第十四章

 

4-211:最強〔14歳:LEVEL40〕
そして、最上階では…今まさに「最強対決」が始まろうとした。
〜帝城最上階:天帝の間〜
大魔王「…あらら、なんか…期待してたのと違うのが来ちゃったみたいだねぇ。」
父「おっと、言葉を選んでもらおうか。この私を誰だと思っている?」
大魔王「全然知らないから教えてほしいんだけど。」
父「私は、こう見えて意外と繊細な男…父さんだ!邪険に扱うと泣いちゃうぞ!」
大魔王「言葉を選べってそういう意味とは思わなかったよ…。フザけてるの?」
父「すまんが慣れてくれ。」
大魔王「なんかよくわかんないけど、アンタが相手なわけね。いいよ遊んであげる。」
父「手加減はせんぞ小僧よ。全力で貴様を、闇に葬ることにしよう。 見るがいい!」
父は〔一騎当千〕を唱えた。
父は光のオーラに包まれた。
大魔王「なっ…バカな、この僕が…冷や汗を…!?」
父「これでも「人類最強」と謳われた身…この私を越える人間は、存在せんぞ?」
大魔王「…フッ、面白いね。 じゃあ遊ぼうか…全力で!」
主人公そっちのけでいいのか。

 

4-212:対面〔14歳:LEVEL40〕
その頃、賢二のお株を奪う感じで空から降ってきた盗子は―――。
盗子「う゛ぅ〜痛いぃ〜!でも生きてて良かったよぉ〜!」
商南「ちょっ、なんでアンタが空から降ってくんねん!?正体は隕石やったん!?」
賢二「アタタタ…!アレ…?えっと、僕は一体…?」
商南「あっちゃー!タレ目も元に戻ってもうたやんか!最悪やー!」
暗殺美「ぐぉっ…し、死ぬぅ…。」
賢二「わー!あ、暗殺美さん!?その傷…ま、任せて!僕がなんとかするよ!」
暗殺美「キャッ!さ、触るなさ!乙女の胸を触ろうとか…このド変態めさ…!」
賢二「え!だ、大丈夫!よくわからなかったし!」
暗殺美「ぐわっ…!」
商南「お、鬼やなアンタ…。」
帝雅「…なにやら興がそがれてしまったな。とても好ましくない空気だ。」
盗子「うわっ、なにアイツ!?見るからに悪人じゃん!敵?ねぇやっぱ敵!?」
商南「アンタの親。」
盗子「え…?あ、な〜んだ親か〜。親ならまぁ…って、えぇっ!?親ぁ!?」
帝雅「なっ…!?」
盗子「ええぇっ!?」
とりあえず落ち着け。

 

4-213:認知〔14歳:LEVEL40〕
凄まじいドタバタの中、事実を知った盗子と帝雅。
「おぉ娘よ!」「お父さん!」のような素敵な展開にはならなかった。
盗子「ちょっ…え?親って…マジで?いや、でもアタシは…え?え?」
賢二「ほ、ホントなの…?盗子さんの父親ってことは、天帝の…?」
商南「そーらしいでぇ、敵さんいわくなぁ。」
帝雅「娘…ではこの娘が、我が子「塔子」…だと…?」
商南「フザけるな!こんなブサイクが…!ってな流れやねコレ。」
賢二「そ、そうだよねいつもなら…」
帝雅「あ…会いたかったぞ、娘よ!!」
帝雅は盗子を抱きしめた。
盗子は驚いた。
賢二も驚いた。
商南はガッカリした。
盗子「ま、待ってよ順応早すぎじゃない!?そんなの急に認められるわけ…!」
帝雅「認めるもなにもない。母親に…皇子によく似ている。間違いないじゃないか。」
盗子「で、でもそんな…急に親とか…!しかも敵だなんて…。」
帝雅「敵?そんなことがあるわけないじゃないか。お前は私が幸せにする。」
盗子「いや、そのフレーズはちょっと…。」
蘇るトラウマが。

 

4-214:味方〔14歳:LEVEL40〕
意外にも好意的に受け入れられた盗子。
だがハッピーエンドになるとは到底思えなかった。
商南「ところでアンタ、何がどーなって今に至んねん?説明してほしいわ。」
盗子「あ、うん。「天帝の試練」ってのを受けて、んで勢いでちょっと飛ばされて…。」
賢二「飛ばされるのを「ちょっと」って言えちゃうあたり、不幸に慣れすぎだよね…。」
帝雅「おぉ、その歳で試練を越えたのか素晴らしい!さすがは我が娘よ!」
盗子(言えない…三年も待てなくて途中で逃げてきただなんて言えない…。)
商南「ん〜でもまぁアレやな、コレが敵やなくなるんなら安心でき(ドスッ!)…へ?」
痛恨の一撃!
商南の腹にグサリと一撃。
商南「な…なんやねんコレ…?どないや…ねん…ぐふっ!
盗子「あ、商南ぁ!? どーゆーこと!?味方になってくれるんじゃなかったの!?」
帝雅「勘違いしてはいけない。私は塔子の味方…だが、他の者はみな敵だ。」
盗子より勇者の方が近い。

