第四章

 

46:進級〔5歳:LEVEL1〕
春…。 5歳になった俺は、今日から二号生として学校に通うことになる。
新しい生活の始まりだ。何かが変わることへの期待で胸が高鳴る始業式。

校長「みなさん進級おめでとう。早速みなさんには殺し合いをしてもらいます。」

不安が高まる始業式。

 

47:補充〔5歳:LEVEL1〕
新学年に上がった俺は、A〜CのうちのA組に配属された。みんなも一緒だ。
残りの二組には大量の転入生。どうやら毎年こうやって人数を確保しているらしい。
人数が減っては転入生を募り、それを繰り返す…なんとも恐ろしい学校だ。
数年後、俺達「オリジナル」のうち何人が残り、無事卒業でき…

そういえば、昨年度は「卒業式」が無かった気がする。

なにげに五年目だった。

 

48:反応〔5歳:LEVEL1〕
今は春だ。つまり早速「あの行事」の…そう、遠足の季節なのだ。
転入生らは去年を知らんので、どうやら楽しみにしているようだ。雑魚どもめが。
その点「オリジナル」の連中は違う。賢二、盗子、宿敵…皆がプルプル震えている。
そう、これが本来の反応。この俺ですら多少の不安があるほどなんだよコラ!

姫「遠足楽しみだね勇者君!わくわく!」

俺もまだまだ修行が足りねぇ…。

勇者の自尊心に痛恨の一撃。

 

49:入島〔5歳:LEVEL1〕
遠足の行き先は、もはや当たり前の如く「ゴップリン島」。
去年は辿り着くことすらできなかった俺だが、今年は意外にもすんなり上陸できた。
よーし、今年こそはゴップリンを倒し、「勇者」としての第一歩を踏み出してやるぜ!
危険?いや、大丈夫。この通り武器ならリュックの中にたんまりと…

たんまりと…オヤツが…。

親父が要らぬ気を使っていた。

 

50:失敗〔5歳:LEVEL1〕
ゴップリン島…最初は違う名だったが、奴に支配されこの名にされてしまった島。
街には様々な「ゴップリングッズ」を売る土産物屋が立ち並んでいた。
「ゴップリンTシャツ」?「ゴップリンフィギュア」?こんな悪趣味なもの誰が買うか!
あ゛ぁ?「ゴップリン饅頭」?ふざけるな!こんなものが…美味い!買いだ!

勇者は「ゴップリン饅頭」を手に入れた。

勇者の「すばやさ」が3下がった。
帰りに買うべきだった。

 

51:選抜〔5歳:LEVEL1〕
自由時間も終わり、ついに「ゴップリンの洞窟」に乗り込む時間がやってきた。
だが全員で乗り込むには人数が多すぎるため、まずは少人数が選抜されることに。
勇者「俺は行くぜ。逃げるわけにはいかんからな…「勇者」として!」
教師「おぉ勇者君、素晴らしいです。他にはいませんか?もしいないとなると…」
宿敵(…ハッ!そうかわかったぞ!これはもはや心理戦…)
盗子(えっ、どういうこと!?)
宿敵(こういう時に勇気を出せないような人は、冒険科には不必要。ということは…)
賢二(そ、そっか!となると逆に手を上げていない人が…!)
宿敵(ああ、僕の読みに間違いは無い。一緒に生き残ろう、友よ!)
盗&賢(うん!!)

