外伝(漆)

 

外伝:錬樹が行く〔1〕
僕の名は「錬樹」。職業は「錬金術師」…人にして神のごとき能力を持つ、14歳だ。
特に死者の肉体と魂から武器を創るのが大得意。その破壊力は他に類を見ない。
でもそれは楽な作業じゃない。対象部位は自分の手で狩らなきゃならないからだ。
つまり何が言いたいかというと、僕は天才なだけじゃなく、とっても強いということだ。
そんな僕のいる地球で、最近宇宙の方から一斉に現れた異星人達が暴れている。
人々は彼らを「神」と呼び、恐れ、もはや生を諦めた者も多いと聞く。フザけるな!

神は、僕だ!!
錬樹は不純な動機で立ち上がった。

 

外伝:錬樹が行く〔2〕
計画の無い旅だったけど、さすがは天才…。怖ろしいほど順調に事は進んでいった。
そして気づけば「十賢人」なんて呼ばれる存在に…って、なぜ「神」じゃないんだ!
賢人?いや、悪くは無いけどインパクトが弱い。その上「十」とか付くとなると尚更だ。
この天才である僕を、どこぞの雑魚どもの一員みたく言わないでほしいものだ。
そう、どうせ言うなら「錬樹と九賢人」。僕だけは別格扱いにしてもらわないと困る。
村人A「ねぇ知ってる?なんか最近、神連中が随分大人しくなってきてるらしいよ。」
村人B「そりゃそうさ!あの人らのおかげで、もう何人か倒されたって話だしなぁ!」
村人C「ああ、凄いよなぁ〜!「勇者:救世主(メシア)」と「十賢人」!」

Σ( ̄□ ̄;)!?
結構手遅れだった。

 

外伝:錬樹が行く〔3〕
その後さらに色々あって、神も結構倒した。勝利は目前に迫ってる予感がする。
錬樹「残るは守護神、邪神、魔神…三人か。邪神は手強いらしいけど…どうだろ?」
無印「問題ないさ、理慈達が向かってる。あの三人が負けるとか想像つかないし。」
錬樹「ああ、特に「勇者:救世主」…。嗟嘆を封じたあの実力、想像を超えていた。」
無印「なに、どうしたん?さすがのアンタも、鼻っ柱をへし折られちまったかい?」
錬樹「ち、違う!想像を超えてたのは…あ、僕の想像力が貧相だったってだけだ!」
無印「いや、それはそれで天才としてどうかと。」
錬樹「と、とととにかく!僕らは残りの神達を捜すことだけ考えればいいんだ!」
無印「でもどうするんだい?その二人は、名前は聞けど姿も知らない謎の敵だよ?」
錬樹「ああ、特に魔神…奴を倒しに行った者だけ、未だ一人も戻らない。」
無印「でもさ、おかしくないかい?誰も戻らないのに、なぜか名前は知れ渡ってる。」
錬樹「そう、それは僕も考えていた。もしかしたら陰で何者かが動いてるのかも…」

〜木陰〜
マジーン「フッ…ご名答。」
微妙な奴が動いていた。

 

外伝:錬樹が行く〔4〕
残る神は三人…。でも邪神以外はどこにいるのかもわからない。さぁどうしよう?
錬樹「とりあえず、「魔神討伐隊」の消息が途絶えた村の方まで行ってみようか。」
無印「十賢人と呼ばれたアタシらも、もう残り四人…。ここからが正念場だね。」
錬樹「ああ。神は残り三人…救世主も入れてあと四人倒れれば、確実に僕が…!」
無印「アンタがどっち側なのかちょっと不安になってきたよ…んん?」
少女「おにぃーーーーいちゃーーーん!!」
ドガシッ!!(衝突)
錬樹「んぎゃああああああ!!
謎の少女の必殺タックル!
錬樹は200のダメージを受けた。
錬樹「ぐっ…ま、「マー」!ついて来ちゃったのか!?ここから先は危険だって…!」
マー「だってぇ〜。おにぃちゃんであそべないとつまんないんだも〜ん。」
錬樹「ふぅ〜…やれやれ、困った子だなぁマーは。 特に「で」の辺りが…。」
無印「ホラ、だから言ったじゃないさ。戦災孤児に構ったら面倒なことになるって。」
錬樹「いや、でもやっぱり…ねぇ?こんな状況で一人じゃ、かわいそうじゃん?」
マー「そーだよ!かわいいじゃ〜ん!」
無印「その無駄にポジティブな聞き間違いとかもウザいしさ。」
錬樹「ま、まぁいいじゃないか。どうせどこにいても危険なんだ、連れて行こうよ。」
マー「えーー。」
錬樹「えぇっ!?」
錬樹は遊ばれている。

