第十五章

 

211:職権〔7歳:LEVEL5〕
冬だ。冬といえば…というほど行ってもいない行事、「地獄の雪山登山」がある。
前回はスイカ野郎が敵だったわけだが、今回の目的は果たして何なのだろう。
教師「明日の登山では、山頂にある「血色草(ちのいろぐさ)」を探してもらいます。」
勇者「オイ、なんだその物騒な名の草は?野ウサギでも食ってるのか?」
教師「イヤですね〜。食べるのは「人」ですよ。」
盗子「そっちの方がイヤだよ!!」
暗殺美「そんな食人植物を採らせてどうする気なのさ?まさか飼う気かさ?」
教師「あ〜、実は私的に作ってる「魔法薬」に必要なんですよ。」
美風「ふ〜ん。でもそれって職権濫用なんじゃな〜い?」
教師「イヤですね〜「濫用」だなんて。「悪用」と言ってください。」
盗子「だからそっちの方が悪いってば!!」
勇者「ところで、その薬は何に使うんだ?まさか良からぬことに使うんじゃ…?」
教師「フフフ。イヤですね〜「まさか」だなんて。」

良からぬことに使うらしい。

 

212:贔屓〔7歳:LEVEL5〕
先公のためにお遣いに行くこととなった今年の雪山登山。 面倒だがやるしかない。
今回は5人×3組で挑むことになり、俺の組は盗子、姫ちゃん、美風、博打の五人。
山のふもとに到着した俺達は、早速山頂を目指して歩き始めたのだった。
勇者「ふぅ〜、やれやれ。この重装備で雪道は辛いぜ…。」
盗子「あ!そういえばこの山って、エレベーターがあるんじゃなかったっけ!?」
勇者「それは崖側の山頂までだろ?こっちは普通に登るしかなさそうだぞ。」
美風「あ〜ん、もう美風ってば歩けなぁ〜い☆おぶって勇者ちゃ〜ん☆」
勇者「うおっ!か、勝手におぶさるな子泣きババア!」
盗子「な…なーにしてくれちゃってんのさアンタ!それにまだ出発したばっかだよ!」
美風「はぁ?なによ不細工、アタシの視界にその不快な顔入れるのヤメてくれる?」
盗子「ぬゎっ…ぬゎんですとー!!?」
美風「アタシは可愛い男の子にしか興味なーいの。わかったら消・え・て。」
博打「フッ、照れるぜベイベー。」
美風「アンタはウザい。」
博打「は…はは…。 おかしいな…急に鼓膜が破れたようだぜ…。」
姫「それは大変だよ。私が傷を治すよ。」
勇者「構うな姫ちゃん!今こっちに来ると美風に噛まれるぞ!」
美風「だ〜れが噛むのよ!それにこんなブッサ…」
姫「うまうま。うぷ〜。(カキ氷)」
美風「・・・・・・・・。」
姫「…ほえ?」
美風(か、可愛い…。)

姫は無敵だった。

 

213:左右〔7歳:LEVEL5〕
深い雪に苦しみながら歩いていると、眼前に分かれ道が現れた。
この山には幾つか山頂があるため、間違えたら戻らねばならん。 さて、どうするか。
博打「分かれ道か…。 俺の読みからすると…右だぜ?」
勇者「俺は左と見た。左に行くぞお前ら。」
博打「な、何を言うんだブラザー!?「勝負師」であるこの俺が…」
勇者「ナメるな。あの学園で四年も過ごした俺の方が、よっぽどのギャンブラーだ。」
博打「ちょっ…待つんだブラザー!俺の読みが信じられないっていうのかい?」
勇者「信じられん。なぜならお前の顔には幸が無い。」
盗子「そうだそうだー!幸がないぞー!」
勇者「お前には興味が無い。」
盗子「なんか…寒いな…。冬だからかな…。」
博打「頼むぜ!プライドに懸けて…ここは俺にトライさせてくれよ!」
勇者「断る!」
博打「絶対に右なんだ!」
勇者「違う!左だ!」
姫「面倒だから右でいいよ。」
勇者「だから右だと言ったろうが!!」
博打「えぇっ!?」

実は、最初から右だと思ってたんだ。

正解は左だ。

 

