第三章

 

4-46:必殺〔14歳:LEVEL40〕
なにやら一人で残るとか言い出した麗華。だが賢二がそれを放っておかなかった。
賢二「だ、ダメだよ麗華さんが犠牲になるなんて!見殺しにするなんてそんな…!」
勇者(本当にいいのか?今を逃せば、もう時は無いかもしれんぞ?)
麗華(嘘もバレねば真実となる。この子には、さめない夢を見ていてほしいのだ。)
勇者「…そうか。ならばもう何も言うまい。」
ゴギャッ!
勇者は賢二に当身を食らわせた。

賢二「グヘェッ…!
盗子「え!何してんの勇者!?当て身じゃ済まない音がしたけど手加減は!?」
勇者「さて麗華よ、最期に何をやってくれるんだ?ただで死ぬ貴様じゃあるまい?」
麗華「うむ、置き土産代わりに見せてやろう。我らが流派の…「最終奥義」をな。」
勇者「おぉっ、まだあったのか!次は「万」か?それとも飛んで「億」の秘剣か!?」
麗華「いや…「一」だ。」
勇者「はぁ?違うだろ、一は「一刀両断剣」のはずじゃ…?」
麗華「よーく見ておけよ勇者。見せてやれるのは、これが最初で最後となろう。」
勇者「最終奥義…一体どんな技なんだ…?」
麗華「放てば確実に死をもたらす「呪剣」…終(つい)の秘剣、「一撃必殺剣」。」
勇者「なっ、確実に死ぬ…だと…!?」

麗華「ふむ、ワシが。」
勇者「お前が!?」

まさに一撃必殺剣。

 

4-47:悲劇〔14歳:LEVEL40〕

なんでも使うと死ぬ呪いの技があると言う麗華。そんなもん教わっても使えないが。
勇者「最終奥義か…。貴様が知ってるってことは、スイカも使ったってことだな?」
麗華「うむ。師匠は魔王にこの技を放ち、力及ばず割られた。陰から見ていたよ。」
勇者「奴ほどの男が魔王に勝てなかっただと…?その呪剣、ダメなんじゃないか?」
麗華「いや、威力は絶大だった。師匠の視界さえ広ければ、避けられることも…!」
勇者「なんなんだその凄まじい自業自得は。」
大魔王「ハァアアアアアアアッ…!」
盗子「わっ、なんか静かだと思ったら思っきし力溜めてたし!ヤバいよ急いで!」
竜神「おっと…甘いネ、逃がしはしないヨ。」
勇者「なっ…!?チッ、賢二め何してやがる…!?」
盗子「誰のせいかは冷静に考えなくてもわかるよね!?」
絞死「やれやれ…仕方ないですね、じゃあ彼は私が引き受けましょう。」
勇者「むっ?なんだ貴様、急に見えなくなったがどこ行ってたんだ?」
絞死「忘れ物を取りに…ね。でもいいんですよ、やはり逃げるのは性に合わふっ!
勇者「いいから貴様も寝てろ、恩を売ってやる。 オイ麗華、こっちはいいぞ!」
麗華「降りて来い美咲!皆を背に乗せ、全速力で飛び去るのだ!」
美咲「クエッ!!」
大魔王「…ふぅ、やっと暖まったよ。しばらく本気になってなかったからさぁ。」
麗華「勇者よ、よく目に焼き付けておけ!だができることなら使うな!これが…」
大魔王「ガッカリさせないでよね、おネェさん!? 死ねぇええええええ!!」
麗華「ワシが師として見せられる、最期の必さちゅ…ぬぉおおおおおおおおっ!!」

悲劇感が若干薄れた。

 