 

外伝:錬樹が行く〔5〕
前に通りすがりの村で拾った「マー」を仲間に加え、僕らは目的の村を目指した。
程なくして到着したんだけれど、なんだか様子が変だ。なぜか人の姿が見られない。
錬樹「天才の勘が言っている。この村は…魔人的な誰かに襲われたに違いない。」
無印「確かにそうっぽいね。魔の残り香が…というか、「魔そのもの」が見えるし。」
魔人A「ん…?なんじゃいきさんら、ワシらの村になんぞ用かよゴルァ!?」
魔人A〜Eが現れた。
無印「あらら、ゴッツイのが5匹も…。無駄な魔法力は使いたくないんだけどねぇ。」
魔人B「な、なんだその俺らをナメきった感じは!?ブッ殺されてぇのかオイ!?」
錬樹「やれやれ、「神を討つ者」に魔人ごときが偉そうに…。いいよ、僕がやろう。」
魔人C「偉そうなんはどっちやねん!?いてまうぞワレェ!?」
マー「いてまえいてまえー!」
魔人D「いや、絶対意味わかってねーだろ嬢ちゃん!?」
魔人E「ったく甘く見られたもんだぜ。武器も持たずにオラ達とやり合おうとはよぉ。」
錬樹「フッ、ならよく見とけ。「錬金術師」の戦い…そうそう見られるものじゃない。」
マー「そーだよ!みれたもんじゃないよー!」
錬樹「意味変わってきちゃうから!頼むから少し黙っててくれる!?」
錬樹は出鼻をくじかれた。

 

外伝:錬樹が行く〔6〕
立ち寄った村は、既に魔人どもに滅ぼされた後だった。仕方ない、やるしかないか。
錬樹「さて、どうやら村人はもういないようだし…お前達から色々聞こうじゃないか。」
魔人A「黙れやこの丸腰野郎がぁ!死にさらせぇーー!!」
錬樹「愚かな…。「錬金術師」の武器はこの「両腕」だということを教えてやろう!」
錬樹の攻撃!
魔人Aの腕は崩れ落ちた。
魔人A「うわぁああああ!わ、ワシの腕がぁああああ!?」
錬樹「分子結合を解き、そして違う物として再結合する…それが錬金のプロセス。」
魔人E「ど、どういう意味だ!?」
錬樹「つまり!」
魔人B「いや、つまらん!」
錬樹「そういう意味じゃ無しに!というか興味無いなら聞かないでほしいんだけど!」
魔人E「つまり、あらゆる物質を分解でき…その力を攻撃に活かせるってわけか。」
錬樹「そこまでわかっててなぜ意味を聞いた!?」
魔人C「ケッ、どうやら簡単にはいかへんようやなぁ。」
錬樹「フッ…いや、簡単だよ?もちろん僕目線での話だがね。」
さぁ行け自称天才。

 

外伝:錬樹が行く〔7〕
さすがは天才!てな感じで、華麗に魔人どもを打ち破った僕。自分の才能が怖い。
とりあえず当初の予定通り、彼らから魔神の情報を聞き出してみることにしようか。
錬樹「さぁお前達、魔神について知ってることを全て話すんだ。何でもいい。」
魔人達「・・・・・・・・。」
返事が無い。ただの屍のようだ。
錬樹「ぬぉおおおお!や、やりすぎたぁーー!!」
無印「やれやれおバカが…ん?ちょいと待ちな、まだ息のある奴がいるようだよ。」
魔人E「ぐっ…み、見事だ錬金術師。貴様ほどの人間を見たのは…二度目だ…。」
錬樹「二度目?聞き捨てならないな、僕ほどの者が他にいるとは思えないが?」
魔人E「身の丈を超す大剣を帯びた「大剣士」…貴様らと同じく魔神を捜して…。」
無印「大剣…まさか「欧剣(オウケン)」?十賢人最強って呼び声も高い奴だねぇ。」
錬樹「ち、違う最強は僕だ!あんな奴、この戦が終わったらもうグシャっと、こう…」
魔人E「…死んだよ、奴は。」
錬樹「なっ!?バカな!奴ほどの実力者が…!」
魔人E「魔神の咆哮で…一撃だった。アレは…真の化け物だ…ぐふっ!」
錬樹「ま、待て!まだ死ぬな!マオは…魔神はどこにいるんだ!?」
魔人E「し、島…空飛ぶ……(ガクッ)」
錬樹「お、オイ!チッ…! 何だって?シシマ…ソラトブ…?」
マー「みなみにあるむらだねー。」
錬樹「なにっ?でかしたマー! よし、南に向かうぞ!」
全然でかしてなかった。

