外伝(伍)

 

外伝:賢二が行くU〔1〕
僕が地球から打ち上げられて、早いもので一年近い月日が流れてしまいました。
もしあの日に太郎さんの帰省が無かったらと考えると、もう怖くてたまりません。
そう、僕は再び宇宙船に突っ込んだため死なずに済んだのです。良かったぁ…。
太郎「一年か…。 なんだかんだで結構ここでの生活にも慣れたよね、賢者君。」
賢二「ん〜、けどやっぱ僕は地球がいいです。太郎さんは帰りたくないんですか?」
太郎「いや、まぁ帰りたいのは山々なんだけどね〜。 でも…」
でも先の衝撃で宇宙船が故障してしまい、僕達は仕方なく不時着したのです。
その後、僕らは「義勇軍」という戦士団に拾われて今日までやってきました。

兵士「た、大変です賢者殿!是非お力を!」

そしてまた、こんな感じです。

太郎の呼び方が悪い。

 

外伝:賢二が行くU〔2〕
またもや「賢者」と勘違いされ、一応なんとか取り繕ってきた一年間。
もう、いい加減地球に帰りたい。だから僕は総大将さんに訴えることにしたのです。
賢二「あ、あの〜…総大将さん?ちょっとお話が…。」
総大将「おっと、いいタイミングで来たな賢者。ちょうどオメェに話があったんだよ。」
賢二「えっ!じゃ、じゃあついに僕を地球に…!?」
総大将「ああ。地球の方に行ってもらうわ。」
賢二「わーい!やったぁー!!」
総大将「頑張れよ、お前の活躍にゃ期待してる。」
賢二「…ん?地球…「の方」??」
総大将「チッ、気づきやがったか。」
賢二「典型的な詐欺の手口ですよ!」
総大将「このミッションが成功すりゃ、オメェに「少佐」の位を…」
賢二「いや、そんなますます帰れなくなるポジションは要りませんから!」
総大将「ヘッ、謙虚な奴め。」
賢二「謙虚じゃなくて!ホントに要らないんですってば!僕は地球に…!」
総大将「やれやれ…。んじゃ、まぁ活躍次第では考えてやるよ。これでどうよ?」
賢二「ハァ〜。 それでその…今度の敵ってどんな人なんですか?」
総大将「おぉ!やってくれるってか!」
賢二「これで最後ですからね!死ぬ気でやりますよもう!」

総大将「じゃあ頼んだわ、「ユーザック」。」
賢二「死んでもイヤですぅー!!」

違った意味で涙の再会だ。

 

外伝:賢二が行くU〔3〕
何の因果か、またユーシャさんと戦うハメになりました。今度こそ死にそうです。
まだ「ユーザック襲来」という無線が入っただけみたいですが、到着は確実だとか。
というわけで僕は、到着予定地に彼を迎え撃ちに行くことになっちゃったのでした。
賢二「ハァ…。どうせなら僕、地球の土になりたかったな…。」
太郎「まぁ大丈夫だよ賢者君、肉片が残るって保証も無いし。」
賢二「それってフォローになって無いですよ太郎さん…。」
太郎「そだね…。」
声「ち、チィーーッス!賢者大尉はこちらッスかー!?」
賢二「いや、もう「大尉」とか言われるのホント苦痛なんで…。」
少年「自分、「戦士」の「下端(カタン)」ッス!今日からお世話になるッス!」
賢二「そういえば総大将さんが、今日から「賢者小隊」を名乗れって…。」
太郎「マジで!? いや〜良かった、賢者君だけじゃ心もとなかったんだよね〜。」
下端「えっ!じゃあ今までお二人でやってきたんスか!? スッゲー!」
賢二「それは僕のセリフですよ!太郎さん職業「遊び人」じゃないですか!」
下端「しかも遊びながら!?」

伝説はこうして作られる。

 

