序章

 

そして、三年の月日が流れた。

 

2-1:希望
〜トアル星:トアル村〜
少年「じゃあなみんな!俺が絶対、”奴ら”を倒して帰ってくるから…待ってろよな!」
村人A「死ぬなよ「格斗(カクト)」。お前はこの村に残された、最後の希望なんじゃ。」
村人B「すまないねぇ。アタシが男なら、アンタみたいな子供に行かせるなんて…。」
格斗「いいんだ、気にしないでくれ。」
村人C「僕もこの、ささくれさえ治れば…」
格斗「アンタはちょっとは気にしてくれ。」
村長「頼んだぞ格斗。奴らを倒し…そして何より、生きて戻ってきておくれ。」
格斗「ああ、行ってくる。」
三日後───。
村人A「あれから三日…格斗はもう、やられちまったんだろうね…。」
村長「じゃあ次はお前。」
村人C「え!?いや、でもささくれが…!」
村長「大丈夫、期待はしてない。」
村人C「それはそれで…!」
単に邪魔だった。

 

2-2:駄目
何がなんだかわからないまま、急に旅立つことになった村人C。
目的が何かはともかく、見込みが無いのは確かだった。
村人C「ハァ〜…なんで…なんで僕が…。」
母「あっ、まだ部屋にいたのかい「逃飛(トウヒ)」!?早く出ておいで!」
逃飛「い、イヤだよ行きたくないよ!行ったら絶対死んじゃうじゃんか!」
母「情けないこと言ってんじゃないの!アンタもう22でしょ!?格斗君を見習いな!」
逃飛「アイツはいいんだよ!みんなに期待されてさ、カッコいい出発でさぁ!」
母「格斗君…。あの子ならやれるって…最後の希望だと思ってたのにねぇ…。」
逃飛「それ!「最後の希望」って言われた格斗の後の僕は一体何?って話だよ!」
母「いや、知らんがな。」
逃飛「それが実の息子を死地に追いやる母親の態度なわけ!?」
母「アンタが生きて帰ってきたら、母ちゃん…再婚するんだ。」
逃飛「それ何のフラグ!?遠回しに僕に死ねって言ってない!?」
母「いいから行っといで!早く行かないと職業斡旋するよ!?このニートめ!」
逃飛「くっ…!行きゃいいんだろ行けば!行ってやるよっ!!」
完全なるダメ人間だった。

 

2-3:旅立
第一印象通りにダメ人間だった逃飛。
散々ゴネたが、結局追い出されるように村を出たのだった。
逃飛「ハァ〜、困ったなぁ〜…。でもまぁいっか、このまま逃げれば」
盗賊A「よぉニィちゃん、金出せや〜。」
逃飛「って早いよ!なんだよこの打ち切り漫画の終盤みたいな展開の早さ!?」
盗賊B「あ?ワケわかんねぇことをゴチャゴチャと…いいから飛んでみろやぁ!」
逃飛「えっ、何その超古いカツアゲみたいな脅し文句!?」
盗賊B「あの崖からよぉ!!」
逃飛「かと思えばやっぱとんでもない発想でしたねごめんなさいぃいい!」
盗賊C「ん?その衣装…まさかオメェ、あの村の住人かよ?」
逃飛「いや、まさかも何も今その村の目の前ですけども!?」
盗賊C「ゲヒャヒャ! ならいいだろう、連れてってやるよ…俺らの、アジトになぁ。」
逃飛「お構いなくぅうううううう!!」
順調に死に近づいた。

 

2-4:皆無
カツアゲどころか拉致されるはめになった逃飛。
だがそんな前向きに考えられるキャラじゃなかった。
〜盗賊団のアジト〜
盗賊A「オラァ、チンタラ歩いてんじゃねぇよ!さっさと進めやぁ!」
逃飛「え、えっと、ところでアナタ達が…村の天敵「陽炎盗賊団」で…合ってます?」
盗賊B「あ?よく知ってんじゃねぇか。だがそれ聞いてどうするよ?」
逃飛「フッ、だったら試すだけさ…ありとあらゆる命乞いを!!」
盗賊C「初めてだな…ここまで後ろ向きな奴が来たのはよぉ…。」
逃飛「そりゃ諦めるよ!もう村に男がいなかったから僕だってだけだし! だけど…」
盗賊A「あ?だけどぉ…?」
逃飛「だけど、その繁栄も長くは続かない!アンタらは、もうじき終わるんだ!」
盗賊B「…ほほぉ、やっぱヤル気なんじゃねぇかテメ」
逃飛「僕の雇った、「勇者」さえ来れば!!」
ヤル気もプライドも無かった。

