第六章

 

76:苦悩〔5歳:LEVEL2〕
村人を看取った俺達は歩を進め、とりあえず村が視界に入る丘までやってきた。
村周辺には奇怪ないでたちの怪物どもがウジャウジャと…。しかもバカデカい!
勇者「それにしても可哀想な村人だった。カタキは…俺が討ってやるからな!」
盗子「えっ、ひょっとして昆虫達に罪着せた!?着せちゃった!?」
勇者「さて、どう攻めるか。俺には背負ってた「ゴップリンの魔剣」しか無いし…。」
賢二「な、なんか集団行動だね…あれじゃ攻め込んだ瞬間にリンチされちゃうよ。」
盗子「でも、あれだけの数を一気に倒す方法なんて…」
ジャキン!
勇者「ジャキン!?」
盗子「な、何の音!?もしかして敵!?」
ガコン!カチッ!

チョメ太郎は武器を構えた。

・対空迎撃用ミサイル
・対戦車用バズーカ
・32連発ロケットランチャー
一同「どっから出したーー!!?」
チョメ太郎「ポピュッパーー!!」

チュドーーン!!(大爆発)

昆虫軍は滅んだ(村ごと)。

 

77:新敵〔5歳:LEVEL2〕
チョメ太郎のおかげで跡形も無くフッ飛んでしまった俺達の宿題。
仕方なくその旨を教師に話すため学校を訪れると、教師は思わぬことを口にした。
勇者「あのさ、昆虫のことなんだが…」
教師「わかってます全滅ですよね。でも大丈夫、新ターゲットは決まりましたから。」
賢二「やっぱり宿題は無くならないんだ…ハァ。」
盗子「んで?今度のターゲットは誰なの?」
教師「いや、実はまだハッキリとした正体はわからないのですが…」
勇者「まぁいいさ。どんな奴が相手でもこの俺がブッた斬ってやる!」

教師「敵は、「ニシコ村民惨殺グループ」です。」

勇者は貝のように口を閉ざした。

 

78:心霊〔5歳:LEVEL2〕
宿題の件は心の奥深くにしまうことにした俺達。まぁ多分バレないだろう。
というわけで予想より早く宿題が片付いたため、この夏は遊ぶことができそうだ。
プルルルル…ガチャッ(電話)
勇者「あ、盗子か?俺だ。今日は「肝試し」やるからみんなを学校に連れて来い。」
盗子「ちょっ…イヤだよ!絶対イヤ!アタシそういうの無理なんだよー!」
勇者「前にも言ったろう?俺もお前は無理。」
盗子「死ね!アンタなんか霊に呪い殺されちゃえ!」
霊魅「霊をナメたらダメですよ…。」
勇者「そうだぞこの野郎!…ってちょっと待て!どうやって電話に割り込んだ!?」
霊魅「だから霊をナメるなと…。」
盗子「えっ!霊の力なの!?そんなことまで出来るの!?」
霊魅「ええ…。ハンドパワーです…。」
盗子「霊じゃないじゃん!思いっきりマジックとかトリックの世界じゃん!」
霊魅「というわけで…肝試しとかやめた方がいいですよ…。では…がちゃ…。」
盗子「えっ!今、口で言ったよ!?「がちゃ」って口で!」

ある意味霊より怖い。

 

79:背後〔5歳:LEVEL2〕
結局肝試しを決行することになった俺、賢二、盗子、姫ちゃん、霊魅の五人。
霊魅の存在は未だに謎だが…まぁいい。とりあえず盗子のビビリ具合いが面白い。
盗子「ほ、ホラ、よく言うじゃん?どこの学校も大抵昔は戦場だったとかで霊が…。」
勇者「何を言ってる?今でもれっきとした戦場じゃないか、生々しく。」
賢二「そうだね…ここほど心当たりのあるスポットもそうは無いよね…。」
姫「夜は墓場で運動会だね。」
盗子「あり得ない!そんな楽しそうな死後はあり得ないー!」
勇者「あれ?お前の後ろに一人…」
盗子「ギャー!ど、どこ!?ヤダヤダヤダやめてぇー!」
勇者「あっはっは!バーカ、騙されやがって雑魚めが。」
霊魅「うふふ…。勇者君って冗談がうまいのね…。」
盗子「む、ムキィー!!」

霊魅「一人どころじゃないものね…。」

これから運動会か。

 

80:来秋〔5歳:LEVEL2〕
夏休みは終わりを告げ、新学期になった。また命懸けの生活が始まる。
教師「みなさん、お久しぶりです。意外にも生存者多くて先生ビックリです。」
盗子「アタシらはその感想にビックリだよ!」
教師「…あれ?おかしいですね、宿題は早々に無くなったはずなのに何人か…」
勇者「テメェだよ!テメェが港でバズーカで…!」
教師「アレは不幸な事故でしたね…。今でも思い出すと茶柱が熱くなりますよ。」
盗子「それを言うなら「目頭」!「しら」しか合ってな…てゆーか事故じゃ無いし!」
教師「あぁ、もうじき遠足ですねぇ…。」
盗子「事故で合ってました!それに茶柱も合ってます!」
教師「まぁ茶柱よりも「人柱」の方が好きですけどね。」

