第三十六章

 

4-541:暴君〔14歳:LEVEL45〕
何が原因かは知らんが、なんとなく謎のパワーが湧き出してきたっぽい。
そうかこれが…これが、「主人公補正」か!
勇者「いっくぜー!今の俺に不可能は無いと思いたい!死ねぇ大魔王!!」
大魔王「ふーん…まぁ確かに何か変わった気もするけど…ねぇ?」
勇者の攻撃。
だが返り討ちにあった。
勇者「ちっくしょー!勘違いだったぁーー!!」
大魔王「な、なんだかなぁもう…。」
勇者「だがこの程度で動じる俺ではない!俺の必殺メロンパンが貴様の胃袋を…」
賢二「今までにないくらい動揺してない!?大丈夫勇者君!?」
勇者「どうやらまだ少し、時間が要るようだが…任せていいか?相棒よ。」

チョメ「ポピュップ!!」
気まぐれ暴君が現れた。

 

4-542:落胆〔14歳:LEVEL45〕
急に目覚めた新しい力だが、どうにも馴染まずまだ使いこなせそうにない。
そんな時に現れたのは、我がペットにして武器庫なチョメ太郎。俺達まで危険だ。
勇者「さぁ、やってしまえチョメ太郎!だがくれぐれもこっちは狙わないようにな?」
チョメ「…ポッピュ!」
賢二「絶対通じてないよね!?今の間は明らかに…」
チョメ「ポピュッパーーー!!」
ズダダダン!ドゴォーーン!チュドォーーーーン!!
やっぱり通じてなかった。
賢二「ゼェ、ゼェ、こ、こっちへの攻撃の方が多かった気がするのは気のせい…?」
勇者「さぁどうだ、やったか!?まぁやれちまってたら俺は立場が無いわけだが…」
大魔王「あのさぁ、まさかこんなのが切り札だったとか…言わないでよ?」
チョメ「プ…ポヒュ…。」
勇者「くっ、チョメ太郎…!いつの間に…!?」
大魔王「ちょっとは期待できるかなぁと思ったんだけど…期待外れだったよ、残念。」
大魔王のターンが始まる。

 

4-543:超速〔14歳:LEVEL45〕
どうやら俺達は、大魔王を失望させちまったらしい。地味にキレていやがるぜ。
恐らく「断末魔」がかなり馴染んじまったようだ。もはや遊び心は失せたと見える。
勇者「俺を殺すか…だがいいのか?俺はまだもう少し強くなる気がするぞ?」
大魔王「あぁもうそーゆーのいいから。仮に遊ぶにしても、キミの父親選ぶよ。」
勇者「そうか…期待外れの俺達なんぞ、心置きなく殺せるってわけか。」
大魔王「うん!あと二人♪」
賢二「え…?」
大魔王は賢二の背後にいた。
勇者は間に合わない。
姫はヤル気がない。
賢二は助からない。
暗殺美「とか思ったら大間違いさぁーーーーー!!」
バキィイイイイ!!
大魔王「くっ…!また新手ぇ…!?」
賢二「あ、暗殺美さん!ありがとう助かっ」
暗殺美「勘違いするなさ!べっ、別にアンタのためさっ!!」
暗殺美はうっかりデレた。

 

4-544:問答〔14歳:LEVEL45〕
生意気にもナイスなタイミングで現れた暗殺美。命拾いしやがったな賢二の奴め。
勇者「チッ…オイ見せ場泥棒、貴様は下で敵を食い止めてたんじゃないのか?」
暗殺美「雑魚は土男流に任せて駆けつけてやったのさ感謝しろや死に損ないめ。」
勇者「なるほど…となると絞死も来ているな?隠れて敵の隙を覗っているわけか!」
絞死「…まさか内部告発で失敗に終わるとは。」
大魔王「ハァ…また増えるとか…。」
勇者「フッ、どうやら形勢逆転のようだな…と言えないのが辛いな。敵は強いぞ?」
絞死「わかってます。偏屈なアナタが言うんです…絶望的に強いんでしょうね。」
勇者「なんだ臆したのか?情けない奴め。」
暗殺美「私は勝つ気マンマンさ。」
勇者「甘く見るなバカめ!」
絞死「一体どう言えば…。」
正解は無かった。