 

4-215:臓物〔14歳:LEVEL40〕
帝雅の一撃を食らい、致命傷を負った商南。
ただでさえ心もとない戦力がまた一つ減ろうとしていた。
商南「くふっ…ハァやれやれや、油断したわホンマ…情けな…。」
盗子「ちょっ、動いちゃダメだよ大怪我なんだから!死んじゃうってマジで!」
商南「あん?まぁ大丈夫やろちょっとくらい動い…あ、腸出てきた。」
盗子「えっ!?うっぎゃー!ホントに出てるぅーー!!」
商南(パクッ)
盗子「しかも食ったーー!!」
商南「アハハ、「ソーセージ」やがな。「商人」ナメるなや?ホンマ…アホやなぁ…。」
盗子「この状況でそのギャグはあんまりだよ!ビビるよそりゃ!」
商南「アホかボケ…。ウチごときで参ってたら…“アイツ”の相手は務まらんでぇ?」
盗子「へ?アイツ…?」
商南「せいぜい死ぬまで突っ込んだり。アイツには、アンタが必要や。アンタがな!」
商南は帝雅に向かって走り出した。
盗子「あ、商南!?アンタ何を…!?」
商南「上や盗子!行けば勇者がおる!あとタレ目、暗殺美は任したでぇ!?」
賢二「商南さん…!?」
商南「最期の商いや、ごっつ豪勢に…大盤振る舞いでいったるわぁ!!」
ド派手な閉店セールが始まる。

 

4-216:奮闘〔14歳:LEVEL40〕
命懸けで盗子達を先へ向かわせた商南。
荷が勝ちすぎる相手だが、とにかく頑張れ商南。
帝雅「やれやれ…憐れなものだ。貴様ごとき小娘が、私に歯向かおうとはなぁ。」
商南「最期が足止め係ってのはウチとしても不本意やがなぁ、まぁしゃーないわ。」
帝雅「足止め…できるとでも?」
商南「盗子にはなぁ、好きな奴がおんねん。」
帝雅「…き、聞こうか。」
商南「ハハッ、チョロすぎて笑けてくるわ!さぁ砕けていでよ、「幻獣玉×5」!!」
〔幻獣玉〕
「武具玉」と同系統の道具で、希少種の魔獣を封じ込めた宝玉。
あまりの高額ゆえ、ハズレを引いた時の絶望感はハンパ無い。
商南「高すぎて今まで使わんかってんけど…もう、要らんしなぁ!いったれぇ!!」
魔獣達「グルァアアアアアア!!」
帝雅「チッ、稀に見る高位の魔獣を五体も…なんたる強運だ…!」
魔獣達「グォオオオオオオオ!!」
商南「ふぅ…これでまぁ、足止めにはなるやろ…。後は、アンタがやれや…勇者…。」
帝雅「ナメるな畜生風情が!この「皇帝」に逆らうことは、神にとて許されぬ!」
商南「にしても…まったく、大損やで…。アイツには…貸しばっかりやったわ…。」
魔獣達「グルァアアアアアア!!」
商南「でも…ま…ええか…。それなりに…楽しい旅やったし…な……。」
想い出はプライスレスだった。

 

4-217:嫉妬〔14歳:LEVEL40〕
商南が静かにくたばった頃、盗子達は…。
〜帝城10階:舞踏の間〜
盗子「こ、ここは…。なんかデッカイ戦いが終わった後っぽいけど…。」
賢二「ちょ、ちょっと休もう盗子さん!そろそろ治療に戻らないと暗殺美さんが…!」
盗子「あっ、そ、そだね!でも…知らぬ間に回復魔法も使えんだね賢二ってば。」
賢二「あ、うん。二人のお師匠様に、色々と叩き込まれたからね。」
盗子「へ〜、そなんだ〜。で?どんなお師匠さん達だったの?」
賢二「えっと、「ショタコン」と…「ド変態」?」
盗子「…逃げた方がいいのかなアタシ?」
賢二「あ、そういえば盗子さんも試練とかスゴいよね!今はもう「天帝」なの?」
盗子「いや、実は試練の途中でその…。だからおあずけ…かなぁ?」
賢二「そうなんだ…。なんか安心した僕がいてごめんね。」
盗子「ううん。アタシもアンタがまっとうに成長したと思って焦ったし、おあいこだよ。」
賢二「アハハ、じゃあお互い様だね〜。」
盗子「そだね!アハハハ☆」
低レベルな争いだった。

