第十四章

 

196:仰天〔7歳:LEVEL5〕
こうして闘うこととなった「武闘家」の学院塾生「戦仕」。なんだか非常にややこしい。
少し予定は変わったが、まぁいい。学院塾に俺の力を知らしめるのもまた一興だ。
勇者「フッ、「学園校の蒼き稲妻」と恐れられたこの俺に挑むとは命知らずな奴め!」
土男流「師匠ー!カッコいいぜー!!さっきと微妙に違うけどカッコいいぜー!!」
戦仕「御託はいいぜよ、とっととかかってきな!!」

戦仕は拳を構えた。
勇者はバズーカを構えた。

盗子「この卑怯者ォーーー!!」
勇者「「卑怯」ではない!「戦略」と呼ぶがいい!!」
戦仕「ヘッ、オイラは別に構わねぇぜよ。勝負の世界は所詮勝つか負けるかだわ。」
勇者「わかってるじゃないか。そう…これは男と男の真剣勝負。「最強」の称号と…」

戦仕「盗子サンを懸けた!!」

勇者「Σ( ̄□ ̄;)!?」

どこで話がこじれたのか。

 

197:争奪〔7歳:LEVEL5〕
どういうわけか、盗子を懸けて争うこととなった今回のバトル。 これは夢だろうか。
あ、もしかしたらドッキリか何かかもしれん。とりあえず少し様子をうかがってみよう。
勇者「お、オイ戦仕、ここは「最強」の称号と「プライド」を懸けるところでは…?」
戦仕「ヘッ、プライドなんて「愛」に比べれば些細なもんだわ!」
盗子(アタシを巡って争う男二人…す、素敵かも☆☆)
勇者「俺と出会った貴様は運が悪いと思ったのだが…まさか趣味まで悪いとはな。」
暗殺美「(たで)を食うのも大概にしろさ。」
盗子「ムッキィー!もうちょっと酔わせてくれたっていいじゃんさー!」
戦仕「オイラ元気のいい娘が好きなんだわ。さっきまでのやり取り見てて惚れた!」
勇者「残念だが戦仕よ、盗子は「元気」ではなく「ウザい」属性の生き物だ。」
暗殺美「そのウザさは国家的に「危険レベルA」。ちなみに顔は「S」さ。」
盗子「こっ…!」
戦仕「いい加減にしとけよテメェら!!」
盗子「せ、戦仕君…」
戦仕「顔なんてどうでもいいだろがよ!!」
盗子「いや、あんまフォローになってないけども…。」
戦仕「さぁ、いいから勝負ぜよ勇者!愛とは往々にして奪い取るモンだぜ!!」

お、俺はどうすればいいのだろう。 「盗子味のカレー」と、「カレー味の盗子」と…。

勇者は混乱している。

 

198:決断〔7歳:LEVEL5〕
究極の選択。 かつてこれ程までに返答に困ることはあっただろうか。
闘いに負けるか、盗子を得るか…。どちらにせよプライドは捨てる必要がありそうだ。
いや、待てよ?一つだけプライドを守る方法が…。 よし、こうなったら仕方あるまい。
勇者「俺は決めたぞ戦仕!貴様を倒し…そして俺も死ぬ!!」
盗子「えっ!そんなにイヤなの!?命懸けで拒否られてるのアタシ!?」
土男流「待ってくれ師匠ー!私を置いていかないでくれー!」
暗殺美「バカな奴さ。盗子を殺っちまえば済むのにさ。」
勇者「黙れ!俺は誰の指図も受けん! 戦仕を倒し…そして盗子を倒す!!」
盗子「受けてんじゃん!すんごいノリノリじゃん!」
戦仕「そうはさせるかよ!盗子サンはオイラが守ったるわ!」
勇者「できるかな貴様に?リーチの差は歴然だぞ?」
戦仕「こちとら剣士との戦いは慣れっ子ぜよ!その程度の差は関係ねーし!」
勇者「フッ、その言葉…すぐに後悔させてやるわ!!」
戦仕「行くぜ!「武神流格闘術」、壱の秘拳「一武芸(いちぶげい)」!!」
勇者「リーチの違いを思い知れ! 我流殺人術奥義、「BM−5型バズーカ」!!」
リーチどころの話じゃない。

