第十章

 

3-151:救出〔13歳:LEVEL29〕
姫が勝手に入った部屋の中には、なんと氷柱に封じられた勇者がいた。
盗子「ゆ、勇者…!?ななななんで勇者が氷の中に!? い、生きて…るの…?」
姫「待っててね勇者君!すぐ食べるよ!」
盗子「普通に溶かせよ!なんでわざわざ自分に素敵な方に持ってくんだよ!」
姫「ちょっと大きすぎるよね、この氷の鎧。」
盗子「どんだけ守備に自信無いんだよ!どー見ても誰かに封じられてるじゃん!」
姫「じゃあ私がなんとかするしかないね。」
盗子「え!アンタ何か手ぇあるの!?」
姫「火の魔法なら…一つ、知ってるよ。」
だが加減は知らない。

 

3-152:秘策〔13歳:LEVEL29〕
勇者を助ける魔法を知っているという姫。
だが信じていいのか悪いのか。
盗子「アンタ「療法士」なのに、相変わらず使える幅広いよね…。どこで覚えたの?」
姫「前にご本で見たの。でも使っちゃうのは初めてだよ。」
盗子「へぇ〜。で、ちなみにどんな魔法?どんくらいの威力があんの?」
姫「たまにかき混ぜないと焦げるって。」
盗子「とろ火かよ!!昨日のカレーを温める的な魔法かよ!却下却下ー!」
姫「盗子ちゃんは何も無いの?」
盗子「う゛っ…あ、アタシはいいの!無知で無垢な感じを売りにしてくの!」
姫「なんもないの?」
盗子「なんもないのっ!」
姫「ハイ、「アンモナイト」。」
勇者(!!?)
姫はダイナマイトを取り出した。
勇者は一瞬ピクッとなった。

 

3-153:視線〔13歳:LEVEL29〕
どこからかまた、アンモナイト型のダイナマイトを取り出した姫。
傍から見たらどう考えても勇者を殺す気だ。
盗子「あ!それ前にも使ったダイナマイト…って死んじゃうよ!勇者砕けちゃう!」
姫「大丈夫、こう見えてプラモは好きだよ。」
盗子「くっつかない!くっつかないよ!ボンド的な物でなんとかなりはしないよ!?」
姫「いつもパーツが余るよ。」
盗子「しかも得意じゃないじゃん!」
姫「気にしないでドカーンていこうよ。」
勇者(ッ!!!)
盗子「ヤメ…って、今勇者ピクッとしなかった!?もしかして意識あるの!?」
姫「そういえばずっとこっち見てるよ。」
盗子「そういえばずっとこっち見てないよ!何度か立ち位置変わってるのに!」
勇者(キッ!(睨))
どうやら勇者は元気だ。

 

3-154:必殺〔13歳:LEVEL29〕
姫ちゃんの声が聞こえたため、なんとか意識を取り戻すことができた俺。
だが仮死状態から覚めてしまったので、このままじゃヤバい。もはや凍死寸前だ。
盗子「よ、良かったぁ〜…とりあえず生きてる…!良かったよぉ〜!」
姫「勇者く〜ん、出てきていいよ〜。」
盗子「いや、そんな簡単にいくなら今こうなってないから!なんとかしないと…!」
姫「体温上げれば溶かせるねきっと。」
盗子「どんな体温だよ!仮にできても氷どうこうの前に確実に死ぬから!」
姫「パンチラ。」
勇者(ぶぼっ!!(鼻血))
姫は自分のスカートをめくった。
勇者は例のごとく鼻血を噴いた。
盗子「ちょっ!ななな何してんの!?嫁入り前の女の子がそんなはしたない…!」
姫「パンツ見たら燃えるって、前に変態さんが言ってたの。」
盗子「どこの変態!?それに「萌え」じゃない!?まぁ「燃え」も合ってそうだけど!」
勇者(ピクピク…(痙攣))
盗子「うわー!勇者が死にそうだよー!って、でも少し氷溶けてる!?マジで!?」
姫「もう一押しだね。」
盗子「それは死への後押しだよ!?これ以上は死んじゃうってば!」
姫「でも放っといたらまた冬眠しちゃうよ。チャンスは今だよ。」
盗子「う゛っ、確かに…。 じゃ、じゃあ!今度は…今度はアタシが…!」

盗子「アタシがパンt」
バリィイイイン!!(割)
勇者は「怒り」で燃え上がった。

氷は崩れ落ちた。
盗子も崩れ落ちた。

 

