外伝(弐)

 

外伝:宿敵が行く〔1〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「戦士」でもやってみようかと、「戦士道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの〜、すみませ…」
師範「戦士心得〜、ひとーつ!」
弟子「頑丈だけにー、序盤は重宝ー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「力任せにー、敵を討つー!」
師範「でもー、最終的にはー!」
弟子「ただのー、ノロマ扱いー!」
師範「そこをー、突っ込まれたらー!」
弟子「ば、ばーか!鎧が重てぇんだよ!」
師範「ある日ー、ふと気づくー!」
弟子「ひょっとして、俺の役割って…壁?」
師範「精一杯ー、強がってー!」
弟子「MP?なにそれ、うまいの?」
師範「よくよくー、考えるとー!」
弟子「職業「戦士」って…アバウトすぎだよ…。」

…帰ろう。

「戦士」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔2〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「剣士」でもやってみようかと、「剣士道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの〜、すみませ…」
師範「剣士心得〜、ひとーつ!」
弟子「登場はー、颯爽とした感じでー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「華麗に舞いー、見えない速さで斬りつけるー!」
師範「剣を鞘にー、納めるとー!」
弟子「服だけパラッと斬れ…できねーよ!」
師範「敵がー、女だった場合はー!」
弟子「くっ、女を斬るわけには…!」
師範「一度でいいからー、言ってみたいセリフはー!」
弟子「安心しろ、峰打ちだ。」
師範「剣が光ればー!」
弟子「前歯もキラリー!」

…帰ろう。

「剣士」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔3〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「武闘家」でもやってみようかと、「武闘家道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの〜、すみませ…」
師範「武闘家心得〜、ひとーつ!」
弟子「素早い動きでー、先制攻撃ー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「飛び出すぜー、会心の一撃ー!」
師範「素早さをー、求めるあまりー!」
弟子「やっべ、俺って超薄着じゃん!防具じゃなくてコレただの着物じゃん!」
師範「武道全般ー、できるのにー!」
弟子「寝技使ってる奴って、見たことないよね…。」
師範「カッコよくー、キメてみてー!」
弟子「案ずるな、急所は外しておいた。」
師範「心の中ではー!」
弟子「うっわ、コイツ効いてねーよ!どうしよー!?」
師範「ちょっぴりー、誇らしげにー!」
弟子「拳で魔物に挑むって…俺、スゴくねぇ?」
師範「人から言わせればー!」
弟子「俺、バカじゃねぇ?」

…帰ろう。

「武闘家」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔4〕
僕の名は宿敵(ライバル)。天職を求めて一人旅するさすらいの無職さ。
今度は「盗賊」でもやってみようかと、「盗賊道場」師範のもとを訪れてみた。
宿敵「あの〜、すみませ…」
師範「盗賊心得〜、ひとーつ!」
弟子「ちょこまか動きー、こっそり盗むー!」
師範「ひとーつ!」
弟子「ナイフ片手にー、戦闘だってー!」
師範「おもむろにー、ぶっちゃけてー!」
弟子「でも正直、魔物にナイフってのは無謀だよな…。」
師範「時々ー、納得いかないのはー!」
弟子「スライムが金持ってるのって…どうだろう?」
師範「山田の給食費盗んだ奴ー、手ェあげろー!」
弟子「お、俺じゃねぇって!なんでみんなこっち見てんだよ!?」
師範「いいえー、奴はとんでもないものを盗んでいきましたー!」
弟子「貴女の心でーす!」
師範「ルーパーン!」
弟子「とっつぁーん!」

…帰ろう。

「盗賊」は諦めた。

 

外伝:宿敵が行く〔5〕
ダメだ…ろくな職業が無い…。天職なんて、見つからないかもしれない…。
そう思いながら川原をフラフラしていると、僕は一人の老人に声を掛けられた。
老師「ワシはある職業の師範なんじゃが…おヌシ、名は何と言う?」
宿敵「え、僕ですか?僕の名は「宿敵」と書いて「ライバル」。孤高の無職です。」
老師「いやはや…まさに我が「好敵手」の職を継ぐに相応しい名じゃないか。」
宿敵「こ、好敵手…?一体どんな職業なんですか?」

