第八章

 

2-121:仲間〔13歳:LEVEL17〕
春。 13歳になったらしい僕と愉快な仲間達は、順調に旅を続けていた。
目指すは五錬邪の本部。でもかなり距離があるらしく、歩きだと相当掛かりそうだ。
勇者「ハァ、ハァ、疲れた…。やっぱ何か、乗り物にでも乗らない…?」
盗子「ちょっとぉ、しっかりしてよ勇者〜。乗り物は怖いからもうイヤだよ〜。」
勇者「あ、ところでジャック。次の街「モレンシティ」へはどのぐらいで着きそう?」
盗子「えっとね…ってだから「盗子」だってば!もう何度言わせればわかんのさ!」
勇者「わからないから言ってるんだ!!」
盗子「わーん!なぜか理不尽にキレられたよー!」
姫「泣かないで盗子ちゃん。李夫人も根はいい人だよ。」
盗子「誰の奥さんだよ!そんな他人にキレられたらもっと納得いかないよ!」
勇者「ご、ごめんアレキサンダー。僕は少し焦っているのかもしれない。謝るよ。」
盗子「ぐすん…。う、ううん、いいの。わかってるから早く次の街へ急ごうよ。」
勇者「…うん。 パーティーは三人、戦力不足は否めない。仲間を探さないと…!」

〜その頃、噂の「モレンシティ」では…〜
女「きゃぁああああ!イヤ!離してぇーー!!」
ロボ「グヘヘへ!騒イデモ無駄ダ人間!この街デハ俺達ロボットガ正義…」
少年「おっと、待ちなロボ公。レディに対するその態度…見過ごせないぜ。」
ロボ「アン?誰ダ貴様ハ!?ヤンノカコラ!!」
女「あ、アナタは…?」
少年「フッ、俺か? 俺は「勇者」。俺が来たからには安心していいぜ、ベイベー!」
なんちゃって勇者が現れた。

 

2-122:秋話〔13歳:LEVEL17〕
三日ほど歩き、僕達はやっと「モレンシティ」という街に到着した。とっても疲れた。
噂では、ここはロボット技術が行き過ぎ、逆にロボに支配されてしまったんだとか。
恐らく何かしらの戦闘に巻き込まれるんだと思う。その前に強い仲間を見つけたい。
勇者「なんとか仲間を探そう。でも弱い奴らはいらない、欲しいのは強い奴らだ。」
姫「勇者君があと二人ぐらい居ればいいのにね。」
盗子「あっ!そういえば姫、秋に「ミルシティ」で聞いた「ニセ勇者」の話覚えてる?」
姫「うん、サッパリ覚えてるよ。」
盗子「どっちだよ!サッパリなのか覚えてるのかハッキリしてよ!」
勇者「ん?ニセ勇者?秋に一体何があったの…?」
姫「勇者君の名を騙り、財宝を奪って逃げた不届き者がいたんだよ。許せないね。」
盗子「かと言って急にシッカリされても戸惑うよ!」
勇者「ニセ勇者か…。でもなぜ僕の名を?僕はそんなに有名人なのか?」
盗子「私は「指名手配」の線を疑ってるけどね。」
勇者「し、失礼な!僕がそんな悪人なはず無いじゃないか!訂正してよ!」
姫「そうだよ盗子ちゃん。疑うのは良くないよ。」
勇者「いや、そこを訂正されるとちょっと…。」
姫「まぁとりあえず、お昼にしようよ。私お腹すいちゃったよ。」
勇者「えっ、あ…う、うん。」
もうじき夜だ。

 

2-123:遭遇〔13歳:LEVEL17〕
姫ちゃんの要望により、食事をとることにした。思えばまともな食事なんて久々だ。
ガラガラ…(開)
勇者「こんばんはー。三人なんだけど席は空いて…」
ロボA「ヨ、ヨクモ仲間ヲ!人間ノ分際デ生意気ナッ!!」
勇者「!?」
少年「フン!職も名も「勇者」である俺に挑んだキミ達が悪いのさ、エネミー!」
盗子「えっ、勇者!?今アイツ「勇者」って言ったよ!あの覆面の奴!」
勇者「うん、僕も聞いた。でも今は状況が状況…助太刀するよサンコン!」
盗子「う、うん!そだね!」
勇者の攻撃。

