第十章

 

4-151:暗黒〔14歳:LEVEL40〕
意味がわからない。まったくもって意味が、わからない。これは一体…何事なんだ?
盗子らしき物体からは、何か妙な液体が噴き出している。新種の噴水だろうか。
なんだか色が…色がわからん。何もかもが暗い…。全てが、暗黒で満ちていく…。
土男流「う、うわああああっ!とっ、ととととっ、とっ…!!」
葉沙香「おっと、悪ぃなぁいきなりで。ま、仲間割れしてたみてぇだし問題無いだろ。」
勇者「…テメェ、何をして…くれやがった…?」
葉沙香「オイオイちょっと待ってよ、お前も殺したがってたろ?結果は同じじゃんか。」
勇者「コイツは…コイツはぁーーー!!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ…!!(揺)
勇者からドス黒い波動がほとばしった。
〜その頃〜
勇者「ぐぁああああああっ!ぐふっ!げはぁ!ぬぉおおおおおおおっ…!!」
妃后「え…ど、どうしたんだろ急に?と…とりあえず鈍器でゴンッと…」
勇者「ゼェ、ゼェ、さて…行くとするか。凄まじい憎悪が、この俺を呼んでいる。」
妃后「えっ!?か、体が透けて…まさか…!!」
勇者「サラバだ女。この俺を呼び起こしたこと、世界の破滅と共に後悔するガフッ!
妃后は鈍器でいった。

 

4-152:激怒〔14歳:LEVEL40〕
変わり果てた盗子を見て、怒り狂った勇者。
その怒りが闇を呼び、そして…。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…(揺)
勇者「…ふぅ、少々予定より早いが…ま、さすがは俺といったところか。イカすぜ。」
葉沙香「て、テメェ…何しやがった?急に変わりやがって…!」
土男流「うぉー!気づけば師匠が透けてないんだー!手品か!?手品なのか!?」
勇者「貴様は絶対許さねぇ…メッタ刺しだ。」
土男流「更に串刺し系手品まで!?さっすが師匠は芸達者なんだー!」
葉沙香「ったく、キレやがって…。んだよ惚れた女の一人や二人…」
勇者「だぁああああれが惚れてるかぁああああああ!!」
葉&土「Σ( ̄□ ̄;)!?」
勇者「俺は…俺はずっと考えていたんだ。俺は、アイツが…」
土男流「やっぱり好きだったのかー!?とってもショックなんだー!」
勇者「最も恐怖し!もがき!苦しみ!地獄に堕ちる方法を…考えていたのにっ!」
葉&土「Σ( ̄□ ̄;)!?」
勇者「貴様は俺を怒らせた。俺はショートケーキの苺は…最後に食うタイプなんだ。」
怒りのベクトルが違った。

 

4-153:変化〔14歳:LEVEL40〕
長年の努力を無にされた怒りに導かれ、本体の方がこっちにやって来た。さすが俺。
呪いの方は…ふむ、よくわからん。体の変化も心の変化も特に無い気がする。
もしかして失敗したのか?予想の半分しか経ってないし、その可能性もありそうだ。
そうだとするとかなりマズい。この状況で力が無いとか、もはや死の宣告と言える。
チクショウ、なんてことだ…!悪魔に魂を売るつもりで、力を望んだというのに…!
ズゴゴゴゴゴゴ…!(震)
葉沙香「な、なんて強大で…ドス黒いオーラだ…!!」
自覚が無いだけだった。

 

4-154:散々〔14歳:LEVEL40〕
復活に失敗したと思われた俺だったが、なにやらオトコ女はビビッている模様。
もしや俺にわからんだけで、凄まじいパワーが…?まぁいい、考えるだけ無駄だ。
勇者「ふむ、どうやらそれなりに力は戻っていそうだ。腕試しといこうじゃないか。」
葉沙香「ケッ!ケッ!ちっとぐれぇ強ぇからって調子ん乗りやがって…!」
勇者「フン、憐れだなぁオトコ女よ。見たとこ手負い…そんな体では話にもならん。」
葉沙香「は、話になんねぇだとぉ!?ナメてんじゃねーぞゴルァ!!」
勇者「△☆□☆○○!!」
土男流「うぉー!ホントに話になってないんだー!」
勇者「さぁ名乗るがいいオとこ女よ。その名、貴様の墓石に刻んでくれよう。」
葉沙香「チッ…!俺の名は」
勇者「死ねぇええええええ!!」
ズバシュ!ドシュッ!ズババババシュッ!!(斬)
葉沙香「ぎゃああああああああああああああ!!
勇者は言わせといて聞かない。