校舎はそういう造りだ。

 

81:遠足〔5歳:LEVEL2〕
秋だ。 というわけで、遠足の季節だ。果たして春のようにうまくいくだろうか…。
教師「みなさんお待ちかねの秋の遠足、今年は「イモ掘り」になりましたよ。」
勇者(フッ、今度はイモか…い、イモ!?)
賢二(敵の想像がつかない…。)
盗子(まさか「殺人イモ」とか!?あり得ない!あり得ないよ!)
姫「きっと「オナラ魔人」とかだよ。プー。」
盗子(イヤ!絶対イヤ!でもなんかいそうで怖いよー!)

教師「敵はオナラ魔人です。」
一同「やっぱりイターーー!!」

とりあえず名付け親は鬼だ。

 

82:芋園〔5歳:LEVEL2〕
今日は遠足の日。敵の正体も定かでないまま、俺達はイモ園に到着した。
園長「みなさん、こんにちは。今日は楽しんでいってくださいね。」
生徒「よろしくお願いしまーす。」

園長「私が園長のオナラ魔人です。」
生徒「園長なのかよ!!」

一同は「ガスマスク」を装着した。
だが勇者だけ「覆面レスラー」になっていた。

親父の差し金だった。

 

83:死闘〔5歳:LEVEL2〕
なんとイモ園の園長だったオナラ魔人。魔人が普通に商売してるとは思わなんだ。
勇者「貴様…魔人の分際で園長とはいい身分じゃねぇか!ブッた斬る!」
オナラ「やかましい!謎の覆面レスラーに言われたかないわい!(プ〜)」
勇者「誰が好き好んでこんな…グフッ!臭ェ!!」
オナラ「失敬な!私のオナラはフローラルだ!(プ〜)」
勇者「それはそれでイヤだろ!…って喋る度にさりげなく屁をこくな!」
オナラ「おっと、これはすまない。ちょっとマナー違反だったな。(スゥ〜)」
勇者「だからってすかすな!音は無くとも臭っ…つーか痛い!目が割れる!」
姫「新しい宴会芸だね。」
勇者「違うから!そもそも宴会で目を割っても笑えな…グェ!」
姫「…新しくはないってこと?」
勇者「そこじゃない!俺が言いたいのは芸じゃな…ぬおぉっ!」

他のみんなはイモ掘りに夢中だ。

 

84:焼芋〔5歳:LEVEL2〕
姿の見えない敵(ニオイ)に苦戦中の俺。あまりの臭さに戦闘どころじゃない。
これ以上は命に関わる…そう思った時、先公が意外な言葉を口にした。
教師「さて、散々イモも採りましたし…そろそろ帰りましょうか。」
勇者「ちょっと待て!まだ敵は倒してな…グハッ!くっさい!」
教師「あぁ、いいですよ。入園料は払うことにしましたから。」
勇者「それで敵扱いかよ!」
オナラ「今年もそのつもりだったんかい!この悪徳教師め!」
教師「そんなに褒めても何も出ませんよ?」
オナラ「褒めとらんわい!」
教師「あ、そうだ。折角ですし、焼きイモを堪能してから帰りましょう。」
オナラ「…やれやれ。じゃあ焼き場まで行きましょう。だいたい五分くらい歩けば…」
姫「面倒だから畑ごと焼こうよ。」
オナラ「お、お嬢ちゃん…物騒なことを本気の眼差しで言わないで…。」

姫「…え?」

既に畑は灯油臭い。

 

85:盲点〔5歳:LEVEL2〕
畑ごと焼きイモを焼こうとした姫ちゃん。「面倒だから」と言い切ったあたりが素敵だ。
盗子「ちょ、ちょっと姫!過激すぎるってば!アンタのイメージじゃないってば!」
賢二「こ、これは「天然」という一言で片付けられるレベルじゃない気が…。」
勇者「それに気づくんだ!そもそも焼きイモに灯油は使わない!」
姫「あー…そこは盲点だったよ。」
教師「まあまあ、勇者君。もういいじゃないですか。」
勇者「そう…だな。」

もう燃えてる。

 

