第三十二章

 

4-481:揺心〔14歳:LEVEL45〕
盗子の予想通り、女神にも真の姿があるという困った事実が発覚。
とはいえ鰤子以上の衝撃は無いはずだが…。
盗子「ま、マジで…マジで変身しちゃうの?今より更に強くなるとかアリなの!?」
女神「これ以上、時間を浪費したくありませんの。全力で仕留めますわ。」
姫「これは…マズいね。」
盗子「姫っ!?やっと起きたのかよ遅いよ!」
姫「もうちょっと…甘い方がいいよ…。」
盗子「って寝言かよ!幸せな夢見てないで現実の悪夢と向き合えよ!」
姫「むにゅう…ほぇ?あ、おはよう盗子ちゃん。お元気?」
盗子「かろうじてね!「夢絵本」の経験が無かったら確実に死んでるよもう!」
女神「見せてあげますわ!最強で醜く、絶対に人には見せたくな…見ないでっ!」
盗子「どっちなんだよ!?」
揺れる乙女心だった。

 

4-482:変身〔14歳:LEVEL45〕
その後も散々渋った女神だったが、結局変身することにしたっぽかった。
女神「ハァアアアアアアアアア…!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!(揺)
盗子「ゆ、揺れてる…!大気が揺れる程のオーラってどんなだよっ!怖いよぉ…!」
姫「じゃあ逃げちゃえばいいよ。」
盗子「えっ!?いや、ここまで来といて今さらそれは…」
女神「キョェエエエエエエエエエエエエエエエ!!」
盗子「…うん、アリかも。そだよね!無理することないよね!アタシら女の子だし!」
姫「最上階行こうよ。」
盗子「究極じゃん!!なんで自分から究極の死地へ!?なにアンタ夏の虫!?」
姫「勇者君に…会いたいよ。」
盗子「なっ…!?あ、アタシだって!アタシだって会いたいもんっ!」

姫(ぎゅるるるるる…(腹の音))
エサ目当てだった。

 

4-483:合流〔14歳:LEVEL45〕
というわけで、敵の変身中に逃げるという禁じ手を繰り出した盗子達。
だが向かう先も地獄ということに変わりは無かった。
〜大魔王城10階:竜王の間〜
盗子「ってわけなんだけど、味方がいて良かったよ…!心強いよ!」
暗殺美「チッ…やっと一段落ついたってとこで、もう一戦かさ…。」
盗子「ってなんでだよ!?こんな極限状態でも敵対するってなんで!?」
暗殺美「フン!自分の役目を投げ出しちゃうような奴は敵なのさクソが!死ねや!」
盗子「くっ、ぐぅの音も出ない…!」
姫(ぐぅ〜〜…)
賢二「絞死君も一緒だったんだね。無事みたいで良かった。」
盗子「あ、なんか途中で倒れてたから拾ってきたの。寝ちゃってるみたいだけど。」
絞死「ええ、そこです…そこで寝首を…むにゅ…。」
賢二「なんか気の抜けない寝言だね…。」
姫「賢二君は脚どうしたの?お巡りさんに言った?」
賢二「いや、落し物じゃないから…。まぁ回復魔法でなんとか…って感じかな。」
盗子「なんかみんな相当ボロボロだね…。こんなんでこの先大丈夫かなぁ?」
暗殺美「ハァ?フザけんじゃないさ。もう限界な私らはここでリタイアさ。」
賢二「でも退路も無いよね。前門の勇者君、後門の女神…究極の、選択だよ。」
大魔王じゃないのか。

 

4-484:心折〔14歳:LEVEL45〕
その後、結局みんなで上に向かうことにした一同。
途中で更に土男流も拾い、メンバーは6人になった。
ちなみに太郎らはとっくに逃げてた。
〜大魔王城最上階:終焉の間 前〜
ズッガァアアアアアン!ドガッ!ドッゴーーーン!!
盗子「な、なんか…スゴい音するね…。心を折るには十分な音が…。」
賢二「だね…。しかもこっちは怪我人半分と」
暗殺美「戦力外半分…まさに死にに行くようなものさ。」
土男流「大丈夫なんだ!きっと師匠が守ってくれるんだー!」
盗子「姫だけはね…。」
姫「弱気になってもしょうがないよ。ここまできたら腹がすくしかないよ。」
暗殺美「いや、くくれさ。アンタの腹はもう少し弱気でもいいくらいさ。」
盗子「ま、確かに今さらだよね!でも最悪を想定しとけばきっと耐えられるよねっ!」
盗子は扉を開けた。
マジーン(首)「ん…?」
盗子「ギャーーーー!!」
盗子は出鼻をくじかれた。