214:天使〔7歳:LEVEL5〕
博打のせいで、どうやら間違った道に来てしまったようだ。博打だけのせいで。
明らかに道が下っている。このままでは山頂には辿り着けん。 戻るしかないか…。
勇者「チッ、この雪道を引き返すのか…コリャかなり骨だな…。」
姫「むー。こうなったら飛ぶしかないよ。」
盗子「それができれば苦労は無いから!」
勇者「ぬぉおおお!ド根性ーー!!」
盗子「コラそこ!パタパタやっても飛ばないから!」
姫「わーい。」
盗子「ってそこ!なんで飛べてんの!?」
勇者「ぶはっ! ひ、ひひ姫ちゃんすまない!パパパパンツが丸見えだっほー!!」
美風「あら?あの子の背中…「天使草」じゃな〜い?」
勇&盗「テンシソウ??」

〔天使草〕
背中に付ければ一定時間空を飛ぶことができる貴重な草。
形が天使の翼に似ているためこの名が付いた。
しかし、邪な者には使うことができない。

盗子「ゆ、勇者…オチが読めたよ…。」
勇者「なっ、何を言う!この俺が邪だとでも言うのか!?ナメやがって!!」

ナメやがって…この雑草風情が…。

勇者は引き返した。

 

215:埋没〔7歳:LEVEL5〕
先の分かれ道まで戻ってしばらく歩くと、ようやく山頂へと到着した。
見渡すとそこには、まさに血の色と言える真紅の草が生えていた。これに違いない。
勇者「これが「血色草」か…。よし、早速抜くぞ。 よいしょっ…」
声「アイタッ!イータタタタッ!痛いよバカー!」
勇者「…む? なんだ盗子、術後の顔が痛むのか?」
盗子「へ?アタシは何も…って、整形なんてしてないから!!」
美風「そうよ勇者ちゃん、術後でこの顔は有り得ないわ。オェ〜。」
盗子「ムッキィー!ブッ殺ーす!アンタむかつくー!」
勇者「う〜む。盗子じゃないとなると…えい。」
血色草「痛っ!イタタタッ!だ〜から痛いってば!」
盗子「うっぎゃー!喋った!草が喋ったよ勇者!!」
勇者「最近の雑草は声も出すのか、生意気な。 引っこ抜く!」
血色草「ダメ!抜かないで!痛いから!死んじゃうから!!」
勇者「イヤだ。喋りや声が盗子に似てるのがなんかムカツク。」
盗子「えっ!そこなの!?そこがポイントなの!?」
血色草「イタタッ!痛い!やめて!呪うよ!?抜かれたらアタシ呪っちゃうよ!?」
勇者「フッ、呪いだと?崇高な「勇者」であるこの俺に、呪いなんぞ効くかー!」

だが魔剣には呪われている。

〜その頃、別の山頂では〜
血色草「ゲハハハハ!バカな奴らめ、忠告通り抜かずにいれば良かったものを!」
土男流「うぉー!オッサンが出て来たぜー!ムキムキのオッサンだぜー!!」
暗殺美「ほ、本体は根、草は髪だったってわけかさ…。」
血色草「さぁ貴様らの血をよこせ!俺様は腹が減っ…あぁ!イヤ!やめてぇー!!」

埋めた。

 

216:小人〔7歳:LEVEL5〕
血色草はギャーギャーうるさく、数十分格闘したが、なんとか引き抜くことに成功。
だがなんと、土中から小人の女が出てきたのだ。 これは…根なのか人なのか。
少女「うわーん!抜かれたー!とうとう抜かれちゃったよぉー!」
勇者「…オイ根っ子、お前は一体…なんなんだ?」
少女「根ッコじゃないよ!アタシは「血子(ちのこ)」、きゃわゆい根ッコだよ!」
盗子「根ッコなんじゃん!!」
血子「あーモウやんなっちゃう!この責任どう取ってくれるの!?プンプン!」
勇者「責任?まぁ盗子の命でなんとかなるなら別に構わないが。」
盗子「アタシはとっても構うよ!!」
血子「血色草はね、裸を見られた異性と結婚する決まりなのよバカ!もう大好き☆」
盗子「早っ!惚れるの早っ!!」
美風「ふ〜ん。でも、彼の次にこの片目ボーヤも見ちゃってるけど…どうなの〜?」
博打「フフッ、俺はレディの誘いは断らないぜベイベー☆ さぁおいでハニー!」
血子「殺すわ!好みじゃない奴と断った奴は、むさぼり食うのが掟なの!!」
博打「み、見てない!そういえばさっき急に眼球から血が!(目元をかじりながら)」
血子「というわけでダーリン、死にたくなかったらお嫁に貰ってよね!」
盗子「な、なーに言っちゃってんのさ!勇者がアンタみたいな草…」
勇者「…前向きに検討する。だからとりあえず山を降りるぞ、凍え死にそうだ。」
盗子「え゛ぇっ!?ちょっ、本気なの勇者!?」
血子「だ、ダーリン☆☆」

