外伝(伍)

 

外伝:賢二が行くW〔1〕
僕は賢二。生まれも育ちも地球なんですが、宇宙に来てからもう一年近く経ちます。
帰りたい気持ちは一応ありますが、なんだか今あっちは大変そうなので微妙です。
賢二「はぁ〜〜〜〜…。」
亀「ん、どーしたよ賢坊?なんかいつにな…いつも通り泣きそうな顔じゃねぇの。」
賢二「ホラこの前、地球では古代神が復活間近って噂聞いたでしょ?それで…」
亀「あー…そうだよな、生まれ育った星だもんな。やっぱ仲間のこととか心配か?」
賢二「うん…僕は全く心配されてないのは、わかってるんだけどね…。」
亀「お前、もっと人生に希望持てよな。」
賢二「みんなのことは心配…。でもね、僕にはもっと…心配なことがあるんだ。」

無印「けぇ〜〜ん☆ ぼぉ〜〜〜ぅ☆」
友達どころじゃない。

 

外伝:賢二が行くW〔2〕
半ば強制的に弟子入りさせられてから、無印様のアタックはそれはもう凄いもので。
僕としても女性とは闘いたくないけど、さすがにコレばっかりは絶対に譲れません。
無印「さぁ賢坊、一年おあずけの初キッス…今日こそは奪ってみせようぞ!覚悟!」
賢二「そ、それは死んでもゴメンなさいと言ったはずですよお師匠様!〔煙幕〕!」
無印「む?おっと、そんな手が何度も通じると思ってかい?晴れよ煙、〔爆風〕!」
バフゥウウウウウン!(風)
賢二「うわっ、見つかっ…!」
無印「捕らえた! 永き時の果てに、届けこの想い!必殺「濃厚キッス」!!」
無印の危険な攻撃!

ミス!賢二は幻のように消えた。
無印「なっ、〔残像〕ぢゃと!?しまった、このワシとしたことが…!」
賢二「…変幻自在のその重さ、時に巨象の如く、時に愛人の如く! 〔超重力〕!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
無印「ぐっ、ぬぐぅううう! み、見事ぢゃダーリン、褒美に熱いキッスを…!」
賢二「三段詠唱、略してうなれ!略式〔雷撃〕!」
ズゴォオオオオオオン!(雷)
亀「か、仮にも女相手にお前…相当必死なんだな賢坊…。」
無印「ふぉおおお!し、シビれるのぉ…!これが…これが、恋!?」
賢二「じゃあもっとシビれてください!〔雷迅〕!!」
賢二はこうして強くなった。

 

外伝:賢二が行くW〔3〕
魔法防御力がハンパじゃないので、どう頑張ってもすぐに復活しちゃうお師匠様。
かの人神大戦で古代神と戦ったって話もきっと本当なんだと思います。怖いなぁ…。
賢二「ハァ、ハァ…!も、もうダメ…MPが…はふぅ…。」
亀「おぉ〜、随分やるようになったなぁ賢坊。ガキにしちゃ上出来じゃねぇか?」
無印「ふむ、さすが我が愛弟子。ぢゃが気をつけぃ?「禁詠呪法」は諸刃の剣よ。」
〔禁詠呪法(きんえいじゅほう)〕
呪文の詠唱により、自レベルより遥か上位の魔法も扱えるようになる裏技。
ただし、最後まで詠みきれなかった場合、その魔法の効力は自分に返る。
クサすぎて真顔では言いづらい呪文や、早口言葉が多い。
賢二「だったら無茶させないでくださいよ!僕だって幸せに暮らしたいです!」
無印「おぉ、ワシもぢゃよ!共に幸せになっ」
賢二「な、生麦 生米 生ぎょろぐわーーっ!!
賢二は〔生殺〕を唱えた。
だが失敗した。

 

外伝:賢二が行くW〔4〕
目が覚めると、見知らぬベッドで寝ていた僕。ここは一体どこなんでしょうか?
賢二「…ハッ!こ、ここは!?というか僕の青春はどうなっちゃった!?まさか…!」
亀「あ〜安心しな今回も無事だ。ムーちゃんああ見えてムードにゃこだわるしな。」
賢二「よ、良かった…死ぬほど良かったよぉ…。 あ、ところでここはどこですか?」
亀「お前がなかなか起きねぇもんでな、困ってたら気のいい奴が通りかかってよ。」
賢二「そうだったんだ…。なんか世の中捨てたモンじゃないと思えて嬉しいよ…。」
声「…ん?あぁ、起きたんだね。良かったよ、寒くない?」
賢二「あ、家主さんですか?大丈夫です、おかげ様で暖かく…」

Y窃「そうかい、それは良かった。」
賢二は震えが止まらない。

 