覆面少年に100のダメージ。
少年「ぶぼはっ!?
勇者「僕の名を騙るとは何事だー!!」
盗子「ってそっちの助太刀なのかよ!その判断は人としてどうなの!?」
少年「ぐっ…!な、なんだキミ達はいきなり…って、ブラザー!?えぇっ!?」
盗子「へ!? ぶ、「ブラザー」って…アンタまさか…!!」

博打「フッ、久しぶりだなベイベー達。俺に会いたくて追ってきたのかい?」
覆面少年は「博打」だった。

盗子は驚いた。
勇者はキョトンとした。
姫は構わず注文した。

 

2-124:乙女〔13歳:LEVEL17〕
店で戦っていた少年は、どうやら僕らの旧友らしい。なんだか言動がキザでウザい。
博打「すまないが詳しい話は後だ、とりあえず今は手を貸してくれブラザー!」
勇者「嘘をつくな!僕は孤高の一人っ子だと聞いた!」
博打「いや、そういう意味のブラザーじゃ…。」
姫「ブラジャーが手を貸してくれるなんて初耳だよ。」
博打「き、キミの方が激しく勘違いしてるな姫ちゃんベイベー。」
姫「…試してみる価値は、ありそうだね。」
盗子「無いから!こんな所で外しちゃダメだから!乙女としての恥じらいを持って!」
博打「お、おお俺は別に気にしないぜベベベベイベー?」
勇者「…ぶばっ!(鼻血)」
盗子「む、ムッキィー! 死ねー!男なんかみんな死んじゃえー!!」

ロボA「(チラッ)」
ロボ達「(…コクッ)」

ボゴッ!ボゴスボゴスッ!!(殴)
盗子の願いは叶いかけた。

 

2-125:牢獄〔13歳:LEVEL17〕
油断した隙を突かれ、ロボ達にやられてしまった僕達。気づけば囚われていた。
ここは一体どこなんだろう?見た感じでは牢屋か何かのようだけど…誰の?
盗子「わーん!しこたま殴られたよー!男女平等にも程があるよー!!」
勇者「くっ…!僕としたことが戦闘中に油断してしまうなんて…!」
博打「仕方ないさブラザー…。ブラザーとブラジャーじゃブラザーに勝ち目は無い。」
勇者「…ハッ、そうだ!姫ちゃんは!?そこの看守!姫ちゃんは無事なのか!?」
看守ロボ「安心シロ。ロボトハ イエ、女ニ暴力ハ振ルワナイ。」
盗子「あ、アタシは!?ねぇアタシはなんで!?」
博打「いや、さっき普通に女を襲おうとしてたぜコイツら…?」
看守「ニンゲン コトバ ムツカシネ。」
盗子「ホントにロボ!?そんな人間の卑しい部分までコピーする必要性は!?」
勇者「いいから答えてくれ!姫ちゃんをどこへやった!?」
看守「イヤ、ソノママ普通ニ食事シテタガ…?」
勇者「…彼女のド根性に乾杯したい。グラスを二つ…あ、お前の分も入れて三つ。」
盗子「今は乾杯とかしちゃう状況じゃないから!てかアタシのぶん無くない!?」
博打「ところでこれから、俺達をどうするつもりなんだいエネミー?」
看守「黙ッテ待テ。全テハ我ラガ父…「ドクター・栗尾根(クリオネ)」ガ決メル。」
勇者「!! ど、ドクター・クリオネだって!?」
盗子「えっ!知ってるの勇者!?」

なんて珍妙な名前なんだ。
「勇者」が言うな。

 

