第三章

 

46:再度〔4歳:LEVEL1〕
懲罰房から出た頃には、知らぬ間に夏になってたわけで。
教官「つまり、もうじき「夏の演習」があるというわけだ。頑張りなよガキども?」
勇姫「断固拒否するね!なんでわざわざ死にに行かなきゃなんないのさ!?」
教官「ほぉ、行ってもない分際で偉そうに言うじゃないか勇姫訓練兵?」
勇姫「行ってもないのはみんなも一緒じゃん!事故で盛大に逝っただけじゃんか!」
教官「安心しろ、次は事故じゃない。」
勇姫「結末は同じっぽいし!」
教官「とにかくだ、前回逃げた臆病者には何も言う権利は無いんだよ。腹をくくれ。」
勇姫「なっ…!」
剣吾「お、落ち着いて!落ち着いて勇姫ちゃん!」

まさか…前回だけとでも…?
勇姫は懲りてない。

 

47:絶叫〔4歳:LEVEL1〕
やっぱりやってくるっぽい「夏の演習」。どう考えてもイヤな予感しかしない。
勇姫「てなわけで、どうやれば回避できるか考えればいいと思う。」
剣吾「あんな長期間監禁されといて…まだ懲りないんだね。」
勇姫「ハァ?何言ってんだよ!諦めたらそこで終わりだよ!?」
剣吾「えっ、諦めたから逃げるんだよね!?」
闘舞「けどよ、なんかユッキーらしくなかないか?なぜに逃げたがるんじゃ?」
栗鼠香「そうだよー?いつもの憎たらし痛い!ふてぶてし痛い!目はヤメ痛い!
勇姫「ん〜…私にもよくわかんないんだけど、な〜んかたまに叫ぶんだよね〜。」
剣吾「え、叫ぶって…何が?」

「遺伝子」が。
母からの遺産だった。

 

48:障害〔4歳:LEVEL1〕
心の奥底からの「逃げて」って声が止まんないから、やっぱ逃げることにした私。
勇姫「だから、その障害となるものは全てなぎ倒す!!」
教官「…なんだ貴様、わざわざ死期を早めに来たのか?」
勇姫「その発想は無かった!しばし待つよろし! ちょ、どうしよ剣吾!?」
教官「なるほど、貴様もグルか剣吾訓練兵。」
剣吾「なんでそうあっさり味方を売るわけ!?お、俺は…」
闘舞「俺はグルでいいぜ?ユッキーとつるんでた方がなにかと面白そうじゃしなぁ。」
栗鼠香「じゃあアタシもグル〜♪」
剣吾「えっ、じゃ、じゃあ俺も…って言ったら「どうぞどうぞ」な流れだよね!?」
勇姫「チッ…。」
剣吾「ほらやっぱり!!」
教官「どうやら貴様らは…一度地獄を見なければ、立場もわからんようだな。」
勇姫「フッ、そう簡単にいくと思ったら…大間違いだぶしっ!
間違ってなかった。

 

49:再戦〔4歳:LEVEL1〕
全治三ヶ月の重傷から立ち直った頃には、季節は秋になっててさ…。
なんでかな、もう1年生も半分過ぎたってのにほとんど教室にいた記憶が無いのは。
勇姫「でも大丈夫。次こそは…次こそは必ず、”勝利”という素敵な思い出を…!」
剣吾「ってまたやる気なの!?あれだけの目に遭わされてなお!?」
闘舞「まぁ確かに、素直に行っといた方がまだ無事じゃった気がせんでもないわな。」
栗鼠香「あの殺さない程度にいたぶる感じ…あれは慣れるまで時間かかったよね。」
剣吾「慣れたんだ!?凄いねなんか!頭大丈夫!?」
闘舞「けどよ、あんだけやられてなんでまだ好戦的なんじゃ?バーサーカーか?」
栗鼠香「そうだよー?やっぱり憎たらし痛い!ふてぶてし痛い!だから目は痛い!
勇姫「ん〜…私にもよくわかんないんだけど、な〜んかたまに叫ぶんだよね〜。」
剣吾「え、叫ぶって…何が?」