 

4-218:余裕〔14歳:LEVEL40〕
そんなお気楽ムードに反して、最上階では…。
魔人A「ぐぉおおおおおおお!!
魔人B「うっぎゃあああああ!!
父「ハッハッハー!食らえ「父さんハリケーン」!「父さんトルネードタイフーン」!」
魔人C「く、区別がつかない゛っ!!
父「更には「父さんドメスティック・バイオレンス」!」
魔人D「いや、それは家でやれぶっ!!
大魔王「ま、参ったね…。結構強い奴らを見繕ったはずなんだけどなぁ。」
父「オイオイ、話が違うじゃないか大魔王。他人に頼る子は父さん嫌いだぞ?」
大魔王「いや〜、アンタ強くてさぁ。傷も開いちゃったしちょっと休ませてよ。」
父「フン、悪いが好機を見逃すほど私はお人よしではない!五分だけだぞ!?」
大魔王「…な〜んかムカつくねぇその余裕顔。もしかして僕、ナメられちゃってる?」
父「残念ながら、誰からも教わっていないのだよ。「常識」と…「敗北」はなぁ。」
前者は恥じろ。

 

4-219:説得〔14歳:LEVEL40〕
そしてまたまた場面は戻り、仕方なく盗子の状況をお知らせします。
〜帝城10階:舞踏の間〜
盗子「ねぇ賢二、どうなの暗殺美の容態は?なんとか…なりそう?」
賢二「あ、うん。治療に専念できればなんとかね。でも敵が来たら…アウトかな…。」
盗子「や、やめてよそういうフラグ立て…」
帝雅「おぉ、待っていたのか塔子。」
盗子「ハイやっぱりキターー! って、アンタがいるってことは…商南は…!?」
帝雅「フッ…まぁ敵ながら、アッパレな最期だったと言えるかな。」
盗子「ッ!! お、鬼!鬼ぃーー!!アンタなんか…絶対お父ちゃんじゃないよっ!」
賢二「と、盗子さん、僕…」
盗子「任せて賢二!こんな奴、アタシがブッ倒してやるんだから!」

賢二「すぐ逃げるね!」
盗子「信じてっ!!」
だが説得力が無かった。

 

4-220:本物〔14歳:LEVEL40〕
商南の最期を知り、ブチ切れた盗子。
生意気にも身の程もわきまえず宣戦布告したのだった。
盗子「アンタのことは、絶対許さないよ!アタシの…アタシの仲間を…!」
帝雅「やれやれ、何を悲しむ?私とお前以外、世界にとっては不要な存在だろう?」
盗子「うっさいよ異常者!アタシは親とか絶対認めないよウザッ!嫌い大っ嫌い!」
帝雅「…ぜだ…。」
盗子「ハァ?何言ってんの全然聞こえな」
帝雅「なぁああああああああああぜだぁあああああああああああああああ!!」
帝雅は突然叫んだ。
盗子は軽くチビッた。
帝雅「なぜだ…なぜ私を拒絶する!?なぜお前は…なぜお前達は…!!」
盗子「いや、ちょ、落ち着いて!しかもなぜ複数形!?」
帝雅「…殺す。」
盗子「えぇっ!?」
帝雅「手に入らぬのならば…殺すっ!!」
これこそ「父さんDV」だった。

 

4-221:回避〔14歳:LEVEL40〕
というわけで、これから盗子が死にます。バイバイ盗子。
ズッガァアアアアアアアン!!
盗子「うっぎゃー!怖いよ痛いよ頭ぶつけたよー!」
賢二「と、盗子さん!頭大丈夫!?」
盗子「誤解を生む言い方はヤメてっ!」
帝雅「予想以上に素早いじゃないか我が娘よ…。嬉しさのあまりお前を殺す!」
盗子「ぎゃ、虐待反対ー!おっかないの反対ー!」
帝雅「ならば私を父と呼ぶか!?父の愛に包まれつつ父を愛して生きるか!?」
盗子「それはノーサンキュー!」
帝雅「ならばやはり死ねぇえええええ!!受けるがいい、「帝王百虎撃」!!」
盗子「今のアタシは、これまでとは違うんだから!今日は、アタシが守るんだから!」
なんと!盗子は攻撃を避けた。
賢二「ぎゃーーー!!
盗子「わー!賢二ーー!!」
だが守れてはなかった。