外伝:賢二が行くU〔4〕
数日後。 旅立った僕ら三人は、ユーシャさんが来るという惑星に到着しました。
確かに地球方面ではあるけれど、やっぱり距離はかけ離れてます。 詐欺だー!
賢二「ふぅ〜、やっと着きましたね〜。」
太郎「まだ今んとこ平気そうだね。どうやら先に着けたみたいだ。」
賢二「確か到着予定地は「キャプテン岬」でしたよね?どこにあるのかなぁ…?」
下端「賢者大尉、だったらまずは村人に話でも聞いてみたらどうッスかね?」
村人A「け、賢者!? というとアナタ様が、あの魔竜「ウザキ」を倒した…!?」
太郎(…そんなことあったっけ?)
賢二(あ、ホラ、行ったら既に老衰で死んでた…。)
村人B「村長ー! あの悪星「サマラ」を滅ぼした大賢者殿が来てくれましたぞー!」
太郎(…そんなことあったっけ?)
賢二(あ、ホラ、到着寸前に隕石群がドカーンて…。)
下端「スゲーっす!こんな所にまで名が轟いてるなんて、やっぱスゲーっす!」
賢二(な、なんか噂ばかりが一人歩きしてますね…。)
太郎(というか全力疾走してるよね。)
村長「おぉ、おヌシが賢者殿か! こりゃ思ったよりガキ…ガキじゃないお方で。」
賢二「そんな中途半端なフォローならむしろ要らないです。」
村長「よーし!皆の者、宴の準備じゃー!!」
賢二「いやいや!そんなことしてる余裕は無いですから!」
村長「大丈夫、準備だけじゃ。」
賢二「えぇっ!?」

功績の割に扱いは悪い。

 

外伝:賢二が行くU〔5〕
その後、感じの悪い村長さんに教えられて「キャプテン岬」へと向かった僕達。
するとそこでは、なにやら4・5人の集団がモメていました。 い、嫌な予感が…。
少女「ウーニャーー!た、助けてくれニャのニャーー!!」
賢二「なんかこの先の展開が大体読めたんですが…。」
太郎「あ、猫耳少女だ。 一部の層に絶大な人気を誇るという…。」
少女「アタチは「王佐」の「ライ」!追われてるから助けてくれると嬉しいニャ!」
下端「「王佐」ってことは王の補佐役ッス!これは見過ごせないッスね大尉!」
賢二(できれば見過ごしたいなぁ…。)
敵A「もう逃がさないぜ猫娘! お前は高く売れるんだ、大人しく捕まりやがれ!」
ライ「アタチら「猫耳族」は、居るだけで幸福を呼び込むって言われてるのニャ。」
賢二「いま思いっきり災難を呼ばれてるだけに、全然信憑性無いんですが…。」
太郎「…よし、やろうよ賢者君!助けよう!」
下端「そうッス!自分も曲がったことは大嫌いッス!」
ライ「えっ!ホントかニャ!?」
太郎「これで当分遊ぶ金には困らないよ!」
ライ「ニャんですと!?」
賢二「な、何を言ってるんですか太郎さん! 僕らは…」
太郎(多分、宇宙船も買えるよ?)
賢二(!!)

こんな時、僕が勇者君だったらなぁ…。

たぶん笑顔で即決だ。

 

外伝:賢二が行くU〔6〕
悩んだ結果、僕はライさんを助けることに決めました。こうなりゃヤケですよ!
賢二「えっと、「義勇軍:大尉」の名に懸けて悪事は許せません。ごめんなさい。」
敵B「ぎ、義勇軍!?そうか、テメェらが宇宙警察気取りの偽善軍隊か!」
下端「さすがッス大尉!怒りの矛先を自分に向けて彼女を守るなんて!」
賢二(えっ…はわわわわ!!)
敵C「生意気な小僧だ!この俺様が射殺してくれる!!」
賢二「うわっ!じゃあ防御!防御魔法を…んっと、えっと、てっ…「鉄壁」!!」

賢二は〔鉄壁〕を唱えた。
賢二達の前に鉄の防御壁が現れた。

下端「大尉、自分が突撃するッス!指示が欲しいッス!」
賢二「じゃあ突進したり曲がったりして相手をかく乱して! その隙に僕が魔法で…」
下端「自分、曲がったことは大嫌いッス!」
賢二「そこは曲がってよ!」
太郎「ほ〜れ、フリフリ〜。」
ライ「ニャアン☆じゃらさニャいで〜!猫じゃらさニャいでぇ〜!」
賢二「戦ってよ!!」

どのみち戦力外だ。

 

外伝:賢二が行くU〔7〕
下端君は融通が利かず太郎さんはヤル気が無く、やっぱりピンチな今回のバトル。
僕だってまだまだ弱いのに、一人で戦闘なんてあんまりですよ神様…。 うぅぅ…。
賢二「どどどどうしよう!防御ばっかじゃ勝てないのに…!」
太郎「まだまだ修行不足だね、賢者君。」
賢二「アナタだけには言われたくないですよ!」
太郎「ゴメン。こう見えても僕、レベル40。」
賢二「えっ、ホントに!?じゃあ実は強いんですか!?」
太郎「強いよ、特にカードゲーム。」
賢二「あぁ…そういえば「遊び人」…。」
敵D「オラオラオラオラー!いつまで閉じこもってやがるんだ!出て来やがれ!!」
敵B「どぉりゃああああ!!」
下端「ヤバいッス大尉!敵の集中攻撃で鉄壁が悲鳴を上げてるッスよ!」
ライ「ニ゛ャー!怖いニャー!早くニャんとかするニャー!」
賢二「くっ!こ、こうなったら…!」