4-48:有終〔14歳:LEVEL40〕
飛び去る美咲の背から、俺は確かに見た。麗華の秘剣が奴に刻まれる瞬間を…。
勇者「アレが最終奥義か…確かに見届けたぜ麗華、後は安らかに眠れ。」
盗子「た、倒せたかなぁ大魔王?さっきのでもう終わりだったり…しないかなぁ?」
勇者「さあな。だがとりあえず、最悪の事態を想定して動くべきだろう。南だ美咲!」
美咲「クエッ!」

〜その頃〜
大魔王「げふっ!ぶっ…う゛ぅ…ハァ、イタタ…参ったよ、僕が押し負けるとはねぇ。」
麗華「…フッ、やれやれ。我が命を込めた一撃を…もってしても…ぐはぁ!(吐血)」
大魔王「いやぁ、おかげでしばらく動けないよ…。 改めて名前、聞いていいかな?」
麗華「ワシは麗…いや、「賢一」だ。魔道の家に生まれ、剣に生きた不器用な女さ。」
大魔王「誇り高き剣士、賢一か…オーケー覚えておくよ。」
麗華「いや、全力で忘れてくれ。だがしかし…笑わんのだな貴様は。少々意外だ。」
大魔王「ま、人のこと笑える名前でもないしねぇ僕も。」
麗華「フフフ…違いない。ぐふっ!ガハッ! ぐぅ…ゲホッゴホッ!ぶはぁっ!!
竜神「苦しそうだネ。殺してやろうカ?」
麗華「ハァ、ハァ…見ての通り終わった命だ、悪いが最期は好きにさせてもらう。」
大魔王「まぁ安心しなよ、すぐにみんなそっちに送ってあげるからさ。サクッとね。」
麗華「あの子らを甘く見るなよ?半年もあれば、貴様を討つ力を持つやもしれんぞ。」
大魔王「へぇ〜、面白い冗談だね。なにげに暇してたんだ、期待しちゃうよ僕?」
麗華「フッ…ワシにもイマイチよくわからんのだがな…アレの強さは。」
麗華は窓際に立った。
麗華「そういえば…もう何年前だろうか…。あの「占い師」の…不吉な予言…。」

これより数年の後、汝が実弟に、逃れ難き死の恐怖が降りかかるだろう。

救い手がいるとすれば、唯一人。その傍らに在るは剣、魔術にあらず。

信じるか否かは自由。だが「賢二」の命運は、少なからず汝が握っている。


麗華「できる限り砥いでやったんだ、賢二を頼むぞ“剣”…頼むぞ、勇者……。」


ドサッ(落)

新雪に真紅の華が咲いた。

 

4-49:暴露〔14歳:LEVEL40〕
行くあても無いので、仕方なく元貧乏神の家に引き返した俺達。またも凍えかけた。
麗華の安否はわからんが、美咲が主のもとへ戻ろうとしないところを見ると、もう…。
賢二「あ、勇者君…こんなとこにいたんだね。あのさ、その…ちょっと聞いていい?」
勇者「む?おぉ賢二、やっと起きたのかこの寝ぼすけめ。」
賢二「あ、あのね…なんとなく…なんとなくなんだけど、麗華さんってその…僕の…」
勇者「全く知らんな。…ま、奴が言わなかったことを俺が言うのは無粋ってもんだ。」
賢二「え、いや、それもう聞いたのと変わらないような…。」
勇者「俺が言えることはただ一つ。奴らに勝たなきゃ、全てが無駄だってことだよ。」
賢二「…うん、そうだね。ここまできたら、もう僕も逃げたいとか言わない…よ?」
勇者「最後が若干気になるが、まぁいいだろう。そう、もはや逃げ場は無いんだ。」
絞死「でもどうするんです?考え無しに乗り込んでも返り討ちに遭うだけでしょう。」
勇者「考え無し?フン、この俺をナメるなよ? なんとかなるさ。」
盗子「やっぱ考え無しなんじゃん!」
勇者「こういう時こそ周りがサポートするもんだろ?お前らこそ何か無いのかよ?」
絞死「…実はもう一つ、父から受け継いだものがあるんですが…使ってみます?」
全員首を横に振った。

