外伝(捌)

 

外伝:あさみんが行く〔1〕
私は暗殺美、2歳。暗殺一家に生まれた生粋の「暗殺者」…要はサラブレッドさ。
あぁ、親類縁者の皆が皆、何かしらの暗殺家業に手を染めてるし…もう暗殺一族?
パパ上は伝説の暗殺者。その半生を描いた自叙伝は、ミリオンセラーの大ヒット。
ママ上もまた凄腕の暗殺者。殺しの手口を歌に乗せ、人の心を震わせる現役歌手。
母「あ、ホラ見てあさみん。またやってるよ、お兄ちゃんとこのCM。」

うん、ちっとは隠れろさアンタら!
自信があるのかバカなのか。

 

外伝:あさみんが行く〔2〕
暗殺エリート一族期待の新星な私は、生まれてすぐから早くも修行修行の毎日さ。
隙あらば何かと仕掛けてくる家族なので、いついかなる時も気が抜けなくて厄介さ。
母「ご飯できたよ〜。冷めないうちにおいで〜。」
父「さぁあさみん座りなさい。ご飯の時間だぞ。」
暗殺美「フン、わかってるさこのパパ上め。言われないでも座…ハッ!」
暗殺美は椅子の上を見た。
暗殺美は画鋲(×1)を手に入れた。
父「ぬおっ、やるな!?よく気づいた娘よ!」
暗殺美「フフン!ナメんじゃないのさぁっ!
背もたれに画鋲(×3)が付けてあった。
暗殺美は背中に10のダメージ。

 

外伝:あさみんが行く〔3〕
近所に凄まじくウザい小娘がいるさ。そして困ったことに気に入られてるっぽいのさ。
声「あーさーみーん!あーそーぼー!」
暗殺美「…今いないと言っといてほしいさ。」
声「いや、それは本人に言っちゃダメだと思うのだ!しのみんは傷ついたのだ!」
暗殺美「てゆーかアンタ誰さ?毎日毎日外からうるさいったらないのさ。失せろや。」
声「そう言わず友達になってほしいのだ!やっと見つけた同年代のご近所さん!」
暗殺美「あれは痛ましい事件だったさ…。」
声「一体何が!?その「前までは他にもいた」っぽい感じの振りはなんなのだ!?」
暗殺美「文句ならパパ上に言うがいいさ。私に近寄る奴らは…みんな…。」
声「えっ…!?」
暗殺美「わかったらアンタも逃げろさ。私はいいのさ、私は一人で…生きるさ…。」
声「そ…そんなのダメなのだ!しのみんが…しのみんが、救い出してやるのだっ!」
ガチャッ(開)


チュドーーーン!!(爆発)
暗殺美は「トラップ(Lv.1)」を覚えた。

 

外伝:あさみんが行く〔4〕
3歳になったさ。そしたら謎の保育園「放置園」に通わされることになっちゃったのさ。
名前からして保育する気は無さそう…まぁ一匹狼としては気楽で良さげな感じさ。
園長「みなさん入園おめでとう。先生これから合コンなんで帰りますね。」

でも限度はあるのさ。
その後園長を見た者はいない。

 

外伝:あさみんが行く〔5〕
放置園職員の放置っぷりは想像してた以上で、さすがの私もビックリしたさ。
でもそのせいでか、逆に園児どもがウザいくらい絡んできてたまんない毎日なのさ。
忍美「あーさーみ〜ん!何かして遊ぼうなのだ!しのみんとっても暇なのだ!」
暗殺美「悪いけどアンタで遊ぶのはもう飽きたさ。」
忍美「しのみんもしのみん「で」遊ばれるのはもうコリゴリなのだ…。一緒に遊ぼ?」
暗殺美「国家予算ほど積まれても断るさ。」
忍美「そんな壮大に断らなくても…。た、頼むのだたまには二人で遊びたいのだ!」
暗殺美「そんな時こそ「分身の術」が生きると思うのさ。」
忍美「そんな切ない忍術使ったら心が折れるのだ…。」
少年A「じゃあ俺と二人で「鬼ごっこ」しようぜ!鬼に捕まったら結婚な!」
暗殺美「捕まえても捕まっても結婚て。驚くほど私にメリットが無いから却下さ。」
少女A「じゃあ私と「おままごと」しよ。私が二番目、あさみんは三番目の愛人役ね。」
暗殺美「なんで正妻がいないのさ。そんなドロドロしたのは大人に任せとけさ。」
少年B「僕と!僕と遊ぼうよあさみん!」
少女B「アタシとだよねあさみん!?」
暗殺美「あぁ〜もぉー!あさみんあさみん馴れ馴れしく呼ぶなやー!!」
こうして「あさみん」は禁句になった。