86:炎上〔5歳:LEVEL2〕
どういうわけか気づけば燃えていたイモ畑。
よく見るとついでに生徒も2・3人燃えているが、この際細かいことは気にしない。
姫「綺麗なキャンプファイヤーだね。」
勇者「違うぞ姫ちゃん、焼畑農業だ。」
オナラ「どっちも違うわ! くそっ、こうなったら…!」
勇者「あぁ、「屁をこいてガス爆発」とかそういうベタなオチは却下な。」
オナラ「くっ、しまった!最大の見せ場を奪われた!」
盗子「絶対やめて!そんな遺族が泣くに泣けない死因はイヤ!」
オナラ「あ、あぁ…私のイモ畑が…。この先私は一体…一体どうやって…」
勇者「すまんな園長、これも運命だ。」
オナラ「どうやって屁をこけばいいんだ…。」
勇者「そこかよ!もっと経済的に困れよ!」
盗子「つーか仮にも「オナラ魔人」がイモに頼るってどうよ!?」

教師「…さて、そろそろ帰りましょうか。」
生徒「はーい。」

焼くだけ焼いて食べずに帰宅。

 

87:鼻曲〔5歳:LEVEL2〕
オナラにまみれた遠足の翌日、俺は学校を休んで病院へと向かった。
なぜならあの刺激臭を嗅いで以来、嗅覚が全く機能しなくなったからだ。
女医「あら、久しぶりね勇者君。どうしたの?」
勇者「なにやら嗅覚細胞が反抗期でな。まぁとにかくさっさと治すがいい。」
女医「あら怖い。 まぁとりあえず、詳しく調べてみましょうか。」

〜数分後〜
勇者「で、どうなんだヤブ医者?治せねぇとかぬかしたらブッた斬るぞ?」
女医「あ〜、鼻の方は大丈夫。2・3日すれば治るわよ。 ただ…」
勇者「…ただ?」

女医「口が悪いわ。」

生まれつきだった。

 

88:秋祭〔5歳:LEVEL2〕
遠足は終わった。しかし秋にはもう一つの悪の行事…そう、「体育祭」があるのだ。
教師「えー、体育祭なんですが、今年は二学年一組で行われることになりました。」
賢二(あぁ…今年は秋までもった人が少なかったんだね…。)
教師「みなさんは一号生とペアなので、あっちの教室で作戦会議してきてください。」
勇者「ちょっと待て!ウチは六年制なんだ、バランス考えたら相手は五号生だろ!」
教師「まぁよく言うじゃないですか、「若い時の苦労で勝手に死ね」って。」
勇者「言わねーよ!こんな組分け納得いかん、断固抗議するぞ!」
盗子「アタシも納得いかない!さぁ、みんなも行くよー!」
生徒「オォーー!」
教師「未だかつて、校長に逆らって生き延びた人間が…いるとでも?」

盗子「一号生の教室にっ!」
生徒「オォーーー!!」

盗子は〔応変〕を覚えた。

 

89:会議〔5歳:LEVEL2〕
体育祭についての作戦会議を行うため、俺達二号生は一号生の教室を訪れた。
ガラガラガラ…(扉)
勇者「よーし、よく聞け貴様ら!俺が二号生総番の…」
少女「キャー!勇者先輩だー!キャーキャー☆」
勇者「オイそこ、やかましい!黙らんと上下の唇を縫い合わすぞ!?」
少女「えっ、名前ですかぁー?照れちゃいますぅ〜☆」
勇者「いや、これっぽっちも聞いてねーよ!」
少女「「弓撃士(きゅうげきし)」の「弓絵」でーす!勇者先輩の大ファンですぅー☆」
盗子「ちょ、ちょっとアンタ!初対面で馴れ馴れしいんじゃない?ウザッ!」
勇者「ああ、確かにウザいな。」
弓絵「盗子先輩…ウザいとか言われてますよ?」
盗子「アンタのことだよ!」
勇者「いや、お前のことだよ。」
盗子「…ぐっすん。」
勇者「ところで、他の奴らはどうしたんだ? まさかもう帰ったのか…?」
弓絵「そうでーす!もう還っちゃいましたぁー!(土に)」

弓絵はうまいこと言った。

 

90:題目〔5歳:LEVEL2〕
今年は大勢消えたと聞いてはいたが、まさか一号生が残り一人だとは思わなんだ。
勇者「一号生は一人か…これで「二学年一組」とか言われてもなぁオイ…。」
弓絵「え?好きなタイプですかぁー?ズバリ勇者先輩でーす☆」
盗子「聞いてないよ!アグレッシブにも程があるよ!」
勇者「まぁいい、とりあえず作戦会議に入るぞ。 賢二、プログラムを。」
賢二「えっと、まずは「騎馬戦」、次は「打撃戦」…「銃撃戦」…「肉弾戦」…。」
盗子「あり得ない!そんな物騒な体育祭はあり得ないよ!」
勇者「はっはっは。賢二、冗談は盗子の顔だけにしてくれ。」
盗子「うわーん!なんでアタシなのー!?」
賢二「冗談だったらどれだけ幸せなことか…。」
姫「晴れるといいよね。」

予報では「血の雨」だ。

 

第七章