第二十七章

 

3-406:地獄〔13歳:LEVEL33〕

冬樹は倒れ、他の奴らも見当たらない。もしやこれは俺の一人勝ちって意味か?
勇者「にしても参ったな、剣がイカれちまった…ま、この程度で済んで良かったか。」
麗華「いや、それは極刑に値するぞ…小僧ぉ…!」

般若(麗華)が現れた。
美咲の背には賢二と盗子が積まれている。
勇者「オォ、二人トモ無事ダッタノカ!超良カッタ!」
麗華「まったくお前って奴は…。間一髪だったぞ、少しは防御も気にしろバカ弟子。」
勇者「無茶言うなクソ師匠。さすがの俺も、今回ばかりはかばう余裕は無くてなぁ。」
麗華「余裕で見殺しにするタイプだろうに。 大体お前は…!」
勇者「おっと、説教なら後にしてくれ。お客を待たせちゃ、失礼だしなぁ。」
麗華「…フン、そのようだな。」

魔神「・・・・・・・・。」

麗華「任せるぞ勇者。手負いのワシは上空で待機している、見事仕留めてみせよ。」
魔神「許さん…許さんぞぉ…!ブチ殺してやるぁあああああああ!!」
勇者「いいだろう、来い!またブッた斬っ…オイ麗華、新しい剣を。」
麗華「あ゛?」

フッ、死ぬかもしれん。
勝っても負けても待つのは地獄だ。

 

3-407:奥手〔13歳:LEVEL33〕

わかっちゃいたがやっぱり生きていた魔神。だが角は折れ、残り1本になっていた。
こちらもまた剣が無くなりマズい状況だが、奴もまた相当の深手…今ならわからん。
勇者「共に手負いとなれば、もうこの先どうなるかは神にもわからん。そうだろう?」
魔神「…ああ、確かに少々くたびれた。敵ながらアッパレだよ貴様ら。」
勇者「フッ、そんなに褒めるなよ俺だけを。」
魔神「まさかこの俺が、人間ごときをアテにする時が来るとはなぁ!ぬぉおおおお!」

魔神は力を溜め始めた。
声A「わっ!な、なんだこの触手は…!?わ…うわぁああああああ!
声B「の、飲み込まれ…うぎゃあああああああ!!
勇者「なっ!?隠れてた残党どもを…吸収してやがる…だとぉ!?」
魔神「全員だ!この島にいる貴様以外の全員を、我が糧とし、貴様を討つ!!」
勇者「俺以外の…や、やめろ!他は構わんが姫ちゃんだけは…!」

姫「わたし?」
勇者「そう、姫ちゃ…姫ちゃん!?」
わかっちゃいたが。

 

3-408:関係〔13歳:LEVEL33〕

魔神は力を溜め、肌がツヤツヤし始めた。まさかこの状況で回復とは…参ったぜ。
だがまぁ姫ちゃんが無事に戻ってきたので全て良しとする。俺はそんな前向きな男。
勇者「フッフッフ、姫ちゃんが来て元気百倍!今なら何でもできる気がするぜ!」
魔神「フン、雑魚が一人増えたところで何も変わらん。今の俺様は…無敵だ。」
ヒュン!(消)
勇者「は、速すぎるっ!見え…」
姫「勇者君、後ろだよっ!」
勇者「なっ…!?」
姫「私は。」
勇者「あ、うん…ぐえっ!

勇者は大ダメージを受けた。
魔神「なんだ勇者、そんなにこの小娘が大事か?ただの足手まといだろうに。」
勇者「俺は姫ちゃんを守る「ナイト」…貴様は彼女にとって何だ!?勝てまい!!」
魔神「いや、俺には関係無いだろ。まぁ強いて言うなら「故郷」だが。」
勇者「ち、チックショウ負けてる気がするぜ…!」
魔神「あと8年以上、中にいた。」
勇者「うぉおおお!やめてくれぇええええ!!」
勇者に精神的ダメージ。

 

3-409:命拾〔13歳:LEVEL33〕
その後、姫ちゃんを守りつつ逃げ回ること数分。予想以上にこれはキツい。死ねる。
勇者「ゼェ、ゼェ…!なんとか、目は慣れて、きたが、息が…!」
魔神「小娘一人抱えてそこまで動けるとは大したものよ。だがそれだけに惜しい。」
姫「美味しいの勇者君?何が美味しいの?」
勇者「フッ、違うぞ姫ちゃん。「羨ましい」と言ってる。」
魔神「どっちも違うぞ。特に後者が凄まじく。」
勇者「ま、しばらく調子こいてろよ。今は「逃げながら作戦考えタイム」なんでな。」
魔神「甘いな、この広範囲からは…逃げられまい!ブフォォオオオオオオ!!(炎)」
魔神は燃えさかる火炎を噴いた。
勇者は逃げ切れない!

