第十三章

 

181:学祭〔7歳:LEVEL3〕
今日は文化祭。まぁ名前は一応「文化祭」なのだが、実情は島をあげての祭典だ。
島民の半数が学校に集うため、生徒は四号生以上でなければ参加できない。
この祭りの人気コーナーは、なんといっても「人気投票」。もうじきその時間だ。
やはり「勇者」として、愚民どもに負けるわけにはいかない。勝たねばならん!
司会「さぁさぁ始まりました!血湧き肉踊る欲望の卍固め、42年度人気投票!!」
観客「イェーーイ!!」
司会「司会は私…荒ぶる魂を口に宿す男、「司会者」の「古館(フルカン)」と〜!」
武史「特別ゲストとして帰ってきた、解説の武史だ。 盗子は俺が一位にする!」
白「ふ、不正はやめた方が…。 あ、白です。なぜか僕がツッコミを担当します。」
巫菜子「そして私、巫菜子がみんなをフォローします☆(ったくなんで私が…。)」
司会「ぃよぉーし!では早速参りましょう!まずは「投票システム」の説明だぁー!」
〔投票システム〕
・一票につき三人まで投票可能。
・一番に3、二番に2、三番に1点。
・順位は総合点によって競われる。
司会「そして今回集まったのは全部で194票、総合1094点!まさにキングコブラ!」
巫菜子「…へ?コブラ…?(ダメだコイツ…勢いで適当に例えてるだけだ!)」
白「え?あっ…ハイ。まったくもってキングゴリラですね。」
巫菜子「は、白さん…ちゃんとツッコミを…。(後で炒めるぞこのもやし野郎が!)」
武史「いいからとっとと進めろ!俺は一位の盗子にしか興味は無ぇんだ!」
司会「ならば進めましょう!まずは黄昏の夕暮れ時に赤く輝く第十位! それは…」

第十位(20点)
宿敵

観客「・・・・・・・・?」

観客「あぁ〜…。」

司会「おぉっと!早速飛び出した「いたっけなぁ…。」という意味の「あぁ〜…。」!!」
武史「そういや前に盗子から聞いた覚えがあるぜ。確か名前は「ベンガル」だ!」
白「結構どうでもいいですね。」
巫菜子「は、白さん!?(くっ、なんで私がツッコミを…!)」

司会「では次へと参ろう!野に咲く花のように風に吹かれて第九位! それは…」

第九位(29点)
ユーザック

観客「・・・・・・・・。」

観客「誰だっ!?」
賢二(Σ( ̄□ ̄;)!!)

司会「おぉっと!全く誰かわからない!まるで数年ぶりに会った親戚のオッサン!」
白「も、もっとたくさん会いなよ!」
巫菜子「そこに突っ込むんですか!?(もっと投票に絡んだツッコミをしやがれ!)」
武史「そういや最近…盗子と会ってねぇな…。」
巫菜子「な、なんで泣いてるんですか!?(まともな奴はいねーのかよオイ!!)」

司会「さぁサクサク進みましょう!角刈り親父狩り末広がりの第八位! それは…」

第八位(35点)
勇者父

司会「おぉっと!ここで来ました勇者父!いい加減教えろよ名前は何だー!?」
武史「チッ、あの勇者の…まぁ親父だからいっか。 じゃあインタビューでもすっか?」
司会「ナーイスアイディア!ならば早速召喚してみましょう!いでよ勇者父!!」
父「あ、どうも。みなさんこんにちは、勇者の父です。将来の夢は「お嫁さん」です。」
巫菜子「無理ですから!!(つーかその歳で将来に夢見てんじゃねーよ!)」
白「僕は太陽を克服したいです。」
巫菜子「対抗しないでください!!(黒点にブチ込むぞテメェ!!)」

巫菜子(表)の限界は近い。

 

182:全滅〔7歳:LEVEL3〕
人気投票結果の発表はまだ続く。次は第七位…まぁ一位はどうせ俺だろうがな。
今はとりあえず、随分無理してるっぽい巫菜子の様子が気がかりでならない。
以前のようにキレて、会場を血に染めるようなことがなければいいのだが…。
司会「さぁ次は、愛してるという響きだけで強くなれる気がした第七位! それは…」

