第十七章 |
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241:施設〔8歳:LEVEL5〕 | |
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今回もまた運転手に問題があったため、例の如く親父の運転で大獣車は走った。 そして着いたのは「一家団ランド」という施設。一見アットホームそうだが、しかし…。 勇者「オイ案奈、ここは一体どんなスポットなんだ?嫌な予感しかしないのだが…。」 案奈「首吊り〜、飛び込み〜、その他各種アトラクションが〜充実しておりまァす。」 血子「一回こっきりで人生終わりじゃん!いくつも楽しんでらんないじゃん!!」 少年「ねぇパパ、ここに来ればママに会えるってホント?」 父親「ああ、すぐに会えるよ…すぐに…。」 血子「騙されてる!騙されてるよボウヤ!?」 父「感動の光景だな…。父さんちょっと泣けてきたぞ。」 血子「血子も泣きそうだよ違った意味で!!」 勇者「こんな負の感情が渦巻く所に、俺達は一体何をしに…。」 義母「てゆーか〜、アタシもうお腹すいちゃったんだけどぉ〜?」 案奈「え〜、この先にレストランがありまして〜…」 勇者「やれやれ…どうせ毒入りの食べ物でも売ってんだろ?」 案奈「餓死するまで〜監禁されまァす。」 勇者「せめて商売しろよ!!」 血子「だ、大丈夫だよダーリン!血子が頑張ってお弁当作ってきたから!」 勇者「おぉ、やるじゃないか血子…って、これは何ていう料理だ?」 血子「えっとね、「ミミゴー」ってゆーの。こんな大きいのは結構貴重なんだよ☆」 勇者「へぇ〜。 だがそんな貴重品、どこで手に入れたんだ?」 血子「えへへ☆ 学校で☆」 勇者「学校…?」 ほ、邦壱…。 |
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242:最期〔8歳:LEVEL5〕 | |
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なんとも怪しい遊園地「一家団ランド」。出口とか無さそうな雰囲気でイッパイだ。 もともと期待なんぞしていなかったが、まさかこれ程までに酷い旅とは思わなんだ。 勇者「コラ親父!なんでこんな不気味な場所まで連れて来たんだ!?目的は!?」 父「はっはっは! 目的もなにも、そんなの家族で楽しむために決まっとろうが。」 勇者「楽しめねーから言ってんだよ!」 父「ワガママを言うな勇者。 最後の…家族旅行…なんだから…。」 勇者「最期になりそうなのはテメェのせいじゃねーか!」 義母「ねぇ勇者ちゃん。あの「お化け屋敷」なんだけど〜、超入ってみたくな〜い?」 血子「えぇ〜!こ、怖いよ!化け物がいるんでしょ!?」 勇者「化け物が何を言うか。」 血子「違うもん!血子はただのキュートな根っこだもん!お化け怖いー!!」 勇者「ったく…。 騒ぐな血子、こんなのは所詮子供騙し…」 看板『霊魅のドキドキお化け屋敷』 勇者「本物かも!!」 義母「ん〜、じゃあアレは〜?あのメリーなんとかってゆーの。」 勇者「む?「メリーゴーランド」のことか?」 血子「ち、違うよダーリン!「メリーゴートゥヘル」って書いてある!」 勇者「まともなアトラクションは無いのかよ!このフリーパスチケットの意味は!?」 父「やれやれ…。 じゃあ最初は穏やかに「観覧車」でも乗ってみるか?」 チョメ「ポピュッパー!ポピュッパップー!!」 勇者「言っとくがチョメ太郎、勘で乱射するから「勘乱射」ってわけじゃないぞ。」 チョメ「ポ、ポピュッ!?」 血子(どうするダーリン?きっとその観覧車にも何かあるよ?) 勇者「…俺は行くぞ。 逃げ回るのは、性分じゃないからな。」 閉園時間まで生き延びれば、それで済むんだ。 |
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243:真剣〔8歳:LEVEL5〕 | |