ミス!「血子の眼帯」が攻撃を防いだ。
眼帯は音も無く崩れ落ちた。
勇者「ち、血子…!死してなおグッジョブだぜ根っこ!」
魔神「ほぉ、氷の防壁とは変わった防具だ…フンッ、命拾いしたなぁ小僧。」
姫「えー、ズルいよ勇者君だけ。私も拾いたかったよ。」
勇者「違うんだ姫ちゃん、「命拾い」は「栗拾い」とかのノリとは別なんだ…!」
姫「…私は、騙されないよ。」
姫は納得がいかない。

 

3-410:大変〔13歳:LEVEL33〕

もうなんというか、なんだか楽しくなってきた。人って限界超えるとこうなるのか…。
勇者「フッ…そろそろ、クドいようだが恒例の助っ人タイムのお時間じゃないか?」
魔神「ハハッ、無駄な祈りだ。もはやこの島に残るは貴様らだけ…助けは来ない。」
姫「だったら私が行くよ。」
勇者「さっすが姫ちゃん、勇敢だぜ!」
魔神「…どうやらその小娘が、俺をやりづらくさせているようだな。 先に消すか。」
勇者「ナメるな!貴様ごときの攻撃が姫ちゃんに届くと思うなよ!?」

魔神の一撃!
なんと!定石を無視して姫に直撃した。
勇者「なっ…!?」
姫「あぅっ…う゛…!
勇者「ひ、姫ちゃん!?しっか、しっかりす…キャアアアアアアアアアアアアア!!
魔神「そ、そこまで取り乱すとは…。なんかすまん…。」
勇者「姫ちゅぁああああああああん!!
勇者が大変だ。

 

3-411:土産〔13歳:LEVEL33〕
や、野郎ぉ…姫ちゃんを…俺の姫ちゃんをぉおおおおおおおおおおおおおおお!!
勇者「ハァ、ウァ、オゥッ、あ゛…くぁwせdrftgyふじこl」
魔神「ど、どうやらもう手の施しようが無い感じだな…。わかった、死なせてやる。」
勇者「チクショウ…!俺にもっと、もっと力があれば…!チクショウがぁあああ!!」

フゥ、やれやれ…まったく贅沢な子ですねぇ〜。

勇者「むっ、なんだ今の声は…!? ぐわっ!ひ、左目が…焼ける…!!」
魔神「さらばだ、勇者!!」


ガキィイイン!(受)

勇者は「魔神の剣」で防いだ。
魔神「ば…バカなっ!今の貴様の魔力で、その剣が使えるはずが…!」
勇者「チッ、やれやれ…こういうことかよ。あんにゃろう余計なマネを…。」
魔神「そ、その目はまさか、“奴”の…!!」
勇者「俺は「勇者」…だが今だけは、貴様を地獄へといざなう…「死神」となろう!」
教師の置き土産だった。

 

3-412:集中〔13歳:LEVEL33〕

頂点に達した怒りが、知らぬ間に埋め込まれていた「死神の目」を目覚めさせた。
思えば暗黒神を倒した後、やけに左目に激痛が…。全ては奴のせいだったわけか。
だがまぁ、おかげで力が手に入ったのも事実。今は目の前の敵に集中するとしよう。
勇者「オイ麗華、降りて来い!姫ちゃんを…って、うぉっ!?」
麗華「既に診ている。まぁ安心しろ、ワシの回復魔法で手に負えるレベルだ。」
勇者「任せたぞ、姫ちゃんを連れて遠くへ逃げろ!巻き込まれたら殺すぞ!?」
麗華「ふむ、わかった。二度と貴様の手が届かぬ場所へと連れ去ろう!」
勇者「いや、限度はわきまえろよ!」
麗華「勇者よ…死ぬなよ。ワシはともかく、賢二が悲しむ。」

麗華は姫達を連れて去った。
勇者「さて…邪魔者がいなくなったことだし、とっととキメるか。早く帰って寝たい。」
魔神「フン、もう勝った気か…調子に乗るなよ小僧?」
勇者「訂正する。姫ちゃんは邪魔者じゃない。」
魔神「どうでもいいよ。頼むからもう少し集中してくれ。」
勇者「姫ちゃんの魅力?それは…!」
魔神「いや、こっちに。」
勇者は調子が出てきた。

 

3-413:苦戦〔13歳:LEVEL33〕

左目のおかげでか力はみなぎってきたが、同時に疲れてもきた。恐らくヤバい。
勇者「この目は危険だと聞いている。長時間は御免だ、短期決戦といこうぜ!」
魔神「いいだろう。貴様のヤワな剣なんぞ、この爪で全てさばいてくれよう!」
勇者「それは困る。」
魔神「いや、それが仕事だ。」
勇者「姫ちゃんの安否が気がかりだ、早々に死にやがれクソ野郎がぁーー!!」

ここからは気合いで察してください。
シャキィーーン!ガキンッ、バシュッ!