 

4-50:修行〔14歳:LEVEL40〕
絞死いわく、なにやら先公の忘れ形見があるとか。とりあえず素敵な予感はしない。
勇者「フッ、やっぱ奴が日記だけとかねぇよなぁ。だがどうした、やけに協力的だな。」
絞死「ま、実家を奪われた恨みってやつですよ。アナタのことは大嫌いですけどね。」
賢二「こ、これって幻の魔法「武者修行」の魔導符…!凄いレア物だよコレ!?」
勇者「よし、高値で売ろう。」
盗子「え!なにそのまさかの選択肢!?」
勇者「修行か…確かに今の状況を考えると、それしか道は無さそうだなぁ。」
盗子「で、でも敵は強いのだけでも11人もいるんだよ!?それでも勝つ気!?」
勇者「俺一人で十分だよ。俺が実力を出しきれれば、盗子を含めて全員やれる。」
盗子「なんで含められちゃうのアタシ!?なんでいっつも勇者の反対側なの!?」
勇者「さぁ使えよ賢二。使わなきゃ使わないで呪いとかありそうだしな、奴のだし。」
賢二「あ、うん…わかったよ!む…〔武者修行〕!!」
賢二は呪文を唱えた。
4人は光の塊になり四方に散った。
〜ギマイ大陸〜
ひゅぅ〜〜…ドスンッ!(落)
勇者「ぐわっ! イッテテテ…!チッ、なんつー荒っぽい…むっ、親父…!?」
父「…来たか勇者よ。飛んで来るほどこの父に会いたかったか。父さん嬉しいっ!」
勇者「貴様かよ…だがまぁ肩書きだけなら申し分無いか。よし、俺に力を授けろ!」
父「フッ、悪いが…基本的にやる気は無い。」

〜タケブ大陸〜
相原「よく来たね少年。その顔…幼い頃の凶死君によく似ている。」
絞死「…失敬な人ですね。死んでもらっていいですか?」


〜エリン大陸〜
オッパイ仙人「む?」
賢二「え゛っ!?」

〜メジ大陸〜
ソボー「あ゛ぁ?」
盗子「ひょぇえええええええ!!」
若干一名死にそうだ。

 

4-51:自信〔14歳:LEVEL40〕
絞死の持ってた魔導符の力で、俺達はそれぞれ修行の地へとフッ飛ばされた。
俺の師はなんと親父…まぁ一応伝説の「勇者」なわけだが、やる気はゼロっぽい。
勇者「とはいえ、もはやワラにもすがる勢いで頼んでやる。俺を鍛えろやコラ。」
父「父さん、今さらながらもっと「お願い」の仕方とか教えれば良かったと若干後悔。」
勇者「俺は…悔しいが俺は、生まれて初めて自信を無くしかけている!この俺が!」
父「ゆ、勇者…?」
勇者「俺はもうダメなのか!?マオが抜けたら俺はもうスッカラカンかチクショウ!」
父「勇者…。」
勇者「いいや、そんなことは無い。俺はいずれは世界を制する器!支配者の器!」
父「勇者…?」
勇者「人々は俺の下にひれ伏し、俺のために身を粉にして働き、俺に納める!」
父「ゆ、勇者くん…?」
勇者「やがて世界は俺色に染まり、俺を称える歌で輝ける混沌のパラダイスが…」
父「・・・・・・・・。」
勇者は自信に満ちている。

 