第七位(36点)
チョメ太郎

司会「おぉっと!第七位はチョメ太郎だー!勇者父はペットに敗れ去ったー!」
父「くわっ…!!」
白「では本人に話を聞いてみましょう。」」
巫菜子「聞いてわかるんですか!?(魔獣が喋れるわけねーだろがボケ!!)」
チョメ「応援ありがとう。チョメ太郎です。」
巫菜子「喋ったー!!って、勇者君!(腹話術してんじゃねーよ!)」
勇者「チッ、バレたか。」
武史「ああバレバレだ!テメェが盗子を狙ってることはなぁ!!」
チョメ「ポピュッパプー!」
巫菜子「あー!もう!いいから次いってくださーい!(もうダメだ、キレそうだ…!)」

司会「では次だ!恋に恋焦がれ恋に泣きそうな第六位! それは…」

第六位(89点)
教師(凶死)

司会「おぉっと!ここでキター!我が校教師、謎が謎を呼ぶ謎の人物凶死先生!」
武史「一気に50点以上も飛んでやがるぜ。じゃあ盗子はきっと2000点だな!」
巫菜子「総合点は越えませんから!(いい加減失せやがれこのシスコン野郎!)」
司会「なぜか名前を「狂死」と書く人が続出したが、まぁある意味正解だばぶっ!
教師「こんにちは、先生です。温厚なので暴力は嫌いです。」
司会(ピクピク…(痙攣))
巫菜子「古館さん!?古館さーん!!(もういいよ、そのまま死にやがれ!)」
姫「私が傷を治すよ。 むー、全め…」
一同「やめてー!!」

姫は〔全滅〕を唱えかけた。
一体どこで覚えたのか。

 

183:快速〔7歳:LEVEL3〕
司会がブッ倒れたため、急遽親父が代わりに仕切ることになった結果発表。
簡単な仕事だとは思うのだが、あの親父ということで俺は嫌な予感がしてならない。
父「えー。五位から先は、適当にこんな感じです。」

第五位(108点)
盗子

第四位(120点)


第三位(127点)
暗殺美

第二位…

盗子「えっ!ちょ、ちょっと待って!?なんでそんな投げやりな速さなの!?」
暗殺美「ふざけんなや!さっきまでみたく溜めて溜めてパンパカパーンとやれさ!」
父「えぇ〜。だってぇ〜、どうせ父さんの名はもう出てこないしぃ〜。」
暗殺美「オトナ気ないことしてんじゃないさ!だからアンタは八位止まりなのさ!」
父「やれやれ…。仕方ない、もう一度やり直すか…。」
盗子「もう遅いよ!ブチ壊された感動の瞬間はもう戻らないよ!」
父「それでは気を取り直しまして、第八位から…」
盗子「しかも自分の番からかよ! …って、アタシ五位なの!?五位ごとき!?」
暗殺美「フン、反応が遅いのさ雑魚め。女子一位の座は私がお持ち帰りさ!」
武史「納得いかねぇー!どうして一位のはずの盗子が五位なんだー!!」
盗子「なんでオリジナルのアタシらが転校生に…!姫からも何か言っちゃってよ!」
姫「四位って食べれるの?」
盗子「趣旨理解してないの!?」
白「ちなみに一位と二位との差は、わずか5点です。」
巫菜子「な、何事も無かったかのように進めるんですね…。(もう帰らせてくれ…。)」
父「さぁ一位は果たして誰なのか!?勇者なのか、それとも勇者なのか!!」
盗子「どっちも勇者じゃん!親バカなのにも程があるよ!!」
暗殺美「勇者なんかが勝つはずないさ!(賢二君に決まってるっての☆)」

会場ではチョメ太郎が暴れている。

 

184:優勝〔7歳:LEVEL3〕
結果発表もいよいよ大詰め。ぼちぼち俺の出番だ。ドライアイスを準備せねば。
そしてこの日のためにあつらえた特注スーツを身に纏い、颯爽と登場せねば。
父「それでは参りましょう!お次の第二位は…」
暗殺美「ちょっと待つさ!この場合、一位が先の方が盛り上がる気がするさ!」
父「おぉ、なるほど!ならばまずは第二位を…」
暗殺美「人の話を聞けや!!」
父「う〜む…じゃあ仕方なく第一位の発表です!」

ドゥルルルルルル…(ドラムロール)

第一位(1000点)