チュィン!キンッ、キィン!シュッ、ズバシュッ!

ズォオオオオオオオオオ!ササッ!シュンッ!ギィィン!ビシュッ!

ドスッ!ザシュッ!ズバシュッ!カキィン!ズババババッ!

ドガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

字だけじゃキツい。

 

3-414:一撃〔13歳:LEVEL33〕

そして、もうそろそろいい加減終わろうかホントにタイムに突入。疲れたし飽きたし。
恐らくここらで俺は最大のピンチを迎える。それを華麗に乗り越えたら、最後は…!
魔神「さぁ食らえぃ勇者!我が渾身の一撃をぉおおおおおおお!!」
勇者「ホラきた!ホラ避けきれん!さぁどうなる…!?」

痛恨の一撃!!

…かと思われた。
魔神「なっ、「幻術」だと…!?バカなっ、「勇者」の貴様にそんな芸当が…!」
勇者「俺にもわからん!だがどうやらこの目には、先公の怨念も残ってるようだ!」
魔神「後ろかっ…!!」
勇者「上だっ!!」
魔神「なっ!?ってやっぱり後ろじゃ…!」
勇者「隙ありぃいいいいいいやぁあああああああああああああああああ!!」
ズババババシュッ!!(斬)
勇者、会心の一撃!!
そして残虐な追い討ちが続く。

 

3-415:敵討〔13歳:LEVEL33〕
そしてやってきた、最大にして最後のチャンス。これをモノにせんで何が「勇者」だ。
勇者「さぁ終わりだ魔神マオ。今から貴様に、倒れていった皆の想いを叩き込む!」
魔神「あ、あり得ぬ…!この俺が…この俺が人間ごときにやられるなど…!」
勇者「これは貴様のせいで、左腕と愛刀を失った麗華の分!!」
魔神「え、いや、刀はお前がはっ!
勇者「意外に頑張ったらしいのが、なぜかムカつくシスコンの分!!」
魔神「どわっ!!
勇者「知らぬ間に死んでた観理の分!!」
魔神「ぬぐぅ!!
勇者「とってもアッサリ消された女医の分!!」
魔神「ゲフッ!!
勇者「壮絶なイメチェンの果てに死んでいった、カマハハの分!!」
魔神「ガハァッ!!
勇者「終始逃げ腰だった賢二の分!!」
魔神「なぜ俺にぶっ!?
勇者「気づいたらいなかったチョメ太郎の分!!」
魔神「だから知らなはっ!!
勇者「最期の最期まで意味不明だった黒錬邪の分!!」
魔神「ぐはぁあああっ!!
勇者「なんだかんだで色々と迷惑を被った、この俺の分!!」
魔神「うぎゃぁあああああああっ!!
勇者「そして、これが…!これが、貴様ごときに傷つけられた…我が天使…!」
魔神「ま、待て!待っ…」
勇者「姫ちゃんの分だぁーーーー!!」
魔神「ぐわぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!
確かに盗子は何もしてない。

 

3-416:決着〔13歳:LEVEL33〕

完璧な手応え、そして完璧な演出…間違いなくこれで決着だろう。でなきゃキレる。
勇者「ハァ、ハァ…!フッ、どうだよ魔神、強かったろう俺は?」
魔神「グフッ…フフッ、あぁ…そうだな…。人間ってのは…雑魚の分際で…強い…。」
勇者「いや、俺だけを褒めろよ。あんな奴らはどうでもいいんだ、姫ちゃん以外。」
魔神「憎い小僧だ、憎くてたまらん…。お前の中にいた頃から…そう思っていたよ。」
勇者「フン、俺もだよ。貴様のせいで夜もグッスリ眠れなかったんだからな。」
魔神「だが…不思議だなぁ勇者よ…。お前と過ごした13年…悪くは…なかっ…」

勇者「んー、俺は特に。」
魔神「ひ、酷ぇ……(ガクッ)」

勇者は魔神を撃破した!