4-52:問題〔14歳:LEVEL40〕
俺が気持ちよく自分に酔っていると、急に親父が真面目な顔で語り始めやがった。
父「なぁ勇者よ、風船に空気を入れ続けたら…どうなると思う?」
勇者「あん?何言ってるんだクソ親父?そんなの割れるに決まってるだろ。」
父「それと同じことだ。脆き器に、強大な力は宿ることはできん。」
勇者「ッ!!? つまりマオやら剣やら盾やら兜やら、それらを従えていた俺は…」
父「うむ。十分だと言えるだろうな。」
勇者「フッ、さすが俺だぜ…!って、それが今の俺に何の関係があるんだよ!?」
父「少し問いを変えようか。風呂に水を入れ続けたら溢れる…じゃあどうする?」
勇者「あん?そんなの水を止める…のは反則か。栓抜いて水減らすって感じか?」
父「出産の際…母さんよりマオの魔力が流れ込んだ。まだ幼きお前にな。」
勇者「おいコラ急に話を変えるなよ。風呂の話はどうなっ…」
父「焦るな勇者、後でちゃんと入ってやるから。」
勇者「いや、実際の風呂はどうでもいいよ!つーかそれむしろテメェの願望だろ!」
父「父さん、久々に親子水入らず…つまり水の無い風呂に親子でスッポリと。」
勇者「ただの変態親子じゃねーか!なんだもう限界なのか!?早くないかオイ!」
父「…マオを解き放つわけにはいかない。となると、残る手は一つしかなかった。」
勇者「なっ…ま、まさか俺の「持って生まれた力」を、どこかに逃がした…とでも…?」

父「ハイもう限界でぇーす♪いやっほーーぃ☆」
復活に3日かかった。

 

4-53:記憶〔14歳:LEVEL40〕
話の途中でブッ壊れた親父だが、なんとか3日で戻った。早速続きを聞き出そうか。
父「さて、前はどこまで話したか。父さんスパッと記憶がスパーキング。」
勇者「俺にはマオにトコロテン式に押し出された未知の力があったとか違うとか。」
父「あぁ、ふむ…そうなのだ。大変だったぞ“アレ”を封印するのは。大騒ぎだった。」
勇者「ちょっと待て、俺は産湯から覚えてるがそんな騒動があった記憶は無いぞ?」
父「冷静に考えろ、どこの世界にそんな早熟な赤ん坊がいるんだ。奇跡かお前。」
勇者「そんなはずは無い!確かにあったことだ!俺の記憶力をナメるなよ!?」
父「アレは芝居だ、お前にそう思わせるためのな。お前が生まれて3日後のことだ。」
勇者「大して違わねーじゃねぇか!3日でも奇跡だろ!つーかテメェ嘘ばっかり…」
父「それにお前にも、心当たりが無いわけじゃあるまい?」
勇者「あ゛ぁ?何言ってんだテメェ、心当たりなんてあるわけ…」
父「実母の記憶が、お前には無いはずだ。産湯から覚えてるはずなのに…な。」
勇者「ッ!!!」
父「できることなら、この話はしたくなかった。この日が来ないことを願っていたよ。」
勇者「どういう意味だ…?俺の潜在能力に何か問題でも?」
父「蘇らせるべきではないのだ。母さんを死に追いやった、あの「蒼い悪魔」はな。」
勇者は根っからの悪魔だった。

 