勇者父

盗子「って、アンタかよ!!」
父「やっちった☆」
暗殺美「やっちった☆じゃないさ!しかも1000点なんてあり得ない点つけんなや!」
勇者「ふ、フザけるなこの野郎!思わず登場しかけたじゃねーかコラ!!」
賢二「ま、まぁまぁ勇者君…。」
父「ではでは、お約束も済んだので、後はやはり適当に発表しちゃいましょう!」

第二位(179点)
勇者

第一位(184点)
賢二

観客「うぉおおおおお!!」
勇者「Σ( ̄□ ̄;)!?」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!!」
盗子「わー!勇者が負けたー!!」
暗殺美(きゃーん☆やっぱ賢二君だー!賢二君サイコー☆☆)
美風「嵐が…きそうね…。」

勇者「・・・・・・・・。」
賢二「・・・・・・・・。」

賢二は逃げ出した。

だが周りを囲まれてしまった。

 

185:表彰〔7歳:LEVEL3〕
何故なのか賢二ごときに敗れてしまった人気投票。きっと国家の陰謀に違いない。
だが、この程度のことで腹を立てるほど俺は器の小さな男ではない。見くびるな!!
だから今は、素直に賢二の勝利を祝ってやろうと思う。 俺はそんな、できた男だ。
勇者「おめでとう賢二。最後に言い遺す言葉はあるか?」
賢二「えっ!祝ってるの怒ってるのどっち!?」
勇者「ハッハッハ!何を慌ててんだ賢二、冗談に決まってるじゃないか。」
賢二「ホッ。良かっ…」
勇者「誰が祝うかー!!」
賢二「そっちが冗談だったの!?」
勇者「俺は他人の幸せと盗子が大嫌いだ!!」
暗殺美「…さすがに同情するさ。」
盗子「もう…慣れたかな…。」
賢二「ちょ、ちょっと待ってよ勇者君!話し合お!話せばわかるよ!」
勇者「ああ任せろ!肉体と魂を斬り離してくれるわ!!」
賢二「その「はなし」じゃなくって!」
勇者「奥歯一本と残しはせん!!」
賢二「えっ!「歯無し」!?いや、ダジャレ考えるほど余裕あるなら許してよ!」

勇者「…なんてな。 フッ、冗談だよ…ホントに冗談だ。」
賢二「へ…?」
勇者「俺にとって、お前は一番古い仲間…。その幸せ、祝わんわけがなかろう?」
賢二「ゆ、勇者君…!」
勇者「さぁ野郎ども、今から「打ち上げ」と行こうぜ!今日だけは賢二が主役だ!」
一同「オォーーー!!」
賢二「勇者君…みんな…ありがとう!!」

賢二は打ち上げられた(宇宙へ)。

 

186:山篭〔7歳:LEVEL3〕
文化祭も終わり、そしていつしか夏になった。今日から学校も夏休みに入る。
今年は宿題が無いため他の奴らは遊ぶようだが、俺は今日から山篭りの修行だ。
来たる秋遠足は、春のような不甲斐ない結果に終わらせるわけにはいかない。
勇者「だいぶ登ったな。ぼちぼち腹が減っ…おぉ!こんな所に魚が落ちてやがる!」

勇者は「焼き魚」を見つけた。
明らかに落し物ではない。

勇者「うむ。なかなかいい塩加減だぶぼっ!!
女「こ、小僧…ワシの夕食を横からかっさらうとは、いい度胸じゃないか!!」
勇者「フッ、まあな。度胸には多少の自信があばぶっ!!
女「褒めたわけじゃないわー!!」
勇者「くぉっ、このアマァ…! 女の分際で俺に二撃も食らわべぼっ!!
女「立てクソ餓鬼!その根性叩き直してくれる!」

フッ、まぁいい。修行前のいい余興だぜ。

勇者はボコボコにされた。

 

187:屈辱〔7歳:LEVEL3〕
山奥にて、突如襲ってきた暴力女。外見から察するに、俺より十ほど上だろうか。
一見ひ弱そうだが、技の速さはなかなかのもの。かなりの使い手に違いない。
だが「勇者」として、いや男として、こんな女に負けるわけにはいかない。ブッ倒す!
勇者「さっきは油断したが、もう容赦せん!勝負だこの糞アマぐぼぁ!!
女「糞アマではない。ワシには「麗華」という、実に乙女チックで麗しい名がある。」
勇者「ケッ!いくら名が良かろうが、その一人称(ワシ)で台無しだボケがはっ!!
麗華「やはり性根を正す必要があるな。 見たところ修行中…よし、見てやるか。」
勇者「なっ!? だ、誰が貴様なんぞに!しかも偉そうに「見てやるか」だと!?」