こうなったら、あの魔法を使うしかない。いま僕が知る中で最強の魔法…〔雷撃〕を。

失敗するとアフロになる。

 

外伝:賢二が行くU〔8〕
敵の猛攻により、もう鉄壁も限界に近づいてきました。攻撃しなきゃ負けちゃいます。
本来「雷撃」は僕のレベルで使える魔法じゃないけど…でも、やるしかないんです!
賢二「「鉄壁」解除!今から雷を落とす術式に入ります、みんな離れて!」
ライ「きゃみニャり!?嫌ニャ!おヘソが取られるニャー!」
敵A「やっと出て来たかガキどもめ。どうやら観念したようだな、手こずらせやがっ…」
賢二「僕は負けませんよ! 「術式:雷撃」第一の魔法…立ち込めろ「雷雲」!」

賢二は〔雷雲〕を唱えた。

ゴゴゴゴゴ…(雷雲)
敵B「なっ!? なんだこの…ドス黒い雲は…!?」
賢二「次なるは第二の魔法…閃け「雷光」!」

賢二は〔雷光〕を唱えた。

ピカアアァッ!!(雷光)
敵C「ぐわっ!目が…目がぁあああ!!」
賢二「そして準備段階最後の魔法…轟け〔雷鳴〕!」

だがMPが足りない。

 

外伝:賢二が行くU〔9〕
まるで狙いすましたかのようにMPが切れました。ハイ、もうダメです。ご臨終です。
太郎「あれ…? MPって結構増えたんじゃなかったっけ?」
賢二「多分「鉄壁」を維持しすぎたのが…。」
太郎「…ひょっとして、結構ヤバい?」
賢二「さよなら太郎さん…。」
太郎「いつもながら潔い諦めっぷりだね…。」
敵B「ケッ、ビビらせやがって!だがもうネタ切れのようだな!死ねぇえええ!!」
声〔砂煙〕「そうはさせるかよ!交われ対なる斜道、「十字軌跡(クロスロード)」!」
敵A「なっ…くはっ!
敵B「ガフッ!
敵C「ぶへっ!
敵D「うぎゃああ!!
賢二「!!?」

声〔砂煙〕「ヘッ、久しぶりだな賢者殿…。元気そうでなによりだぜ。」
賢二「あ、アナタは…!」
いったんCMでーす。

 

外伝:賢二が行くU〔10〕
死を覚悟した瞬間、まさかの助けが入りました。 そう、お気づきの通りあの人です。
おかげで敵も全滅し、ピクピクしてます。どうやら今回もまた生き延びられたみたい。
賢二「け、剣次さん!やっと電報が届いたんですね!」
下端「スゲーっす!あんな剣技は初めて見たッス!」
剣次「ったく、暗号なんか使いやがってバカ太郎!あんなん解読できるかっての!」
太郎「へ?あ〜無理無理。アレ、最後の方は適当だから。」
賢二「そんな命懸けの適当はヤメてください!!」
剣次「まぁ賢者殿の武勇伝を追ったら着けたがな。やっぱさすがだぜこの人は。」
賢二(剣次さんも相変わらずだなぁ…。)
ライ「ふニャ〜、助かったニャ〜。猫に小判とはこのことニャ〜。」
賢二「いや、全然違いますよ!?」
剣次「ん?なんだこの猫娘は?晩飯のオカズか?」
ライ「ニャんですと!?」
賢二「ちょっと成り行きで助けたんですよ。さぁライさん、もう大丈夫なんで…」
ライ「ニャにを言ってるニャ!アタチは一生狙われ続ける身ニャのニャ!」
太郎「あ〜、じゃあ…一緒に来れば?」
ライ「ニャ…!? いいのかニャ!?」
賢二「た、太郎さん!勝手にそんなこと決めちゃ…!」
太郎「別にいいじゃん。隊員は多いに越したこと無いって。」
ライ「わーい!ありがとニャー!」
太郎「売れば高いしね。」
ライ「そんニャ馬鹿ニャ!?」

太郎は本気だ。

 