〔好敵手〕
闘う相手に合わせ、同じ職種に様変わりする職業。
その性質から「モノマネ師」と呼ばれることもある。
各職の力を発揮できるかどうかは、センスが問われるところ。

宿敵「な、なんて僕向きの職業なんだ…これならすべての人のライバルだ!」
老師「じゃろ?ならば話が早い。ついて参れ。」
宿敵「は、ハイ師匠!」
老師「まずは「営業」からじゃ。」
宿敵「え゛。」

大抵は「芸人」で終わる。

 

 

 

外伝:賢二が行く〔1〕
賢二「…う、う〜ん……ハッ!こ、ここは!?」
異星人「…コーヒーじゃだめ?」
賢二「いや、「ココア」じゃなくて!」
異星人「んじゃ、コーヒーでいいよね。もしくは死んでもらうよ。」
賢二「こ、コーヒーを!(その二択なの!?)」
僕は賢二。どういうわけか今、宇宙船らしきものに乗っています。 なぜ!?
確か魔法「飛翔」で…うぅ、思い出せない…。そしてなんだか思い出したくもない…。
賢二「あ、助けていただいたようで…ありがとうございます。僕は賢二です。」
異星人「あぁ別にいいよ。僕の名は「ビブ」、略して「太郎」でいいから。」
賢二「いや、略す必要無いし!むしろ略せてないし!」
太郎「それにしても危なかったね。もう少し寝てたら食べちゃってたところだよ。」
賢二「しょ、食人種!?」
太郎「あ〜心配いらないよ、老人とかは食べないから。」
賢二「フォローになってないですから!僕はバリバリ子供だし!」
太郎「…ジュルッ。」
賢二「う、ウソです!僕はもうお爺ちゃんですー!残尿感たっぷりですー!」
太郎「ははは。大丈夫、キミは大事なモルモッ…客人だからね。」

僕はもう…ダメかもしれません…。

結局死ぬかもしれない。

 

外伝:賢二が行く〔2〕
なんか嫌な色した惑星が見えてきました。どうやらもうじき着きそうです。
変な改造とかされるくらいなら、いっそのこと楽にしてもらいたい気がします。
賢二「あの〜、そういえば…お仲間さんとかは乗ってないんですか?」
太郎「・・・・・・・・。」
賢二「あ、ごめんなさい。なんか余計なこと聞いちゃったみたいで…。」
太郎「僕以外の人達は、みんな「宇宙病」って病にかかっちゃってさ…。」
賢二「そうなんですか…。お悔やみ申し上げます。」
太郎「あ、いや別にそれで死んだわけじゃないんだ。そうじゃなくて…」
賢二「…え?」
太郎「どうしようかと悩んでいたら、一人の女の子が乗ってきてさ…」
賢二「お、女の子?」
太郎「「私が治すよ。」とか言ったあと「むー!「死滅」!」って…。ううう…。」

広い宇宙には、似たような人っているものですね…。

Yeah!めっちゃ本人。

 

外伝:賢二が行く〔3〕
僕を乗せたインベーダーは、とうとう太郎さんの星に到着しちゃいました。
うん、年貢の納め時です。もう人生で何度年貢を納めたかなんて覚えてません。
太郎「とりあえず王様の所に挨拶行くから、キミもついて来て。ほら、客人だし。」
賢二「なんか悪い予感しかしないのは…僕の気のせいですか?」
〜王の間〜
太郎「王様、地球からモルモッ…客人を捕ら…じゃなくて、招待したのですが…。」
王「あぁ客人、すまんが忙しいのだ。とりあえず名乗って、後はクソして寝るがいい。」
賢二「え!?えっと、賢二と申します。どうせ食べるならおいしく食べてください…。」
王「…む?なにぃ、「賢者」!?賢者と言えば地球では最高位の…!だ、大臣!」
大臣「ハイ!賢者殿の力なら、奴を…「ユーザック」を倒せるかも知れませぬぞ!」
賢二「あ、ち、違いますよ?僕は「賢二」で「ゃ」が足りな…」
王「頼んだぞ賢者殿!供をつけるゆえ、すぐにでも旅立ってくだされ!」
大臣「これでこの国も安泰ですな!ワッハッハ!」
賢二「い、いや違います!違いますってばー!」
王「宴じゃー!戦士の旅立ちじゃー!」
衛兵「ワァアアアアアア!!(歓声)」