麗華「ならば看取ってやるか。」
勇者「し、「師匠」と呼ばせてくれ…。」

勇者に「天敵」が誕生した。

 

188:耐久〔7歳:LEVEL3〕
話の流れで、謎の女「麗華」の下で修行することになった俺。正直かなりの屈辱だ。
いつか隙を見て反撃を…とは思っているのだが、機会の無いまま三日が経った。
麗華「よし、ではその格好であと五時間。 少しでも動けば、お前は今夜の夕食だ。」
勇者「ちょ、ちょっと待て!この剣はただでさえ重いんだ、それを五時間持てと!?」
麗華「剣が重いのではない、お前が非力なのだ。食われたくなくば必死で耐えろ。」
勇者「だ、だが5時間は…やり過ぎ…だろう゛ぉあ!もう重い!もうキツい!!」
麗華「フゥ…やれやれ情けない小僧だ。ならば大マケにマケてあと六時間。」
勇者「ふ、増えてる増えてる!そん…なお約束は、後で…ぐぉっ、やってくれぃ!!」
麗華「口答えするとまた増えるぞ?だがまぁその分…寿命は減るからトントンだ。」
勇者「そんな、方程式は…う゛っ!な、習ってねーぞコラ…!!」
麗華「いいから黙って続けろ。さすればワシが秋までに、レベルを一つ上げてやる。」
勇者「ケッ!わ、わかったよ…やったろうじゃねーか!!」
麗華「ふむ。 まぁ頑張れよ、あと七時間。」
勇者「増えてる増えてるー!!」

勇者は〔忍耐〕を覚えた。

 

189:出発〔7歳:LEVEL5〕
いつしか地獄の夏は過ぎ、そして秋になった。ぼちぼち山を降りねばならん。
なぜなら、今日は待ちに待った秋遠足の日だからだ。今回こそは目的を果たす!
集合時間には遅れそうだが、まぁいい。ヒーローとは遅れて登場するものだ。
勇者「世話になったな師匠、ありがとう。 次に会うのは貴様が死ぬ時だ!!」
麗華「感謝するのか喧嘩売るのかハッキリしろ。 というか時間はいいのか?」
勇者「やれやれ、今から下山か…。これで間に合わなかったら全てが無駄だぜ。」
麗華「ん〜、ならばコイツを貸してやろう。我が「契約獣」で名を「美咲」という。」
美咲「クェエエエ!」
勇者「ケイヤクジュウ…?なんだこの鳥みたいな魔物は?」
麗華「いいから早く行け。急がねば大事な友が海竜の糞と化すぞ。」
勇者「うむ! んじゃな、この糞アマめがはっ!!

勇者は飛んでいった。

麗華「…で?いつまで隠れているつもりですか、凶死殿?」
教師「フフッ、気づかれてましたか…。 さすがですね、えっと…麗華君。」
麗華「貴方が教師だと聞きましたが、それにしてはシゴキが甘いのでは?」
教師「まぁあくまでも学校教育ですから。下位の生徒にレベルを合わせると…ねぇ。」
麗華「この短期間で奴はレベルを二つも上げた。予想以上に期待できる奴です。」
教師「気長にやりますよ。 あまり厳しくすると、自信と誇りが壊れてしまう。」

あれでまだ序の口なのか。

麗華「さて、ワシもそろそろ行くか…。 ちょいと師匠に用がありますゆえ。」
教師「「秋臼(アキウス)」さんなら多分、今頃は北の山か六本森にいますよ。」
麗華「北ですか…方向音痴のワシにはどっちがどっちやら。」
教師「なら途中まで案内しますよ。」
麗華「かたじけない。」

遠足の引率はいいのか。

 

190:登場〔7歳:LEVEL5〕
師匠の怪鳥「美咲」の背に乗り、一路目的地を目指す俺。なかなか快適な旅だ。
すると眼下の海上に、海竜に襲われている獣車を発見。恐らくあれがそうだろう。
ちょうどいい、絶好のチャンスだ。ヒーローの登場シーンにはもってこいな展開だ。
勇者「よし美咲、ここでいいぞ!後は華麗に舞い降りるだけだ!」
美咲「クェッ!」

