外伝(弐)

 

外伝:姫ちゃんが行く〔1〕
それは、ナンダの魔の手から盗子を救出した後の…
帝都武術会から一年くらい前の話。
〜ギマイ大陸:タダノ村〜
盗子「ハァ〜、ここにも何の手掛かりも無しか〜。 あれ?勇者は?」
賢二「なんか念のため村長をシメあげてくるとかなんとか…。」
姫「私はお腹がすいたよ。三度の飯よりご飯が好きだよ。」
盗子「それじゃただの飯好きじゃん!もっと意味を考えてから発言してよ!」
賢二「それにしても、ここまで何も無いとなんか騙されてるような気がするよね。」
盗子「そだね〜。もっとこう、せめて敵が現れるとかあれば信憑性増すんだけどね。」
姫「宝を守る怪物みたいな?」
盗子「そうそう!そういう意味ありげな存在を待ってるんだよー!」

姫「良かったね、待ってたよ。」
怪鳥「クエェ!」
盗&賢「うわぁーーーー!?」
でっかい鳥が現れた。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔2〕
突如でっかい怪鳥が現れて、みんな大慌て(姫以外)。
盗子は調子こいた自分の発言を後悔した。
盗子「わわわ…!う、嘘なの!さっきの嘘だからどっか消えてー!」
賢二「な、なんか思いっきり僕のこと見てるんだけど…!?」
怪鳥「クェ。」
怪鳥は賢二を咥えて飛び立った。
賢二「え゛!うわっ、なんで!? や、やめてぇーー!放してぇーー!!」
盗子「わー!賢二ーー!! ちょっ、姫!なんとかしてー!」
姫「そうはさせないよ鳥さん!私の魔法でなんとかするよ! むー…!」

〜そして、数分後…〜
怪鳥「クェエエエ!」
声「むっ、怪しい鳥が誰かを連れて…!でも大丈夫、「お姉さん」が助けてあげ…」

姫「ほぇ?」
麗華「なんで!?」
麗華の野望は打ち砕かれた。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔3〕
怪鳥(美咲)の出現は、麗華の差し金だった。
理由はなんとなくわかっ…というか明らかにわかった。
麗華(ど、どういうことだ美咲!?ワシは可愛い賢二を連れて来いと…!)
美咲(ク、クエェ〜…。)
姫「ここはどこ?私は姫。略して「ココ姫」だよ。」
麗華「あ〜…すまんなココ姫とやら。ちょっとした手違いでな、安心しろ今すぐ帰す。」
姫「え〜。つまんないからもっと遊んでいきたいよ。」
麗華「随分とキモのすわった娘だな。普通この状況を「遊び」とは認識せんぞ。」
姫「どっか連れてってほしいよ。」
麗華「やれやれ…まぁ詫びも兼ねてしばし付き合ってやるか。 で、どこがいい?」
姫「例えば夕日の向こうまで。」
麗華「おぉ、そういう乙女チックな答えは嫌いじゃないぞ。」
姫「長い旅に…なりそうだね。」
麗華「本気で!?」
奇妙なタッグが完成した。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔4〕
ひょんなことから姫と麗華は行動を共にすることになった。
とりあえず麗華の苦労は目に見えた。
〜ギマイ大陸:ペイコン島〜
麗華「どうだココ姫?さすがに果てとはいかんが、夕日の名所として有名な島だぞ。」
姫「私はお腹がすいたよ。」
麗華「返してくれ。ワシの気遣いを返してくれ。」
姫「あっちに村があるよ。焼肉の煙がホラ、ね?」
麗華「ふぅ、やれやれ…って、あれは焼肉どころか村自体が燃えてないか!?」
姫「着いたらお肉屋さんに直行だね。」
麗華「お前はもう少し、他人の不幸に目を向けられるようになりなさい。」
姫「お肉…。」
麗華「まぁ今回はヤメておけ。あの様子じゃ全焼だ、食った肉が実は「店主」とか…」
姫「ロシアン店長さん。」
麗華「どんな残虐なゲームなんだ。というか今のじゃ店長がメインぽいじゃないか。」
姫「意味を考えたら負けだって、いつも勇者君は言ってるよ。これどういう意味?」
麗華「確かに…考えたら負けだ。」
麗華はだいぶ疲れてきた。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔5〕
麗華が良かれと思って連れてきた島では、村が大変なことになっていた。
だが麗華の方がきっともっと大変だ。(これから)
〜ペイコン島:ウト村〜
麗華「これはまた…随分と思い切りよく燃やされたものだなぁ、可哀想に…。」
姫「とりあえず怪我人さんを治して回るよ。」
麗華「うむ、そうだな。今の我々にできるのはそのくらいしかあるまい。」
姫「ぐるぐる回る怪我人さん。」
麗華「そういう意味か!?いやいや違うだろ!」
姫「あ〜…だよね。治しちゃったら怪我人さんじゃないよね。」
麗華「そうじゃない!お前が回るんだ!治して回らせて何がどうなるんだ!?」
村人A「ぐっ…うぅ…た、助けて…。」
麗華「おぉ、生き残りがいたようだ!さぁココ姫、治してやりなさい。」
姫「死滅。」
村人A「ぎゃーー!!
麗華「えーーー!?」
姫「ぐすん、救えなかったよ…私はとっても無力だよ…。」
麗華「いや、無力どころかあり過ぎだよ違った意味で!お前は一体…!?」
姫「実は二体。」
麗華は一人で頑張ろうと決めた。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔6〕
その後、生き残りを探すこと数分。
なんとか一人見つけられたので、麗華は話を聞いてみることにした。
村人B「あ゛っ…あ゛…ぐはっ…!」
麗華「オイお前、大丈夫か!?何があったんだ!?しっかりしろ!」
村人B「あれはちょうど日付が変わった頃のことだ。突然轟音と共に男達が…」
麗華「しっかりしすぎだ!自分の立場をもう少し考えろ!」
村人B「と、突然…襲われた…。「人獣奇兵団」…魔獣の群れが……(ガクッ)」
麗華「人獣奇兵団…聞いた名だ。残虐とは聞いていたが、まさかここまでとはな。」
姫「許せないね。お仕置きに行こうよ。」
麗華「うむ、そうだな。しかしどこから捜したものか…。」
姫「お肉屋さん。」
麗華「いや、それはお前の希望だろう。」