3-155:復活〔13歳:LEVEL29〕
姫ちゃんだけのおかげで、無事(無事?)氷から抜け出すことができた俺。
なぜ氷が溶けたかは微妙にわからんが、血が溶かしていたような感覚がある。
やはり邪悪な魔法なだけに、俺の聖なる血液とは相性が悪かったようだ。フッ。
盗子「勇者〜!無事で良かったよ!まぁ無事に見えないくらい血まみれだけども!」
姫「おかえり勇者君。」
勇者「ああ、ただいま姫ちゃん。」
盗子「ハァ…今日も気持ちいいくらいスルーだな…。」
勇者「ところで今はいつだ?姫ちゃんがいるってことは、今日が約束の日なのか?」
姫「そうなの?」
盗子「アタシに聞くなよ!ついちょっと前まで囚われの身だったアタシに!」
勇者「まぁいい、とにかく行くぞ。奴を倒さねば話は先に進まない。」
盗子「えっ、でも勝てるの!?コテンパンにやられたから今に至るんでしょ!?」
勇者「な、ナメるな油断しただけだ!どう油断したか覚えてないほどに…。」
盗子「マズいじゃんそれ!記憶もってかれてるじゃん!完全にノックアウトじゃん!」
勇者「まぁ安心しろ、策はある。これから…考える!」
盗子は不安になった。

 

3-156:助人〔13歳:LEVEL29〕
勇者が復活したその頃、暗殺美は―――。
暗殺美「ハァ、ハァ、助かったさオッサン。名を名乗ることを許してやるさ名乗れや。」
男「私は「帝都守護隊」二番隊隊長、「昭二」。気軽に「パパ」と呼んでくれたまえ。」
暗殺美「誰が呼ぶかさ変態が! でもまぁ銀隠を倒したその実力は認めてやるさ。」
昭二「フッ。我ら守護隊はあの「帝都護衛軍」から更に選り抜かれし最強の部隊…」
暗殺美「それは「副長」とかいうのと関係あるのかさ?アンタらは味方なのかさ?」
昭二「我らも暗黒神に仇なす者ゆえ、味方と言えるだろう。パパは味方だよ昭子。」
暗殺美「勝手にパパんなんなや!それに誰が昭子さ!」
昭二「見てるかい天国の母さん…裕子は反抗期だ。」
暗殺美「昭子はどこいったさ!」
未だ苦戦中だった。

 

3-157:乗込〔13歳:LEVEL29〕
まだ少しフラフラしているが、ジッとしてもいられない俺は、仕方なく上を目指した。
そして、「天王の間」と書かれた扉の前に辿り着いた。 この先に、奴はいる!
勇者「敵の数は未知数…こっちは二人…厳しい戦いになりそうだが、大丈夫か?」
盗子「大丈夫じゃないよ!いい加減アタシも数に入れてよ切ないよ!」
姫「あと変なお仲間さんがいるんだよね?」
盗子「あ!そうだよいるんだよ!副長とかいう強い人が先に行ってるみたい!」
勇者「副長…?あぁ、そりゃ多分帝都の部隊だな。天帝を護る最強部隊らしい。」
盗子「え、なんでそんな人らが…? でもなんにせよ心強いよね!勝てるかもっ!」
勇者「フン、まぁいないよりはマシかもな。少しは期待してやる。 よし、開けるぞ!」
ギィイイイ(開)
勇者は扉を開けた。
剛三「ごっ…はっ…!」
副長「くはぁ…!」
暗黒神「よぉ、起きちまったかクソガキ…早起きじゃねぇか。」
話が違う。

 

3-158:邪魔〔13歳:LEVEL29〕
少しばかり期待していたのだが、どうやら帝都の部隊は全滅のようだ。だらしない。
勇者「ふぅ〜…やれやれ、結局は俺の出番てわけか。よぉ暗黒神、借りは返すぜ。」
暗黒神「いや、俺はそんな血まみれにした覚えはねぇぞ。誰にやられたんだお前?」
勇者「フッ、誰でもないさ。これは…「武者出血」だ!」
盗子「どんな武者だよ!震えるだけで抑えとくよ普通は!」
暗黒神「無理すんなお前に死なれちゃ困んだよ。「マオ」の本体ブッ壊すまではな。」
勇者「マオ…?どうやらわけありらしいが知ったこっちゃないな。」
暗黒神「やれやれ…お前にはもっと、きっついお仕置きが必要らしいな。」
剛三「うぐっ…だ、ダメだ逃げろ…!ガキの敵う相手じゃな」
ザシュッ!(斬)
剛三はトドメを刺された。
勇者「邪魔。」
盗子「えぇーーーっ!?」
勇者によって。

 