 

4-485:戦況〔14歳:LEVEL45〕
首だけの状態で一同を出迎えたマジーンは、皆に状況を説明したのだった。
マジーン「つーわけよ。とにかくスゲェぜアイツら…あの動きはもう人間じゃねぇわ。」
盗子「いや、その状態で生きてるアンタには負けるけどね…。」
賢二「で、戦況はどんな感じなんでしょう?優勢な方は…?」
マジーン「ん〜、今んとこ五分だな。まぁどっちが勝っても最強の「大魔王」だ。」
土男流「とってもカオスな状況だってことは理解したぜー!」
盗子「「断末魔」…だっけ?勇者が勇者じゃないってことはこっちも危険なんじゃ?」
賢二「勇者君でも危険だけどね…。」
姫「とりあえずもっと近づいてみようよ。みんなでいけばきっと勝てるよ。」
暗殺美「…どっちにさ?」
盗子「それはモチロ…うん、どっちだろ…?」
どっちもどっちだった。

 

4-486:狩猟〔14歳:LEVEL45〕
そして、久々に勇者vs大魔王戦へ。
〜大魔王城最上階:終焉の間 奥〜
勇者「ふむ…どうやら互角のようだな。なんとも生意気な小僧だ。」
大魔王「ハハッ、これだよこれ!やっぱ楽しいねぇ〜!アハハッ☆」
勇者「そうか…だが悪いな、俺はもう飽きた。さっさと死んでもらえると助かる。」
大魔王「え〜〜…。あ!じゃあさ、ちょっと趣向を変えてみない?」
勇者「む?まぁ内容によっては考えてやらんでもないが…」
大魔王「ズバリ「ハンティング・ゲーム」。どっちが多く“アレ”を狩れるか…勝負ね。」
勇者「…フッ、なるほど。それは確かに面白いかも、しれんなっ!」
ダダッ!(駆)
 二人は突然駆け出した。
暗殺美「ッ!!? な、何か…来るさっ!」
賢二「狙いは僕か…盗子さんっぽいな…。」
盗子「えっ!?ど、どっち!?空気的にどっちがやられる感じ!?」


賢&盗「ぎゃふっ!!
どっちもだった。

 

4-487:救援〔14歳:LEVEL45〕
勇者と大魔王の戯れの犠牲になった賢二と盗子…と、思われたが…
盗子「イッタタタ…でも、あれ…?死んで…ない…?」
妃后「ふぅ〜、間一髪だったねぇ〜。」
勇者「ッ!! チッ、貴様は…!」
大魔王「うわ〜、「退魔壁」かぁ〜。これじゃ確かに威力も半減だねぇ。」
賢二「おかげで助かりました。えと、アナタは…?」
姫「私の名は「妃后」…姫の、ママさんだよ。」
妃后「姫ちゃん〜、だからいつも言ってるでしょ?ママのセリフ取っちゃダメ。」
盗子「えっ!アンタ姫のお母さんなの!?やったー!味方がキターーー!」
妃后「アナタはもしかして…チッ、無事で何よりだね。」
盗子「ありが…えっ、なに今の舌打ち!?アタシ何かしたっけ!?」
勇者「やれやれ、「退魔導士」…存在自体が魔の俺にとっては、最悪の相性だぜ。」
妃后「乗っ取られちゃったんだね勇者君…。そんなんじゃ娘はあげられないなぁ。」
勇者「ハハッ!バカか貴様、この俺を誰だと思っている?要らねぇよそんなもん。」
痛恨の失言だった。

 

4-488:驚愕〔14歳:LEVEL45〕
最大のピンチに駆けつけた妃后。
だが果たして、この窮地を脱することができるのだろうか。
大魔王「で、どうしようか?この人邪魔だし、とりあえず二人で倒しちゃう?」
勇者「フッ…ああ、そうするか。その方がお互いにとって有益だろう。」
大魔王「オッケー!じゃあいこっか!」
ズッガァーーーーン!!
なんと!二人は玉砕された。
盗子「えぇえええええっ!?」
勇者「ぐふっ! な、なんだと…!?」
大魔王「僕ら二人を…同時に…!?」
妃后「ふぅ〜…あ、驚いた?」
土男流「す、スゲーー!!このオバさんスゴすぎなんだー!超化け物だぜー!」
賢二「かつての英雄「四勇将」の一人とは聞いてたけど、これ程だなんて…!」
大魔王「ん〜、想定外だなぁ。まさかこんな相手がまだ残ってただなんてさ。」
妃后「残念だけど、私の命にかけて…この五人には、手を出させないよ。」
盗子「ねぇ誰か足んなくない!?」
盗子は察しつつ言った。