 

4-155:身代〔14歳:LEVEL40〕
腕試しの結果、どうやら力は戻ってるっぽい。まだ若干慣れんが悪くはない感じだ。
勇者「コイツは確か絞死の城で…ってことは「十字架」か。また一人減ったわけだ。」
土男流「うぉー!スゴいんだ師匠ー!怒り狂った時はビビッたけど…大丈夫か?」
勇者「フン、済んだことをアレコレ悔やんでも仕方ない。別の方法を考えるまでだ。」
土男流「べ、別の方法…?」
勇者「いつの日か、どんな手を使ってでも必ず奴を蘇らせ…そして、殺す!!」
土男流「そ、そんな究極のイジメは初めて聞いたんだー!地獄の鬼もビビるぜー!」
勇者「まぁ俺には基本的に不可能など無い。きっと俺なら…って、マズいっ…!!」
葉沙香「お…遅ぇよ…!死ねやぁあああああ!!」
葉沙香の不意打ち攻撃!

なんと!首無し盗子が身代わりになった。
勇者「え゛ぇえええええええええっ!?」
葉沙香「なっ…なんで…こうなん…だ…よ……ぐふぅ!(ガクッ)」
盗子「・・・・・・・・。」
勇者「と、盗子…ハッ! その体…お前は、まさか…!」

勇者「ロボ盗子!!」
盗子「ロボ…チガ……。」
最期まで認めなかった。

 

4-156:活気〔14歳:LEVEL40〕
盗子だと思われていたモノは、なんとロボ盗子だった。まさかこの俺を騙すとは…。
勇者「チッ、人工知能をアップグレードしたとは聞いていたが、まさかあれほどに…。」
土男流「うわーんゴメンなんだトーコちゃーん!私が呼んだばっかりにー!」
勇者「そうか、お前の「奥の手」ってのはコレのことだったのか。悪趣味な奴め。」
土男流「グスン。もしまともに…新兵器「15連オッパイミサイル」を出せてたら…!」
勇者「そ、そんな怖ろしい精神攻撃が…!?つーかなぜ奇数だ!」
土男流「でも…きっとトーコちゃんも本望だったんだ。だって…」
勇者「俺を助けて死ねたから…ってか?フン、くだらんな。」
土男流「だってこれで、お兄ちゃんの所に…。」
勇者「そ、そういやそういう設計だったな。いや、ロボには行けんと思うが。」
土男流「で、これからどうするんだ師匠?ちょっと待ったりするのかー?」
勇者「フッ、待つわけないだろう?力が戻ったんだ、ここからは俺の…独壇場だ!」
勇者は活き活きしている。

 

4-157:雪辱〔14歳:LEVEL40〕
そして、駆け上がること数階…。そこには、なにやら無駄に広い空間があった。
〜帝城10階:舞踏の間〜
土男流「ゼェ、ゼェ、な、なんなんだここは?なんか広くて、落ち着かないぜ師匠。」
勇者「フン、息を切らしてる場合じゃないぞ土男流。敵さんがお待ちかねのようだ。」
コツッ、コツッ(足音)
苦怨「フフッ…やはり来ましたか。待っていましたよ勇者君、雪辱戦といきましょう。」
忍美「し、しのみんも!しのみんも来るってわかっ」
苦怨が現れた。
忍美が現れた。
忍美「うわーん!なんか知んないけどみんながしのみんを無視するのだー!」
土男流「じゃあ私が相手をするぜー!師匠ー、こっちのチビッ子は任せるんだー!」
勇者「…え、誰を?」
忍美「びえーん!」
苦怨は頭が痛い。

 

4-158:再戦〔14歳:LEVEL40〕
10階の広間で俺を待っていたのは、霊媒師の苦怨だった。コイツは意外と厄介だ。
恐らく奴の切り札は「破壊神」…。ならばそれを出す前に仕留めるのが得策だろう。
勇者「さて…久々だなぁ苦怨。帝都の武術会で無様に逃げて以来か。」
苦怨「くっ…フッ、まぁいいでしょう。そんな口をきけるのも、今のうちですしねぇ。」
勇者「さぁ早く出せよ破壊神を。どうせそれしか手はあるまい?雑魚だしなぁ貴様!」
苦怨「ぬぐぅ…!どうやらキミは、僕を勘違いしているようだね。僕の…力量を!」
苦怨から怪しい光がほとばしった。
なんと!「剣聖:那金」が現れた。
勇者「なっ…!?バカなっ、そのジジイの「偽魂」は前に俺が砕いたはず…!」
苦怨「彼の偽魂は2つあってねぇ。前にキミ、かなり苦戦してたよねぇ?フフフッ。」
那金「ふぅ、やれやれ…また呼ぶかい人使いの荒い小僧…あ、ミカンめが。」
勇者「慣れてねーなら無理して言うなよ!」
那金「おやおや、またお前さんかい…。前に修行つけてやって以来か。」
勇者「フッ…まぁいい、ちょうど俺も貴様には…聞きたいことがあったんだ。」
勇者は悪い笑みを浮かべた。