どうせ明日には魔法薬だ。

 

217:背水〔7歳:LEVEL5〕
凍死するぐらいなら一日くらい我慢しようということで、血子を言いくるめた俺。
盗子に似てウザいキャラだが、まぁ肩に乗るサイズだからそう邪魔にもなるまい。
血子「じゃあ早速行こダーリン☆アタシも早くお義父様とかに挨拶したいし☆」
勇者「おっと、まずはその一人称を改めろ。盗子なんぞとカブるのは苦痛だろう。」
血子「あ〜…、そだね! 血子、気をつける!」
盗子「な、なんで初対面なのに「そだね」なの!?ムッキィー!」
勇者「さぁ、騒いでないでとっとと降りるぞ。もう寒くて…」
男1「おっと、待ちなボウズ。」
勇者「!?」
男2「子供の血色草なんて貴重な品、ガキにはもったいねぇや。俺達によこしな!」

木陰から二人組のハンターが現れた。
だが勇者は寒くてプルプルしている。

姫「勇者君〜、かまくらができたよ〜。」
勇者「おぉ、ナイスだ姫ちゃん!これで寒さをしのげる!」
姫「お菓子の家だよ。」
勇者「いや、かまくらにシロップはどうだろう…。」
盗子「ゆ、勇者!? アンタがそっち行っちゃったら誰が戦うってのさ!?」
勇者「む?博打がいるじゃないか。一度くらいは見せ場が欲しかろう。」
博打「え゛!あっ…な、なんてことだ!こんな時に限って持病の口内炎が…!」
勇者「見えるか血子、あれが今夜の夕飯だ。」
血子「じゅるっ…。」
博打「Σ( ̄□ ̄;)!!」

味方の方が危険だ。

 

218:気紛〔7歳:LEVEL5〕
寒いので、雑魚の相手は博打に任せることにした。 しばらくは暖を取ろう。
コイツじゃ勝てるかどうかは微妙だが、まぁ俺の体が温まるまでもてばいい。
博打「や、やはりキミがやってくれないかブラザー!?俺は持病のギックリ肘が…」
勇者「生か死…こんなスリルある賭け事に燃えないってのか?ギャンブラーよ!!」
博打「!! あぁ、俺としたことが…なんて大切なことを忘れていたんだ…。」
盗子「そうだー!頑張れ博打ー!!」
博打「なんてことだ…午後から歯医者の予…」
盗子「往生際が悪すぎるよ!!」
男1「何をゴチャゴチャと…。 まさかテメェら、俺らとヤルっつーのか!?あ゛ぁ!?」
勇者「博打よ、お前に退路は無い。もはや背水…背に控えるは血の川と思え。」
博打「くっ、仕方ない…ややややってやるぜ! きま…「気まぐれ四面ダイス」!!」

〔気まぐれ四面ダイス〕
出た目によって相手か自分を攻撃するリスキーなサイコロ。
「赤字の1・2・3」が出たら相手に、「黒字の4」が出たら自分に攻撃がくる。
形は正四面体で、振った際に下になった目が出目となる。
また、攻撃力はサイを振る度に増していく。

血子「大丈夫かなぁダーリン?アイツすっごく運悪そうだよ??」
勇者「む?まぁ大丈夫だろう。四分の三の確率で勝つわけだし。」
美風「あ〜、でも「出続ける確率」はその回数乗だから、結構ハズれるかもよん☆」
博打「や、やっぱり歯医者に…。」
男2「逃がすかよクソガキ!死ねやぁーー!!」
勇者「危ないっ!!」
盗子「気をつけて博打!!」
勇者「危ないぞ姫ちゃん、お茶がこぼれそうだった。」
姫「あ〜、うっかりしてたよ。」
盗子「そっちの話!?」
博打「う、うぉおおお!こうなったらイチかバチかだー!いくぜダイス・ロール!!」

黒字の4。

 