どえらいことになりました。

より一層死ぬかもしれない。

 

外伝:賢二が行く〔4〕
勘違いから賢者にされてしまいました。もうこのまま賢者ぶっていくしかありません。
もしバレたら、今夜のメインディッシュとして食卓に並ぶ自信アリです。
剣士「ほぉ〜、アンタが賢者殿か。なんだ、まだガキじゃねぇかよ。」
賢二「アナタがお供の剣士さんですね。はじめまして、賢二です。」
剣士「はぁ?賢者の賢二?ハッハッハ!中途半端に「ゃ」が足りねぇでやんの!」
賢二「ぐっすん。そうなんです…。 あ、そういえばアナタのお名前は?」

剣士「ん?「剣次(けんじ)」。」

目糞が鼻糞を笑った。

 

外伝:賢二が行く〔5〕
太郎さんと剣次さんをお供に、僕は宇宙侵略者「ユーザック」討伐に出発しました。
その敵さんは残虐非道、目的達成のためなら手段も問わない悪党だそうです。
なんだか勇者君ぽくて懐かしいですが、あんな人が二人もいたら僕は自殺します。
太郎「ここだよ、奴の城。じゃ、僕はここまでってことで。さいなら〜!」
賢二「早速逃げたー!」
剣次「まぁいいじゃねぇか賢者殿。とりあえず突入の作戦でも練ろうぜ。」
ユーザック「なんだ貴様ら?」
賢二「早速キター!!」
ユーザック「いったい何しに来やがった?敵だとかぬかしたらブッた斬るぞ!?」
賢二「えっと…申し訳ありませんが、この剣次さんがアナタを倒しますよ!」
ユーザック「ほほぉ、上等じゃねぇか!んで、どいつがその「ケンジ」だよ?」
賢二「しまたー!二人ともケンジだー!」
ユーザック「俺の名は「ユーザック・シャガ」、「ユーシャ様」と呼ぶがいい雑魚ども!」

まるっきり勇者君です。

勇者はクシャミが出た。

 

外伝:賢二が行く〔6〕
闘い始めて小一時間。剣次さんとユーシャさんのバトルは未だ白熱しております。
剣次「燃えさかる十字の火炎を身に纏え!「十字炎斬(クロスファイア)」!」
ユーシャ「ぬるいわ!その程度で俺に勝とうとは笑止!秘奥義「暗黒乱舞」!」
剣次「くっ!ならば…虚空に鮮血をブチ撒けろ!「血染十字(ブラッディクロス)」!」
ユーシャ「フッ、なかなかやるな!では俺も本気を出そう!裏奥義「暗黒竜殺剣」!」
剣次「うおおぉ!音速を越え、走れ九つの軌道!「3×3十字(サザンクロス)」!」
ユーシャ「もう茶番は終わりだ!食らうがいい、究極奥義「暗黒滅殺波動」!」

〜さらに二時間後〜
剣次「ボーイさん、華麗に引っこ抜け!「食卓十字(テーブルクロス)」!」
ユーシャ「超絶究極裏の裏奥義「暗黒歌謡曲(アコースティック.ver)」!」
剣次「今年はお人形さんが欲しいです!「白髭十字(サンタクロス)」!」
ユーシャ「超絶究極裏の裏のそのまた裏奥義「暗黒高校時代〜あの頃俺は〜」!」

いい加減飽きてほしいです。

命の前にネタが尽きる。

 

外伝:賢二が行く〔7〕
結局4時間ブッ通しでネタ合戦に明け暮れた二人は、現在ぐったり中です。
今ならあの魔法で捕えられます。たまにはこういうオイシイ役もいいですよね…?
賢二「えっと、いいとこ取りでごめんなさい…「束縛」!」