 

4-545:生様〔14歳:LEVEL45〕
暗殺美と絞死も加え、バトルは再開された。だが、どうせ状況は変わるまい。
暗殺美「おぉおおおおおおりゃああああああ!食らえやぁあああ「風神脚」!!」
大魔王「さっすが風神の靴…って感じの速さだけど、物足りないから死んで。」
絞死「そうはさせませんよ!「幻想十人撃」!!」
大魔王「まーた幻の体かぁ〜…でも本体は、こっちでしょ?」
絞死「なっ…!?」
大魔王の攻撃。
だが勇者が助けた。
絞死「くっ、余計なことを…」
勇者「下がっていろお前達。やはり女子供にどうこうできる相手じゃない。」
絞死「わ、私は…!」
勇者「お前…俺が気づいてないとでも思っているのか?下がれと言っている!!」
絞死「ッ…!!」
勇者「もうボロボロなんだろう暗殺美も?それ以上暴れると死ぬぞ。」
暗殺美「あ゛ん!?じゃあアンタならどうにか出来るって言うのかさ!?」
勇者「フッ…俺の背をよく見ておけ。これが男の生き様だってのを、見せてやる!」
絞死「ゆ、勇者さん…。」

「死に様」かもしれんが。
大きな違いだった。

 

4-546:悶絶〔14歳:LEVEL45〕
賢二もダメ、暗殺美も絞死もダメ、姫ちゃんは可愛い…となるとやはり俺だけか。
大魔王「で?結局キミが相手ってわけ?」
勇者「ああ。だからコソコソ他の奴を狙うようなマネはヤメろよな。」
大魔王「ま、別にいいけど…何か勝算でもあるわけ?」
勇者「フッ、当然だろう?世にもビックリな秘奥義で貴様を仕留めてやる!」
賢二「いや、チョメ君のマントを漁りながら言われても…。」
勇者「何か…何かあるはずだ!謎多きコイツのことだ、きっと凄まじい武器とかを…」
チョメ「ッ!!!」
急にチョメ太郎がもだえ始めた。
チョメ「ポ、ポッピュー!ポッピュ〜〜!」
賢二「ちょっ、何したの勇者君!?」
勇者「いや、俺は何も…ただ何か変なモノに触った気はするが。」
姫「たぶん背中にチャックが…」
賢二「えっ!チャックが!?」
姫「いるよ。」
賢二「チャックが!?」
暗殺美「フン、随分前にも聞いたネタさ。同じボケを二度も使うとか…」
ジィイイイイイ…(開)

チョメ「…ポピュ?」
暗殺美「チャックが!!?」
チャックが。

 

4-547:中身〔14歳:LEVEL45〕
マントの中を漁ったら急にモゾモゾしはじめ、様子がおかしくなったチョメ太郎。
だが理由がわかれば何のことはない。単に背中のチャックが…チャックが!?
勇者「お、オイオイ待ちやがれチョメ太郎。お前そんなモンつけてたのか…?」
暗殺美「アンタも知んなかったのかさ?飼い主歴何年さ?」
勇者「あのマントの中は危険と考え避けていたが、まさか更に中があったとは…。」
賢二「いや、でも単なる飾りって可能性も…」
チョメ「ポピュ…パピプ…!プッパーーーーーー!!」
チョメ太郎の背中がパカッと裂けた。
なんと!中から巨大な怪鳥が現れた。
一同「ええぇーーーーーーっ!?」
怪鳥「ポッピューーーーー!!」
大魔王「うっわデッカ…ちょっ、この変わりっぷりは酷くない…?」
暗殺美「というかどう考えてもあの容積に入るサイズじゃないさ…!」
賢二「こ、コレか…!前に召々さんが「チョメチョメ」を呼んだ時、感じた違和感…」
勇者「む?どういう意味だ賢二?」
賢二「サイズも泣き声も、全然違ったんだよ。もっと小さくて…あと美味だとか。」
暗殺美「いや、味は関係無いと思うし考えたくも無いさ。」
勇者「むぅ…確かに図鑑は軽くしか見なかったが…。だったらアレは何なんだ?」
絞死「あの燃え盛る炎のような翼…アレはもしかして、伝説の…!?」
賢二「そう、「三神獣」…その中でも最強とされる魔獣、「不死鳥:フェニックチュ」。」