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結局、親父の提案に従い観覧車に乗った俺達。二人乗りなので俺は親父と乗った。 親父は最初は大人げなくはしゃいでいたが、途中から次第に静かになっていった。 うるさいのも嫌だが、嵐の前には静けさが訪れるというし…かなり不安で仕方ない。 父「思えば、こうしてお前と落ち着いて話すのも久しぶりだな…。」 勇者「久しぶり? 俺の記憶が確かなら、恐らく人生で初の経験だと思うが?」 父「そうか…確かにそうかもしれんな。」 勇者「? どうした親父、いつになく神妙な顔つきだが…。」 父「今日はちょっと、お前に大事な話があってな。」 勇者「大事な話? 悪いが貴様なんぞと結婚してやる気は無いぞ?」 父「ちゃかすな勇者。 父さん、シリアスモードは五分が限界なんだ。」 勇者「な、難儀な生き様だな…。」 父「母さんのことだ。」 勇者「母さ…ま、まさか俺の…ホントの母親のことか!?」 父「お前は何故か聞いてこなかったから、今まで話さなかったんだが…。」 勇者「どうせろくでもない事実が待ってると思ってな。怖くて聞けなかった。」 父「まずは結論から言おう。 お前の母はもう…既に、亡くなっている。」 勇者「…そうか。 だがまぁ一度も抱かれたこともない母だ、特に感慨も無いな。」 父「そう言ってやるな。 自分の死を覚悟のうえ、お前を産んだんだからな…。」 勇者「えっ…。」 父「お前のその「勇者」って名前だがな、考えたのは実は…母さんなんだよ。」 勇者「なっ!俺の名は、親父がRPG好きって理由で付けられたんじゃ…!?」 父「母さんがRPG好きだったんだ。」 勇者「同じか!そのフザけた事実は揺るがないのか!!」 父「…む? 気づけばもう一周か、早いな…。」 勇者「おぉ、言われてみればそうだな。意外にも何事も無くてビックリだぞ。」 父「違うぞ勇者、こういう時はこう言うんだ。 「時間が…止まればいいのに…」。」 勇者「お、親父!?いきなり何を言い出すんだ!?」 父「すると男は言う、「じゃあ魔法…かけてやろうか?」。 そして見つめ合う二人!」 勇者「なんだそのクサいセリフは!?顔から出た業火で世を焼き尽くせそうだぞ!」 父「そして二人は熱いキッス! オゥ、なんたる定番!しっかしロマンティーック!!」 勇者「間違えるな!そんな定番はモテない妄想野郎どもによる悲しみの産物だ!」 父「いや、待てよ?その前に停電で止まるという展開もありがち!ありがっちー!」 そういえば…五分経ったな…。 |
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244:苦悩〔8歳:LEVEL5〕 | |
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観覧車の中で、親父に衝撃の真実を中途半端に聞かされた。ホント中途半端に。 正直気にはなったが、その後回復した親父は何一つ覚えていなかったので諦めた。 まぁ死んだと聞かされた以上、我が未来には関係あるまい。 別にいいか…な…。 勇者「ふぅ〜、なんとか夕方まで生き延びたな…。 ぼちぼち帰らないか親父?」 父「今夜は…帰したくない!」 勇者「まだ続いてたんかい!!」 案奈「あ、出口は〜館内各所に〜合計五ヶ所ございまァす。」 勇者「おぉ、ちゃんと出口はあったのか。 一応外に帰す気はあったのだな。」 案奈「アタリは一つで〜ございまァす。」 勇者「残りは何だ!!?」 父「さぁ行け勇者よ!ちゃんとアタリの出口を探してくるんだぞ!」 勇者「チッ、偉そうに…。 わかったよ、俺も帰れなきゃ困るんでな。」 父「アタリが出たらもう一本だ!」 血子「アイスじゃあるまいし!」 勇者「…やれやれ。もう相手にするな血子、行くぞ。チョメ太郎もだ。」 血子「あ、うん!」 チョメ「ポピュッパー!」 タタタタタッ…(走) 父「…勇者にな、母親の話をしたんだ。」 義母「ま、マ〜ジでぇ〜? なにも今日する話じゃなくな〜い?あったま悪ぅ〜。」 父「うぬぅ〜…。」 義母「ねぇパパちゃ〜ん、この家族旅行の目的〜…」 父「言うな、これでも反省してるんだ。折角の…そして最後の旅行だったのにな…。」 義母「…って、何だっけぇ〜?」 父(母親役…間違えたかな…?) |
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245:意表〔8歳:LEVEL5〕 | |