2-126:一切〔13歳:LEVEL17〕
僕達を捕らえたロボの親玉は、「ドクター・栗尾根」とかいう変な名前らしい。
さっきのロボの発言からして、この都市を支配してる黒幕に違いない。倒さないと。
盗子「ね、ねぇ勇者。なんとか逃げられないかな?看守はどっか行っちゃったし…。」
勇者「いや、親玉に会おう。僕らは殺されず生かされた…何か意味がありそうだ。」
博打「まぁ安心しなよ盗子ベイベー。いざとなったら俺が全員倒してやるぜ!」
盗子「無理だよアンタ雑魚じゃん!「勝負師」なのに素人よりも運弱いじゃん!」
博打「オイオイ、それは三年も前の話だろ?今や俺の予想的中率は100パーさ。」
盗子「えっ、この三年で何があったの!?いつの間にそんなに強く…」
博打「思った逆に賭ければ、バッチリだぜ!」
盗子「100パー外れるんじゃん!」
勇者「じゃあ一応お前は強いんだよね?なんでわざわざ僕の名を騙ったりしたの?」
博打「ギャンブルの世界に「守り」の文字は無くてね。仲間が必要だったのさ。」
勇者「なるほど、一切…一切ほかに頼れる友達が一切いないと。」
博打「いや、そんなに「一切」を強調されるとヘコむぜブラザー…。」
勇者「あ…ご、ごめん。何気ないんだ。」
博打「いや、そこは「悪気」を否定してくれないと全然フォローに…」

そんなこと言われても。
悪気はあった。

 

2-127:交渉〔13歳:LEVEL17〕
一時間ほど待たされた後、僕達はドクター栗尾根の部屋へと通された。
敵か味方か…それ次第では戦闘もやむを得ないけど、できれば穏便に済ませたい。
栗尾根「イヒヒ。よ、よよよく来たな小僧ども。こ殺さず生かしたのは他でもな…」
勇者「ありがちな前振りに付き合っている暇は無いんだ。本題に入ってほしい。」
栗尾根「くっ…うう噂通り無礼な小僧だ。よ、よしいいだろう。そ率直に言おうよ。」
博打「いや、「言おうよ」とか言われてもさドクター…。」
盗子(う〜ん…。どっかで聞いたような口調だなぁこのお爺ちゃん…。)
栗尾根「い、言うぞ?言っちゃうぞ?ズバリ!!…ズバれば…ズバる時…?」
盗子「ズバれよ!! 自信なさげにもったいぶるなよ!いいからさっさと言って!」
栗尾根「うぅ…そそその〜…「孫」を…孫を捜してほしいのだ。我が最愛の孫娘だ。」
勇者「…悪いけど、僕らにはもっと大きな役目があるんだ。関係無い仕事は…」
栗尾根「い、いや!ある!まま孫は「先輩」を追うと言って出て行ったそうじゃん!」
博打「先輩って…まさか「学園校」のかい?だがなんで俺達だと思うんだドクター?」
栗尾根「き貴様だ。以前、ま孫からき聞いた話にで出てきた奴に、よよよく似てる。」
盗子「えっ、アタシ!?何て言ってたの?あ、やっぱ「とっても可愛い☆」とか??」

栗尾根「ワキから茶を出すと。」
盗子「アタシじゃないからそれ!!」
栗子のトラウマだった。

 