こうして4人の戦士が選ばれた。

宿敵は2人の友を失った。

 

52:作戦〔5歳:LEVEL1〕
いよいよ敵の根城に突撃することになった俺、盗子、賢二、宿敵の四人。
なんとも心もとないパーティーだが、まぁいないよりはマシだろう。
宿敵「さ、さぁ!とりあえず戦力分析でもして戦いに備えようじゃないか!ね?ね?」
盗子「仮に生き延びてもアンタは死刑だけどね。」
宿敵「ひっ、ひえぇー!!」
賢二「えっと、僕は「魔法士」だから攻撃魔法もちょっとは…でもMP少ないよ?」
盗子「あ、アタシは「盗賊」だから盗むことしか…。」
宿敵「僕は「魔獣使い」なんだが、今のところ誰も懐いてくれなくて…。」
勇者「いま俺に出来るのは、せいぜい「お菓子屋さん」くらいだな…。」
盗子「わっ!何さそのリュック一杯のオヤツは!?」
勇者「文句なら親父に言ってくれ。俺はちゃんと大量の武器を…!」
盗子「なっ…く、クソ親父ー!勇者親父のクソ親父ィーー!!」

父「なんだと失敬な!」
一同「キターーーー!!!」

幸か不幸か「勇者父」が仲間に加わった。

 

53:意外〔5歳:LEVEL1〕
またもやついて来やがったクソ親父。その執念にはもうなんだか脱帽だ。
勇者「な、なんで親父が来てんだよ!またついて来やがったのかこの野郎!」
父「いや、ちょっとタバコ屋に行く途中で道を間違えてだなぁ…。」
勇者「どう間違えたら海まで越えんだよ!」
父「そしたらこの島で偶然気の合う人と出会ってしまい、気づけばここに…。」
勇者「言い訳が毎回苦しいんだよこの嘘つき親父!」
父「嘘なもんかい失敬な!」

父「ねぇ、ゴプさん?」
ゴップリン「ハジメマシテ。」
一同「うわぁーーー!!!」

ゴップリンが現れた。

 

54:不意〔5歳:LEVEL1〕
洞窟奥にいるのかと思ったら、いきなり親父と共に現れたゴップリン。ぶったまげた。
だがこれはチャンスだ。奴は油断している…まさか俺達が刺客だとは思っていまい。
父「ぐぼっ! ゆ、勇者…なん…で…?」
勇者(テメェは油断ならねぇ。ことが済むまで寝てるがいい。)
盗子(勇者、ナイス判断!)
賢二(確かにこの人なら口を滑らせかねないからね…。)
宿敵(今なら「不意打ち計画」でいける!もしかしたら勝てるかも!)
ゴプ「トコロデ オマエラ、ナニシニ キタンダ?」

姫「アナタを倒しに来たよ。」

姫が現れた。
姫はまず「計画」をブッ倒した。

 

55:開戦〔5歳:LEVEL1〕
突如現れた姫ちゃんにより俺達の目的がバレてしまった。 でも、可愛いから許す!
ゴプ「ホォ、オレヲ タオス ダト? イイ ドキョウダ!」
勇者「チッ、やるしかねぇか…! まずは俺が行く、お前らは援護しろ!」
一同「い、イエッサー!!」

勇者は武器を装備していない。
装備するものを選んでください。

・うまい棒
・チョコバット
・ポッキー
勇者「しまった!駄菓子しか持ってない!」
盗子「死ねっ!!」
宿敵「くっ…!賢二君、とりあえず防御魔法だ!」
賢二「う、うん!えっと…「絶壁」!!」

賢二は〔絶壁〕を唱えた。
ゴップリンの後頭部が微妙に歪んだ。

盗子「えぇっ!?そういう効果なの!?」
勇者「う〜ん、3点!」
賢二「ジョークじゃないよ!ただの失敗だよー!」
ゴプ「オ、オレノ アタマガー!!」

だが地味に効いている。

 

56:魔剣〔5歳:LEVEL1〕
賢二が余計なことをしたおかげで、敵は怒って本気モードに。チッ、余計なことを!
ゴプ「キサマラー!ユルサン!コロスッ!!コノ 魔剣デ コロスッ!!」

ゴップリンは「ゴップリンの魔剣」を取り出した。

勇者「うわっ!な…なんて剣なんだ!」
ゴップリン「ハッハッハ!ビビッタカ コゾウ!?」
勇者「なんて趣味の悪いデザインなんだ!」
ゴプ「ソコニカヨ!! …アッ!」