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「一家団欒」を掲げた旅行も見事失敗に終わった夏は過ぎ、秋がやってきた。 明日は遠足…恐らくは春に引き続き「蒼茫海賊団」を探すことになるのだろう。 教師「春は残念な結果に終わりましたが、気づけば秋遠足の時期になりましたね。」 勇者「なぁ先公、そういやその海賊団ってのは滅多に目撃されないんだよな?」 教師「ええ。まぁ春遠足の少し前に彗星の如く現れた新参の海賊ですからね。」 盗子「つい最近じゃん! だったら目撃されなくて当然なんじゃないの?」 勇者「うむ。少なくともそんな短期間でなぜ「幻」とまで言われるのかわからんな。」 教師「あ〜。 実はその船、消えたり飛んだりするらしいのですよ。」 勇者「なっ!? バカな!今の技術で船ごと消えるとか飛ぶとか有り得んだろ!?」 姫「クルック〜。」 勇者「ハト!? そうか、マジックか!」 盗子(ヤバい!通じ合ってきてる!!) 教師「しかも彼らは、そんな船を持ちながらほとんど港を襲わないのです。」 盗子「ふ〜ん、確かに変だね。でも「ほとんど」ってことは少しは襲ってるんでしょ?」 教師「ハイ、食い逃げとか。」 盗子「ショボッ!それが「海賊」のやること!?ただの小悪党じゃん!」 教師「ですが彼らの技術力は未知数…。脅威となる前に潰すのが得策なのです。」 博打「疑わしくば滅せよ…か。相変わらず恐ろしい思想だぜティーチャー…。」 巫菜子「宝を奪えって話は建て前だったわけだね…。(まぁどのみち悪だけどな。)」 教師「ん〜、大体こんな感じですかね。 みなさん、わかりましたか?」 生徒「ハーイ!」 教師「というわけで、明日は「イモ掘り」に行きます。」 生徒「どういうわけで!?」 |
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246:懐古〔8歳:LEVEL5〕 | |
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秋の遠足は三年ぶりの「イモ掘り」らしい。あの思わせぶりな会話は何だったんだ。 てっきりまた海賊探しだと思って心の準備をしてたってのに…やれやれだよ。 教師「今回は五号生同士の親睦を深めるイモ掘りです。仲良くしてくださいねー。」 勇者「チッ、まぁそういうことなら仕方ない。不本意ではあるが一時休戦といくか。」 暗殺美「不本意なのはこっちの方さ。死ねや。」 巫菜子「ま、まあまあ。とりあえず獣車の中では…ね?(とばっちり食うだろうが!)」 盗子「ところでさ、今日はどこ行くの?オナラ魔人のイモ園は燃えちゃったよね?」 勇者「そうだな、激しく燃えたよな。」 姫「バケツリレーの甲斐も無くね。」 盗子「撒いてたのは灯油じゃん!」 教師「燃えたんじゃありません。燃やしたんです。」 盗子「冷静に開き直らないで!! …って、やっぱ先生が着火したんかい!」 教師「別に気にしてませんよ。もう済んだことですから。」 盗子「アンタ加害者じゃん!!」 教師「実はあの時燃やさなければ、土の病気であの土地は永久に死んでいた…。」 盗子「そ、そうだったの!?」 教師「…というのはどうでしょう?」 盗子「いま考えたんかい!!」 勇者「まぁ落ち着け盗子。 それよりもホラ、到着前にマスクを装着しとくべきだ。」 盗子「あっ! そ、そだったね。前回は勇者…死にかけたんだもんね…。」 勇者「そうだな…。「ガスマスク」じゃなくて「デスマスク」だったからな…。」 |
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247:遭遇〔8歳:LEVEL5〕 | |
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走ること数時間。俺達はオナラ魔人のいるイモ園へと到着した。 既に少し臭い。 よし、ならば俺もマスクを装着し、ニオイに備えるとするか。 もう嗅ぎたくな…え゛? 勇者「フッ…。ひ、久しぶりだなオナラ魔人。去年の秋にボコして以来か。」 オナラ「だ、誰だ貴様!?私に銀行強盗の友人はいないぞ!(プ〜)」 勇者「ウルサイ!この「目出し帽」はオヤジの差し金…グハッ!やっぱ臭ェ!!」 盗子「が、頑張って勇者!見た目が滑稽すぎて同情しきれないけども!」 暗殺美「というかよく考えるさ勇者!それ鼻にも穴あるから被る意味無いさ!」 オナラ「ところで、キミらは何しに来たんだね? 私は入園を許した覚えは…」 教師「おやおや、今日はいい感じに乾燥してますね〜。」 オナラ「や、やめてくれ!もう燃やさないでくれ!!」 勇者「グフッ…ま、まぁ諦めろ。 コイツに目を付けられた時点で…む?」 ブロロロロロ…。(上空から) 暗殺美「な、何さこの音は!?空の上から…!?」 勇者「空飛ぶ船…ま、まさかコレが「蒼茫海賊団」!?」 〜その頃、船内では〜 少女「腹減ったニャー!もう耐えられニャいのニャー!死ぬぅうううう!」 少年「ライ殿、お願いだから我慢して欲しいッス!食糧街はもう少し先なんスから!」 ライ「あっ!イモ園!イモ園があるニャ!ここを襲うのニャ「下端(カタン)」!」 下端「駄目ッスよ!船長は犯罪事は嫌いなんスから!」 ライ「うーるーさーいー!海賊団ニャんだし悪事の一つ二つは仕方ニャいのニャ!」 下端「せ、船長〜。もう自分には止められないッス〜。」 賢二「いや、でもここは臭いから…。」 |