外伝:賢二が行くU〔11〕
話の流れで、ライさんを仲間にするかどうするかという状況になってしまいました。
確かに仲間が増えるのは助かるけど、それは戦える人の場合であって彼女は…。
賢二「う〜ん、でも任務の方がかえって危険だしなぁ〜。」
ライ「お願いニャ!もう独りは嫌ニャのニャ!あと、おコタでヌクヌクしたいのニャ!」
太郎「とりあえず最後のは却下だね。」
ライ「ニャんてこったい!」
下端「どうするッスか大尉?あまり悩んでる時間は…。」
賢二「…ハァ。 わかりました、一緒に行きましょう。やっぱ僕は放っとけませんよ。」
ライ「ほ、ホントかニャ!? ありがとニャ、えっと…誰だっけニャ?」
賢二「僕は賢二、なぜかリーダーってことになってます。どうぞヨロシクです。」

ライ「アタチはライ…「ライ(佐)・ユーザック(王)」。 よろしくニャ☆」

Σ( ̄▽ ̄;)!?

ユーザックが現れた。

 

外伝:賢二が行くU〔12〕
なんとも驚いたライさんの名前。まさか他にもユーザックって名の人が居るとは…。
あれ?ということは、彼女がターゲット?いや、情報が間違って回ってるのかなぁ?
ガガ…ガッ…。(無線)
賢二「あ、無線だ。ちょうどいいから聞いてみますね。 …ハイ、賢二ですどうぞ。」
総大将「おっ、賢者か。 どうよ?ライ・ユーザックはもう捕まえたか?」
賢二「うぇっ!?ユーザックって「シャガさん」のことじゃなかったんですか!?」
総大将「あ?いくら俺でもあんな化けモンに小隊ぶつけるほど鬼じゃねぇぜオイ。」
賢二「ま、まだ見つけてませんが…そのライって人はどう危険なんです…か?」
総大将「あ〜、奴は「猫耳族」ってんだが、オメェ聞いたことあるか?」
賢二「あ、ハイ。確か居るだけで幸せを呼び込むとかどうとか。」
総大将「けどそいつぁ逆なんだわ。居るだけで特大の不幸を招く超レア物。」
賢二「え゛。」
総大将「今までに国を三つ潰してる。しかもタチの悪ぃことに、本人に自覚は無ぇ。」
賢二「じゃあもしかして…その人の場合、一種の「生体兵器」として高額だとか…?」
総大将「あ〜、そうらしいな。 だから見つけてもあんま関わらずさっさと消せな。」
賢二「えっ!消すんですか!?捕獲じゃダメなんですか!?」
総大将「バッカ、んな疫病神なんて持って来んじゃねぇっての。 じゃあな。」
…プツッ。
賢二「そ、総大将さん!?総大将さん!?」
ライ「どうしたニャ?歓迎会でも開くって話かニャ?」
太郎(なんとなく察したよ賢者君。キミもピンチが好きだね〜。)
賢二(特大の不幸を招く…か…。)

こんな時、僕が勇者君だったらなぁ…。

たぶん笑顔でメッタ斬りだ。

 

外伝:賢二が行くU〔13〕
勘違いではなく、ホントにライさんがターゲットだったようです。なんてこったいです。
でも仲間にするって言っちゃったし、それに殺すなんて僕にはできそうにないし…。
賢二「えっと、悲しいお知らせがあります。どうやら僕らの大将もアナタの敵みたい。」
ライ「ニャんですと!? そんニャのあんまりニャー!捨て猫されるのは嫌ニャー!」
賢二「というわけで、僕は今ここで…大尉の位を捨てようと思います。」
ライ「ニャッ!?」
下端「マジっすか!?そんなことしたら今度は軍に追われるハメになるッスよ!?」
賢二「ハイ、だから強制はしません。僕一人でもなんとかしてみますよ。」
太郎「な、なんか急に男になったね。すんごい涙目なのが不安だけども。」
剣次「詳しい話はわからねぇが、まぁヤル時はヤル人だぜこの人は。」
賢二「…さぁみなさん、どうしますか?」
太郎「僕は別にいいよ。どうせ逃げる気だったし、やっぱ見捨てたら後味悪いしね。」
剣次「俺も行くぜ。そんなカッコいい真似、賢者殿一人にゃさせられねぇよ。」
下端「じ、自分も行くッス!自分、これまで以上に大尉を尊敬したッスから!」
ライ「ありがとニャ賢者ー!とっても嬉しいニャー!」
賢二「み、みんな…。」