 

4-222:危機〔14歳:LEVEL40〕
修行の成果は無いではないようで、一応動けるらしい盗子。
だが勝てるわけはないので、やっぱり盗子は死にます。バイバイ盗子。
ドッカーーン!!
盗子「うっひゃーー!!」
ガッゴーーン!!
盗子「うっひょーー!!」
ズッガーーーン!!
盗子「ひょえぇーーー!!」」
なぜか楽しそうに見えた。

 

4-223:調子〔14歳:LEVEL40〕
予想外の動きで、機敏に逃げ回る盗子。
だが防戦一方、息も絶え絶えなのできっと盗子は死にます。バイバイ盗子。
帝雅「やれやれ、逃げ足はなかなかだが…それだけか。お前に勝てる力は無い。」
盗子「とか思ったら大間違いだよっ!食らえっ、「暴走演舞:斬り斬り舞」!」
チュインチュイィン!(受)
帝雅「チッ、「舞士」の技か…器用なマネを…!」
盗子「跳んだね!?空中じゃ避けられないよっ、いっちゃえ〔炎殺〕!」
帝雅「なっ、魔法までだと…!?お前、職業は何だ!?」
盗子「フンッ、「ヒロイン」だよっ!!」
盗子は調子に乗った。
バシィイイイイ!
盗子「イッターーイ!はたかれたー!お父ちゃんにもぶたれたことないのにー!」
帝雅「私が父だぁあああああああ!!」
盗子「くぅ…!やっぱし…中途半端な技じゃ、全然意味ないみたいだね…。」
帝雅「やっと気づいたか。ならばどうする?もう一度だけチャンスをやろう。」

盗子「…とっておきの技で、アンタを倒す!!」
盗子は一瞬考えてから吠えた。

 

4-224:希望〔14歳:LEVEL40〕
帝雅の最後の譲歩も無視し、改めて宣戦布告した盗子。
これはもうどう考えても手遅れなので盗子は死にます。バイバイ盗子。
帝雅「どうやら、説得は無意味なようだな…。だが、私を討てる技など存在しない。」
盗子「フッ、あるよアタシは知ってるよ。なんでも斬れる…必殺の技をねっ!」
賢二「えっ、そんな技があってなんで今まで…あ、高確率で失敗するとか?」
盗子「ううん…これまでは失敗したことないよ…前の、「二回」は。」
賢二「じゃ、じゃあ…!」
盗子「でも!「三回」使ったら死んじゃうんだよっ!アタシ…アタシまだ、死にたくな」
盗子は鮮やかに宙を舞った。
盗子「ぐっはぁ…!!
帝雅「覚悟無き者には闘う資格すらない。全てを諦め、そして眠るがいい。」
盗子「ぐふっ…や、ヤだよ…。アタシには、まだ生きてやりたいことが…山ほど…!」
帝雅「諦めなさい。願って叶う願いなど、一握りだけだ。全ては無駄なのだよ。」
賢二「そ、そんなことないですよ!願えばきっと何だって…!」
盗子「勇者の恋人に…!」
賢二「いや、それは無理かと。」
賢二は冷静に斬った。

 

4-225:覚悟〔14歳:LEVEL40〕
その後、非情な帝雅によりボッコボコにされた盗子。
賢二も防御魔法で援護したが、全てを防ぎきれるものではなかった…。
というわけで、結局盗子は死にます。
賢二「ご、ゴメン盗子さん!治療しながらじゃ、今くらいのが限界で…!」
盗子「ぐふっ…ねぇアンタ、アタシらをやっつけて…その後アンタ、どうすんの?」
帝雅「む?私の目的は、お前だけだった。他は用も無い…全てを滅ぼすだろう。」
盗子「す、全てを…ってことは、みんな…死んじゃうんだね…。」
帝雅「そう、敵も味方も老若男女もない!全てだっ!フハハハハハハハハッ!!」
賢二「く、狂ってる…!」
帝雅「わかったら逃げるのをヤメなさい。死して我が内で、永遠に生きるがいい!」
賢二「あ、危ない盗子さん…!」
盗子「…あのさ賢二、勇者に会ったら言っといて。」
賢二「え…?」

盗子「大好きだった…ってさ☆」
盗子は走り出した。
賢二「ちょっ、盗…」
帝雅「さらば娘よ!これが父としてできる、最初で最後の教育だぁあああああ!!」
盗子「いっくよぉ〜〜〜!!」



「「カル死ウム不足」!!」

バイバイ盗子。

 

第十五章