 

外伝:あさみんが行く〔6〕
それは私が5歳になって、しばらく経ったある日…。悪魔は突然現れたのさ。
ゴゴゴゴゴゴゴ…(暗雲)
声「こんばんは。アナタが「暗殺死(あさし)」氏の娘さんの、暗殺美さん…ですね?」
暗殺美「…アンタ何者さ?見るからに…じゃなくて姿が見えない時点で不審者さ。」
声「フフフ…さすがは伝説とも言われる暗殺者の子ですね、なかなかに注意深い。」
暗殺美「いや、注意深い子ならソッコーで逃げてると思えるほどアンタ怖いさ。」
声「そんなアナタにお願いがあるのですよ。私と一緒に…来ていただきたい。」
暗殺美「…ノーと言ったら?」
声「ありがとうございます。」
暗殺美「拒否権が無いなら無いで先に言うべきだと思うのさ。」
声「アナタは特待生扱いにしましょう。下宿先や生活費…なんでも提供しますよ。」
暗殺美「な、なんでも…?」

ピシャァ!!(落雷)
教師「命の保証、以外は…ね。」
一番大事なものが無かった。

 

外伝:あさみんが行く〔7〕
謎のフードの人に拉致られて、カクリ島とかいう怪しい島に連れて来られた秋。
送り込まれたのは怪しい施設さ。とりあえず、危険な場所ってのは肌で感じるのさ。
教師「ここは「学園校」…アナタは今日からここで、人生を学ぶのですよ。」
暗殺美「学ぶ間も無くそれが終わりそうな予感がするけど大丈夫かさ?」
教師「アナタのクラスは2号B組になります。」
暗殺美「答えろや!この際もう肯定でもいいからとりあえず何か返せさ!」
教師「気をつけてくださいね暗殺美さん。危険は…とっても身近に潜んでますよ。」
暗殺美「いや、一番危険っぽい存在が何を言っ…」
声A「あ、危ない…!」
声B「そこの女ぁ!向かって右に飛べぇーー!!」
暗殺美「へっ!? チッ…!」
暗殺美は右に飛んだ。

痛恨の一撃!
黒板消しが顔面にメリ込んだ。
暗殺美「な、なん…で…?(ガクッ)」

声A「ちょっ、違うよ勇者君!「向かって右」は勇者君から見てでしょ!?」
声B「いや、わかってたが?」
声A「わかってたの!?」
教師もわかってて見てた。

 

外伝:あさみんが行く〔8〕
いきなり謎の黒板消しに襲われた編入初日。まったくなんておっかない学校なのさ。
とはいえ、そんなのにビビッちゃう私じゃないのさ。犯人は必ず見つけて仕留めるさ。
気絶直前に聞いた声によれば、敵の職は「勇者」…。これで数人に絞れるはずさ。
暗殺美「あのさアンタら、この学校に攻撃的な「勇者」って…」
少年A「ゆ、勇者ぁ!?ひ、ひぃいいいいい!!」
少年B「許して!お許しを勇者様ぁー!うわーん!!」

え、みんな「魔王」側の人…?
勇者がそっち側だった。

 

外伝:あさみんが行く〔9〕
答えたがらない子らからも無理矢理聞き出して、なんとか敵の人物像は掴めたさ。
どうやらそいつは「勇者」とは名ばかりのとんでもない悪党みたいさ。人間のクズめ。
聞いた話じゃ結構強いらしいけど、私の暗殺術の前では反撃の機会すら無いのさ。
暗殺美(死ねやぁ!おらぁ!!)
暗殺美はクナイを投げた。
サクッ!(刺)
賢二「ぎゃあ!!
勇者「あ、危ない賢二っ…!」
賢二「ちょっ、だったら押さな…」
サクッ!(刺)
賢二「うぎゃあ!!