不死鳥「ポピュッパーーーー!!」
チョメ太郎が覚醒した。

 

4-548:信頼〔14歳:LEVEL45〕
チョメ太郎の中から飛び出したのは、なんと伝説の魔獣だという「不死鳥」らしい。
勇者「やれやれ、出会って十余年…まさかそんな驚きの正体があったとはな。」
不死鳥「ポペポピュ。プポピ。」
勇者「なっ!?ま、まさかお前…!」
不死鳥「ピッポプーー!」
勇者「フッ、やっぱりわからん。」
大魔王「旧世界の怪物…まさかホントに切り札だったとはねぇ。さっきのは謝るよ。」
勇者「気にするな、俺が一番驚いている。」
大魔王「やれやれ…こんなことなら炎系が苦手とか言うんじゃなかったな〜。」
勇者「よーしチョメ太郎!焼き払え!こんなクソガキ、消し炭にしてやれぃ!」
不死鳥「ポピュ?」
勇者「そうだそういう火炎の咆哮だ。それで合ってるからこっちを向くな。」
不死鳥「…ポピュ?」

フッ、任せられん。
味方という保証も無い。

 

4-549:命名〔14歳:LEVEL45〕
覚醒したチョメ太郎だが、まともに働く気配が無いので結局俺が頑張ることに。
勇者「フッ、まぁいい。チョメ太郎なんぞに頼らずとも、この俺の剣が」
パキィン!(折)
勇者「お亡くなりになったわけだが、お前はどう思う?」
大魔王「死ねば?」
勇者「チッ…!おいチョメ太郎、何か武器をよこせ!凄まじいヤツをな!」
不死鳥「ポーーピュー〜…!(光)」
勇者「そうそう凄まじい咆哮を…ってだから違う!なぜいつもこっちに向かっ…」
不死鳥「ポピュッパァアアアアアアアア!!」
ピカァアアアアアアア!!(輝)
チョメ太郎は激しく輝いた。
なんと!チョメ太郎は剣に変化した。
勇者「そ、そうきたか…!毎度毎度、行動の読めない奴め…!」
大魔王「燃え盛る火炎の剣…この子がキミの「契約獣」か…!」
勇者「チッ、あのクソ親父の仕業か…。いつの間に契約させられたのやら。」
大魔王「どうやら、この「闘神の剣」に対抗しうる唯一の剣を、手に入れたようだね。」
勇者「ふむ。名は「不死鳥の剣」…じゃ安直すぎるな。ならばこう名付けようか…」

勇者「「諸刃の剣」と!!」
的確なネーミングだった。

 

4-550:一歩〔14歳:LEVEL45〕
一番の問題だった武器の件が意外な方法で片付き、やっと勝機が見えてきた。
元がアイツと思うと何が起こるかという不安はあるが、そこは考えないようにしよう。
勇者「さぁ来い大魔王!今の俺は言わば水を得た魚…刺身でも食えるぜ!?」
暗殺美「いや、うまいこと言ったつもりみたいだけどそれ「殺してくれ」に聞こえるさ。」
大魔王「ハァ?まさかその程度で勝てる気がしちゃってるとか…?バカなのキミ?」
勇者「オイオイ、いくらなんでもそれは賢二に失礼だろ。」
賢二「いや、勇者君がね!?」
大魔王「んじゃ、まぁ手っ取り早く見せてあげるよ。格の違い…ってヤツをね。」
勇者「ッ!!?」
大魔王の攻撃。
ミス!勇者は間一髪避けた。
勇者「なっ…なんだ今の軌道は!?俺が天才じゃなきゃ死んでたところだ!」
大魔王「驚いたなぁ。まさかキミごときが、「天衣無縫流」の初太刀をかわすとはね。」
勇者「て、天衣無縫流だとぉ…!?」
大魔王「へぇ…思ったより博識なんだぁ。そうさ、僕の星で最強と言われた伝説の」
勇者「いや、初耳だが。」
大魔王「チッ、相変わらずナメた口を…!」
勇者「だが、また一歩本気に近づいたのはわかったぜ。 さーて…あと何歩かな?」
勇者はノッてきた。