 

外伝:錬樹が行く〔8〕
魔人が遺した言葉を頼りに、僕らは南にあるという村「シシマソラトブ」を目指した。
だがちっともそれらしい村は無く、気づけば海の見える大陸の果てまで来ていた。
錬樹「…あのさマー。今さらながらもう一度聞いてみるけど…村は南なんだよね?」
マー「むら??」
錬樹「ぬぁあああああ!やられたぁああああ!!」
無印「だからアタシは言ったのに…。ま、アテも無かったわけだし別にいいけどね?」
錬樹「でもじゃあ何なんだ?魔人が言ってた「シシマソラトブ」って…。」
マー「どっかのみんぞくりょうりだね。」
錬樹「もうその手には乗らない。」
マー「さぁー!ばっちこーーい!(両手を広げて)」
錬樹「物理的にも乗らないから!仮に乗れたらどうしたいんだ!?」
マー「あー。あれなんだろー?」
錬樹「だからその手には乗らないって…」
海の向こうにデッカい何かが浮いている。
錬樹「し…島…空飛ぶ…!!」
謎は全て解けた。

 

外伝:錬樹が行く〔9〕
遠く海のかなた…水平線のあたりに見える空飛ぶ島。あそこに、魔神マオが…!
無印「てなわけで上陸してみたけど。」
錬樹「って展開早っ!もっとこう、上陸に至るまでの過程とかそういうのは!?」
無印「あの飛行魔法を覚えたのは、そう…あれはまだアタシが学生の頃の…」
錬樹「いやゴメン、僕が悪かった。まさかそんな豪快に振り返るとは思ってなくて。」
無印「にしてもスゴいねぇこの空飛ぶ島。こんなのが実在するとは驚きだよ。」
錬樹「この大戦のために政府が復活させようとしてるって天空城…これがそうか?」
無印「ん〜…あれ?そういやマー坊は?さっきから姿が見えないけど…むっ!?」
ゴゴゴゴゴゴゴ…!(揺)
突如地震が起こり、土の中から巨大な何かが現れた。
錬樹「な、なんだコイツは…!?で、デカい…!!」
?「よく来たな人間ども。我が名は「マオ」、世界を暗黒に染めりゅ…者なりっ!!」
無印「なっ…!?」
錬樹「こ、コイツ…!」

言い直さん…だと…!?
魔神は強気だった。

 

外伝:錬樹が行く〔10〕
空飛ぶ島に現れた巨大な敵、魔神。なんともデカく、10メートルはありそうな感じだ。
錬樹「貴様が魔神か。倒しに来てやったぞ、十賢人の名くらい聞いているだろう?」
魔神「「破壊」…それこそが我が唯一の快楽であり我が全てよ。他に興味は無い。」
無印「なんて野郎だい…。でも暴れたいなら大陸を目指すはず…なぜ動かない?」
魔神「いや、腹ペコで。」
錬樹「動けないだけ!?」
魔神「それに別に急がずとも、勝手にやって来るしな…汝らが如き、強者が!」
魔神の攻撃!
魔神は口から凄まじいオーラを放った。

ミス!無印は〔金城鉄壁〕で攻撃を防いだ。
錬樹「今のが噂の咆哮ってやつか…確かに剣士には分の悪い技かもしれないね。」
無印「フッ、でも大丈夫さ。今くらいのならアタシの魔法で完全に…防ぎきれる!」

魔神「すまん、クシャミ出た。」
錬&無「えぇっ!?」
魔神の力は計り知れない。

 