4-54:一族〔14歳:LEVEL40〕
俺の潜在能力は、悪魔的な何かだったらしい。認めたくない響きだが気にしない。
勇者「蒼い悪魔…か。前にパンシティでそう呼ばれたっけ。まぁ無関係だろうがな。」
父「パンシティ…いや、それは私を知る者だろうな。遠い昔に暴れた記憶がある。」
勇者「な、なに…!?親父は人畜無害なタイプだったんじゃないのか!?」
父「誰の心にも闇はあるものだ。普段は「守護神の兜」で封じていたんだがなぁ。」
勇者「むっ?神の力じゃなきゃ封じられぬ闇…それは性格の問題じゃないな?」
父「うむ。魔物どもが死に際に放った、恨みつらみの集合体…通称「断末魔」だ。」
勇者「だ、断末魔…!?親父テメェ、そんなに多くの恨みを買ったのか!?」
父「私だけじゃないさ。断末魔は我らが一族に、代々受け継がれたものだ。」
勇者「な、なんつー負の遺産だよ!んなもん勝手に人に継がせてんじゃねーよ!」
父「仕方なかろう、それが「勇者」の宿命なのだ。その呪いの数以上に人を救った。」
勇者「つーか「一族」って、ウチはそんなに代々「勇者」だったのか?初耳だぞ。」
父「驚くほどに誰もが皆、親が強制せずとも自発的に「勇者」。」
勇者「俺が言うのもなんだが自信家にも程があるなぁオイ。」
父「だがその中でもお前は異例だぞ?なんたって片親が「魔王」だ、ハッハッハ!」
勇者「それは貴様のせいだろうが!親は選べんが嫁は選べるんだぞ!?」
父「いい…嫁さんだったよ、母さんは…。できればもう少し、共に在りたかった…。」
勇者「…聞かせろよ親父。俺の母親は、蒼い悪魔…断末魔に、殺されたんだろう?」
父「ああ…。アレを封じた「魔封じの宝玉」につまずいて、階段から…!」
とんだ濡れ衣だった。

 

4-55:先手〔14歳:LEVEL40〕
母親の死因はともかく力の正体はとりあえずわかった。だがもう少し聞いてみるか。
勇者「ときに親父よ、封印ってのは誰がやったんだ?まさか貴様じゃあるまい?」
父「封じたのは妃后…姫の母だ。一部解読できた「天地封印術典」の秘術でな。」
勇者「お、お義母さんが…!?」
父「実の母にも育ての母にも言わなかったであろうセリフをなぜ赤の他人に…。」
勇者「で、その宝玉ってのは今どこにある?もはやそれに頼るしかないんだよ。」
父「確かに力にはなるかもしれん。だが制しきれねば、逆に悪に飲まれることに…」
勇者「フッ、なんだ?悪に染まり、変わり果てちまった息子を見るのが怖いか?」
父「いや、むしろ「変わり果てないこと」が。」
勇者「まぁ安心しろよ、こんなピンチはもう慣れっこだ。俺ならきっとうまくやるさ。」
父「…このケンド村の東にあるほこらだ。かつてマオを封じていた石碑を拝借した。」
勇者「オーケー了承した。 あぁ、あともう一つ…誰か強い奴に心当たりは無いか?」
父「安心しろ、そうくるだろうと手は打っておいた。きっと力になってくれ…来たか。」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
勇者「むっ、なんだこの音は!?上か…!?」
なんと!謎の宇宙船が現れた。
勇者「う、宇宙船…!?親父、貴様そんな凄いコネがあったのか顔に似合わず!」
父「ふっふっふ、どうだ驚いたか勇者?父さん顔の広さは宇宙レベルだぞ。」
男A「フゥ〜、やっと着いたか〜。ここが地球かよ、まぁ確かに綺麗な星だわなぁ。」
男B「ああ、滅ぼし甲斐があるぜぃ。」

父「…あれ??」
話が違った。

 

4-56:同類〔14歳:LEVEL40〕
突如現れた謎の宇宙船。中から親父の仲間が…って流れのはずが、なんか妙だ。
男A「オ〜イどうするよ野郎ども?まずは焼き討ちでもして回るか〜?ギャハハ!」
勇者「ふむ、どうやら味方じゃないようだ。貴様に期待した俺がアホだったぜ。」
父「ちょっ…これは何かの手違いだ!が、仕方ない、ここは親子仲良く…うぐぅ!?」
勇者「むっ、オイどうした親父!?」
父「す、すまん勇者…これ以上真面目にやると、父さん…!」
勇者「またかよめんどくせぇなぁ!もういいからその辺で虫でも食ってろ!」
父「フッ、父さん詳しいぞ?」
勇者「ホントに食うな!つーか経験者かよ!その血肉を継いだ俺の身にもなれ!」
男B「あ゛ぁ?なんだよコイツら地球人かぁ?暇潰しにブッ殺しちゃおっかなぁ〜。」
勇者「んだようっせーな三下が。お前も親父と虫でも食っ…むっ、他にも…!?」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ…!
なんと!新たな宇宙船が現れた。
男B「チッ、やっぱし追ってきやがったかぁ!しつこい奴らめぇ…!」
少女「フゥ〜、なんとか追いつけたですよ。手遅れにならなくて良かったです。」
勇者「オイ誰だ貴様?コイツらの反応を見るにコチラ側のようだが…?」
少女「あ、ワチです?えとですね、所属は「義勇軍」、名前も職も…その…「無職」。」
働け。