賢二は〔束縛〕を唱えた。
ユーザックを捕まえた。

ユーシャ「くっ、この俺がガキごときに捕まるとは…許さん!絶対許さーん!」
賢二「許さないとか言われても困りますよ。僕だって命懸けなんで…。」
ユーシャ「もしまた会ったらその時は…体中を殴打して、めった刺しにして…」
賢二「う゛っ…。」
ユーシャ「手足をそぎ落としてダルマにして、更に分割してダルマ落としで遊んで…」
剣次「賢者殿、気にするこたねぇぞ。どーせコイツは一生獄中の身だ。」
ユーシャ「それを模して作ったオモチャが大当たりして、そして俺は大金持ちに…」
賢二(うわー…、だんだん方向性がズレていく…。)
ユーシャ「その後は可愛いネェちゃんに囲まれなが…ハッ!と、とにかく殺す!!」

賢二は束縛を解いた。

 

外伝:賢二が行く〔8〕
僕が臆病なせいで、ユーシャさんを取り逃がしてしまいました。
せっかくのチャンスをフイに…今度は剣次さんに殺されるかもしれません。
剣次「…な〜るほどね。さすが賢者殿だ、俺とは頭のデキが違うぜ。」
賢二「…へ?(あれ?怒るんじゃないの??)」
剣次「もし捕えてたら、仲間が助けに来て戦争→国民に大被害…っつーことだろ?」
賢二「え?あっ、いや…僕は別にそういうつもりじゃ…。」
剣次「謙遜すんなって〜!まったく腰の低い英雄だぜアンタは。イカスよ!」

〜その頃〜
部下「ユーシャ様、今後の侵略の方はいかがいたしましょうか?」
ユーシャ「もういい、次の星を探すぞ。 ここはもう…飽きた。下がれ。」
部下「え?いや、しかし…この星にはまだまだ利用価値が…。」
ユーシャ「下がれと言っている!それとも貴様…ダルマ落とされたいのか!?」
部下「ハッ!失礼しました!(だ、ダルマ!?)」
ユーシャ「地球から来た賢者か…なかなかキレる男だったな…。」
誤解の連鎖が。

 

外伝:賢二が行く〔9〕
一応敵を追い払うことができたということで、城に帰った僕らは大歓迎されました。
王「おぉ賢者よ、死んでしまうとは情けない。」
賢二「え゛?」
大臣「王様、違いますぞ!パターンBです!「万が一、生きてたらバージョン」の!」
王「あ゛…。よ、よくやった賢者殿、そして剣次よ。なんとなく褒めてつかわす。」
賢二「…ありがとうございます。とっても嬉しくないです。」
剣次「フッ、俺は何もしてねぇさ。すべては賢者殿の功績ってやつだよ。」
賢二「け、剣次さん…。(この人は…純粋なのかアホなのか…)」
太郎「いや〜、さすがは賢者君!キミならやってくれると僕は信じてたよ!」

賢二は〔絶壁〕を唱えた。
太郎の後頭部が微妙に歪んだ。

太郎「う、うひゃー!」
賢二「フーンだ!」
王「では賢者よ、何でも好きな褒美を取らそう。欲しい物を言うがいい。」
賢二「えっと…物はいらないので、その代わりに地球に帰してください。」
王「う〜む…そうか。残念だが引き止めるのは無理そうだな…。 よし、帰れ!!」

まさか…自力で?

今度の敵は「成層圏」だ。

 

外伝:賢二が行く〔10〕
なんとか頼み込み宇宙船を貰った僕は、太郎さんの案内で地球へと出発しました。
でも惑星を発ってからもう三ヶ月くらい経ったのに、全く着く気配が無いのです。
賢二「あの〜…太郎さん、一体どうなってるんでしょうか?」
太郎「う〜ん、どうも頭が歪んだせいか方向感覚がイマイチ…。」
賢二「ご、ごめんなさい。ペルペロス事件以来、置いてけぼりがトラウマでつい…。」
太郎「なんとか治せないかなぁ?でないと、あと2秒で燃料が切れるよ。」
賢二「2秒て!もうどうしようもない状況じゃないですか!」
太郎「まぁいいじゃん。とりあえずやってくれる?」
賢二「ハァ…じゃあとりあえずやってみますね。 よーし、「絶壁」!」

賢二は〔絶壁〕を唱えた。

太郎の頭があり得ない形になった。

太郎「ぱ…ぱらっぽぷ。」
賢二「た、太郎さーーん!!」

えっと、みなさんサヨウナラ…。

賢二は覚悟を決めた。

 

第八章