 

4-489:奥手〔14歳:LEVEL45〕
予想以上に強かった妃后は、その後も超強かった。
だが、そういう都合のいい展開は長続きしないのが世の常だ。
妃后「ハァ、ハァ、ちょっと、疲れたかな…。このままじゃ、マズいね…。」
賢二「だ、大丈夫ですか?僕らに何かできることはあります…?」
妃后「ん〜、やっぱ勇者君を「断末魔」から解放しなきゃなんだけど、そうなると…」
暗殺美「大魔王が邪魔、ってわけかさ。わかったさ、盗子がどうにかなるさ。」
盗子「なんでアタシ!?それに「どうにかする」じゃないのもなんで!?」
賢二「…僕が…じゃあ僕がいくよ!」
暗殺美「ちょっ、何言ってんのさ!?アンタもうボロボロじゃないかさ死ねや!!」
土男流「うぉー!死なせたくないのか死んでほしいのかよくわかんないぜー!」
姫「ねぇ盗子ちゃん大変…勇者君がお菓子くれない。」
盗子「そっち!?てゆーかアンタの中の勇者って未だにその立ち位置なの!?」
妃后「…姫ちゃん、行っといで。」
姫「ほぇ…?」
妃后は姫の頭に手をかざした。
パァアアアアアアア…!(光)
盗子「えっ!?な、何この光…!?」
姫「…行くよ盗子ちゃん。できたらサポートしてほしいよ。」
盗子「って姫!?なにアンタまた酔っ払っ…」
姫「お喋りしてる時間は無いの。シリアスモードは、5分が限界だよ。」
母は呪いに頼った。

 

4-490:痛恨〔14歳:LEVEL45〕
なにやら姫に、「呪術:生真面目」を仕込んでいたっぽい妃后。
だが「退魔導士」が「呪い」とか間違っちゃいまいか。
盗子「ちょ、どーゆー意味さ姫!?アンタ勇者親父のエキスでも飲み干したの!?」
姫「修行の時に試したけど、私には効きにくいみたいなの。だから急がないと…。」
盗子「へ?効きにくいって何が?」
姫「お母さんの呪い。」
盗子「大丈夫なのその教育方針!?」
妃后「頑張ってね姫ちゃん。その子にだけは負けちゃダメだよ?」
盗子「だからなんでアタシを目のカタキに!?敵を間違えてない!?」
大魔王「あらら、わざわざ「退魔壁」から出てくるとかなんで?死にたいわけ?」
姫「私は死なないよ。頑張ってアナタをコテンパンにするの。」
大魔王「へぇ、面白いねキミ…名を聞こうか。」

姫「私は姫…職業は、「賢者」だよ。」

賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
賢二に痛恨の一撃。

 

4-491:賢者〔14歳:LEVEL45〕
姫の口から飛び出した衝撃の真実…なのかどうかは不明なセリフ。
だがとりあえず賢二の動揺っぷりは尋常じゃなかった。
賢二「ひ、姫さんが…姫さ…あ、そうか…「姫ちゃん」の「ゃ」が…きっとそうだ…。」
土男流「落ち着くんだ賢二先輩!「ゃ」の存在は多分そこまで大きくないんだー!」
盗子「それに「ちゃん」は名前じゃないしね!?」
暗殺美「き、気にすんなさ!「賢者」の魔法連発できるアンタももうきっと「賢者」さ!」
賢二「そうかな…そうなら…いいな…。」
姫「じゃあ、いっくよー盗子ちゃん!二手に分かれて左右から回り込んで!」
盗子「了か…って一人で左右に!?」
大魔王「魔法戦か…それも面白いね。そんな得意じゃないけど僕もそうしよっと。」
姫「最初っから全力だよー! むー!〔集中砲火〕!!」
ズゴォオオオオオオオオン!!
盗子への配慮は無い。

 