 

4-57:無職〔14歳:LEVEL40〕
またやってきた新たな宇宙船。そこから出てきたのは見た感じ大人しそうな少女。
なんでも「無職」とかいう、かわいそうな名前の奴だ。上…下には下がいるもんだ。
にしても、「義勇軍」か…賢二に聞いたことがある。これが親父のツテに違いない。
無職「あ、もしかしてアナタが凱空さんって方ですか?ワチらは仲間の人ですよ。」
勇者「やはりな。凱空は俺の父にして趣味は昆虫採集、俺は名も職も「勇者」だ。」
無職「え゛…な、なんか負けた気分でイッパイですがヨロシクです…。」
勇者「だが貴様、呼ばれたから来たってんじゃないな?奴らの反応見りゃわかる。」
無職「ワチらは彼らを追ってきたのですよ。地球征服をもくろむ、悪者さん達を。」
勇者「チッ、同業者か…。」
無職「地球と宇宙は「勇者」の定義が違うと見たです。」
男A「オラァ〜、いい加減出て来いや〜。敵さんがお待ちかねだ、暴れっぞ〜。」
宇宙船Aからワラワラと人が降りてきた。
勇者「おっと待てよ雑魚ども、ここから先は通行料を取るぞ。その安い命で支払え。」
男B「んだとテメェ!?さっきから生意気言いやがって小僧がよぉ!」
無職「ワチとしても見逃せないのです。お仲間さんのカタキ…討たせてもらうです!」
勇者「お?なんだ、職無しの分際でヤル気はアリと見える。意外じゃないか。」
無職「む、「無職」は「ニート」と違うです!働く気が無いとか考え甘いのですよ!」
勇者「なるほど、「悪事」でもいいからとりあえず働けと。」
無職「そんな物騒なことはこれっぽっちも…!」
勇者「まぁいい、とりあえずさっさとコイツら片付けるぞ。詳しい話はその後だ。」
無職「オケです!やりましょう!」
無職の実力やいかに。

 

4-58:強者〔14歳:LEVEL40〕
雑魚どもと戦い始めて数分。無職は意外とヤルようだが、俺は結構ヤル気が無い。
男C「ぬぐっ、な、なんだ!?か、体が思うように動かん…!」
無職「ワチの職は「無職」。いろんな何かが働かなくなる…困った力なのです…。」
男D「な、なんて夢も希望もない能力…!」
勇者「じゃあ俺も働かない。」
無職「なぜにです!?自分から戦おうと振ってきたアナタは今どこへ!?」
勇者「悪いが俺はこの後に試練が控えている。無駄な力は使いたくないんだ。」
無職「だったら最初から頑張る素振りとか見せないでほしかったです!」
勇者「ところで無職よ、俺の親父は何してるかそっからなら見えるか?」
無職「なんか土掘ってるですがなんですかアレ!?親子してヤル気ゼロです!?」
勇者「フン、そりゃアイコだろ。貴様の仲間も誰一人として降りてこないじゃないか。」
無職「ッ!! 実はもう、ほとんど残っては…。中将、少将、強い人からみんな…。」
勇者「な、なんだとぉ…!?」
男A「ギャハハハ!テメェらが悪ぃんだぜぇ?この俺達に逆らうからぁああああ!!
いきなり何人か激しく吹き飛んだ。
男達「ぐわぁああああああああ!!
総大将「オイオイ無職、まるで雑魚しかいねぇみたく聞こえるじゃねぇかよ感じ悪ぃ。」
無職「た、大将さん!?ダメです動いたらまた傷が…!」
総大将「バッカ言うなよ小娘が。こんなガキども手負いでも余裕だろぉ、なぁ凱空?」