219:圧倒〔7歳:LEVEL5〕
博打がアッサリのびたため、俺が戦うことになってしまった。やれやれ面倒だぜ。
だがまぁ体は軽く温まったし、今なら普通に動けそうだ。さっさと終わらせて帰ろう。
勇者「オイ雑魚ども、俺が相手してやる。ありがたさを噛み締めながら死ぬがいい。」
男1「んだと生意気な!一瞬でブッ殺してやるから覚悟しやがれ!」
勇者「フッ、甘いな!我流忍術「変わり身の術」!!」
男1「なっ…!」

勇者は「職業」の概念を無視した。

博打「グハッ!!
勇者「よし、成功!」
盗子「そういう術なの!?仲間を犠牲にする系!?」
男1「チッ、やるじゃねーか!だが逃げてるだけじゃ勝てないぜクソガキ!!」
勇者「フンッ、ならば食らうがいい! 謎の秘奥義「扉に黒板消し」!!」

良い子のみんなは真似しちゃダメだ。

男1「ぐぁああああ!!
盗子「えっ!なんでそんな技が効いちゃうの!?」
血子「てゆーかこの山頂のどこにそんな扉が!?」
姫「その点ぬかりは無いよ。」
盗&血「持参なの!!?」
勇者「フッ、「チョークの粉」の代わりに「毒蛾の鱗粉」…深く吸えば即死だ。」

「勇者」の武器じゃない。

 

220:嫉妬〔7歳:LEVEL5〕
俺と姫ちゃんの息の合った攻撃により、まずは一人撃破。残るはあと一人だ。
勇者「さぁ次は貴様の番だ。 そうだなぁ…貴様には刀のサビになってもらおうか。」
男2「こ、この小僧…結構やりやがる!」
勇者「剣は久しく使っていないからな、腕が鈍っては…む?抜けん!なぜだ!?」

魔剣はご機嫌を損ねていた。

勇者「おいコラ!抜けやがれこの鉄クズめが! ぬぉおおおおおっ!!」
姫「あ〜、ダメだよそんなんじゃ。乙女心は複雑だよ。」
勇者「…ば、バカだな〜。お前が一番に決まってるだろ?な?」
盗子「えっ!そんなことで機嫌が直せるの!?」
血子「てゆーかその剣って乙女なの!?」
男2「チャンス!今なら殺れる!!」
勇者「くっ…!盗子、その倒れてる奴の剣を取れ!」
盗子「あっ、うん!わかったよ!」
勇者「そして自分の胸を貫け!」
盗子「なんで!!?」

男2の攻撃。
勇者は50のダメージ。

 

221:狼狽〔7歳:LEVEL5〕
魔剣が抜けなかったせいで、手痛い反撃を食らってしまった。痛いぞチクショウ。
もう怒った!剣が使えないのならば、謎の秘奥義てんこ盛りでブッ潰してやる!!
勇者「う゛っ…ゆ、油断したぜ…。」
盗子「だ、大丈夫勇者!? えっと、一応これ…。」
男2「ハッ! しまった、剣を…!」
勇者「ぐぅっ…お、おぉ!これで反撃ができる…ぜ! 覚悟はいいかテメェ!!」
男2「ま、待て!コイツがどうなってもいいのか!?」
姫「あ〜、捕まっちゃったよ。」

姫が人質に取られた。

勇者「いぃーやぁあああああああ!!
男2「!!?」
盗子「あ、アタシの時との違いようったら…。」
勇者「貴様ぁ!もし姫ちゃんに何かしてみろ…内臓をグツグツ美味しく煮込むぞ!」
血子「だ、ダーリン落ち着いて!美味しくする必要性がわからないよ!」
男2「ヘッ、別にいいぜ?そいつを渡しゃこのガキ…あのガキは…どこ行った!?」

姫は雪ダルマとスリ替わっていた。

勇者「う…うぉー!!さっすが姫ちゃんだぜ!ワンダホー!!」
男2「なっ…! いつの間に逃げやがったんだ!?」
血子「てゆーか、いつの間にこんな物を!?」
盗子「そして一体どこに…」

雪ダルマ「そればっかりは言えないよ。」
一同「中にイターー!!」

スリ替わってなかった。

 