外伝:賢二が行くW〔5〕
僕を助けてくれた人は、心優しいとかどうとかの前に見るからに変態な方でした。
人を見かけで判断するのは良くないですが、頭にパンツはその時点でありえない。
Y窃「ん〜、とりあえず自己紹介しようか。俺はY窃、職業は「変態」だよ。キミは?」
賢二「あ、賢二です…って、流しちゃいけないレベルの発言を聞いた気が…!」
Y窃「名前のこと?でもキミも…お互い名前負けしないよう頑張りたいね、賢者君。」
賢二「いや、僕は賢者じゃ…というかアナタにとっての名前負けの定義は!?」
亀「名前もそうだが職業にも突っ込めよな賢坊。衝撃すぎて見過ごしがちだが。」
無印「なんと、「変態」とは…まさか今の世にもまだ、受け継がれておったとはのぉ。」
賢二「えっ!受け継ぐとか受け継がないとかそういう職業ですか!?」
Y窃「俺はこの職を広げるため、世界中を飛び回っているんだよ。」
賢二「えっと、すみませんが是非とも滅んでください。」
Y窃「会いたい子がいてね、次は地球に行こうと思ってるんだ。知ってる地球?」
賢二「えっ、地球!?変態さんこそ地球を知ってるんですか!?」
Y窃「地球の子はね…ガードが、甘いんだ。」
姫のせいで地球が危ない。

 

外伝:賢二が行くW〔6〕
なんと変態さんは地球を、なんだか間違った感じでご存知なようです。危険です。
しかも彼は、その怪しい思想を広めるため地球に向かうとか怖ろしいことを…。
賢二「そうですか地球へ…。じゃあ宇宙船もあるんですよね?どこにあるんです?」
Y窃「どこにもなにも、今いるのが我が船…「移動邸:変態ハウス」なのさ。」
賢二「い、家が!?家ごと動くんですか!?そんな技術聞いたことも…!」
Y窃「その気になれば星をも越えるよ。変態の執念をナメないでほしいな。」
賢二「その執念の先にあるモノが怖くてたまらないんですけど…。」
亀「実はよぉ変態、コイツその地球の出身なんだわ。どうよ、連れてく気は無ぇか?」
賢二「えっ、亀吉さん…!?で、でも…!」
無印「いいぢゃないか地球。ワシも久々に、凱空らに会いたいと思うとったのよ。」
賢二「お師匠様まで…! でもそれは…!」
Y窃「なぁに、どうせついでだし遠慮することはないよ。みんなで行こうか。」

いや、遠慮というか…。
やっぱり地球が危ない。

 

外伝:賢二が行くW〔7〕
急な展開ですが、地球に帰れてしまう状況になってしまいました。なんか複雑です。
古代神の件よりも何よりも、変態さんを連れ帰ることに戸惑いを感じる僕がいます。
賢二「地球…いいのかなぁ帰って…。いろんな意味で…。」
Y窃「どうしたの賢者君、何か心配事でもあるのかな?大丈夫だよ、俺も行くし。」
賢二「いや、それが一番の…」
コンコン(ノック)
賢二「ん?なんだろう今の音…?」
賢二は表に出た。
少女「これが移動邸…探すには苦労したれす。アンタがこの家の持ち主れすか?」
賢二「え、いや、「変態ハウス」の主だなんてそんな。 えと、どういったご用件で?」
少女「我が将は宇宙船を探してるれすよ。ゴメンれすけど譲ってちょんまげ。」
Y窃「将?誰かは知らないけど、変態コレクション満載の我が家は手放せないね。」
少女「そうれすか…なら仕方ないのれす。こうなりゃ力ずくれすよぅ!こいやぁ〜!」

あぁ…またこんな…。
盛り上がって参りました。

 

外伝:賢二が行くW〔8〕
心のどこかで予想していた通り、気づけばいつも通りの展開になっちゃってました。
争いごとは嫌いですが、戦わなければ先に進めないだろうことは容易に想像が…。
賢二「ハァ…また戦闘か…。 あー…えっと、それでアナタは誰さんでしょうか?」
少女「ん、名前れす?我が名は「時魔導士」の「観理(かんり)」。ニャメんなよぅ?」
無印「ほぉ、時魔導士とはこれまた珍しい職だのぅ。遥か昔に滅んだとばかり…。」
賢二「ときまどうし…?聞いたことない職種ですけど、スゴい職なんですか?」
観理「あったりまえよぅチクショウめぃ!観理さんは色々とスゴいんれすよ!?」
賢二「「時」ってことは、やっぱり時間を操る…どんな能力なんでしょうねぇ?」
Y窃「きわどいパンチラの瞬間も、リアルタイムでスロー再生。」
観理「そんなエロスな場面じゃ使わんれすよぅ!できるけど!」
Y窃「お、恐るべし時魔導士…!」
賢二は変態の方が怖い。