 

4-159:進化〔14歳:LEVEL40〕
その頃、1階に残された宿敵は―――
宿敵「ハァ、ハァ、やっぱりこうなるか…。わかっちゃいたけど、なんかヘコむね…。」
太陽神「フゥ〜まったく、困った小僧だわな。これでも我輩、神と呼ばれた者ぞ?」
宿敵「フン、神だって?大魔王の軍門に下った段階で、ただの「手下」に格下げさ。」
太陽神「ほぉ言ってくれる…。だがどうするね、このまま続ければ城が溶けるぞい?」
宿敵「…だね。いくら耐火石で造られてるとはいえ、キミの火力は度を越えている。」
太陽神「だがお前さんじゃ決着はつけられん。さっさと代わりを連れて来るわな。」
宿敵「いいや、そうはいかない。友に任されたこの場…退けるわけがないだろう?」
太陽神「任された?」
宿敵「そ、そこは突っ込んじゃいけない。」
太陽神「ならばどうするね?急に進化できるとでも言うのかい拮抗の者よ?」
宿敵「フッ…ああ、その通りさ。」
太陽神「な、なにぃ…?」
宿敵「勝てない勝負に意味は無い。僕は…僕は「好敵手」の職を、捨てる!」
どう考えても「退化」だが。

 

4-160:退化〔14歳:LEVEL40〕
なんと、「好敵手」の職を捨てるとかほざいた宿敵。
無敵の力を捨てて神に挑むとか、身の程知らずにも程があった。
太陽神「職を…捨てるとね?それが死を意味する愚行とわかっての行為かね?」
宿敵「僕は逃げていた。勝ちを求めるより、負けから逃げていた。それが僕の弱さ。」
太陽神「むぅ?なんだわな?」
宿敵「だが、そんな弱い僕は…もう捨てた!「好敵手」奥義…「グレード・ダウン」!」
〔グレード・ダウン〕
「好敵手」の職を捨て、勝てない呪いから抜け出す最終奥義。
それは物語序盤のライバル達が、次第に落ちぶれていくが如く…。
うん、やっぱり「進化」じゃない。
太陽神「ほほぉ、見上げたもんだわな。戦力を落としてまで勝ちにこだわるとは…。」
宿敵「命を懸けてでも、報いたいのさ。僕を信じてくれた…友への信頼にっ!!」

太陽神「信じた?」
宿敵「それは言っちゃダメ。」
宿敵の無謀な賭けが始まる。

 

4-161:復帰〔14歳:LEVEL40〕
どう考えてもダメな方向に向かおうとしている宿敵。
もうこうなったら、派手に散って笑いを取ってナンボだ。
宿敵「ふぅ…奥義の発動は終わった。これでもう後には退けない。 さぁ!見るがい」
太陽神「もういいわな。燃え尽きるがいい、かつて強かった者よ!!」
宿敵「いや、ちょっ…!見限るの早くない!?絶望するのは見てからでも…」
太陽神「燃ぉえて無くなれぇええええええええええ!!」
ブフォォオオオオオオオ!!(燃)
太陽神の攻撃。

ミス!巨大な魔獣が宿敵を守った。
魔獣A「プシャアアアアアアアアア!!」
太陽神「なっ…こ、こやつは水の魔獣「水曜獣」!?まさか貴様は…!」
宿敵「そう、これでも元は「魔物使い」でね。この子は…兄から受け継いだ魔獣!」
太陽神「ほほぉ、やりおるわな。だが力があったのならば、なぜそれを捨てたね?」
宿敵「いや、挫折して…。」
太陽神「ま、負ける気がせんわな…。」
宿敵「大丈夫、退屈はさせないさ。なぜなら僕はキミの…ライバルなのだから!」
太陽神は迷惑そうだ。

 