 

199:連撃〔7歳:LEVEL5〕
プライドを懸けた闘いが始まった。 恐らくコイツは強い、手加減は抜きでいかねば。
そう考えバズーカで挑んだわけなのだが、まったくもって当たらない。 ならば…!
戦仕「ヘッ、このオイラに死角なんぞねぇわ!そんなん当たらんぜよ!!」
勇者「甘いな。「死角」というのは身の周りにのみあるものと…思ってかーー!!」
戦仕「なっ…!」

勇者は盗子めがけてブッ放した。

戦仕「盗子サ…危なぐおっ!!
盗子「せ、戦仕くーーん!!」
勇者「そして畳み掛けるようにー!謎の秘奥義「一人ツープラトン」!!」

勇者の血も涙もない攻撃。
戦仕は瀕死のダメージを負った。

盗子「ちょ、ちょっと勇者ー!なんでそんな残忍な闘い方ができるわけ!?」
勇者「フッ、俺はプロセスよりも結果を重んじるタイプだ。」
盗子「少しは過程も大事にしてよ!」
勇者「フザけるな!誰があんな家族を愛すか!!」
盗子「「家庭」の事情はどうでもいいから!!」
戦仕「お、オイラはまだ…やれ…るぜよ…。」
盗子「戦仕君…。」
勇者「…やめだ。 今日のところは「引き分け」にしといてやる。」
戦仕「なっ…なぜだよ勇者!?なぜみすみす勝ちを…!」
勇者「フッ。男同士の闘いに「なぜ」なんぞ無粋だな。 言うまでもなかろう。」

要は盗子が要らない。

 

200:呑気〔7歳:LEVEL5〕
なんとかうまいこと乗り切った戦仕とのバトル。盗子なんぞゲットしてたまるものか。
筋肉兄弟を討った手柄も手に入ったことだし、もう満足だ。ぼちぼち帰るとしよう。
というわけで早速帰路についたのだが、なんとロボと海竜はまだ闘っていた。
海竜「グガガゴガーー!!」
メカ盗子「ロボチガーウ!!」
土男流「うぉおおお!生きてたんだねトーコちゃーん!!」
勇者「よくやったぞロボ、もうひとふんばりだ! …よし、行っていいぞ運転手。」
土男流「し、師匠ー!頼むから加勢してやってくれー!!」
メカ盗子「マテ。 イク コマル。 ネンリョウ モウナ…ア、ロボチガウ!」
勇者「黙れ無機物!冗談は顔だけにしろ!!」
暗殺美「オイ勇者、それは「生きた冗談」に失礼さ。」
盗子「アンタの方が失礼だよ!!」
海竜「グガガグゴー!ガガグゴガグガゴゴー!!」
勇者「フッ、悪いが何を言ってるのかわからん。 まぁわかったところで俺は…」
声「逃がすか小僧ー。今日のオヤツはバナナがいいのだー。」
勇者「ひ、姫ちゃん!?いやいや、その訳も絶対おかしいだろ…って、ゲッ!」
盗子「来てたの姫!?てっきり今日は休みなんだと…って、ゲッ!!」
姫「勇者くーん、見晴らし最高だよー。」

姫が現れた。
海竜の口内からノンキに手を振っている。

 

201:召喚〔7歳:LEVEL5〕
なぜなのか、海竜の口の中からコンニチハな姫ちゃん。相変わらず神出鬼没だ。
疑問は尽きないが、とりあえず今はなんとかして無事に助け出さねばならない。
勇者「ひ、姫ちゃん!いい子だからそいつを刺激せずに出てくるんだ!」
姫「ほぇ? ん〜、わかったよ。じゃあお茶を飲んだら降りるよ。」
勇者「いや、だからそんな余裕は…!」
姫「まずはお湯を…」
勇者「待つんだ姫ちゃん!なぜこんな時に限って火起こしから入るんだ!」
海竜「!!?」
暗殺美「むしろ危険なのは海竜のような気がしてきたさ…。」