2-128:捜索〔13歳:LEVEL17〕
ロボ博士に捜索を依頼された孫娘は、僕達の後輩だそうだ。メイガンも知っていた。
栗尾根「た、頼む!孫を捜してくれ!ささ最近、この街の近くで似た子供が…!」
勇者「断る。お前はこの都市を支配していると聞く。悪に手を貸すつもりは無いよ。」
博打(…ど、どうしちゃったんだブラザーは?何か悪いものでも食ったのか?)
盗子(ううん。むしろいいのを何発も食らったみたいでさ…。)
栗尾根「ち、ちち違うんだ!わワシではアイツらの暴走をと止められねぇでさぁ!」
勇者「暴走?でもさっきの感じだと、ロボはお前の言うことを聞きそうだけど?」
栗尾根「あ、ああ。確かに、聞く…だけ。」
盗子「ナメられてるんじゃん!ホントにアンタが作ったの!?」
栗尾根「い今では看守ロボや一部のロボしか、あ相手にしてくれん。 だが…!」
勇者「でも、孫なら食い止められる…そう言いたいんだね?」
栗尾根「うむ。あの子には、ふ不思議な力がああるのか、みんなし従うのだったよ。」
盗子「ん〜。どうする勇者?断っても戦闘にはならなそうだけど。」
勇者「ロボを自在に操る女、栗子か…。探す価値はあるかも…しれないね。」

〜その頃、近隣の「ルッシュ村」では…〜
栗子「あの!す、すすすみません!えと、人を…人を捜したりしちゃってまして…!」
女「あら、人捜し? 誰を捜してるの?顔の分かる何か、持ってるかしら?」
栗子「あああの、その、ああ憧れの…その…先輩で…ち力になりたくて…その…。」
女「う〜ん。でも写真も無いんじゃちょっとわからないわねぇ〜。」
栗子「え、えと…えと…あっ!あ、アレです!あああんな感じですっ!」
栗子はチワワを指差した。

 

2-129:聞込〔13歳:LEVEL17〕
栗子を探すことにした僕達は、目撃情報があったという「ルッシュ村」へと向かった。
食事中だった姫ちゃんも戻ったけど、パーティーは4人…。人捜しには心もとない。
とりあえず手分けして捜すことにしよう。片っ端から聞き込みをして回るしかない。
たとえ時間はかかろうとも、引き受けたからには全うしなければ。「勇者」として!
勇者「えっと、人を捜してるんだけど…。」

栗子「は、はい…?」
一瞬だった。

 

2-130:人間〔13歳:LEVEL17〕
村に着き、最初に話しかけた少女…このアタフタっぷりはロボ博士に似てる。
栗子「うぇっ!?ゆ、ゆゆ勇者先輩!?何がどうしてどうなっちゃいましたか!?」
勇者「やっぱりお前が栗子だったか…。 オーイ!見つけたよみんなー!!」
栗子「え、「やっぱり」…?見てわわからない程に私は変わっちゃりましてか?」
盗子「あっ、栗子!? って早っ!普通こういう時ってもっとこう色々と…」
栗子「わー!!のの飲めません!い今はお茶菓子がきれてるんでそのっ!!」
盗子「誰が出すか!!どう見たって人間じゃん!茶菓子の前にアタシがキレるよ!」
勇者「…人間?」
盗子「失敬な!真顔で聞き返されると本気でヘコむから!」
博打「そうだぜブラザー。そりゃ多少ウザい所はあるが、人間は人間…」
盗子「うっさいよ!人間かどうかの話に「ウザさ」を出す意味がわからないよ!」
姫「うざくたって いいじゃないか にんげん…だよね?」
盗子「人間だものー!!うわーん!!」

まったく…。話が進まないじゃないか。
勇者は〔転嫁〕を覚えた。

 