やっぱり「遺伝子」が。
今度は父の方が。

 

50:変更〔4歳:LEVEL1〕
秋になったってことは、今度は「秋の演習」がある。だから早速、私はまた戦うんだ。
勇姫「と、ゆーわけで!そんな私はズバッと物申す!」
教官「…あ゛ぁ?」
勇姫「頑張ろう、秋の演習!!」
剣吾「え、あれっ!?なんか話が180度違くない!?」
闘舞「こ、これはまさか伝説のカウンター…必殺「手の平返し」か…!」
剣吾「衝撃受けたの俺らじゃん!相手に返そうよカウンターなら!」
教官「そうか…やっとやる気になってくれたようで俺様も嬉しいよ、勇姫訓練兵。」
勇姫「もうなんでも来いだよ!ゴッペリンだろうがゴッポリンだろうがさっ!」

教官「狙うは、「雷の王」だ。」
話が違った。

 

51:同類〔4歳:LEVEL1〕
えっと…なんか春と違う。「イカズチの王」とかいう、もっと物騒な敵にかわってた。
勇姫「騙された…これだから大人ってイヤだよ…。なんだよ王って…。」
教官「正確にはまだ”王”ではないらしいが…ま、詳しくは自分で調べるんだな。」
勇姫「あっ、知らないんだ?やーい無知〜!阿美ちゃんの無知無知バディ〜!」
闘舞「いや、それちょっと惹かれちまうじゃんかよ。」
栗鼠香「ちなみにその王様って何が問題なの?悪い子ちゃんなの?」
教官「いずれ、な。”王”の資質を持つ者は、いずれ世界を脅かすと聞いた。」
闘舞「危うきは始末せよ…か。怖ぇ発想だぜ…あ、ちなみに敵の特徴とかは?」
教官「背に”星”と呼ばれる特殊な痣があるという。 見つけ次第…仕留めろ。」

ヤバい、バレたら狩られる。
勇姫も該当者だった。

 

52:仕留〔4歳:LEVEL1〕
今度の敵は、なんか私と同じ境遇の子っぽい。多分あの監獄にいたんだと思う。
前に土男流からも聞いてたけど、やっぱ”星”を持つ者の印象は相当悪いみたい。
どうやら、無事に生き残るためには出生の秘密だけは隠し通さなきゃって感じだね。
勇姫「あ、あのさ阿美ちゃん、ちなみに”仕留めろ”ってやっぱ…”殺せ”ってこと?」
教官「あぁすまん、言い方が悪かった。生け捕りがベストだよ、なるべく殺すな。」
栗鼠香「あ、なんかちょっと意外…」
教官「俺様の役目だ。」
栗鼠香「わーいデーンジャラース!」
闘舞「やるかやられるか…か。フッ、燃える展開じゃのぉ!」
剣吾「とりあえず今回は、まず敵まで辿り着くってのが目標だね。」
勇姫「んで、出発はいつなの?」
教官「今日だが?」
勇姫は逃げ出した。
だが周りを囲まれてしまった。

 

53:移動〔4歳:LEVEL1〕
二度目の逃走は失敗に終わり、無理矢理連れ出されることになった私。
出発前に既に体中が痛いのはちょっとヤバい気がしてならない。
勇姫「でもまぁ、逃げてばっかじゃ伝説は残せないしね。しょーがないか!」
栗鼠香「創れるといいね、伝説!「勇者」だもんね!」
勇姫「ほとばしれ!究極魔法「他力本願」!!」
栗鼠香「ヤッホーやっぱその外道っぷりがたまんないよね!主に負の意味で!」
闘舞「ま、この学園で4年間逃げ切れたらそれはそれで伝説じゃがな。」
勇姫「ところで阿美ちゃん、今回は何で行くの?」
教官「軍用ヘリだ。春は船で、夏は戦車で失敗したからな。」
剣吾「夏…ある意味入院してて正解だったよね俺ら…。」
教官「さぁアレが移動手段だ。今度こそ失敗は許されん…者ども、全力で漕げ!」