な、なんか…ほっとけない奴さ。
小さな恋の始まりだった。

 

外伝:あさみんが行く〔10〕
勇者の周りにいつもいる、賢二とかいう彼が最近気になって仕方無い今日この頃。
最初はただの憐れみだったけど、よくよく見てるとあの子…とっても優しい人なのさ。
見た目はちょっとナヨッとしてるけど、それもまた可愛くて魅力的とも言える感じさ。
是非ともお友達になりたいさ。でも…ううん、悩んでも仕方ないし…うん、決めたさ。

春になったら、思い切って声をかけてみるさ。
その冬、賢二は星になった。

 

外伝:あさみんが行く〔11〕
そして時は流れ…。マオ復活のドサクサに紛れてカクリ島を出て、2年が経ったさ。
でも賢二きゅん達の行方はわからなくて、結局今は賞金稼ぎとして食ってる感じさ。
最近追ってるのは謎の手配首…通称「オロチ」。とんでもない強さの女と聞くさ。
〜とある酒場〜
暗殺美「てなわけで色々情報を仕入れに来たさ。オロチについて教えるがいいさ。」
男A「あ゛ん?なんだテメェいきなり偉そ…まぁ可愛いから教えちゃうけども!なぁ?」
男B「おう!奴ぁよ、あの魔獣「パジリスキュ」を契約獣にしたっつーくれぇ強ぇのよ。」
暗殺美「ぱじりすきゅ…?そんな微妙に可愛らしい名前の獣が強いのかさ?」
男B「可愛いなんてとんでもねぇ、世の魔獣の三強「三神獣」に入ってる程だぜ?」
男A「ペルペロス、フェニックチュ、そしてパジリスキュ…ま、どれも伝説だがね。」
暗殺美「ん?ペルペロスなら確か…ウチの学校にいたと聞いたさ。番犬として。」
男A「ば、番犬!?マジかよ一体何を守ってんだよオイ!?」
男B「ホントに学校かそこ!?」
暗殺美「んー、多分違うさ。」
男Aは混乱した。
男Bは混乱した。

 

外伝:あさみんが行く〔12〕
同業者がビビるほど強いらしい賞金首、「オロチ」…。相手にとって不足は無いさ。
というかむしろおっかないさ。私の方が不足な感じがするのは気のせいじゃないさ。
勇者のアホならともかく、私はそんな命懸けの無謀な挑戦するほどバカじゃないさ。
決して自分の身を危険に晒さないように相手を仕留める…それが「暗殺者」なのさ。
暗殺美「…というわけで、見逃してほしいさ。」
オロチ「断る。」
知らぬ間に絶体絶命だった。

 

外伝:あさみんが行く〔13〕
酒場で情報収集してたら本人とご対面…というなんとも困った感じで至るのが今さ。
賞金首の分際で賞金稼ぎの巣窟にくつろぎに来てるあたり、コイツ相当強い奴さ。
てなわけで、気づけば私以外の雑魚どもはみんなお花畑の向こう側の世界へ…さ。
暗殺美「ハァ、ハァ…まったくツイてないさ、こんな場末の酒場で死ぬなんてさ…。」
オロチ「ん、なぜ諦める?頑張れ小娘、お前の足なら逃げ切れるやもしれぬぞ?」
暗殺美「フン、実力の半分も出して無い奴に言われても嬉しくないさボケが死ね!」
オロチ「フッ…面白いなお前。殺すのは惜しい、僕の…ペットにしてくれよう。」
オロチは暗闇に手をかざした。
伝説の大蛇「パジリスキュ」が現れた。
オロチ「こやつの毒には強い中毒性があってな、一度注入すれば…誰もが虜よ。」
暗殺美「くっ…け、賢二君…!」
声「…オイオイ誰だよそれ?こういう時に呼ぶのは違うだろ?ホラ呼んでみろよ…」
オロチ「むっ、何奴…!?」

青年「「助けて、おにぃちゃーん!」…てな。」
暗殺美は「誰?」って顔をしている。

 

外伝:あさみんが行く〔14〕
会話の流れから察するに、現れたのは私の兄上「暗殺人(あさと)」さ。助かったさ。
会うのは久々だけど、今じゃ大暗殺企業のトップ…その強さは折り紙つきと聞くさ。
見渡せば知らぬ間にお仲間っぽいのも来てるし、こりゃ楽勝な気がしてきたのさ。
オロチ「この僕に気取られることなく忍び寄るとは…貴様、相当できるな。」
兄「フッ…さぁもういい、離れてろよ暗殺美…あれっ、暗殺美!?」
すでに街の外だった。

 

外伝:あさみんが行く〔15〕
そして更に時は過ぎ、ぼちぼち13歳…そんなある日に、なんとも素敵な知らせが。
でっかい魔剣持った魔人が、「シジャン王国」へ向かったと…うん、十中八九勇者さ。
となるとそこには賢二君がいる可能性も高いわけさ。こりゃ行かない手は無いのさ。

賢二きゅん…今度こそ…!
その頃賢二は宇宙にいた。

 

第二十二章