真の動機は、死んでも言えない雰囲気です。

目的地は地球だ。

 

外伝:賢二が行くU〔14〕
ライさんのため、そして地球に帰るため、僕は軍を抜けて逃げることにしました。
もう後戻りはできません。宇宙的犯罪者になろうとも、僕は生きて地球に帰ります!
下端「ところで大尉…あ、賢者殿、逃げるにしてもどう逃げる気ッスか?」
賢二「そうなんですよね…。僕らが乗ってきた宇宙船は三人乗りだし…。」
ライ「あ、それは大丈夫ニャ!さっきの奴らの船はデカかったニャ!」
賢二「いや、でも犯罪事はイヤだなぁ…。」
ライ「気にすることニャいニャ。世の中とは弱肉強食ニャものニャ。」
太郎「いいこと言うじゃん、資金源。」
ライ「売らニャいでー!!」

〜数分後〜
賢二「こ、これって…海賊船ですよね、見るからに。。」
下端「これは…そ、「ソボー海賊団」の旗ッスよ!しかも船体は超最新型ッス!」
剣次「ソボー…確か船長はかなりの強豪って聞くぜ?俺でも勝てるかどうか…。」
賢二「よ、よりにもよってそんな人を敵に回すなんて…。」
ライ「見張りだったさっきの奴ら以外、みんニャ温泉行ってるはずニャ。問題ニャし!」
太郎「じゃあ急がないとね。 大丈夫、運転の方は僕がなんとかするよ。」
下端「最新型は操作も難しいと思うッスけど、大丈夫ッスか?」
太郎「なんとかする。」
ライ「故障したらどうする気ニャ?」
太郎「なんとかなる。」
剣次「燃料は足りるのか?」
太郎「…なんとかなれ。」

「なれ」とか言われても…。

運転はゲーセン仕込みだ。

 

外伝:賢二が行くU〔15〕
不本意ながら、僕らは海賊船を奪取して逃げることになりました。ホントはイヤです。
でも、生き延びるのを最優先と考えて、ここは妥協するしかないのだと思います。
太郎「えっと、こことここはこうで、ここは…あ、こんな機能まで付いてるのか〜。」
賢二「へぇ〜、結構詳しいんですね太郎さん。 僕にも手伝えることはありますか?」
太郎「そうだねぇ〜。 んじゃ、コイン入れて。」
賢二「…へ?」
太郎「あれ?ツッコミ無し? 「ゲーセンかよ!」みたいな。」
賢二「げーせん…?何ですかそれ?どこかの星にある何かですか?」
太郎「あ〜知らない…まぁその方がいいかもね。 多分、運転任せられなくなる。」
賢二「どういう意味ですか!?」
ライ「ところで、この船の名前は何にするニャ?こういうのは形から入るべきニャ。」
下端「名前ッスか〜。どうせならカッコいい名前がいいッスね!」
剣次「ん〜、元が「ソボー号」なだけに、「蒼茫(そうぼう)号」ってのはどうだ?」
賢二「そうぼう?それはどんな意味なんですか?」
剣次「見渡す限り青々として広い…あの星のためにあるような言葉さ。」
賢二「地球の…。 そうなんですか、結構いいですね!」
ライ「ふ〜ん。 じゃあ、そうと決まれば早速行くニャ!それ行け蒼茫海賊団!!」
賢二「えっ!僕らも海賊なの!?」
下端「船体に大きく書いてあるッスからね、「海賊団」って。 仕方ないッスよ船長。」
賢二「って、当たり前のように「船長」とか呼ばないでよ! 僕は船長なんて…」
太郎「じゃあ僕がやろうか?」
賢二「頑張ります。」

太郎はちょっぴりヘコんだ。

〜数日後〜
声「あーっ!食い逃げだぁー! 捕まえてくれーー!!」

ダダダダダッ!(逃走)
賢二「ご、ごめんなさいごめんなさい! 全ては貧乏が悪いんですー!」
剣次「いいから走れ賢者殿!捕まるぞ!」
太郎「気にすることないよ。むしろ「海賊」なんだから悪さしてナンボじゃん?」
賢二「それにしてはスケールが小さ過ぎですよ!」
下端「ということは船長、もっとデカい悪事がご希望ッスか!? さすがッス!!」
賢二「いや、そうじゃないけども!」
ライ「ニャッ!あの店先にミカン発見ニャ!」
賢二「だからダメですってばー!!」

もう、こんな生活はコリゴリです。早くあの学校に帰りた…微妙です。

賢二の居場所に平和は無い。

 

第十八章