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248:躊躇〔8歳:LEVEL5〕 | |
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突如上空に現れた海賊船。恐らく「蒼茫海賊団」と見て間違いは無いだろう。 幻とか言われてる割にはヤケに堂々と出て来たので驚いたが、これはチャンスだ。 ここで奴らを一網打尽にし、この「学園校の蒼き竜巻」の名を世に轟かせてやる。 盗子「ど、どうするの勇者!?真っ直ぐこっち向かって来てるけど!」 勇者「どうするもこうするも、どうしたりこうしたりだ!」 盗子「サッパリわかんないよ!!」 姫「…深いね。」 盗子「深いの!?」 暗殺美「まぁとりあえず、空から引きずり降ろさなきゃ話にならないのは確かさ。」 勇者「そうだな…。 オイ先公、何かいい案は無いのか?たまには頭貸しやがれ。」 教師「さぁ〜?名前でも呼べば降りて来るかもしれませんよ? フフフ。」 勇者「へ…?」 〜その頃、甲板では〜 下端「船長!なにやらイモ園には誰かいるようッス!どうするッスか?」 ライ「きっとイモ泥棒ニャ!けしからん奴らニャ!」 賢二「どの口がそんなセリフを!?」 太郎「遠足か何かじゃないの?」 賢二「えっ…アレッ!?ななななんでみんながいるの!?」 剣次「どうした賢者殿?お仲間でもいたのか?」 賢二「あ、ハイ。 仲間というか悪魔というか…。」 剣次「悪魔…そうか、この異臭はそのせいか。」 賢二「いや、それは悪魔に失礼かと。」 剣次「で、どうする?殺るなら手伝うぜ?」 賢二「…だ、ダメですよ!僕の友達なんですから!!」 |
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249:再会〔8歳:LEVEL5〕 | |
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色々と考えた結果、やはり海賊船は砲撃して撃ち落すことにした。バズーカあるし。 まぁそれで倒せるとは思えないが、うまくやれば着陸させることはできるだろう。 そして奴らを一網打尽にし、この「学園校の蒼き隼」の名を世に轟かせてやる。 勇者「よし、野郎どもバズーカを用意し…む?なんだあの白い布は…?」 姫「あ〜、今日はいい天気だしね。」 盗子「洗濯物!?「白旗」って意味じゃないの!?」 勇者「ば、バカな!仮にも「海賊」と名乗る奴らが、戦わずして降参などと…!」 盗子「あっ、出て来たよ!誰か出てき…うぇっ!?」 賢二「白旗ですー!降参なので撃たないでー!」 暗殺美「えっ!ああああアンタは…!!」 勇者「お前…生きていたのか!!」 賢二「勇者君!みんなー!会いたかったよー!!」 勇者「カルロス!!」 賢二「だから賢二だってば!!」 |
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剣次「おぉ、勇者じゃねーか!」 勇者「カルロス!」 賢二「えぇっ!?」 |
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250:談笑〔8歳:LEVEL5〕 | |