〜その頃〜
青年「ぷっはー!やっぱ飯はコレに限るねぇ〜!なぁオイ!?」
団員A「うぃッス!もちろんスよ「強敵(トモ)」さ…あ゛…ぶはっ!
青年「何度言やわかんのお前?俺のことは「団長」って呼べっつったはずじゃん?」
団員A「す、すいやせん…。ところで団長、これからどうするおつもりですかい?」
団長「まぁ待てよ。せっかく店ごと焼いたんだ、この肉は片付けてから行こうぜ。」
流行りの調理法なのか。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔7〕
姫があまりにゴネるので、仕方なく肉屋へ向かった二人と一羽。
だが、そこではお目当ての人獣奇兵団が、のんびりとくつろいでいた。
麗華「驚いた…まさかここに居たとはな。なんとなくワシの立場が無いじゃないか。」
団長「…なにアンタ?俺らに何か用とかあるわけ?」
麗華「村を焼いたのはお前達だな?乗りかかった船だ、ワシが始末してくれよう。」
団員A「あ゛ぁ?ぶははは!女子供が俺らを倒すだって!?おもしれ゛あああっ!
麗華「ほざくな下郎め。お前のようなくだらん奴は、喋ることすら許されぬ。」
団員B「て、テメェ!可愛い顔してやってくれるじゃねーか!」
麗華「それはもっと言っていいぞ。いや、是非とも何度も言ってくれ。」
姫「お肉…私のお肉…。」
麗華「嘆くなココ姫。今はそんな場合じゃないしそもそもお前の肉じゃない。」
姫「ところでね、宿敵君はこんな所で何してるの?」
団長「!!?」
麗華「ん?なんだ、まさかお前達知り合いなのか?」
団長「へぇ〜…驚いた、アンタ「弟」を知ってるのか。アイツは元気にしてるか?」
姫「華麗に追い出されたよ。」
決して華麗ではなかった。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔8〕
人獣奇兵団の団長は、なんと宿敵の兄だという。
驚きの事実のようだがよく考えると結構どうでもよかった。
団長「弟の友達と聞いちゃ若干気まずいが、仕方ない。邪魔だし死んでくれる?」
麗華「その程度の仲なら問題無いな。斬り捨てるつもりだが、良いなココ姫?」
姫「うん、意外にいいよ。残り物とは思えないよ。」
麗華「残飯を食うな残飯を。もっと嫁入り前の乙女の自覚というものをだな…」
団長「ハーイ隙ありぃー!やっちまえよ「一角獣」!」
一角獣「シュピーーー!!」
ズババババシュ!(斬)
一角獣「ジュバアアア!!
団員A「な、なんて攻撃だ!見えもしねぇとは…!」
麗華「ヌルい攻撃だな。どうやらワシは噂を聞き違えたらしい。」
団長「フッ。やるなぁアンタ、なんか惚れちまいそうだよ。」
麗華「悪いがワシより強い男に守られて生きるのが夢でな。雑魚に興味は無い。」
団長「ハハハ!言うねぇ〜。だがまぁ、そんな女を従えるのが俺の趣味でね。」
麗華「なっ!?なんだコイツらは、いつの間に…!?」
団長「「束縛獣」…相手の手足に絡まる厄介な奴さ。拷問なんかによく使われる。」
麗華「…どうやら少し侮っていたようだな。ナメてかかった非礼は詫びよう。」
団長「で、アンタ何者なわけ?俺の女になるんだ、色々知っときたいんだよね。」
麗華「フッ…そうだな。ワシに勝てたら何でも、本当のことを教えてやろう。」
団長「おっ、いいねぇ〜。そうだなぁ…じゃあまずは、名前から聞こうか。」
絶対に負けられない。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔9〕
麗華は数百体の魔獣と戦うハメになって大暴れ。
ちなみに当然のごとく、姫は我関せずな感じだった。
魔獣A「ゴガァアアア! ヒギュッ!
魔獣B「グルァアアアア!」
麗華「チッ、次から次へと…!」
団長「だろ?まぁ「召喚士」と違って連れ歩かなきゃなんないのが面倒だけどねぇ。」
麗華「ハァ、ハァ、そうか、ではここにいる分を蹴散らせば、ワシの勝ちなわけだ。」
団長「ま、やれるもんならね。とりあえず追加は呼ばないどいてやるよ。」
副団長「なぁ団長、ところで小娘の方はどうする?みんな普通に放置してるが…。」
団長「興味無いね。殺すのもなんだし、「移食獣」にでもブチ込んどきゃよくない?」
〔移食獣〕
胃袋が亜空間に繋がっている特殊な魔獣。
飲み込まれたら、死ぬまで謎の世界を漂うことになる。
運がいいと、まれに他の移食獣などから吐き出されることがあるとか。
麗華「くっ…!そうはさせるか!ワシから決して離れるでないぞ、ココ姫!」