海竜はビビッて動けない。

勇者「どうすればいいんだ…このままじゃ姫ちゃんが海竜のエサに…!」
盗子「あっ、勇者!あれだよあの人!あの「黄色い人」ならなんとかできるかも!」
勇者「こんな時にフザけるな盗子!いくらオナラ魔人でも屁の色は無色だ!」
盗子「なっ!?ちがっ…!」
暗殺美「漫画の読み過ぎなのさ。まったくオメデタイ奴め。」
盗子「メデタイのはアンタらの頭ん中だよ!!」
土男流「師匠ー!黄錬邪さんだー!あの人ならまた海竜を操ってくれるぜー!」
勇者「ハッ、そうかその手があったか! よーし…オーイ、黄錬邪ー!!」

勇者は黄錬邪の名を叫んだ。

キラン☆(青空に一点の光)

群青「見つけたぞぁー!!」
一同「違うのキターーー!!」

お湯はもうじき沸く。

 

202:必殺〔7歳:LEVEL5〕
黄錬邪を呼んだのに、群青錬邪が飛んできた。 招かれざる客もいいとこだ。
今回の遠足はどうにも予定が狂ってばかりだが…まぁいいか。倒せば済む。
勇者「久しぶりだな、文鳥錬邪。」
群青「「群青錬邪」だ!ワザとらしく間違えてんじゃねぇぞテメェ!」
盗子「な、何しに来たのさ?まま、まさか…。」
群青「傷も癒え、あらかた力も戻った。だから殺しに来たに決まってんだろうがー!」
盗子「やっぱりぃーー!!」
メカ盗子「ダイジョウブ。 トウコノ イノチ ワタサナイ。」
盗子「め、メカちゃん…!」
メカ盗子「シヌトキハ オニイチャンノ ムネノナカ。」
盗子「死ぬまで付きまとわれるの!?」
勇者「フッ、戻った程度の力か?ならばパワーアップした俺の敵ではないな!」
群青「あ?何を見当違いな…いや、いい。どうせテメェは死ぬんだからなぁ!!」
勇者「御託はいらん!来いっ!!」
土男流「頑張ってくれ師匠ー!男の生き様を見せてくれー!!」
暗殺美(あっ!もしかしたらまた賢二君が降ってくるかもー!きゃうーん☆)
群青「死ねやクソガキ!気づいた時にゃテメェは屍だ!! 群青ォ〜…!」
勇者「俺を以前の俺と思うな!?修行で鍛え上げた剣技…とくと見るがいい!!」
群青「尖氣砲(せんきほう)!!!」



勇者「…えっ……?」

群青錬邪、会心の一撃。
勇者の心臓を突き破った。

勇者は死んでしまった。

 

203:死神〔7歳:LEVEL5〕
群青錬邪の攻撃を受け、俺の胸には風穴が開いた。ピアスとか付けるべきか。
あ〜あ、やれやれだよ。せっかく修行したってのに、全くいいところが出せなかった。
しかも「勇者」であるこの俺が、こんな中途半端な場面でアッサリ死ぬなんて…
勇者「…って、誰が死ぬかぁーーー!!」
盗子「ぎゃーー!生き返ったぁーー!!」
暗殺美「ままま迷わず成仏するさ!盗子の魂なら持ってけ泥棒だからさ!!」
盗子「な、なんでアタシなの!?」
勇者「要らない。」
盗子「なんでアタシじゃダメなの…。」
土男流「あ、穴が塞がってる!? うぉー!さすがだぜ師匠ー!神秘だぜー!!」
勇者(なぜだろう…?)
群青「なっ!?た、確かに心臓をブチ抜いたはずだ!!」
勇者「…フッ、ナメるな。俺にかかればこんな傷など、玄関開けたら二分で完治だ。」