3-159:貧血〔13歳:LEVEL29〕
一ヶ月の時を経て、再び暗黒神とあいまみえることになった。今度こそブッた斬る!
勇者「さぁ来い暗黒野郎!この前のことは無かったことにしつつ貴様を倒す!」
暗黒神「あ〜、悪いがめんどくせぇよ。まぁコイツら倒せたら考えてやるわ。」
暗黒神は仲間を呼んだ。
100を超える兵隊が現れた。
盗子「うわーイッパイ出てきたー!コイツら全部が噂の十闘士!?ヤバいじゃん!」
勇者「フン、肩慣らしにはちょうどいい。500か…やりがいのある数だぜ。」
盗子「そんなにいないよ!?それ目の焦点合ってないんじゃん!大丈夫!?」
勇者「だから下がってろ盗子、巻き添えを食うぞ。 下がって姫ちゃんの盾となれ。」
盗子「前半でちょっと喜んだ自分が悲しくてならないよ!」
姫「血が欲しいの勇者君?じゃあハイ、ケチャップ。」
盗子「全然別物だよ!どうせやるならせめてジュースにしたげてよ!ケチャップて!」
勇者はイッキでいった。

 

3-160:真打〔13歳:LEVEL29〕
貧血のせいで、体調は最悪。言いづらいがケチャップにトドメを刺された感がある。
このままではどうにもマズいが、頼るアテも無いのでやるしかない。まったく…。
勇者「ぐっ、うぐぅ…!」
暗黒神「オイオイ少年、なんだもう満身創痍じゃねーか。やる気出ねぇなぁオイ。」
声「その油断…それがキミの命取りになるんだよ、暗黒神。」
暗黒神「なっ、誰だ!?いつの間に…!?」
太郎がひょっこり現れた。
盗子「あー!太郎!そういやスッカリ存在忘れてたよ!今まで何してたのさ!?」
太郎「いや〜、ちょっとヤボ用があってね。詳しい話は代々語り継ぐから待ってて。」
盗子「どんだけ待たす気だよ!」
勇者「き、貴様…!あの日はソッコーで逃げやがった分際で今さらノコノコと…!」
太郎「ん〜、その件に関しては僕に言われても困るなぁ。」
勇者「じゃあ担当者を呼べ!」
太郎「まぁ休んでてよ勇者君。ここは、僕がやる。」
意外な言葉が出た。

 

3-161:必死〔13歳:LEVEL29〕
いきなり現れて、予想外なヤル気を見せた太郎。信用できん上にウザいんだが…。
暗黒神「あ〜、そういや一匹単独行動の奴がいるって聞いてたわ。それがお前か。」
太郎「へぇ〜、気づいてて放置とは余裕だね。ま、おかげでのんびりできたけどさ。」
姫「いいな〜、私ものんびりしたかったよ。」
盗子「してんじゃんいっつも!戦闘のさなかに普通にお茶とか飲んでんじゃん!」
太郎「え、じゃあ準備する?」
盗子「アンタも負けじとかよ!」
暗黒神「ちっ、テメェら…ナメくさりやがって…!」
太郎「あ〜、僕もぼちぼち限界を感じてるんだよね、このキャラ。慣れないわ〜。」
暗黒神「あん?なにわけわかんねーことを…? だったら死…ぐわっ!?
太郎、会心の一撃!
暗黒神のワキ腹を貫いた。
盗子「えっ、どーゆーこと!?意外な活躍すぎてついてけないんだけど!」
太郎「ホラ言ったでしょう?その油断が命取りだと。まったく進歩の無い人だ。」
暗黒神「ぐっ…バカな…! それにその口ぶり、テメェなんぞと会ったことなど…」
太郎「予想通りでしたよ。弱そうに振舞っただけで、簡単に懐に入れた。」
太郎が姿を変えてゆく…。
暗黒神「なっ!お前は、まさか…!」
勇者「なにぃ!?さ、さっきまでのあのキャラが、テメェだと…!?」

教師「いや〜、今回は必死でね。」
死神が降臨した。

 