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賢二達の登場でゴタゴタしたため、結局遠足は中途半端な感じで終了した。 その夜、俺は再会したカルロスを家に招待した。親父とも話したいだろうからな。 父「いやぁ〜、久しぶりだなカルロス。もうアレはどれくらい前の話かなぁ?」 勇者「まだ俺が二歳ぐらいの頃か。確か一ヶ月程ウチにいて、剣とかも習ったな。」 剣次「あ〜、あん時は参ったぜ。まさか放浪中に宇宙船が墜落するとはねぇ。」 父「それにしても、しばらく会わん間に海賊になってるとは驚いたな。 ハハハ!」 勇者「あ、そういや船は先公が調べたいとか言ってたが…その間どこに住むんだ?」 剣次「その点は問題ねぇよ。みんなまとめて間借りさせてくれるって人がいてさ。」 勇者「ほぉ、また随分と奇特なヤツがいたもんだな。あんな騒がしそうな連中を…」 (「ちょっ、アンタ何してんの!?ここは血子の部屋…って、なんでおコタ持参!?」) (「ん〜。 ちょいと狭いけど、まぁミカン箱よりはマシにゃ。」) (「うわっ!しかも他にもいる! 三人も集まって何!?何する気なのよ!?」) (「あ、自分のことはお構いなくッス!」) (「いや、お構いなくとか言われても!居るだけで迷惑なんだってば!」) (「じゃあ僕には、お構って。」) (「あつかましいよ!!」) 聞こえない。俺には何も聞こえない。 |
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251:再考〔8歳:LEVEL5〕 | |
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遠足も終わり、体育祭の季節となった。まぁ今年は五号生だし優勝は堅いかな。 勇者「体育祭が終わりゃもう冬…なんか今年は一年が早いな。」 盗子「冬か〜…あっ、そうだ!冬といえばちょっと気になることがあったんだよ!」 勇者「安心しろ、俺はお前は気にならない。」 盗子「気にしてよ!四六時中気にしててよ! …って、「極秘書庫」のことだよ!」 賢二「あ〜。 前に言ってたね、侵入して先生に怒られたって。」 勇者「極秘書庫?あの「歴史全書」とかいう、親父が書いた小説があった所か?」 盗子「それなんだけどさ、その本ってホントに…小説なのかなぁ?」 勇者「あん?何を言ってるんだ、冗談は顔と体と心と魂だけにしろ。」 盗子「全部じゃん!存在全部じゃん! …って、だってさ、ベビルん時にホラ…」 賢二「あっ、そっか!その時聞いた話では「式神」で守るほど重要な場所って…!」 盗子「でしょでしょ?そんな場所に、ただの小説置いとくって絶対おかしくない?」 勇者「…なるほど、これは検証の余地があるな。 よし!今から行くぞ!」 盗&賢「うげっ!?」 |
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〜放課後〜 勇者「…というわけで、今から侵入する。心の準備はできたか?」 盗子「イヤッ!イヤだよ!絶対にイヤァーー!!」 賢二「僕も先生に殺されかねないようなことはしたくないよー!」 勇者「ありがとう、やっぱお前らは親友だ。」 二人「話を聞いてーー!!」 剣次「安心しなよ賢者殿、式神とやらはこの俺がチャッチャと片付けてやるからさ。」 賢二「だ、ダメですよ剣次さん!アナタ利用されてるんですよ!?気づいて!」 勇者「さぁ入るぞ。先公にバレたら厄介だからな。」 二人「「厄介」で済めばいいなぁ…。」 |
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252:歴史〔8歳:LEVEL5〕 | |
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カルロスの助けを受け、俺達は再び極秘書庫に侵入することができた。 もしあの本が真の歴史書なのだとしたら、「魔王」と「勇者」は実在したことになる。 となれば、解明しないわけにはいかない。 たとえ(盗子の)命を危険に晒そうとも。 剣次「じゃ、俺はもう帰るぜ。何する気かわかんねぇけど頑張れよな。」 勇者「ああ、手間かけたなカルロス。」 盗子「こ、こうなったら腹を決めるしかないね!」 賢二「もしバレたら首をキメられるけどね…。」 勇者「見つけたぞ「歴史全書」。 さぁ読め賢二、さっさと読んでさっさと逃げるぞ。」 賢二「うん…オッケー! えっと〜…新星暦523年、突如現れた「魔王」により…」 勇者「その概要部分は前回読んだ。だからもう本編に入ってくれ。」 賢二「あ、そうなんだ。 じゃあねぇ…。」 |
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勇者「20年前…結構最近のはずなのに、俺達が知らないのは何故だ…?」 盗子「ん〜。真面目な話のはずなのに、妙にフザけてる気がするのは何故…?」 |