一同「…漕げ!?」
途中で墜ちた。

 

54:中心〔4歳:LEVEL1〕
ヘリ墜落でまた何人かクラスメイトが減ったけど、私はなんとか生き延びた。
堕ちたとかそんな事より何より、そもそもよくしばらく飛んだよ。頑張ったよ私ら。
勇姫「その無駄な頑張りが、更に良からぬ状況を生むとか…もう最悪だよね…。」
剣吾「うん、無いよね…敵要塞のど真ん中に落ちるとか…。」
敵兵A「黙って歩け!殺されたいのか貴様ら!?」
栗鼠香「てか途中で墜ちてど真ん中って、どんだけ近かったんだって話だよね!」
敵兵A「オイ喋るなとさっきか(ゴキッ)」
敵兵Aはグロいことになった。
闘舞「さて…んじゃま、偶然にも侵入にも成功したことじゃし…いくとすっかよ。」
勇姫「だね。確か「雷の王」だっけ?」
少女「呼んだか?」
勇姫「一体どんな子か…ってうわぉ!!」
「雷の王」が現れた。

 

55:目的〔4歳:LEVEL1〕
敵の本拠地らしき要塞で会ったのは、私と同い年くらいの女の子だった。
「雷の王」で返事したってことは…え、こんな簡単な登場ってあり?
勇姫「えっと…誰?」
少女「む、わらわか?名は「ライラ」…「ライラ様」と呼ぶがよいのだわ。」
勇姫「オッケー。んでさライラ、アンタが「雷の王」ってマジ?」
ライラ「聞け。オイ聞け小娘。何をもってオッケーなのだ「ライラ様」なのだわ。」
勇姫「ま、細かいことはいいじゃん。で?アンタらの目的って何なのさ?」
ライラ「ふむぅ…まぁよいか。侵攻の途中なのだわ、とある施設を滅するためのな。」
勇姫「…どうしよ剣吾、なんか大体わかっちゃった。」
剣吾「うん…俺もわかったからとりあえず黙っとこうか。」
ライラ「悪の軍隊「罰軍(バツグン)」…その隊員を養成している、邪悪な学園をな。」
疑う余地が無かった。

 

56:摂政〔4歳:LEVEL1〕
どうやら私らの学園は、予想通り…というか予想を超えた悪の組織だったっぽい。
もしかしたら、こっち側についた方が私的には正解なのかもしんない。
勇姫「ちなみにさ、どんな方法でその施設を壊すとか聞いてもいい?」
ライラ「わらわも良くは知らぬのだわ。全てはわらわの…「摂政」の考えなのだわ。」
闘舞「なるほど、”王”の器といえどまだ子供…育つまでは補佐は欠かせんわけか。」
ライラ「うむ。どの”王”にも、尋常ならざる「摂政」がついているとか聞くのだわ。」
勇姫「え、なにそれ初耳なんだけど…。」
剣吾「その…摂政って人はやっぱ…凄い人なんだよね…?」
ライラ「もちろん。神の頭脳を持つとさえ言われる、「孤高の天才:秀峰(シュウホウ)」…」

教官「5分前まで、”人”であった者だ。」
教官は見せ場を奪った。

 