声「フゥ〜、間一髪でしたね〜。危なかった危なかった。」

群青「!!?」
勇者「むっ!誰だ!?」
案奈「あ、みなさまァ〜。アチラの奥に見えますのがァ〜…」

教師「先生で〜ございまァす☆」

妙なテンションで教師が現れた。

勇者「せ、先公!?じゃあまさかさっきのは…!」
教師「ハイ、私が見せた「幻術」ですよ。 いや〜、命拾いしましたねぇ勇者君。」
群青「げ、幻術!?」
盗子「えっ!幻術ってことは…先生って「幻魔導士」だったの!?ウッソ!!」
群青「…ッ!!」
暗殺美「幻魔導士…確かかなりのレア職なはずさ。」
群青「…お、おいコラ…てぇことは、まさかテメェ…し、「死神の凶死」…か?」
盗子「え゛っ!し、死神!?」
姫「あ〜、じゃあ新聞と交換したんだね。」
勇者「違うぞ姫ちゃん!それは「チリ紙」だ!って、いつの間に下に!?」
暗殺美「そんな名で通ってる男が教師だなんて、あんまりな事実さ。」
教師「フフッ、イヤですね〜。 そんなのもう昔の名ですよ。」
勇者「いや、今でもバリバリの現役だろ。」
盗子「で、でも良かった〜。アタシ、ホントに勇者が死んじゃったと思って…えぐっ。」
教師「ハハハ。あんな初歩の手で騙されてるようじゃ、まだまだですよ?盗子さん。」
群青「くっ…!」
勇者「くっ…!」

くっ…!

 

204:幻術〔7歳:LEVEL5〕
死んだと思ったのは、実は先公の仕組んだドッキリだったらしい。チクショウめ。
だがまぁいい、とりあえず俺はもう疲れた。 ここはコイツに任せることにしよう。
群青「チッ、迂闊だったぜ…。まさかテメェみてぇな大物が居やがったとはな。」
教師「私も驚きましたよ。まさかこんなに早く「呪縛錠」を外してくるとはねぇ。」
勇者「む?じゅばくじょう??」

〔呪縛錠〕
特殊な呪物により作られた魔法の枷。
力の大半を抑え込むために、囚人の両手両足に装着する。
もちろんそう簡単に外すことはできない。

群青「チッ、まだ右手しか外せてねぇ…。さすがにこれでテメェの相手はキツいぜ。」
教師「フフッ。 いやいや、アナタ程度では全部外しても私には敵いませんよ。」
群青「な、なんだとコラ!せめてあともう一つ外れてりゃテメェなんか…!」
姫「外れたよ〜。」
群青「なっ!?」
盗子「え゛っ!なんで外しちゃうの!?てゆーか外せちゃうの!?」
姫「大自然の驚異だね。」
盗子「アンタの仕業じゃん!思いっきり人の業じゃん!!」
群青「フ…フハハハ! これで更に攻撃力は上がった!ブッ殺してやるぜ死神!!」
教師「…ふぅ、やれやれ。まったく学習能力の無い人ですね〜。」
群青「あ゛ぁ?なにをホザいて…ゲッ!外れてない!!」
勇者「げ、幻術!? なんて能力だ…一体どこまでが現実なのかわからん…!」
姫「先生、私はお菓子のお家に住みたいよ。」
教師「あ〜、大丈夫ですよ。私の幻術は「味覚」や「痛覚」等も表現できますし。」
暗殺美「じゃ、じゃあさ!わわ私はもう一度賢二君に会いたいさ!」
教師「ん〜、まぁ幻でもいいのなら。」
盗子「せ、先生!私は勇者好みの顔に…」
教師「それはちょっと…。」
盗子「なんで私だけ!?」

限界を超えてた。

 

205:確信〔7歳:LEVEL5〕
以前より強くなった群青錬邪を、まるで子供扱いの先公。やはり只者じゃなかった。
教師「…さて、実力の違いはわかりましたか?わかったのならもう帰ってください。」
群青「!?」
勇者「なっ!?なぜ逃がすんだ!今なら殺れるんだろ!?」
姫「10数えたら捕まえに行くよ〜。」
盗子「えっ!鬼ゴッコ!?鬼ゴッコすんの!?」
教師「いや〜、さすがに死ぬ気で暴れられたら獣車は守れそうにないですしね〜。」
暗殺美「あぁ…確かにこんな海のド真ん中に放り出されたらヤバいかもさ。」
群青「チッ、しゃあねぇ…今回は退いてやる。 だがいつか殺す!覚えてろよ!!」

群青錬邪は逃げ出した。

こうして、俺の四度目の秋遠足は終わりを告げた。今日も今日とて大ピンチだった。
学院塾にも敵ができたし、五錬邪の力も再確認した。今後は更に厳しくなるだろう。
もはや先のことはわからない。 いま俺がわかっているのは、ただ一つ。