2-131:新手〔13歳:LEVEL17〕
栗子を見つけたので、僕達はモレンシティへと戻ることにした。早い仕事だった。
栗子「そ、そうですか…。勇者先輩は記憶が混乱しまくりまくりんなんですか…。」
盗子「ところでさ、アンタは何で追ってきたわけ?誰に用があったのさ?」
栗子「うぇ!?いい言えませんですよ!け賢二先輩が気になるだなんてそんな!」
盗子「言ってる言ってる!これ以上ないほどに言っちゃってるから!」
姫「賢二君…いい子ちゃんだったのにね…。」
栗子「えっ、故人!?なぜに故人的扱いなんでありましょうか!?」
博打「まぁ気にするなよ栗子ベイベー、俺がいるさ。ホラ、街が見えてきたぜ?」
勇者「とりあえずロボ博士の元へ行こう。今後の話はその後…えっ!?」
勇者は街の異変に気づいた。
ロボの残骸が多数転がっている。
勇者「な、なんだコレは…!? オイそこのロボ!誰にやられたの!?オイ!」
ロボ「ホ…細身ノ魔剣…鉄仮面…ガキ…。ミンナ…一瞬…デ…。(ガクッ)」
栗子「わー!ろ、ロボットさーん!目ぇひんむいてくださいー!えーん!!」
盗子「いや、「ひんむけ」って…。 でも、一体誰がこんな…。ちょっと酷くない?」
勇者「何者かが動いている。脅威は…五錬邪だけじゃないのかもしれない。」

〜その頃〜
少年「どうでやんした「覇者(はしゃ)」の兄貴?腕試しの感触はどうで?」
鉄仮面「うむ。まだ少し慣れんが、だいぶ掴めた感はある。秒殺だったよ。」
少年「さっすが「魔神の剣」でやんすね。どうです?アッシらだけで攻めやすかい?」
鉄仮面「焦るな「門太(モンタ)」、まだ早い。 “奴”の元へ戻るぞ。」
勇者の勘は当たっていた。

 

2-132:密偵〔13歳:LEVEL17〕
街に戻ると、ロボ軍はほぼ全滅していた。鉄仮面の少年…果たして敵か味方か。
でもまぁとりあえず、結果的には街は解放されたわけだし、今回は良しとしよう。
勇者「約束通り、栗子は見つけてきたよ。ま、制御すべきロボはもういないけど。」
栗尾根「お、おおおっ!さ捜したぞ!お前がカクリを出たと聞いてかからもう…!」
栗子「わっ!くく苦しいですお爺ちゃん!あ、あと言いにくいけどお口臭いッス!」
勇者「じゃ、僕らはもう行くよ。戦士の世界に「安息」の文字は無いんでね。」
博打「だね…って、どこへだっけ?そういや俺はキミらの目的を知らないんだが。」
勇者「ん?そうだったっけ? すまないけどビッチ、説明を頼めるか?」
盗子「ホントにすまないって思うなら名前覚えてよ!ムキィー!」
盗子は渋々状況を説明した。
栗子「ふぇ〜。な、なんか不自然なぐらいそ壮大なお話になっちゃりますねぇ〜。」
博打「ふ〜ん。で?何か有力な手掛かりとかあったのかい盗子ベイベー?」
盗子「あ〜。一応それっぽい地図は持ってんだけどさ、古代文字が読めなくて…。」
勇者「だから、とりあえず今は五錬邪を追ってるんだよ。他にアテが無くてね。」
博打「なら…「ローゲ王都」に行かないかブラザー?前に面白い話を聞いたんだ。」
姫「じゃあ私がツッコミを担当するよ。頑張って引き立てるよ。」
博打「いや、そういう面白さを語る気は無いんだ姫ちゃんベイベー…。」
勇者「面白い話…どういう話なの?」
博打「胡散臭くもあったがね。「邪神:バキ」封印の地…その謎がどうとかさぁ。」
盗子「じゃ、邪神!?マズいよ勇者!もし先に五錬邪が見つけちゃったら…!」
勇者「わかった急ごう。絶対に奴らよりも先に…むっ!?誰かいる!!」
博打「…そこかっ!!」
博打はトランプを投げた。

盗子の額に命中した。

 