57:捕獲〔4歳:LEVEL1〕
音も無く現れたのは、今は人じゃない何かの傍らに立つ阿美ちゃんだった。
いつもおっかない鬼だけど、なんか今の阿美ちゃんは今までの非じゃない。
教官「探したぞ「雷の王」。かの「雷神:ビリピー」直系の子孫…選ばれし子よ。」
ライラ「くっ、ありえぬのだわ…!あの秀峰が倒されるなんて…!」
教官「フン、頭はキレても体術がアレではな。どのみち死ぬ運命だったのだよ。」
勇姫「ちょ、阿美ちゃん!私らの演習なのにアンタが張り切っちゃ意味ないじゃん!」
教官「問題無い。今回の目的は王の捕獲…貴様らのことなんぞ知ったことか。」
剣吾「と、特に期待もしてなかったけど、そうハッキリ言われると堪えるよね…。」
栗鼠香「でもほら、歯に衣着せない方が近くなるじゃん!人と人ってさ♪」
剣吾「じゃあちょっと黙っててくれる…?」
教官「やっと目的を果たせた。ま、「禍護」の奴には後れをとってしまったがなぁ。」
勇姫「ええっ!?か、禍護って、まさか…」
ライラ「「不死なる黒き殺人鬼」…奴の仲間ということは、そなた…「天道狩り」か?」
闘舞「天道…そりゃ背に”星”のある奴を「天道虫」に例えたって感じか?」
ライラ「うむ。そして奴らは、そんな我らを集め…何かを企む怪しい何かなのだわ。」
勇姫「惜しいっ!一番気になる所がボカされてるよ! あ、あのさ阿美ちゃ…」
教官「あぁ、実は”読み”が違うのだよ。俺様は「あみ」…害虫を捕らえる、”網”だ。」
敵は随分身近にいた。

 

58:巻添〔4歳:LEVEL1〕
聞けば、なんと阿美ちゃんは土男流を殺したあの「禍護」ってのと仲間みたい。
これで目的を果たせたってことは、まだ私のことはバレてないっぽい。
言わないでホントに良かった。もしバレてたら、私は一体どうなってたんだろう。
ライラ「なるほど、「灰色の狩人:阿美」か…ならば秀峰の死も、うなずけるのだわ。」
勇姫「なんかとっても笑えない異名までお持ちで…!」
教官「俺様と共に来るんだ、「雷の王」よ。今の貴様では歯向かうだけ無駄だ。」
ライラ「嫌だと言ったら?」
教官「フッ…もちろん、皆殺しだ。」

これは…やっぱ”入ってる”よね…。
”皆殺し”だ。

 

59:選択〔4歳:LEVEL1〕
禍護の時もそうだったけど、やっぱ阿美ちゃんも「逆らうなら殺す」って感じっぽい。
そうでなくても、目的を果たした今、私らが邪魔者として始末される確率は高い。
勇姫「だったら今の私がすべきことは、たった一つ!」
教官「…まさか、この俺様に逆らう気ではあるまいなぁ…勇姫訓練兵?」
勇姫「やられるくらいならやってやるよっ!そんな私は勇姫!そして!?」
剣吾「えっ!?えっと…俺は、剣吾…?」
闘舞「そしてドン尻に控えしは」
ザシュッ!
闘舞は真っ二つにされた。
闘舞「うがぁ!?
勇姫「ギャーーー!!前にも見た光景がーーー!?」
教官「従うなら雑兵にでもと思ったが…そういうことなら、仕方あるまい。死ね。」
勇姫は選択を誤った。

 

60:最期〔4歳:LEVEL1〕
私が無駄に喧嘩を売ったせいで、闘舞が犠牲に…。結局何の活躍もせずに…。
勇姫「だがしかし、諦めちゃダメ!さぁ剣吾、やっておしまい!!」
剣吾「う…が……!」
勇姫「剣吾ーーー!?え、早っ!ちょ、なんとか治してよ栗鼠香!」
栗鼠香「か…はっ…!」
勇姫「栗鼠香ーーー!?ま、マジで!?じゃあライラは!?」
ライラ「そんな義理は無い。」
勇姫「ですよねーー!!」
教官「最後は貴様だ。この愚かな結末…あの世で仲間に詫びるがいい。」
勇姫「ちょ、待って阿美ちゃん!実は王好き阿美ちゃんにビッグニュースが…」
教官「最期に良い言葉を教えてやろう。口は…災いの元だ。」



ザシュッ!
勇姫は死んでしまった。

 




GAME OVER