勇者は勢いよく飛び出した。

勇者「ハッハッハ!待たせたな野郎ども!!」
盗子「ゆ、勇者!?なんで空から!?」
暗殺美「チッ!生きてたのかさ!」
土男流「うぉおお!カッコいいぜ師匠ー!!」
勇者「そしてサラバだ野郎ども!!」

バシャーン!!(水没)

勢いがよすぎた。

 

191:相棒〔7歳:LEVEL5〕
目測を誤り、海中へとダイブしてしまった俺。せっかくのチャンスが台無しだ。
一応なんとか這い出せたのだが、剣が重かったため体力的にもう限界。無念だ!
勇者「というわけで、後は任せた!」
盗子「この役立たずー!!」
土男流「大丈夫だ師匠、私に任せてくれ! オーイ、来てくれトーコちゃーん!!」
盗子「!?」

土男流は高らかに名を叫んだ。
なにやら等身大の人形が飛んできた。

盗子「えっ!あ、アタシ!?アタシのそっくりさん!?」
勇者「な、なんだこの趣味の悪いロボットは!?」
人形「ロボチガウ。」
土男流「この子は私の新しい相棒、「メカ盗子」の「トーコちゃん」ってんだぜ!!」

〔メカ盗子〕
盗子アローは超音波 盗子イヤーは地獄耳
盗子ウィングは空を飛び 盗子ビームは熱光線
兄貴の力 身につけた
九人の戦鬼と 人は言う
だが我々は 愛のため
戦い忘れた 人のため
涙で渡る 血の広野
夢見て走る 死の広野
サイボーグ盗子 ロボチガウ
サイボーグ盗子 ロボチガウ

盗子「ま、まさか、コレを作らせたのって…」
土男流「壊れた婆Bちゃんの代わりを探してたら、武史って人がくれたんだぜ!」
盗子「やっ…ぱり…。」
暗殺美「い、一体何を目的にこんなロボットを…?」
メカ盗子「ロボチガウ。」
勇者「くれたってことは、きっとスペアもあるんだろうな…。」
盗子「いやぁああああ!!」

「愛」というより「狂気」だ。

 

192:知能〔7歳:LEVEL5〕
武史が発注したという、謎のロボット「メカ盗子」。明らかに趣味が悪い(顔とか)。
果たしてコイツはまともに使えるのだろうか?どう見ても役立たずそうなんだが…。
勇者「ところで土男流、このロボなんだが…」
メカ盗子「ロボチガウ。」
勇者「これしか喋れないのか?」
土男流「いや、喋れるらしいんだ。なんでも最新の人工知能が使われてるとか。」
メカ盗子「アタシ トウコ マモル ツクラレタ ロ…メカ。」
勇者「オイ、いま自分で間違えたろ?普通に「ロボ」って言いかけたろ??」
メカ盗子「ロボチガウ。」
盗子(なんでそんなにこだわるんだろう…?)
メカ盗子「ユウシャ キライ。 ユウシャ ジャマ。」
勇者「な、なんだと!?鉄クズの分際で生意気な!!」
暗殺美「きっと兄貴の奴がインプットしたのさ。あのシスコン兄の魂の叫びさ。」
メカ盗子「トウコ カワイイ。 トウコ イチバン。」
盗子「えっ、そ、そう?それはなんかちょっと嬉しいかも☆」
メカ盗子「ユウシャ キライ。トウコ カワイイ。オニイチャン ダイスキ。」
盗子「ちょっと待って!なんか今、聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど!?」
土男流「さぁトーコちゃん、そんなことより攻撃を頼むぜ!」
メカ盗子「テキ タオス。 トウコ マモル。 オニイチャン ダイスキ。」

メカ盗子の攻撃。

勇者に40のダメージ。

 