3-162:範囲〔13歳:LEVEL29〕
ヤル気な太郎が意外だと思っていたら、もっと意外な奴が化けていてビックリ。
姿は幻術で変えてたにしても、あのキャラを演じきれるとは…芸幅の広い奴め。
勇者「ふぅ…まさか先公だったとはな。軽くビビッたが、まぁ気にしまい気にしまい。」
姫「三人姉妹。」
勇者「だ、誰だ!誰が長女だ!?」
盗子「落ち着いてよ勇者!気にしないどころか思っきし動揺しちゃってるよ!?」
暗黒神「ったく、お前もしつこいなぁ死神よ。二度あることは三度…ってやつか?」
勇者「む?なんだお前ら知り合いだったのか?世にも邪悪なコンビだなオイ。」
教師「コンビだなんてとんでもない。彼は人生で唯一、私が殺意を抱いた男です。」
盗子「じゃあ他の犠牲者達はなんで!?」
暗黒神「フッ、思い出すなぁあの日をよ。あの痛み…俺は忘れちゃいねぇぜ?」
教師「あの傷で生きていたとは驚きですよ。今度こそ、完全にトドメを刺します。」
暗黒神「ハハッ!そりゃこっちのセリフだがなぁ!この数相手にどう足掻く?」
教師「フフフ…皆殺しですよ。」
「皆」の範囲は危うい。

 

3-163:惨劇〔13歳:LEVEL29〕
なにやら因縁があるらしい先公と暗黒神。ちょうどいい、ここは先公に押し付けるか。
勇者「というわけで、ここは任せてやる。俺はしばし休憩しててやるから安心しろ。」
兵士A「あん?なんだクソガキ偉そうに!こんなヒョロい野郎に何ができるよ?」
兵士B「オイやっちまおうぜみんなー!」
兵士達「オォオオオオオオオオオ!!」
教師「フフ、やれやれ困った子達ですねぇ…。 ハ〜イ皆さん、注目〜。」
兵士A「あ゛ぁ!?なん…」

兵士達「うっぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!
盗子「えぇっ!?なんでいきなり全滅!?」
暗黒神「い、今のはまさか…「念瞳殺」か!?」
〔念瞳殺(ねんどうさつ)〕
その瞳を見た弱者は、例外なく死に至るという極悪な瞳術(どうじゅつ)。
見つめ合うと素直にお喋りどころじゃない。
暗黒神「そりゃ「死神:チャティ」の…!そうかよ今やそこまで使いこなす程かオイ。」
教師「うっ、目にゴミが…!盗子さん、見てもらえます?」
盗子「殺す気かっ!!」
今のはただの趣味だ。

 

3-164:裏切〔13歳:LEVEL29〕
前々から危険な奴だとは思っていたが、予想以上に危険な術を持っていた先公。
この勢いなら勝てそうな気もするが、勢い余ってこっちの命も危険な感じだ。
盗子「な、なにそのおっかない目!?迂闊に顔見れないよ!見にくいよ!」
勇者「フッ、やっと自覚したか。」
盗子「そういう意味じゃないよ!なんでこのタイミングで自虐…もういいよっ!」
勇者「まぁとりあえず、これで形勢は逆転だな。今度は3対1…こっちが有利だぞ?」
盗子「そうだよ4対1だよ!覚悟しなよ4対1なんだから4対1ぃー!」
暗黒神「フッ、この俺もナメられたもんだな…。その程度でこの俺が倒せるとでも?」
勇者「ほぉ、俺達ごとき一人で十分だってのか?」
暗黒神「オーイ!出て来いお前!」
盗子「って仲間呼ぶのかよ!アンタ戦う気無いの!?」
背後から誰かが現れた。
剣次「悪いな勇者、ここらで死んでくれ。」

ザシュッ!(斬)
勇者は確認前に斬った。

 

3-165:瞬殺〔13歳:LEVEL29〕
どういうわけか敵側として現れたカルロス。理由はわからんがとりあえず倒そう。
剣次「くっ、いきなり斬りかかってくるとは…!まずは話を聞こうとかねぇのか!?」
勇者「俺に逆らう奴は斬る。」
剣次「フッ…なんて奴だよ…鬼…め…(ガクッ)」
勇者「サラバだ、カルロス…。」
盗子「って、ちょっと勇者!マジで脈無いんだけど!?加減て言葉知ってる!?」
勇者「安らかに眠れ。お前の尊い犠牲…忘れない。」
盗子「犠牲者にしたのは誰!?」
勇者「理由は知らんが奴は本気だった。やらなければこっちがやら…れっ!?」
背後から謎の一撃!
ミス!勇者は間一髪で回避した。
剣次「へぇ、やるじゃねーの。あの間合いで外すとは思わなかったぜ。」
盗子「えっ、なんで!?確かに死んでたはずなのに…!」
声「フォッフォッフォ。驚いたかね?まぁいきなり斬りつけた時はこっちが驚いたが。」
勇者「むっ、貴様かジジイ?貴様が何か…カルロスに、何をしやがった!?」
黒猫「自己紹介しようか。私は黒猫、「嗟嘆四天王」が一人…職は、「死体使い」。」
剣次は手遅れだった。

 

第十一章