 

外伝:賢二が行くW〔9〕

突然現れた観理さんは、「時魔導士」という特殊な職業の敵さんらしいです。
時を操るとか結構厄介そうですが、キャラクターから察するとあまり強そうでは…。
観理「さぁいつでも来るがいいれすよ!アチョーゥ!」
賢二「ど…どうしましょ?メインで喧嘩売られてるのは変態さんかと…。」
亀「けどよ、どう見てもコイツ弱そうだぜ?戦闘要員として見込むのはどーだろか?」
Y窃「大丈夫。確かに力は弱いけど、人を精神的に追い詰める手なら幾千通り…」
賢二「人として見過ごせないんで…僕でいいですか?」
観理「おっ、やっと決まったれすか?じゃあ早速やっちまうれす覚悟しやがれぃ〜!」
賢二「えっと……〔笑寸劇〕。」

ガンッ!(タライ)

観理はKOされた。

 

外伝:賢二が行くW〔10〕
これ以上ややこしいことになる前にと、観理さんにはちょっと眠ってもらいました。
なにかとてつもなくイヤな予感がするので、早々にこの場を去りたい感じです。
無印「うむ、見事な手際ぢゃ賢坊。その、女を必要以上に傷つけん姿勢も素敵☆」
賢二「で、どうしましょうか?敵さんとはいえ、女の子を捨てていくわけには…。」
Y窃「よ、よし、じゃじゃじゃあ俺に任せてもらおうかっ。」
賢二「そんな手をワキワキさせてる人には任せられません!何をする気ですか!」
Y窃「ん〜そうだなぁ…一言で言うなら、「男のロマン」?」
賢二「男を代表して物騒なことを言わないでほしいです。同じ男としてちょっと…。」
亀「だがよぉ、さっき「将」とか言ってたろ?変なの来る前に移動した方が…なぁ?」
賢二「だ、だよね。鬼みたいに強い人とか出てきたらもう…って、えぇっ!?」
急にドス黒いオーラが立ち込めてきた。
無印「な、なんぢゃこの大気を揺るがす波動は…!?これ程の力…まさか…!」
声「やれやれ、妙に遅いから来てみれば…観理め、油断しおってからに。」
賢二「ま、ままままさか「将」って人が…!?ど、どこに!?」

邪神「悪いな下民ども、その船は…この「バキ」がいただこう。」
鬼は出ずに邪が出た。

 

外伝:賢二が行くW〔11〕
観理さんを倒して油断していたら、とっても強そうな女の子がやって来ちゃいました。
しかも名前が「バキ」…考えたくもないですが、もしかして…かの有名な…あの人?
賢二「あ、あの…もしかしてアナタ…様は、伝説の邪神さんだったり…でしょうか?」
邪神「む…?ほぉ、このような星でわらわを知る者と出会おうとは驚きじゃな。」
賢二「ひ、ひぃいいいいいい!お助けぇーー!!」
亀「こ、こりゃちょっと予想以上の奴が来ちまったなぁ…ヤベェだろオイ…?」
Y窃「ハァ、ハァ、ロリっ子…!ロリっ子…!」
賢二「ちょっとは状況を読んでもらえると助かるんですが!」
邪神「わらわを知るなら話は早い。無駄な殺生は面倒だ、下手な抵抗はせず…」
無印「なるほど、お前さんが「風神」の…確かに兄の面影が見えんでもないわい。」
邪神「なっ、兄者を知って…!?何者じゃ貴様!?」
無印「ワシは無印。かつて神々と戦い、打ち倒した…伝説の大賢人の一人よ。」
わざわざ怒らせてどうする。

 

外伝:賢二が行くW〔12〕
やっぱり敵さんは邪神の人でした。悪い予感はまた的中…今日も命が危ないです。
お師匠様が風神の人を倒したとかも驚きで、もうなんというかお腹イッパイです。
邪神「そうか…貴様が無印か。伝承は読んだ、貴様が兄者を仕留めたのだな。」
無印「うむ。ぢゃが「闇の錬金術師」により、今なおその脅威は残ると聞くがのぅ。」
邪神「ふーん。」
賢二「意外と軽い!?」
邪神「くだらん因縁は後でよい、大人しく船を明け渡すのだ。わらわは眠いぞ。」
無印「わからんのぅ、ヌシはなぜ宇宙船を欲する?急ぐ道でもあるのかぇ?」
邪神「より縁深き者どもが、蘇ろうとしている。行って倒すがわらわの宿命…。」
賢二「え゛!そ、それって…まさか…?」
邪神「地球へ、行くのじゃ。」
Y窃「いっ…」
賢二「いやぁああああああ!!」
Y窃「イェス!!」
変態だけが元気だ。