移食獣「…ゲプッ。」
麗華「ココ姫ぇーーーー!!」
姫は自分で入った。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔10〕
姫が勝手に移食獣に食われてから、季節は流れ…
夏だった季節は、いつしか冬になろうとしていた。

そんなある日――――
私は姫。もうじき12歳になるよ。恋多きお年頃だけど、ところで恋っておいしいの?
〜キノア星:クニロマ村〜
姫「はぁ〜…お腹すいたよ…。」
男「グヘヘ…どうしたのキミ、空腹なのかな? ならホラ、これでもお食べ。」
姫「知らない人から食べ物をもらっちゃダメって言われてるよ。ごちそうさま。」
男「えっ、言われてるだけ?守れって意味なんじゃないのそれって…?」
姫「オジさんは誰?私は姫。略して「ダレ姫」だよ。」
男「俺は「Y窃(ワイセツ)」、職業は「変態」だよ。よろしくねダレ姫ちゃん。」
姫「言いにくいけど、何か食べ物をもらえると嬉しいよ。」
Y窃「たった今あげたばかりのアンパンの立場が無いねなんか…。」
姫「はぅ〜…お腹とお手々がくっついちゃうよ。ホラ、こう、ね?」
Y窃「いや、それはキミのサジ加減だと思うけど…まぁいいや。じゃあついといで。」
姫「知らない人についてっちゃダメって言われてるよ。近いの?」
Y窃「キミの親御さんは、ちょっとしつけを間違えてるね…。」
というか誰か「変態」に突っ込め。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔11〕
歩いたら変態さんのおウチに着いたよ。変なモノがたくさんあって面白いよ、顔が。
Y窃「そうなんだ〜、そんな酷い目に遭ってこの星に…。大変だったねぇ。」
姫「それはもうスゴい旅だったね。「ニンジン大王」は強敵だったよ。」
Y窃「あれ?さっきは「トマト大明神」って言ってなかったっけ?」
姫「うん、「ピーマン国務長官」。」
Y窃「と、とりあえずその三つが嫌いだってことはよくわかったよ。」
姫「ところで変態さんは何してる人なの?儲かるの?」
Y窃「変態はね、「お金」じゃないんだ。ねっとりと「夢」を追うのが仕事なんだよ。」
姫「意外とイケるね、この肉マン。」
Y窃「あのさ、興味が無いなら聞かないでもらえるかな…?」
姫「なんで変態さんはね、私に優しくしてくれるの?お金無いよ?」
Y窃「お、お金とかそんなの全然要らないって!そんなんじゃないからマジで!」
姫「んー、でもそれじゃ悪いよ。なんかあげたいよ。」
Y窃「え、ホントに!? じゃ、じゃあ言いにくいんだけど…できれば…その…。」

