを守るため、貴様を倒しにやって来た!大人しく死にやがれ!!」 教師「…やれやれ、凱空さんも困った人だ。やはり彼も人の親でしたか。」 姫「ゆ、勇者く…えぐっ。」 勇者「姫ちゃん、泣いて…泣いてるのか!? 先公ぉ、貴様ぁあああああ!!」 |
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姫「うぐっ、えぅっ…。」 賢二「えっと、えっと、どどどどうすればいいのかなぁ…!?」 盗子「も、もう大丈夫だよ姫! だから泣かないで!ね?」 姫「しゃっくりが止まらないよ。」 盗&賢「紛らわしいよ!!」 |
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266:無敵〔9歳:LEVEL5〕 | |
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姫ちゃんを救うべく颯爽と現れた俺だったが、不覚にも先公にボコボコにされた。 やはりコイツは人間じゃない。まさかこの俺が、こんなにアッサリやられるとは…。 勇者「うぐっ…! そ、そんな杖ごとき…に…!!」 教師「フフッ、まだまだ甘いですねぇ勇者君。剣なら勝てるとでも思ったんですか?」 盗子(あ、あの勇者が赤子扱い…。 やっぱヤバいよ!絶対勝てっこないよ!) 賢二(だったら、先に術式を行う「術士」を狙った方がいいかもね!) 教師「ほぉ〜、私を狙うとはいい度胸ですねぇ。」 盗子「なんで聞こえてんのさこの地獄耳ーー!! って、先生が術士なの!?」 賢二「えっ!? でも先生は「幻魔導士」であって「魔法士」じゃな」 |
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教師「おや?幻魔導士は幻魔術しか使えない…とでも?」 賢二「ぎょ、ぎょへぇええええ!!!」 盗子(そうだ!この隙に杖を奪えば…!よし、「盗賊の腕輪」を付け…アレッ!?) 教師「コレをお探しで?」 盗子「う゛ぇえええっ!!?」 |
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267:絶望〔9歳:LEVEL5〕 | |
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全てにおいて俺達の上を行く先公。もうこれ以上打つ手は無いのだろうか…。 教師「フフッ。 万能無敵のこの私に勝つなんて不可能ですよ。諦めてくださいな。」 盗子「もう…ダメなのかな…。」 勇者「だったら! だったらなんとかできないのか!?万能なんだろオイ!?」 教師「あ゛…。」 賢二「何か他の方法は無いんですか!?ホントにそれしか無いんですか先生!?」 教師「…マオだけ封印できる術さえ解読済みだったら、コレを使えたんですがね。」 盗子「な、ナニその怪しげな液体!?」 教師「私が長年かけて作った「魔法薬」です。コレなら強制的にマオを追い出せる。」 勇者「それが前に言ってた魔法薬…。 じゃ、じゃあ頼む!それを姫ちゃんに…!」 教師「…ダメです。 マオを再び世に放つわけにはいきません。」 勇者「そんなっ…!」 姫「結構苦いね。」 教師「そんなっ…!!」 |
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268:復活〔9歳:LEVEL5〕 | |
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死角は皆無かと思われた先公だったが、姫ちゃんにアッサリと意表を突かれた。 すると数秒後、彼女の中から黒い霧のようなモノがこんにちは。 恐らくコレが…! 姫「あうぅ〜…。(パタッ)」 勇者「ひ、姫ちゃん! 大丈夫か!?平気か!?お元気か!?」 盗子「大丈夫!気を失ってるだけ…ってゆーか、スヤスヤ寝てるよ!神経太っ!」 霧「ふぅ〜、やっと出られたよ〜。」 勇者「…貴様がマオか?」 マオ「うん、そうだよ。」 |
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教師「な、なんてこと…恐れていたことが…。」 マオ「困っちゃったね。」 盗子「アンタは別に困んないよ!?」 |
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父「うわぉ! ふ、復活しとるぅーー!!」 勇者「あ、生きてたのか親父。意外とタフだな。」 マオ「久しぶりだね、「勇者」の人。 相変わらずウザい感じだね。」 父「お前は何か…雰囲気が変わったな。」 マオ「正直、自分でも戸惑ってるよ。」 賢二(やっぱり不本意なんだ…。) 盗子「あっ、そうだ!復活しちゃってもさ、体が無ければ悪さはできないんじゃ…!」 マオ「問題無いよ。 もう新しい器…その資格持つ者の、邪悪な波動は感じてる。」 一同「!!!」 |
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269:撤収〔9歳:LEVEL5〕 | |