 

4-551:攻勢〔14歳:LEVEL45〕
思ったよりやれそうな気はしてきたが、やはり絶対的な出力不足は否めない。
長期戦になるほど不利になるだろう。短期決戦でキメるしかあるまい。
勇者「うぉおおおおりゃああああ!!」
キン!キィン!チュィン!ガキィン!
大魔王「大した連撃だけど…やっぱバカでしょ?それで最後までもつわけないし。」
勇者「まぁそうだろうな!だが、信頼できる仲間がいれば…」
大魔王「…いれば?」
勇者「いればなぁ…。」
賢二「ま、まだそんな感じなんだね…。」
勇者「にしても、どうした大魔王?口とは対称的に防戦一方じゃないか。」
大魔王「あ〜、さっきから「断末魔」がうるさくってさぁ。なんか頭が痛くてねぇ〜。」
勇者「オイオイ、ヤメてくれよ「覚醒フラグ」立てるの…。で?奴は貴様に何と?」
大魔王「キミの一族には、無慈悲かつ凄惨な死を…そして、世界を滅ぼせと。」
「大魔王」らしくなってきた。

 

4-552:絶望〔14歳:LEVEL45〕
時が経つごとに、負のオーラが増してきた感のある大魔王。急がねばヤバそうだ。
大魔王「ふぅ〜…だいぶ落ち着いてきたよ。んじゃ、そろそろ頑張っちゃおうかな。」
勇者「チッ、マズい流れだな…!仕方ない、全員一丸となって」
大魔王「スゥ〜〜〜…ハァアアッ!!
大魔王は大声を出した。
全員吹っ飛んで壁にメリ込んだ。
勇者「ぐはっ! な、何をしやがった貴様…!?」
大魔王「え…発声練習?」
賢二「か、格が違う…!こんな相手…勝てるわけが…!」
姫「負けられないね…あめんぼあかいな血まみれの!」
暗殺美「発声練習で対抗すんなさ!しかもなんでそんな血生臭いのさ!?」
絞死「ぐふっ…どうやら、父との再会は意外と早いみたいですね…。」
勇者「いや、無理だろ。お前の親父は魔界の底だ。」
大魔王「発声練習も終わったし、次は柔軟体操かな?全身の骨を、粉々に…ね。」
勇者「フッ、そりゃ困るなぁ。それじゃ腕が、上がらなくなっちまうじゃないか。」

もうお手上げなのに。
ギブアップすらできない。

 

4-553:予感〔14歳:LEVEL45〕
勝てる気がした。互角の武器を手に入れ、仲間も集まった。だから勝てる気がした。
だが、縮んだかと思われた差はまた徐々に開いていった。着実に…そして確実に。
勇者「ゼェ、ゼェ、ち、チクショウ…!結局、届かないのかよ…!」
賢二「ゴメン暗殺美さん、ちょっと立てないんだ…肩をかしてもらえる…?」
暗殺美「か、貸してもいいけど後で返せさ。いやむしろ一生返さな…もう寝てろさ!」
絞死「これが「大魔王」…まさか、これ程とは…。」
大魔王「アハハ☆ いい表情だねぇ。その顔を見たかったんだよ、絶望した顔をさ。」
姫「もう腹ペコだよ?」
大魔王「若干一名違うようだけども。」
勇者「…チッ!」

やれやれ、どうやらもう…他に道は無いらしい。
勇者は何かを決めた。
〜その頃〜
盗子「ッ!!!」
父「む?どうした盗子、麦茶だと思って麺つゆでも飲んだか?」
盗子「なんで今この状況で!?そうじゃなくて…」
父「そうじゃなくて?」
盗子「なんか…イヤな予感が…。」
父「イヤな予感…か…。だが心配しても仕方ない、茶でも飲んで落ち着け。」
盗子「あ、うん。ありが…ぶほぁ!!(噴)」
だが麺つゆだった。