Y窃「ぱ、パンツくれる?」
姫「作れないよ。」
変態の企みは失敗に終わった。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔12〕
変態さんのお部屋には変なものがイッパイあるよ。宝のゴミがうごめいてるね。
姫「ねぇ変態さん、コレな〜に?」
Y窃「それはね、ピーーーーっていう変態グッズさ。変態ナイトには欠かせないよ。」
姫「食べれる?」
Y窃「な、何でも口に入れたがるのはヤメようね。変態的には超そそられるけど…。」
姫「じゃあコレは何?このウネウネしてるの。」
Y窃「あぁ、それ?それはピーーーー。 ピーーーーピーーーーするアレだよ。」
姫「あー………アレはスゴいよね、あの歌声。」
Y窃「知らないなら知らないって言った方がいいからね。」
姫「んじゃね、コレは何?」
Y窃「ピーーーーーピーーーーー。」
姫「コレは?」
Y窃「ピーーーーーーーーーーーー。」
放送協会が動いた。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔13〕
変態さんから不思議な呪文をたくさん教わったよ。でもどんな魔法かは秘密だって。
姫「ねぇねぇ変態さん。」
Y窃「ん?なんだいダレ姫ちゃん?」
姫「妹ちゃん、全然話さないね。ご機嫌長めなの?」
Y窃「「斜め」ね、「斜め」。 んー、じゃなくてさ…他の人とは違うんだよね、この子。」
姫「違うって何が?体質とか?」
Y窃「いや、「材質」とか。」
姫「…深いね。」
Y窃「深く考えられる子なら、普通一刻も早くここから逃げると思うんだけどね…。」
姫「いつもは二人で、何して遊んでるの?」
Y窃「えっとねー。一緒にお風呂入ったり、お医者さんゴッコとか、義妹ゴッコとか…」
姫「あ〜、お医者さんゴッコは楽しそうだね。私もやりたいよ。」
Y窃「え、ホントに!? じゃ、じゃじゃじゃあやってみる!?グヘヘへ…!」

姫「お気の毒ですよ。」
Y窃「ソッコー終わった!?」
変態は思わせぶられた。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔14〕
押し入れを開けたら、可愛いお洋服がたくさんあったよ。フリフリ祭りが開催中だよ。
姫「ほぇ〜可愛いのがイッパイだね〜。着てみていい?」
Y窃「えぇっ、マジで!?どどどんなのがいいのかなぁ!?ナース!?ゴスロリ!?」
姫「ナスゴリ。」
Y窃「ナスゴリ!?なにその斬新なジャンル!?いや、でもよくやればアリかも…!」
姫「ナマゾン奥地にいるの。」
Y窃「生き物!? えっと、そっち系の衣装は無いんだよ。半端な変態でゴメンね。」
姫「あ〜、このタンクトップ可愛いね。」
Y窃「ゴメン…それ「ワンピース」なんだ…。そうだよね、短すぎるよね…。」
姫「あれ?コレはなんか見たことあるよ。魔法の法衣だよね?」
Y窃「あ、うん。前にカレンちゃんがドラマで着てたモデルを、少しカスタムしたやつ。」
姫「じゃあコレをいただきます。」
Y窃「えっ、あ…あげるって話だったっけ…?いや、まぁいいけど…さ。」
姫「ありがと、着てみるね。 んしょっと。」
Y窃「ちょっ、ここで!?」
姫「ダメ?」
Y窃「だっ…!」
姫「だ?」

Y窃「ダメ…。」
変態は土壇場に弱かった。

 

外伝:姫ちゃんが行く〔15〕
家の地下に行ったらね、変なうめき声が聞こえたの。なんだかワクワクしてきたよ。
姫「ねぇ変態さん、ペットさんもたくさんいるの?」
Y窃「あ、うん。友達いないからさ、この子達に癒してもらってるんだよ。」
姫「あ〜、このワンちゃん可愛いね。名前は?」
Y窃「バター。」
姫「面白い名前だね。」
Y窃「んー…まぁ意味は深く考えないでもらえるとありがたいかな。」
姫「変態さんて。」
Y窃「俺の名前!?いや、確かにまぁそうだけどなんでこのタイミングで!?」
姫「他には面白いペットさんいないの?」
Y窃「あ〜、ちょっと前に「血色草」を手に入れたんだけど、色々あってさ…。」
姫「このオリの中のは何ちゃん?」
Y窃「あっ、ダメダメ!「移食獣」は危険だから出せないよ?血色草もそいつに…」

移食獣「…ゲプッ。」
Y窃「ダレ姫ちゃーーーん!?」
そしてこうなる

 

第四章