盗子はゴップリンの手から剣を盗んだ。

盗子「勇者!早く受け取ってー!この鞘ヌルヌルしてて気持ち悪いー!」
勇者「ナイス盗子!これで攻撃ができる!」
ゴプ「フッ、ザンネン ダッタナ。 ソノ 魔剣ハ 邪悪ナモノ ニシカ ヌケナ…」
勇者「ふむ。なかなか斬れそうな刃だな。」
ゴプ「ヌイトルゥーーー!!」

勇者は「ゴップリンの魔剣」を装備した。

 

57:不覚〔5歳:LEVEL1〕
初めて役に立った盗子のおかげで、俺は武器を装備することができた。
「魔剣」だろうが何だろうが自由に使いこなす…それが「俺流勇者道」だ!
勇者「さぁ死ねゴップリン!親父を殺すため編み出した、この剣技を食らうがいい!」
ゴプ「マ、マテ!コイツガ ドウナッテモ イイノカ!?」
盗子「ゆ、勇者〜!ゴメンー!」

盗子が人質に取られた。

勇者「構わん!死ねぇーー!!」
ゴ&盗「ナニィーーーーッ!!?」
勇者「食らえ!勇者スペシャル・ミラクル・ウルトラ・エクセレント・ローリンぐわっ!

ゴップリンの攻撃。
勇者に29のダメージ。

如何せん名前が長すぎた。

 

58:回復〔5歳:LEVEL1〕
必殺技のネーミングに凝りすぎたせいで、せっかくのチャンスをフイにしてしまった。
今後「伝説」となる俺の人生にこんな汚点は残せない。なんとか誤魔化さねば…。
勇者「ぐっ、やはり人質を取られていては…!」
盗子「嘘つけ!取って付けたような言い訳すなー!!」
姫「勇者君、私が傷を治すよ。そのための「療法士」だよ。」
ゴプ「オット!ソウハ サセルカァー!」
賢二「あ、危ない!」
姫「えっと、回復回復…むー!「死滅」!」

姫は間違って〔死滅〕を唱えた。
その名の通り「死の呪文」だ。

勇者「なにぃーー!!?」

ミス!勇者は間一髪で避けた。

ゴプ「グッ、グヘェエエエエ!!

ゴップリンがとばっちりを受けた。

 

59:不完〔5歳:LEVEL1〕
姫ちゃんのうっかりミスのおかげで、危うく死ぬところだった俺。さすがにビビッた。
一体どう間違えたら「回復系魔法」と「絶命系魔法」を間違えるのだろうか…。
盗子「やった!ゴップリンに命中したよー!」
賢二「で、でもなんで「療法士」の姫さんが「魔法士」の…しかも高等魔術を…?」
姫「不思議なこともあるものだね。」
宿敵「ま、まるでヒトゴトのように…。」
勇者「こここ殺す気…! ま、まぁいい。許しちゃう。」
盗子「わーん!扱いが違うー!違いすぎるー!」
ゴプ「グッ…。ナ、ナンテ コッタ…。」
勇者「む!貴様まだ生きてやがったのか!」
賢二「やっぱさすがに術が不完全だったんだよ!」
勇者「こうなったらやはり勇者スペシャル・ミラクル…」
盗子「懲りろよ!」
ゴプ「マ、マテ!モウイイ…オレノ マケダ…。」

ゴップリンは降伏した。

 

60:決着〔5歳:LEVEL1〕
意外にもあっさりと降伏したゴップリンは、おもむろに自分の想いを語り始めた。
コイツ、ホントは人間と仲良くなりたかったらしい。最初は歩み寄ろうとしたようだ。
しかし、ただ「魔物」というだけで怖がられ、自暴自棄になり思わず支配を…。
ゴプ「ヤハリ ナカマ トイウノハ イイモノ ダナ…。 ウラヤマシイ ヨ…。」
勇者「ゴップリン…。」
コイツはコイツで辛かったのかもしれない。そう思った。


ザシュッ!(斬)
思っただけだった。

 

第五章