いぃぃよぉお〜!ポンポンッ!(効果音)

勇者はレベルが上がった。
今まで上がっていなかった分、盛大に上がった。
なんだかんだでレベル40になった。

だが実は賢二より下なのは内緒だ。

 

3-417:降下〔13歳:LEVEL40〕

やっとのことで魔神はくたばり、長かった戦いにも終止符が打たれた。疲れた…。
だが喜びも束の間…そう、核が死んだため、島の高度が徐々に下がり始めたのだ。
見た感じ、このまま降下していったらちょうど帝都に突っ込みそうなペースだと思う。
折角世界を救ったのに、そんな俺を称えるべき帝都に特攻を…うん、こりゃマズい。
勇者「てなわけで、なんとかしなきゃならん。何か名案はないか賢二?どうぞ。」
無線「(ガガッ…)え…えぇっ!?なっ、どこから声が…!?」
勇者「いい加減慣れろ。もはや貴様にプライバシーは存在しない。」
無線「あの、麗華さん…この高さならまだ死ねますよね…?」
無線「ちょ、待っ…おいコラ勇…!ゆ、勇者くぅ〜ん?ちょっといいかなぁ〜?」
勇者「すまん、ちょっと急用を思いついた。」
無線「思いつくな!ブッ殺…しますわよ!?」
無線「やっほー勇者☆ 聞こえるぅ〜?」
勇者「おぉ、その声は…生きてたのか盗子。勢い余って憎さ百倍だな。」
無線「可愛さは!?可愛さは余ってないの!?てゆーか何そのヤな勢い!?」
無線「勇者君お元気?」
勇者「可愛さキターーーー!!」

島は着々と降下している。

 

3-418:遺物〔13歳:LEVEL40〕

姫ちゃんが元気そうで良かったが、名案はちっとも浮かばない。とても困っている。
勇者「さっさと考えろ賢二。このまま落ちたら帝都の民は死ぬぞ、お前のせいで。」
無線「なぜ僕の!?え、えっと、勇者君はなんとかできないの!?魔力で…!」
勇者「それができたら最初からやってる。いくら俺でも島を砕くのはまだ無理だ。」
無線「勇者も何もできないんじゃん!なのになんでそんな偉そうなのさっ!?」
勇者「フン、何を今さら。」
無線「くぅ、なんで偉そうなのかはわかんないけど確かに…!」
無線「爆弾でドッカーンだよ。」
無線「ってあるかよそんな物騒なの!規模が違い過ぎるよ!島だよ島!?」
勇者「ッ!! いや待て、あるぞ!かつて人間が、神を倒すため開発した兵器が!」
無線「む?神を倒す兵器…そうか!その手があったか!」
勇者「ああ、国をも潰すと言われた究極兵器…シジャンに眠る秘宝、「爆々弾々」。」

さぁみんな思い出せ。

 

3-419:気掛〔13歳:LEVEL40〕

俺の驚異的記憶力と機転により、なんとか打開策は見つかった。さすがは俺だ。
勇者「というわけだ。とっとと行って、爆弾を確保したらまた連絡を寄こすがいい。」
無線「わかった勇者、今からシジャンへ向かう。ここからならば時間はかかるまい。」
無線「あ゛っ…ちょ、ちょっと待って!し、シジャン王国って今、「ソボー」がいる…!」
無線「う゛ぇっ!?そ、ソボーさんってもしかして…!マズいよ僕、殺されちゃう!」
勇者「ありがとう。お前らの心意気、忘れない。」
無線「「話を聞いてぇーー!!」」
プチッ(切)

ふむ…ダメかもしれんな。

勇者は信用してない。

 

3-420:絶賛〔13歳:LEVEL40〕
暇を持て余した俺は、「六本森」へと向かっていた。気になることがあるからだ。
そう、それは倒されていた将の件…。シスコンが二体もやったとはまず考えられん。
ということは、将を討てる程の力を持つ者がもう一人いたことになる。もしかしたら…
いや、さすがにそれは考えすぎか。いくらなんでも“奴”が来てるなんてあり得ない。
〜六本森〜
勇者「と思っていたのに、まさか本当に貴様だったとは…!」
勇者「ほぉ、勘付いていたのか。相変わらず勘のいいナイスガイめ。」
勇者「フッ、まあな。よく言われるし今や辞書にも載ってる。」
勇者「さすがだぜ勇者!もはやお前に勝てる奴なんか存在しないぜチクショウめ!」
勇者「だろ!?ハッハッハ!ひれ伏すがいい愚民どもぉー!ハハハハハ…ハ…」
勇者「ふむ、飽きたな。寝るか。」


魔王「…楽しそうだな、お前。」
勇者は恥ずかしくて死にたい。

 

第二十八章