2-133:音速〔13歳:LEVEL17〕
微かに感じた誰かの気配。でも博打の攻撃は失敗…多分逃げられたと思う。
盗子「うっぎゃー!! 痛い!痛いよ!アタシが何したってんだよー!」
博打「す、すまない盗子ベイベー!柱の陰に誰か居たから俺は…!」
盗子「柱って逆方向じゃん!なんで180度投げ損ねられるのかを知りたいよ!」
勇者「もういない…逃げられたね。五錬邪一派の可能性もある、今すぐ向かおう!」
博打「ま、マジで?かなり遠いぜ?何十日…いや、歩きじゃ何ヶ月かかるか…。」
栗尾根「なならばアレに乗ってい行くがいい。わ我が自信作、「音速車」だい。」
〔音速車〕
ドクター栗尾根が完全機械制御化に成功した、超高性能小型車。
対障害物センサー搭載で、安全な走行が可能となっている。
最高速度は確かに速いが、「音速」と呼ぶのは調子に乗りすぎだ。
勇者「いや、悪いけど遠慮するよ。乗り物には悪い思い出があってね。」
栗子「だ、だ大丈夫ですよ!わ私がご一緒しまうまっすから!整備ししますから!」
栗尾根「なっ!な何言ってるんだ!そそんな危険な場所行くなんてバカだけだぞ!」
勇者「それは…僕らへの「挑戦状」と受け取ってもいいのかなジイさん?」
栗尾根「あ゛。」
栗子「わ私は平気だから!お願いだから行かせちゃってよお爺ちゃん!お願い!」
栗尾根「・・・・・・・・。」

姫「…わかったよ。行きなさい。」
栗尾根「わかっ…って、えぇっ!?」
姫はジイさんの見せ場をかっさらった。

 

2-134:報告〔13歳:LEVEL17〕
目的地も決まり、急がなきゃならない理由もできた。早いとこ出発しなければ。
勇者「さぁみんな、早速出発するよ。準備はいい?栗子もいけそうな感じ?」
栗子「えっ!?は、ははハイ!じ人生は冒険だと思いますよっ!!」
盗子「どういう意味!?「逝けそう」なの!?もしかして「逝けそうな感じ」なの!?」
博打「ま、まぁ諦めようぜ盗子ベイベー。急ぐためには他に手は無さそうだし。」
勇者「博打の言うとおりだよボンゴレ、もっと落ち着いて。ホラ、姫ちゃんを見なよ。」

姫「このネジは…いいよね?」
栗子「わー!どどどれも抜いちゃダメでちゅよー!!」
勇者は不安になった。
〜その頃、五錬邪のアジトでは…〜
兵士「赤錬邪様!勇者一行を見張らせていた密偵から、電報が入りました!」
赤錬邪「む?あのガキどもがどうかしたのか? よし、五・七・五で伝えろ!」
兵士「えぇっ!?は、ハイ!その…ローゲ国・神の手掛かり・あるのかも!」
赤錬邪「わかりづらい。」
兵士「そ、そんなっ!」
赤錬邪「ローゲか…桃錬邪が近いな。 すぐに伝えろ、奴らより先に入手しろとな!」
兵士「…は、ハッ!」
その晩兵士は悔しくて泣いた。

 

2-135:順調〔13歳:LEVEL17〕
モレンシティを発ち、三日が経った。今のところ意外にも快調に進んでいる。
ロボ博士の計算が確かなら、もうじき「ローゲ王都」に着く頃だと思うんだけど…。
勇者「だいぶ走ったね…。見たところ順調そうだけど、調子はどうなの栗子?」
栗子「じゅ、順調ですよ!とととてもブレーキが壊れてから五時間とは思えませぬ!」
盗子「えぇっ!?全然順調じゃないじゃん!ここまで来れたのが奇跡なんじゃん!」
博打「違うぜベイベー。「奇跡」ってのは不幸じゃない、幸せのために起こるのさ。」
盗子「今はそんなキザなセリフが意味を成す状況じゃないから!」
姫「あ〜、今のはキマッたね博打君。なかなかヤルね。」
博打「フッ、照れるぜ姫ちゃんベイベー。褒めたって何も出ないぜ?」
姫「…と、見せかけて?」
栗子「わー!ののの飲めませんですー!!」
盗子「なんでアタシを見んのさ!?出さないってばっ!!」
だがスピードは出まくってる。

 

第九章