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ついに復活したマオ。そして俺を見守る一同…って、なんで俺を!?俺が何を!? 勇者「オイ!なにこっち見てんだよテメェら!?ブッた斬るぞ!!」 賢二「いや、僕達は…別に…。」 盗子「も、もしも強い強い勇者が乗っ取られたら大変だなぁ〜って、ね?」 父「その点は安心していいぞ。マオは合意無き者に憑依することはできん。」 勇者「じゃあなんでお前までこっち見たんだよ!?」 父「…見ろ勇者、一番星だ。」 勇者「ありゃ太陽だよ!!いい加減自然な誤魔化し方を覚えやがれ!」 マオ「さて、これ以上時間潰すのもアレがアレな感じだし…そろそろ行くよ。」 教師「ま、待ちなさい!アナタをこの島から出すわけには…!!」 マオ「それができれば苦労は無い…。 そうだよね、先生?」 教師「くっ…!」 勇者「まぁいいさ。俺に倒されるまでの僅かの命…せいぜい楽しむがいい。」 マオ「じゃあ毎日お祭りするよ。」 盗子「そりゃ楽しみすぎだよ!!まぁ世界滅亡よりはマシだけども!」 マオ「毎日が「後の祭り」だよ。」 盗子「そんな悔やまれる毎日は楽しくないよ!?」 賢二「なんかキャラに威圧感が無さ過ぎて、こっちも恐怖におののきづらいよね…。」 マオ「んじゃ、もう行くよ。でもサヨナラは言わないよ。」 勇者「ああ。きっとまた会える。」 盗子「いやいやいや!それは友情を伴う場合の別れ方だよ!?」 マオ「あ〜。 じゃあ…待ってる!私、待ってるから!!」 勇者「三年経ったら迎えに行く!」 盗子「愛し合ってるの!?」 マオ「というわけで、サラバだよ脆弱なる者ども! またねー☆」 |
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盗子「行っちゃったね…「緊迫感」の「き」の字も残さずに…。」 賢二「でも代わりにホラ、「脱力感」がこんなに…。」 勇者「気を抜いてる余裕は無いぞお前ら。俺達が今すべきこと…わかってるだろ?」 賢二「…大丈夫、わかってるよ。」 盗子「アタシもわかってる。」 父「・・・・・・・・。」 教師「・・・・・・・・。」 「逃げるぞ。」「うん。」 |
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270:旅立〔9歳:LEVEL7〕 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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マオの半身が姫ちゃんから解放されて半年後、世界は再び闇に沈みつつあった。 奴と結託した者の名は、「魔王:ユーザック・シャガ」。とんでもない化け物だと聞く。 現在そいつは「メジ大陸」を拠点とし、残りの四大陸にも勢力を広げているらしい。 父「…行くのか、勇者よ。」 勇者「ああ。」 そんな中、俺は大陸への旅立ちを決めた。なぜなら俺は「勇者」だからだ。 勇者「じゃあな親父。帰ってきたら貴様を殺す…忘れるなよ?」 父「ハッハッハ! お前ごときがこの私を倒せるかな?」 教師「さぁ勇者君、そろそろ行かないと夜が明けてしまいますよ。」 勇者「それにしても、貴様らが止めんとは驚きだな。絶対止めると思ったんだが。」 教師「もはやマオは解き放たれた…こうなった以上、誰かが止めねばなりません。」 勇者「お前らも相当強いんだろ?自分が行こうとは思わないのか?」 教師「面倒です。」 勇者「言い切るなよ…。」 父「過保護が過ぎると強い子は育たんからな。ここは若い世代に任せるべきだ。」 教師「マオの半身たるキミを死地へ向かわせるのは、やはり心配ですが…ね。」 勇者「安心しろよ先公、俺はマオに乗っ取られる程ヤワじゃない。ナメんなコラ。」 父「お前の場合、なぜか妙に同調している。何か面白い結果が出るやもしれんな。」 教師「そうですね。そこに賭けているからこそ、キミを行かせるようなものですよ。」 勇者「フッ、ホントは他にも何か企みがありそうだが…まぁいい。時間も無いしな。」 父「「ギマイ大陸」へ行くことがあったら、「終末の丘」に寄れ。母さんの墓がある。」 勇者「…わかった。チョメ太郎や血子の世話は頼んだぞ。」 父「うむ。行ってこい。」 あのあと親父から聞いた話によると、なんと俺は親父と終との間にできた子らしい。 氷中の終に次第に惹かれ、見惚れてたら熱視線で氷が溶けたとか言ってたっけ…。 そんなバカな話があるかとは思ったが、まぁあの親父に何を言っても仕方あるまい。 たとえ親がなんであろうと、自分がなんであろうと、俺は行くんだ。 なぜなら俺は… 盗子「ゆ〜うしゃ、こんな夜更けにどこ行く気〜?」 勇者「と、盗子!? なぜお前がここに!?」 賢二「水臭いよ勇者君、サヨナラも言わずに行こうとするなんて。」 勇者「賢二!それに姫ちゃんまで…!」 姫「ゴメンね勇者君、あのとき私が苦いとか言っちゃったから…。」 勇者「問題は「飲んじゃった行為」なんだが…。いや、あれで良かったんだ。」 賢二(マオが抜けても、やっぱ基本は天然なんだなぁ姫さんて…。) 勇者「すまんなお前達、こんな時間にわざわざ見送りに…って、何だその荷物は?」 姫「んとね、勇者君が行くなら私も行くよ。そのための「療法士」だよ。」 盗子「旅にはお金も要るよね〜。だったら「盗賊」は必要じゃないかな〜?」 賢二「きっと中には剣を通さない敵もいるよね。「魔法士」は重宝すると思うよ。」 勇者「お、おまえら…。」 勇者「断る!!」 三人「えぇっ!?」 勇者「…だが、どうしてもってんなら連れてってやる!」 盗子「あっ…☆ う、うん!!」 賢二「なんだかうまいこと立場を逆転されちゃったね…アハハ。」 姫「修学旅行だね☆」 盗子「あ、それいいかも!」 勇者「よーし野郎ども、家に帰るまでが修学旅行だ!死んでも帰るぞー!!」 三人「オォーーー!!」
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勇者「続くんかい!!」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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