今回は一度も、剣を振るっていない。

修行した意味が無かった。

 

206:読書〔7歳:LEVEL5〕
遠足も終わり本来なら体育祭の時期なのだが、今年は人数的に無理なので中止。
よってこの秋は、「読書の秋」にちなんで「悪魔の読書大会」が行われるらしい。
毎度のことではあるが、頭の「悪魔の」が気になって仕方ない。イヤな予感がする。
教師「みなさんは、「夢絵本シリーズ」の絵本を読んだことはありますか?」
盗子「あ!アタシあるよ☆ 本の中に入って主役気分を体験できるんだよね!」
勇者「ということは、話の流れからして今回の冒険先は絵本の中のようだな。」
暗殺美「まぁ心配ないさ。絵本なんて所詮、「メルヘン」が売りな子供騙しさ。」
盗子「あ〜、そうだよね。話は決められた一本道だし、危険は無さそうだよね。」
教師「中に一つだけ、主人公が命を落とすメルヘンがあります。」
盗子「聞いたことない!そんなメルヘン聞いたことないよ!!」
教師「さぁみなさん、くじ引きで入る本を決めてください。一冊に五人までですよ。」
勇者「本は四冊…生き残る可能性は四分の三だな。」
盗子「アタリを引くか、たった一つのハズレを引くか…。」
一同「…ゴクッ。」

姫「あ〜、私は「空飛ぶ魚屋さん」だったよ。」
暗殺美「私のは「稲穂姫」だとさ。」
盗子「さ、「さよなら勇者様」…。」
勇者「ハハッ、それがハズレだろ!死んだなバカ盗子…「メルヘン殺人事件」!?」

なんとなく二択になった。

 

207:疑問〔7歳:LEVEL5〕
俺が旅立った夢絵本は、「メルヘン殺人事件」。名前からしてババを引いたっぽい。
絵本内では話通りに動かざるを得ないため、これがババなら逃げ道はないのだ。
だがまぁ仕方ない。こうなったら成り行きに身を任せるしかないだろう。やれやれだ。

〔あらすじ〕
(もも)から生まれた「腿太郎(勇者)」は、生後まもなく旅に出る。
目指すは親戚の伯父がいる島、「伯父ヶ島」。

すると道中、知らぬ間に仲間ができる。
その仲間とは、「犬(博打)」「猿(土男流)」「キリン(美風)」。

はっきり言って、キリンは目立ちすぎる。

歩くこと数日、やっとのことで伯父の家に到着。
だがしかし、腿太郎がそこで見たのは、伯父の変わり果てた姿であった。

まぁ初対面なわけだが。

果たして誰が伯父を殺害したのか…。
こうして、彼らの謎解きが始まったのである。

勇者「やれやれ…。随分かかったが、どうにか終わりが見えてきた気がするな。」
美風「ふぅ〜。やっとタイトルにある「殺人事件」が出てきたわね〜。」
勇者「まぁいつまで待っても「メルヘン」は出てきそうにないがな。」
土男流「そんなことないぜ師匠!本の中ってだけで十分メルヘンだぜ!」
博打「そうだぜボーイ、夢を忘れたら人生終わりだぜ?」
勇者「フン、夢を捨てきれず人生をドブに捨てそうな賭博師が何を言う。」
土男流「んー!ところで師匠、これからどうすればいいんだー?」
勇者「さあな。まだ情報が少なすぎてわからん。 なにより一番わからんのは…」
土男流「わからんのは?」

この展開で、なぜ仲間が「動物」なんだ。

犯人よりも気になった。

 

208:手抜〔7歳:LEVEL5〕
なにやらドタバタと展開し、なんとなく脱出方法が見えてきた「メルヘン殺人事件」。
恐らくこの謎を解かねば現実には帰れないということだろう。 非常に面倒だ。
勇者「よしお前ら、まずは現場検証から入るぞ。怪しいところを列挙せよ!」
土男流「師匠ー!ナイフを持った怪しげな家政婦がいるぜー!」
家政婦「しまった!見つかったわ!!」
勇者「そいつだ捕まえろ!!」