外伝:錬樹が行く〔11〕
ただのクシャミすらとんでもない威力な魔神。さすがに一筋縄にはいかなそうだ。
錬樹「驚いたな…でも負けてやる気も無い。この勝負、天才である僕がいただく!」
魔神「フッ…いいだろう。その減らず口、二度と開く間も無いまま葬ってくれよう!」
マー「わるいけど、すきにはさせないよ。まーが、まもるもん!」
マーが現れた。
錬樹「ま、マー!?ダメだ、危ないから来ちゃ…!」
魔神「…なるほどそういうことか。貴様が敵なら、そう簡単にはいかなそうだ。」
錬樹「えっ!?その口ぶり…マーを知ってるっていうのか!?ど、どういう流れ!?」
魔神「よもや人間側につこうとはなぁ。それが汝が「守護神」と呼ばれし所以か?」
無印「守護神だって!?てことはもしかして、この子は…!」
魔神「フン、貴様にも守りきれぬモノがあることを教えてやろう、「守護神:マリモ」。」
マー「まーが、まもるよ。おにぃちゃんは…」
錬樹「マー!!」

マー「…ともかく。」
錬樹「ともかく!?」
遊びなのかマジなのか。

 

外伝:錬樹が行く〔12〕
時間の都合上、ここからはダイジェストでお送りします。
魔神「さぁ死ぬがいい!食らえ壱の咆哮…「ハヒフヘ咆」!!」
錬&無「うわダサッ!!」
ズゴォオオオオオオ!!
マー「…あまいね、そんなのきかないもんね。」
魔神「くっ、ナメおって…!」

無印「さぁ覚悟しな!燃え上がれ真紅の炎!〔紅蓮〕!!」
魔神「ぬっ、ぐぉおおおおおお!あっつい!」
無印「耳たぶを押さえるな耳たぶを!えっ、その程度!?」


魔神「次は弐の咆哮だ!いくぞ「ヤッ咆」!!」
錬&無「だからダサいって!!」

錬樹「ハァ、ハァ…チッ、なんてタフな奴なんだ!こっちはもう、限界が…!」
マー「う゛ぅ…こうなったら、とっておきをだすしか…ないね…。」
錬樹「おぉ!そんなものがあるのか!?さすがは守護神だ!」
マー「おにぃちゃんが。」
錬樹「えぇっ!?あ、うん…。」


魔神「グハハハハ!どうした?汝らの力、その程度のものかぁ!?」
無印「ふぅ〜…言われてるよ錬樹?何か言い返してやったらどう?」
錬樹「フッ、いいだろう…ならば僕の必殺の一撃を、あと何度か見せてやろう!!」
無印「「必殺」じゃないしそれ…。」

無印「アンタがトドメ刺さないと、武具の練成はできない。だからこの子…。」
錬樹「バカな!じゃあマーは、わざと僕の技の前に飛び込んで…!?」
マー「お、おにぃちゃん…さいごに…おにぃちゃんに…いいたいこと…」
錬樹「い、いいから何も言うな!黙ってジッとしてないと、傷が…!」
マー「ないの…(ガクッ)」
錬樹「何か言えぇーーー!!」


魔神「ぐぉああああ!つ、角が…!最高強度を誇る我が角が砕かれるだと…!?」
錬樹「この僕にとっては、強度もクソも関係ない!錬金の戦士をナメるなよ!?」
魔神「じゅるっ…。」
錬樹「な、ナメないでね!?」

魔神「貴様らを侮っていた。侘び代わりに見せてやろう、我が真の姿を…!」
無印「うわ出たよ!悪の定番「真の姿」パターン!」
錬樹「そんな悠長なこと言っ…デケェ!!」


魔神「食らえ人間ども!必殺の咆哮…「ヘイヘイ咆」!!」
錬&無「うわダサぁああああああああああ!!

そんなこんなで負けた。

 

外伝:錬樹が行く〔13〕
魔神の咆哮に吹き飛ばされた錬樹と無印。
なんとか魔法で威力を軽減したものの、もうかなり瀕死な感じだった。
錬樹「こ…ここは…?うぐっ、体中が…!」
無印「ふぅ…や、奴からはだいぶ離れたよ。かなり吹き飛ばされたしね…ぶふっ!
錬樹「無印!?そうか、身を挺して僕を助けて…! 大変だ、凄い吐血を…!」
無印「だ、大丈夫…これはちょっと最近、唾液に赤サビが…。」
錬樹「それはそれで病院に行ってくれ!」
無印「さぁて…逃げるよ錬樹。今なら奴も気づいてない、逃げ切れるはずだよ。」
錬樹「なにっ!?何を言ってるんだ、魔神を野放しにしたまま行けるわけが…!」
無印「退くしかないんだよ!今のウチらじゃ、ただ犬死にするのがオチだってば!」
錬樹「い、イヤだ離せ!離すんだ無印!」
無印「そう、あれはまだアタシが…」
錬樹「って思い出を話せとは言ってないから!今のどこにそんな余裕が!?」
無印「悪いね錬樹…聞いてくれないんじゃ仕方ない、少し眠ってもらうよ。」
錬樹「なっ、やめっ…!」
無印「うなれ業火!必殺、〔火炎地獄〕!!」
錬樹「えっ!?わっ…ぎゃあああああああああああ!!
手加減はどうした。