4-162:誤解〔14歳:LEVEL40〕
苦怨が呼び出したのは、我が「刀神流操剣術」の開祖である那金だった。
ちょうどいい機会だし、ここでまた新しい技を一つ二つ覚えてやろうと思う。
勇者「というわけで、苦怨にバレないようにコッソリ技を伝授するがいい!」
苦怨「いや、モロ聞こえなんですけどね…。」
那金「フッ…いいだろう!ならば教えてくれよう、我が流派の最終奥義…!」
勇者「あ、「一撃必殺剣」は却下で。」
那金「なんですって!?」
勇者「そりゃそうだろ。使ったら確実に死ぬだぁ?死んだら負けだ、俺には向かん。」
那金「やれやれ、そう伝わっておったか…。確かにそれがほとんどだろうがねぇ。」
勇者「む?なんだよ違うとでもいうのか?」
那金「死ぬのは自分か相手の「どちらか」じゃ。ま、死亡率は強さに反比例するが。」
勇者「なにっ!?じゃあ可能性としては、強者を殺せる技だってのか!?」
那金「まぁしかし、それまでの修行を全て否定するようなもの…興ざめだろう?。」
勇者「俺は気にしない。」
那金「いや、気にしとくれよ。マグレで勝ったのでは、剣士の誇りは保てまい。」
勇者「フン、俺は「勇者」だ。最後に立っていられれば…それでいい!」
たとえ世界が滅んでも。

 

4-163:立場〔14歳:LEVEL40〕
二度目の対戦となった那金だが、実に厄介な敵だった。同じ流派だけにやりづらい。
いや、もしかしたら、やはり俺は強くなっていないのかもしれない。なにげに不安だ。
那金「ふぃ〜やれやれ、まったく…チョイと見ぬまに強くなりおって。くたびれるわ。」
勇者「フッ、知ってる。」
那金「だがまだまだ、力の使い方が甘い。そう、例えるなら未成熟なイチ…ミカン!」
勇者「イチゴでいいよもう!なんなんだその思い出した時だけ出てくる設定は!」
那金「まぁ安心せい。遠き師である拙者が、責任持って教えてくれようぞ。」
苦怨「いや、ちょ…自分の立場をもう少し考えてもらえません?キミの主は僕で…」
那金「ナメるな小童!死してもこの那金、悪に心を売る気わぁぁぁぁぁ…」
苦怨は術を解いた。

 

4-164:今度〔14歳:LEVEL40〕
力の使い方とやらを聞く前に、那金は偽魂に戻されてしまった。まぁそりゃそうか。
少々残念だが、仕方ない。自分の力で無理矢理なんとかするしかないだろう。
勇者「まったく、折角いいところだったのに…余計なマネをしてくれる。」
苦怨「いや、余計なマネしようとしたのは彼なんですがね…。」
勇者「まぁいい、貴重な情報は聞けたしな。後は貴様を軽く料理するとしよう。」
苦怨「…言いますねぇ、相変わらず気に食わない人だ。 いいでしょう、今度こそ…」
戦仕「おっと待てよ!そいつを倒すのは、オイラに任せてもらうぜよ!」
置いてきたはずの戦仕が現れた。
勇者「む?オイオイ戦仕、城門はどうした?雑魚が上って来ちまうだろうが。」
戦仕「んあ?あ〜大丈夫だ、あっちはあっちでなんとかなるぜよ。」

〜その頃、城門では…〜
無職「さぁやるですよ!今度こそ…今度こそ役に立って、就職への足がかりに…!」
下端「うぉー!自分も燃えてきたッス!燃える展開ッスー!」
太郎「うん、じゃあ僕も明日から頑張る。」
召々「あっ、それって「絶対頑張らないフラグ」だよね☆」
ライ「頑張るニャみんニャ!頑張れば明日にはアタチらが、英雄ニャのニャ〜!」
下手すると明日は来ないが。

 

4-165:最強〔14歳:LEVEL40〕
さぁこれからって時に戦仕が現れたので、苦怨は任せて先を急ぐことにした。
一度倒した雑魚に、無駄な時間を割いている暇は無い。もっと強者と闘いたい。
誰もがビビる強き者…そんなのをバッタバッタと倒してこそ、俺の功績は輝くんだ。
ゆくゆくはその活躍が映画化されるだろう俺だ、名場面のネタは多いほどいい。
だがまぁ…実際この俺と対等に闘えそうなのは、どうせ大魔王くらいなものだろう。
最強の敵は最後のお楽しみだ。それまではせいぜい、のんびりさせてもらおうか。
〜帝城15階:閑散の間〜
勇者「…と、思っていたんだが…なぁ。」

父「来たか勇者、この父に…殺されるために。」
最強の敵が現れた。

 

第十一章