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賢二「あっ、出て来たね「勇者」さん。」 勇者「うむ。 一体どんな活躍をしたのかが気になるところだぜ、同じ「勇者」として。」 |
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盗子「な、なんだか最後の方はすんごい投げやりなんだけど…。」 賢二「それになんだか、肝心の勇者さんだけちっとも活躍してないんだけど…。」 勇者「いや、待て!まだ続きがある! きっとこっからに違いない!」 |
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盗子「か、カクリ島!?ここじゃん!この島じゃん!!」 勇者「むー。この島だって話になるとやっぱ現実味に欠けるな…。 どう思う盗子?」 盗子「わっかんないけど、やっぱこんな部屋に隠してあるくらいだしさ〜。」 勇者「賢二、お前は?」 賢二「でもその割に、今日の警備は手薄だったよね?」 勇者「お前は?」 教師「死にますか?」 三人「うわぁーーーー!!」 |
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253:計画〔8歳:LEVEL5〕 | |
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俺達が地下牢(学校なのに!)から釈放された頃には、もう体育祭は終わっていた。 半月にも及ぶ獄中生活と説教はさすがに辛かったが、そのぶん得たものはあった。 そこまでするということは、やはりあの本は本物なのだ。 この島には…何かある! 勇者「…というわけで、今日から色々と調べようと思う。 協力頼めるか?」 盗子「イヤッ!イヤだよ!もう牢獄なんて絶対にイヤァーー!!」 賢二「次こそホントに命が危険っぽいから、僕も手伝えないよ…ゴメン。」 勇者「ありがとう、そう言ってくれると思ってた。」 二人「だから話を聞いてーー!!」 〜物陰〜 教師「ホラ、あんなこと言ってる。困ったことをしてくれましたねぇお馬鹿さん。」 剣次「す、すまねぇ!まさかそんな事情があるとは思わなかったんだよ!」 教師「シッ、声が大きい。ウッカリが過ぎると牢獄行きですよ?」 父「そう責めるな…確かにカルロスはちょっと馬鹿だが、根は良い馬鹿だ。」 剣次「いや、どうせなら「馬鹿」の部分から否定してくれよ…。」 教師「もし邪魔でもされたら終わりなんですからね。今後は頼みますよ?」 剣次「わかってる。もうウッカリはしねぇよ。」 父「安心しろ、その点は私もなんとかフォローする。」 教師「まぁアナタがそう言うのなら…。じゃあお任せしますよ? …凱空さん。」 父「うむ。」 剣次「なっ!? アンタが凱空なグベヴォバブボッ!!」 |
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254:執着〔8歳:LEVEL5〕 | |
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冬になった。本来ならば「地獄の雪山登山」の時期だ。 だが今年は行く気は無い。 なぜなら、俺には「隔離計画」について調べるという重要な作業があるからだ。 勇者「どうだ盗子、あれから何かわかったことはあるか?」 盗子「それがさ、バレたらマズいから聞き込みとかもできなくてさ〜。」 勇者「賢二、お前は?」 賢二「とりあえず街の図書館では何の収穫も無かったよ。」 勇者「お前は?」 教師「ホント死にますか?」 三人「うわぁーーーー!!」 |
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255:一年〔8歳:LEVEL5〕 | |
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流れるように時は過ぎ、もう一年が終わろうとしている。今年は異様に早かった。 特に秋後半と冬の記憶が一切闇に包まれている…というか、実際闇の中に居た。 だが、俺は懲りない。たとえまた(盗子が)捕まろうとも、絶対に秘密を暴いてやる。 たとえ(賢二が)死にかけようとも、絶対に真実を解き明かしてやるのだ。 もうじき春が来る。そして、ついに俺は六号生になる。 |
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