 

外伝:錬樹が行く〔14〕
危うく死にそうな展開の後に危うく殺されかけた僕だったが、一応死なずに済んだ。
どうやら考えが甘かったようだ。悔しいけど…僕の力じゃ奴には及ばないらしい。
だが僕も、ただでは終われない。天才として、僕にできることがあるとすれば…。
錬樹「この「魔神の角」…これで最強の、錬金の剣を作る。奴を討つための剣だ。」
無印「へ??いや、アンタの錬金術には肉体と魂が要るんだろう?魂はどこに…?」
錬樹「…ここに、あるさ。本人じゃなく、「術者の魂」を捧げる…「禁術」があるんだ。」
無印「なっ!?でもそれじゃあ、アンタが…!」
錬樹「奴を倒せるなら手段は選ばない。たとえこの命が朽ちても…悔いはないさ。」
無印「なるほどねぇ。」
錬樹「アレッ!?結構アッサリ!?」
無印「フン。男が一度決めたことに横槍入れるほど、アタシぁヤボな女じゃないよ。」
錬樹「泣いて止めるのが女の甲斐性だとも思うが…まぁいいや、その方が助かる。」
無印「アタシに…何かできることはあるかい?」
錬樹「ああ。僕が宿ったその剣を、誰か強き者に託してほしい。奴を…討てる者に。」
無印「…わかったよ。」

無印「相場は?」
錬樹「いや、売らない売らない!」
錬樹は死ぬに死ねない。

 

外伝:錬樹が行く〔15〕
もう、何日になるだろうか…。僕は寝食を忘れ、ただひたすら剣を打ち続けていた。
すると次第に感覚は無くなり、全てが麻痺してきた。死が…近いせいかもしれない。
ガキィイイイン!
錬樹「ハァ、ハァ、あと三撃…あと三回打てば、完成だ…。僕の、最高の魔具…!」
ガキィイイイン!
錬樹「あと二撃…その次で、僕は死ぬだろう。剣に取り込まれ…一部となるんだ。」
ガキィイイイン!
錬樹「だがそれでいい。僕は忘れない…奴への…奴への…ぐっ!なにっ…!?」
錬樹の腕は剣と一体化し始めた。
錬樹「ぐぁああああっ!な、なんて痛みだ…!マズい、意識が…保て…ない…!」

だ、ダメだ…まだ早い!あと一撃…あと一撃打たなきゃ、ダメなんだ…!

錬樹「…フハッ、フハハハハ!来た…やっとここまで…この高みまで…!」

えっ…?な、なんだ!?体が…心までもが、言うことを聞かない!

錬樹「さぁ取り込め魔剣、この体を!我が全ての恨みで、その身を練り上げろぉ!」

しまった、禁術を甘く見すぎた!クソッ、なんとかしなくちゃ…!

錬樹「呪ってやる!奴が死ぬまで呪い続けてやる!この呪われし剣の内で…!」

ち、チクショウ…なにが天才だ!こんな大事な時に何もできないなんて…!

錬樹「全てを終わらせる破壊の力…滅亡の力を授けよう!最強の悪に!」

誰か…頼む、僕に力を…!お願いだ…!

錬樹「ハハハッ!無駄さ!もう何もかも無…ぐっ!?う゛っ…ぐぬぬぬぬっ!!」

ダメか…もうダメなのか…。自分の負の心に負けた…全ては僕の…弱さが…。


錬樹「…なるほど、そういうカラクリか。そのために…“俺”は呼ばれたってわけだ。」

えっ…?

錬樹「全ては見させてもらった。最初は意味がわからなかったが、理解できたよ。」

一体…何のことだ?僕は…いや、“彼”は何を…?

錬樹「ま、安心しろ錬樹、魔神の奴は俺が倒してやる。だから、力を貸すがいい。」

だ、誰なんだ!?教えてくれ、キミの名は…!?

錬樹「フッ、ああ教えてやるとも。決して忘れるなよ?俺の名は、「勇者」だっ!!」


ガッキィイイイイイイイイイイイン!!

勇者の魂を込めた一撃!
錬樹「痛いっ!!
小指に50のダメージ。

 

第十九章