4-492:時間〔14歳:LEVEL45〕
こうして大魔王vs姫とオマケの戦いが始まった。
不安要素てんこ盛りだが大丈夫か。
賢二「だ、大丈夫かなぁ姫さん…相手は「大魔王」だけど…。」
妃后「多分平気。戦うのを楽しもうっていうあのヌルさは、付け入る隙アリだよ。」
暗殺美「確かに、強さとは別のヤバさみたいなのはあんま感じない気もするさ。」
妃后「マズいのはね、「戦い」のその先…「死」を求める者…つまり、彼の方だよ。」
勇者「ほほぉ…この俺の方が上と見るとは、なかなかに良い目をしている。」
賢二「ど、どうするんですか?気絶させるとか、そんな手加減なんてしてる余裕は…」
暗殺美「もちろん殺す気でいくのさ。むしろこの期を待ってたと言ってもいいさ。」
土男流「それはイヤなんだー!師匠が死んだら私は生きていけないんだー!」
暗殺美「じゃあどっちにしろ生きてけないさ。素直に諦めて死んどけさ。」
妃后「まぁ殺さない方法も、あるにはあるけど…」
賢二「あ、わかってます!時間が…必要なんですよね?だったら僕が…!」
暗殺美「アンタは稼がなくていいのさこの甲斐性無しめ!わ、私に任せとけさ!」
土男流「うぉー!なんか「ヒモ」みたいだぜ賢二先輩ー!」
勇者「フン、甘いな!誰がそんな時間くれてや…」
妃后「え…要らないよ?」
賢二は赤っ恥をかいた。

 

4-493:奥義〔14歳:LEVEL45〕
特に準備もなく効果的な攻撃が可能っぽい妃后。
なんだか強すぎる気もするがまぁいいや頑張れ。
勇者「ほぉ、ノータイムで俺を討つ手があると?フン、ハッタリも大概にするがいい。」
暗殺美「私も少し引っ掛かるさ。それだけの力があるなら、なんで今まで助けに…」
妃后「あ〜…その発想は無かったよ。」
土男流「うぉー!さすがは姫ちゃん先輩の親だぜと言わざるをえないんだー!」
妃后「今から退魔術で「断末魔」を追い払うよ〜。さぁみんな、散って!」
賢二「え…儚く…?」
暗殺美「生きろさっ!!」
勇者「ハハハッ、この俺を追い払うだとぉ?バカも休み休み言えぶっ!!
鉄拳が顔面にメリ込んだ。
勇者「ぐっ、なぜ物理攻撃…しかもなぜそんなに強力なんだ…!」
妃后「さーて、久々に本気でいくよー! む〜!〔悪霊退散〕!!」
勇者ごと消えやしまいか。

 

4-494:刹那〔14歳:LEVEL45〕
とまぁそんな感じで期待の魔法は放たれた。
ここからは一瞬の出来事だがスーパースローでお送りします。
暗殺美「こ、これが…!なんて神々しい光かさ…!」
勇者「フン、遅すぎるわ!この程度じゃ避けるだけじゃ物足りんな、こうしてやる!」
土男流「うぉ!?うわぁー!何するんだ師匠ー!?」
勇者は土男流を突き飛ばした。
だが魔法は土男流をスリ抜けた。
土男流「…お?」
勇者「チッ、善人には効かんのか…!だが、まだ間に合う!」
暗殺美「ッ!!」
ミス!勇者は攻撃を避けた。
暗殺美も念のため避けた。
勇者「フッ…フハハ!残念だったなぁ!おっと、第二波は撃たせんぞババア?」
妃后「え?そんな必要…無いけど?」
勇者「なっ…!?」
なんと!背後からまたきた。
賢二「ハァ、ハァ、は、〔反射鏡〕…!」
勇者「き、貴様ァアアアアアアアアアアア…!!」

チュドォーーーーーーーン!!
たーまやー。

 

4-495:魔法〔14歳:LEVEL45〕
賢二の咄嗟の機転により、 妃后の魔法は勇者に直撃。
その少し前、姫達は…
大魔王「ふ〜ん…結構やるねぇ。アレ程の魔法はなかなか撃てないよ、うん。」
盗子「ば、化け物すぎるよ!アレを全部防ぐとかもうどーすればいいわけ!?」
姫「でも怖くはないから大丈夫だよ。なんとかなるよ。」
大魔王「…ヘェ、僕が怖くない?言うじゃんキミ。じゃあキミが怖いモノって…何さ?」
姫「おまんじゅう。」
盗子「何それどんな落語!?てゆーかシリアスモードでもそのノリ!?」
大魔王「ま、いいけどね…楽しませてくれるなら。」
姫「私が頑張ってアナタを倒すよ。私のお得意魔法で…あ、後ろ…」
大魔王「ハァ?やれやれ…意外とくだらない手を使うね…えぇっ!?」
勇者「ぐわぁあああああああ!!
大魔王「ちょ、わっ、わぁあああああああああ!!

チュドォーーーーーーーン!!
かーぎやー。

 

第三十三章