222:反撃〔7歳:LEVEL5〕
不覚にも姫ちゃんが人質に取られた。だが、本人にその自覚は無いようだ。
よし、今のうちに倒すか。今なら姫ちゃんは雪の鎧を纏っているので大丈夫だろう。
勇者「さぁぼちぼちお別れの時だ。浮世への別れは済んだか?」
男2「くっ…!」
盗子「今回は呪いは平気かなぁ?まぁ別に魔剣に換わっても問題ないけど…。」
勇者「前のバズーカの時は換わらなかった。どうやら毎回ではないらしい。」
男2「…ケッ!調子に乗るなよ!しょ、所詮はガキじゃねぇか!!」
勇者「フッ、ならば見せてやろう。 「刀神流操剣術」…その秘剣をな。」
男2「なっ!刀神流!?あの伝説の…「刀神」とうたわれた「剣豪:秋臼」の…!?」
勇者「あの地獄の夏修行…あの苦しみ…そのすべてを、貴様にぶつけてやる!!」

完全な八つ当たりだ。

 

223:決別〔7歳:LEVEL5〕
初めて使った必殺剣で敵を葬り、なんとか凍える前に山を降りられた俺達。
そして翌日、俺は血子との登校…最初で最後となるだろう登校をしたのだった。
勇者「む?オイ暗殺美、まさかお前らはミッションに失敗したのか?雑魚どもめが。」
暗殺美「フザけんじゃないさ!あんなムキムキした奴には誰も勝てないさ!」
血子「誰よアンタ?ダーリンに喧嘩売ったら血子許さないよ!?」
暗殺美「…勇者、この珍妙な生き物は何かさ? もしかして…」
勇者「うむ、血色草だ。色々あってかなり疲れたぞ。」
暗殺美「「憑かれた」の間違いじゃないかさ?」
勇者「そうとも言う。」
血子「二人はずっと一緒☆ 死ぬまで一緒なんだもんねー☆」
勇者「…まぁ、そうだな。」
血子「ねぇダーリン、ギュッとして☆ 壊れる程に抱きしめて☆」
勇者「いや、ダメだ。それは最後の手段だ。」
血子「え? ど、どゆことダーリン!?」

教師「いらっしゃい「原材料」。」
血子「Σ( ̄□ ̄;)!?」

別れの時が迫っていた。

 

224:処刑〔7歳:LEVEL5〕
ついに先公が現れた。これで血子も終わりだろう。あの世では華やかに咲くがいい。
血子「えっ!ちょ、何する気!? まさか…まさか血子、殺されるの!?」
勇者「残念だが血子、ウザいキャラは早死になのが世の常だ。」
盗子(明日は我が身なのかなぁ…。)
血子「イヤッ!絶対イヤッ!痛いのイヤァーー!!」
盗子「あ、あのさ先生、麻酔とかって無いの?せめて最後の情けに…ね?」
教師「あー、ありますよ。一瞬で心臓止まるのが。」
血子「そんな劇薬は麻酔とは呼ばないよ!」
教師「大丈夫、気づいた時には逝ってます。」
血子「痛くなきゃいいって問題じゃないよー!助けてぇー!!」
勇者「安心しろ、死ぬまで側にいてやる。」
血子「それは「死に際」以前に言って欲しかったよー!!」
教師「…で、痛かったですか?」
血子「え…? あっ、無い!髪が少し無い! でも、痛くも無かった…。」
盗子「いつの間に!?」
教師「フフフ。名付けて「幻想麻酔」…ってとこですかね。」
勇者「ちょ、ちょっと待て!そこだけでいいのか!?生かしてていいのか!?」
教師「必要なのは草…つまりは「髪の部分」だけですから。」
暗殺美「そ、それを早く言ってくれればウチらも刈ってこれたのにさ…。」
血子「わーい☆ ダーリーーン!これでまた一緒にいられるよー☆」

なんてこった。

壊れる程に抱きしめろ。

 

225:終業〔7歳:LEVEL5〕
徐々に冬は過ぎ行き、終業の季節となった。今年も生き残れて良かった。
まぁ今年は生徒数の関係でシゴキが甘かったのか、結構な人数が残ったのだが。
そのせいか、今年はちゃんと卒業式もあった。だがもう面倒なので特に書かない。
白とか美風とか案奈とかも卒業できたようだが、別に興味も無い。いらない。
盗子もいらない。血子もいらない。弓絵もいらない。賢二?誰それ??

もうじき春が来る。そして俺は五号生になる。

教師はニヤリと笑った。

 

外伝(肆)