 

4-554:一撃〔14歳:LEVEL45〕
散々悩んだ結果、ついに俺は覚悟を決めた。
勝てる保証の無い手だけにためらっていたが…もはやこの手しか残ってはいまい。
勇者「さーて…じゃあやるとするか。今度こそ覚悟するがいい大魔王。」
大魔王「えー、またぁ〜?もう飽きちゃったよその手の悪あがき〜。」
勇者「フン、喜べ。泣いても笑っても、これが俺達の最後の激突となるだろう。」
大魔王「なっ、その構えは…!そっか、その技なら確かに…可能性はあるかもね。」
勇者「だろ?まぁ当然、笑うのは俺だがな。」
大魔王「ふーん、笑いながら死ぬんだ。面白い最期だねぇ。」
勇者「そう思うなら貴様に譲ろう、俺は泣いて喜んでやるぜ! いくぞっ!!」

バァン!(扉)
盗子「ちょ、ちょっと待ったぁーーーーーー!!」
盗子が現れやがった。
賢二「えっ、盗子さん…!?」
勇者「すまん麗華、言いつけは守らん主義でな! 刀神流操剣術、最終奥義…!」
盗子「や…ヤメて勇者ぁーーーーー!!」


勇者「うぉおおおおおおおおお!!「一・撃・必・殺・剣」!!」


大魔王「ハァアアアアアアアア!!天衣無縫流…「生・殺・与・奪・剣」!!」



ヒュン… ヒュン…




ズバシュッ!!!!






大魔王「ぐわぁあああああああああああああああああ!!

会心の一撃!

大魔王は派手に血を噴いた。

 

4-555:約束〔14歳:LEVEL45〕
両者の必殺の一撃が激突し、そして―――
勇者「・・・・・・・・。」
大魔王「・・・・・・・・。」
勇者「…ふむ。」
盗子「ゆ、勇者ぁーーー!や…やったの!?勝っちゃったの勇者!?」
勇者「盗子…か…。」
盗子「う…うわぁあああああん!良かった…良かったよぉおおおおお!!」
勇者「…フン、約束したろう?「絶対に生きて帰る」と。」
盗子「う、うん!うんうんうんっ!」
勇者「ったく、長い付き合いだってのに…何もわかってないんだな、お前…。」
盗子「アハ☆ご、ごめんね!あの時はちょっと、動転しちゃって…」
勇者「いや…そうじゃねーよ。」
盗子「…へ?」
勇者「この俺が、お前との約束なんて…守るわけないだろ…?」
盗子「え…? えっ!?えぇっ!?」

ブッシュウウウウウウウウ!!(鮮血)
勇者は豪快に血を噴いた。
盗子「ゆ、勇者っ!?勇者ぁあああああああああああ!!」
大魔王「グハッ!ガハガハッ! くっ、おのれぇ…!この僕に…こんな深手をぉ…!」
勇者「チッ、あと一歩ってとこか…チクショウ…め………。」
盗子「ゆ、勇…し…死んじゃダメだよ死なないでよ!ねぇ目ぇ開けてよ!ねぇ!?」

チッ、これが「呪剣」を使いし者の末路か…もう目も開かん…。

賢二「嘘…だよね?アハッ、イヤだなぁこんな時に!そんな趣味の悪い…冗談…。」

オイオイ、呆けてる場合じゃないだろ賢二。あとはお前しか…いないんだぜ…?

姫「勇者君…眠いの?おねむさんなの?」

すまんな姫ちゃん…今日のは少しばかり、永い眠りになりそうだ…。

盗子「イヤァアアアア!死んじゃイヤだよぉおおお!うわぁああああああああん!!」


盗子…。


ウザッ…。

「涙は女の武器」とはよく言うが、お前のは「凶器」だろ…。

もちろん悪い意味で…。



ウザすぎて死にづれぇよ…泣くんじゃねぇよ盗子…。



ビビッて、困って、悩んで、ヘコんで、キレて、はしゃいで、喜んで、笑って…






どうやら俺は…





俺は、そんなお前が

勇者は死んでしまった。

 

第三十七章