父「ああ、久しいな…「拳造」。」
今度の偉人はまともか否か。

 

4-59:再会〔14歳:LEVEL40〕
遅れて出てきた大将とやらは、なんとあの「四勇将」の「拳造」だとか。
そしてその実力は凄まじく、雑魚ども全員を鼻ほじりながら軽く蹴散らしてしまった。
勇者「フン、さすがにやるじゃないか古き英雄よ。だがほじった鼻クソは食うな。」
総大将「ん〜?あぁ、オメェが凱空の子か。はじめましてだな、ヨロシク頼むぜ。」
勇者「いや、握手の前にまず手を拭け。」
無職「まったくもぉ〜、無茶しちゃダメです大将さん。結構な重傷なんですよ?」
総大将「ったくウルセェ小娘だなぁ、なんだオメェは俺の母親か?ママって呼ぶぞ。」
無職「全力でお断りですっ!」
父「だがどうした拳造よ?貴様ほどの男が手傷を負うとは、相手は一体…?」
総大将「あ〜〜…それなんだがなぁ凱空、実は…」
声「いやいや、そこから先は自分で話すよ。キミは下がっていてくれたまえ。」
宇宙船Aから謎の男が現れた。
父「なっ、バカな!!貴様は「帝雅(テイガ)」…!なぜ貴様が…!?」
帝雅「やぁ!久しぶりだね凱空君。最後に会ったのは、もう十年以上前になるか。」
勇者「む?なんだ親父、凄まじく因縁ありそうな感じだが知り合いか?」
父「奴は「皇帝」…私の顔に、今なお消えぬ傷を刻ん…うむ、なかなかイケる。」
虫を食うな。

 

4-60:目的〔14歳:LEVEL40〕
最後に偉そうに現れた偉そうな男は、親父の宿敵っぽい感じ。見るからに偉そうだ。
生ける伝説である親父に傷を負わせた程ともなると、強いんだろうなぁめんどくせぇ。
勇者「さてと…。やるんだろ親父?袋叩きにしてさっさと宝玉んとこへ行こうぜ。」
父「甘く見るな勇者。お前が思っているよりも、コイツは強いぞ。」
総大将「だがまぁ、やるってんならやっちまうがなぁ。 どうするよオイ?」
帝雅「…いやいや、やめておこう。いくら私でも、キミら二人を同時には厳しい。」
勇者「フッ、どうやら俺の強さは宇宙レベルらしい。」
帝雅「この無駄に自信過剰な坊やは、キミの子かね凱空君?」
勇者「冗談は親父だけにしてくれ。」
無職「え、それは肯定です否定ですどっちです!?」
帝雅「まぁ焦らずとも半年後にまた会える。その時にはまとめて死んでもらうがね。」
父「半年後…だと?」
帝雅「なんでもメシア氏は負傷したそうでね。半年は静養するという話を聞いたよ。」
勇者「なっ…貴様も大魔王一派なのか!?」
総大将「クセェな…随分引き際がいいじゃねぇか。素直に待つ奴にゃ見えねぇが?」
帝雅「ま、地球侵略はただのついででね。特に急ぐ理由は無いのだよ。」
父「ついで…ならば貴様の、本来の目的は…?」
帝雅「娘だよ。」
父「ッ!!!」
帝雅「血を分けた我が子を、連れ帰ることだ。我が最愛の愛娘…「塔子」をな。」
会っても最愛と呼べるか否か。

 

第四章