193:命令〔7歳:LEVEL5〕
そして海竜vsメカ盗子の闘いが始まった。まぁとりあえず、お手並み拝見といこうか。
できることなら俺は力を温存し、待ち受ける「筋肉兄弟」との対決に備えたい。
頑張れよメカ盗子。もしうまくやったならば、仕方なくさっきの攻撃は忘れてやる。
メカ盗子「アタシ タタカウ。 メイレイ ダス。」
土男流「よ、よーし!すんごい命令を出してやる!だから勝ってねトーコちゃん!!」
メカ盗子「アタシ マケナイ。 オニイチャンノ ナニカケテ。」
盗子「いや、だからなんでそこでお兄ちゃんが出てくるの!?」
メカ盗子「オニイチャンニ…ナリカケテ?」
盗子「なりかけないで!!まず「お兄ちゃん」から離れてってば!!」
土男流「さぁ行けトーコちゃん!おもむろに胸を開いて「オッパイミサイル」だ!!」
盗子「えぇっ!あるの!?そんなんあるの!?いやぁああああ!!」
メカ盗子「ゴメン ソレ チョト ナイ。」
盗子「あっ、そ、そうなの!?よかっ…」
メカ盗子「シナギレ ラシイ。」
盗子「でも問い合わせはしたってこと!?」
メカ盗子「オニイチャン ガッカリ。」
盗子「アタシは…ガックリだよ…。」
土男流「うぅ〜ん…じゃあ命令は、えっと、あの、その、ぬおおおおっ!!」
勇者「チッ!どけ土男流、俺が命令を出す!今のお前に任せてたら日が暮れる!」
土男流「で、でも…!」
勇者「言い訳はいい!俺は「でも」と盗子が大嫌いだ!!」
盗子「今日はもう…落ち込む気力も無いかな…。」
土男流「わ、わかったよ師匠!今日は勉強させてもらうぜ!」

俺は先を急ぐんだ。こんな海竜ごときに時間を割くわけにはいかない。

命令を出してください。





・盗子アロー
・盗子イヤー
・盗子ウィング
・盗子ビーム
面舵(おもかじ)イッパイ

 

194:戦略〔7歳:LEVEL5〕
ロボを置き去りにし、海竜の巣を後にした俺達は、数分後コミナ島に到着した。
土男流の奴は散々泣き喚いたが、一喝して黙らせた。 師の教えは絶対だ。
そしてしばらく歩くと、なにやらデカい建物を発見。きっとあれが敵の城に違いない。
案奈「あ、皆様ァ〜。アチラに見えますのがァ〜、敵城「佐助城」で〜ございまァす。」
勇者「佐助城…まるで塔のような城だな。五重の塔か…。」
盗子「なかなか守りが堅そうだけど、どうする気なの勇者?」
勇者「フッ。こういった塔の攻略方法といえば、もはや一つしかなかろう。」
盗子「そ、それってまさか…!」
暗殺美「「ここは自分に任せろ」と言い、各階に一人ずつ残るというお約束の…!」

勇者「爆薬をありったけ仕掛けろ!!」

勇者は勝てれば満足だ。

 

195:宿敵〔7歳:LEVEL5〕
戦いの準備は整った。万一生き延びたとしても、出て来たところを斬れば済む。
…と思ったのだが、なにやら様子がおかしい。中から人が逃げるように出てくる。
もしや気づかれたか?いや、違う。 どうやら既に誰かに襲われているようだ。
仕方なく数分待つと、中から俺と同年くらいの奴が男を二人背負って現れた。
少年「ヘッ。筋肉兄弟ってのも案外大したもんじゃ…ん?なんだよお前ら?」
案奈「え〜、アチラでダランとしてるのがァ〜、噂の筋肉兄弟で〜ございまァす。」
盗子「えっ!なになに? 敵さんってば、もうやられちゃってるの!?」
勇者「そのバッヂ…貴様は「学院塾」の奴だな? なぜここにいる!!」

〔学院塾〕
学園校とはライバル関係にある学習塾。
詳しいことはなんとなく謎に包まれている。

少年「あん?そういうお前は学園校の…」
勇者「フッ、児童最強…「学園校の蒼き流星」とはこの俺のことだ!」
土男流「師匠ー!カッコいいぜー!!初耳だけどカッコいいぜー!!」
勇者「そしてコイツが「カリスマ不細工」の盗子だ。」
盗子「そんなカリスマは不名誉だよ!!」
少年「あ〜そっか、お前らもコイツらを…。けどワリィが手柄はオイラがもらったわ。」
勇者「安心しろ。ここで貴様を倒せば俺達の手柄だ。」
暗殺美「いや、それは「勇者」の役目じゃない気がするさ。」
少年「ヘッ、まぁいいわ。 学院塾生の力…見たければ見せたるぜよ!」
勇者「俺の名は勇者!まずは貴様も名を名乗れ!!」
少年「オイラか?オイラの名は…「戦仕(せんし)」!!」

フッ、「戦士」ごときが「勇者」に挑もうとは笑止!!

職業は「武闘家」だ。

 

第十四章