この絵本は推敲前なのか。

家政婦「ば、バレたからには全員生かしちゃおけないわ。死んでちょうだい!」
勇者「フッ、この俺達に勝てるとでも思っているのか?さぁ土男流、やってしまえ!」
土男流「すまない師匠ー!絵本の中だからトーコちゃんは呼べないんだー!」
勇者「チッ、使えない奴め…。」
美風「大丈夫よ勇者ちゃん、心配しないで!」
勇者「おぉ、やる気か年増!」
美風「応援なら任せて♪」
勇者「失せろメス豚が!!」
土男流「違うぞ師匠ー!今の美風さんはキリンさんだー!」
勇者「くっ、じゃあ仕方ない…。 行けぃ博打!!」
博打「フッ、この俺の華麗な技が見たいのかいブラザー?」
家政婦「いい度胸ねボーヤ!ワタクシのナイフで血みどろになるといいわ!」
博打「や、やはりレディーに暴力は主義じゃないぜ。」
勇者「腑抜けめ!!」

頑張れ腿太郎。

 

209:名前〔7歳:LEVEL5〕
どうやら土男流は武器無し、美風はヤル気無し、博打は根性無しで使えなそうだ。
やはり俺がやるしかないらしい。 こんな余興に手を下したくはないのだが…。
勇者「もういい、下がってろ雑魚ども!この俺がカタをつけてやる!」
家政婦「ヤル気!?ヤル気なのねボーヤ!?ワタクシに勝てると思ってるの!?」
勇者「フッ、俺の辞書に「敗北」と「盗子」の文字は無いわ!!」
土男流「本人がいなくても言うんだな師匠…。 さ、さすがはこだわりの男だぜ!」
美風「頑張ってね勇者ちゃ〜ん☆」
博打「くっ、残念だぜ…持病のリュウマチさえ無ければ俺も…!」
家政婦「ホントにヤル気!?アナタ女性に手を上げるつもりなの!?最低ね!」
勇者「敵に男も女も無い。それとも貴様は、雄か雌かを見てから蚊を殺すのか?」
家政婦「くっ…!い、いいわ!倒してあげる!このナイフでギッタギッタに斬るわ!」
勇者「まずは女、名を名乗れ。我が名は勇…腿太郎!貴様を滅する者だ!!」

家政婦「ワタクシ? ワタクシの名は…「メルヘン」よ!」

だから「メルヘン殺人事件」。

 

210:絶望〔7歳:LEVEL5〕
その後、謎の秘奥義で家政婦を倒し、なんとか脱出できた「メルヘン殺人事件」。
誰も死なずに出られたので、この本はハズレではなかったようだ。 となると…
勇者「ふぅ〜、やっと帰ってこ…なっ!?」
盗子「あ!おっかえり勇者☆」
暗殺美「一体何日かかってるのさ?雑魚め。」
勇者「な…なんでお前らが生きてるんだ!!」
盗子「はぁ!?ひっど…」
暗殺美「まぁ待つさ盗子、勇者の気持ちも察してやれさ…。」
盗子「あっ…。」
勇者「ど、どういうことだ!?まさか…まさかハズレは…。」
教師「…はい。 ハズレ絵本は、「空飛ぶ魚屋さん」でした…。」
勇者「Σ( ̄□ ̄;)!!!」
盗子「ゆ、勇者…。」
勇者「姫ちゃん…。」
姫「なに?」
勇者「うぐっ。ひ、姫ちゃん…。」
姫「なぁに?」
勇者「姫ちゃーーーん!!!」
姫「なーーにーーー?」
勇者「ひ、姫ちゃん!?」
教師「!!?」
姫「姫だよ。」
盗子「えっ!なんで!?どゆこと!?」
姫「むー。なんで姫なのかは聞いたことないよ。」
盗子「いや、名前についてじゃないんだけど…。」
暗殺美「どうして生還できてるのさ?先生の思い違いだったのかさ?」
教師「…フフッ。 実は〜嘘でした☆」
盗子「えっ、嘘!?」
勇者「な、なんだよ嘘だったのかよコラ!脅かすんじゃねーよこの先公め!」
教師「いや〜、みなさんに危機感を持ってもらおうと思いまして。」
暗殺美「やっぱりスゴいペテン師さ、この男…。」
教師「フフフ…。」

教師(う〜ん…なぜでしょう…?)

スゴいのは姫だった。

 

第十五章