 

外伝:賢二が行くW〔13〕
悪い予感は段階を踏んで最悪へと向かってる感じです。まさか邪神まで地球へ…。
亀「ったく、最悪の状況になってきやがった。もはや取るべき手段は一つ…だな。」
賢二「うん…地球行きは諦めないと…。」
亀「ってオイ、お前それでも「勇者」の仲間かよ。悪をくじく前に自分がくじけるなよ。」
Y窃「ちょっと待っててね。今…暖房を上げてくる!」
亀「さりげなく薄着にさせる準備すんなってば。つーかお前、邪神と行く気ってオイ。」
無印「残念ぢゃが邪神よ、行かせちゃるわけにはいかんのぅ。ここで死んどくれ。」
邪神「強者が集えば死闘は必至…仕方あるまい、じゃが死ぬのは貴様じゃ。」
賢二「えっ、戦う気ですか!?いくらお師匠様が強いっていっても相手が神じゃ…」
無印「…うむ、ワシも無事では済むまいて。ぢゃから最期に…最期に熱いキッ」
賢二「絶対助けに来ます!だから死なないでくださいねっ! …さ、変態さん。」
無印「え、いや、だからキッ」
賢二「お元気でぇー!」
無印「ま…待てや小僧がぁー!!」
賢二は逃げ出した。

だが周りを囲まれてしまった。

 

外伝:賢二が行くW〔14〕
そしてバトルが始まっちゃいました。もう少しで逃げられたんですが…残念です。
賢二「む、無理しないでくださいねお師匠様!心臓の調子も良くないんですし…。」
無印「案ずるでないよ。どのみち恋する乙女のハートは年中ドッキドキぢゃわい。」
賢二「いや、その件では僕の方が負担が…。」
無印「サラバぢゃ邪神、兄と地獄で…仲良く暮らすがいい!三連獄炎殺!!」
無印は〔獄炎殺〕を連続で唱えた。
だが炎は吹雪にかき消された。
賢二「えぇっ!?お師匠様お得意の火炎魔法がアッサリと…!?」
邪神「ふむ、なかなかの火力じゃが…地獄の風雪を操るわらわには無意味じゃな。」
無印「くっ、まさかこれほどとは…!同じ神といっても兄とはレベルが違うか…!」
賢二「えっと亀吉さん…紙とペンを。」
亀「いや、遺書書く余裕があったら逃げろよ賢坊…。」
邪神「さぁ次はわらわの番じゃ。今度は貴様らの…命の炎も消してくれよう。」
Y窃「みんなちょっと待ってて、もっと…温度上げてくる!」
無駄に前向きなのが一人。

 

外伝:賢二が行くW〔15〕
邪神さんの強さはそれはもうハンパなく、明らかに旗色悪い感じでもう大変。
お師匠様ももう限界っぽいので、なんとか隙を突いて逃げないとです。はわわ…!
ゴォオオオオオオオオオ!!(猛吹雪)
無印「ぬぁあああああああああっ!!
賢二「お師匠様ぁー! に、逃げましょうお師匠様、このままじゃ死んじゃいますよ!」
無印「ハァ、ハァ…ならん!今ここで逃がしたら、今度こそ地球は滅びかねん!」
賢二「で、でもそれじゃ…!」
邪神「フン、読めているぞ老賢者よ。仲間を逃がし、わらわを足止めする気じゃな?」
賢二「えっ!?まさかお師匠様…」
無印「フッ、愛する者のために死すもまた一興…女冥利に尽きるわぃ。」
亀「つーわけでよ、悪ぃが変態、賢坊を頼んでいいか?二人で…逃げてくれや。」
賢二「で、できませんよそんなこと!さっきやりかけた身としては言いにくいけども!」
Y窃「…OKわかった、任されよう。 さぁ行くよ賢者君!共に地球を蹂躙しにっ!」
賢二「いや、それはちょっと…!それに二人を置いては…!」
無印「行けぃ賢二!行っていつの日か、立派な…真の「賢者」になるんぢゃぞ!」
賢二「ちょっ、変態さん放し…」


邪神「荒れ狂え凍てつく波動!必殺、「大豪雪縛葬」!!」
無印「燃え上がれ愛の炎!究極火炎魔法、〔火炎地獄〕!!」

ズゴォオオオオオオオオオオオオ!!
ブォオオオオオオオオオオオオオ!!

ズガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!


賢二「お師匠様ぁーーーーー!!」

おかえり青春。

 

第十三章