 

2-5:最低
この土壇場においてなお、逃飛は他人に頼る気マンマンだった。
その潔い姿は、逆に堂々として見えたという。
盗賊A「ゆ、「勇者」だとぉ!?テメェ、そんな隠しだまを用意してたってのか…!?」
逃飛「「宇宙広告」でね!大枚はたいて呼んだのさ、腕に覚えのある猛者を!」
盗賊B「バカなっ、あの村のどこにそんな金が…!?」
逃飛「母ちゃんの財布から…。」
盗賊C「いや、最低だなテメェ!盗賊の俺らが言えた義理じゃねぇがそれでもオイ!」
盗賊A「しかもそれ確実に大した額じゃねぇだろ!?そんなんじゃ雑魚しか…」
声「ぎゃああああああああああ!!
盗賊A「なっ!?なんだ今の悲鳴は…!?」
盗賊B「だ、誰だぁ!?テメェが助っ人だってのかぁああああああ!?」
?「助っ人…? フン、他人に興味は無いな。」
逃飛「ええぇっ!?」

理孤「私は、「独裁者」でね。」
味方じゃないかもしれない。

 

2-6:適所
絶体絶命のピンチに現れたのは、「隔離党」の理孤だった。
だが言動から察するに味方かどうかは微妙だ。
盗賊A「て、テメェ…たった一人でコイツを助けに来るとはいい度胸じゃねぇか!」
理孤「言ったろう?他人に興味は無い。私は私の目的で、ここに来たのだよ。」
盗賊B「チッ、なにわけわかんねぇこと(ズダアアァン!ぎゃああああ!!
盗賊C「銃声!?仲間がいやがったのか!」
銃子「ねぇどうだった助かった助かっちゃった理孤君!?私ってば理孤君のためな」
理孤「適材適所…雑魚は雑魚らしく、墓場にかえるがいい。」
銃子「ハイやっぱガン無視!三年経っても未だガン無視だけどももはや開き直っ」
盗賊A「チッ、マズい…こうなったら…お、お頭ぁーー!来てくれお頭ぁーー!!」
理孤「フン、無駄なことを…」

勇姫「なに?」
理孤「ええぇっ!?」
まさに適材適所だった。

 

2-7:正体
なんと、盗賊団の黒幕として現れた勇姫。
わざわざ言うまでもないが、その立ち位置は凄まじく似合っていた。
理孤「ふぅ、やれやれ…姿を消したかと思えばこんな所にいたのかね、勇姫殿。」
盗賊A「あ゛!?な、なんだよテメェらお頭の仲間だってのか!?」
勇姫「え…仲間…?」
理孤「なっ、まさかキミ、記憶を…!?」
勇姫「”下僕”じゃなくて?」
理孤「正真正銘本物のようだ…やはり人の性根は半年やそこらでは変わらぬか。」
盗賊C「ど、どういうことだよお頭!?アンタ一体何者なんだよ!?」
勇姫「…フッ、バレちゃったんなら仕方ないね…。 そう、何を隠そう私は「勇者」…」
盗賊達「ゆ、勇者だぁ!?」

勇姫「この世界を、暗黒に染める者なり!!」
なにやら壮大な矛盾が。

 

2-8:会談
勇姫の生存も確認され、時計の針が動き始めたその頃…
対抗勢力もまた、静かに動き始めていた。
〜宇宙政府〜
女「さて…本日はお忙しいところお集まりいただき、ありがとうござ」
男A「オイオイ「千察(チサツ)」ちゃんよぉ、俺らも暇じゃないんだぜぇ?」
千察「あ、ハイ。「牙乱(ガラン)」さんの「東狼(トウロウ)騎士団」の状況は重々…」
男B「おや「警察士長」殿、それなら我々「南鳳(ナンホウ)騎士団」もなのだが?」
千察「ええ、すみません「翼呂(ヨクロ)」さん。もちろん貴殿のお忙しさも…」
男C「む?なれば我ら」
千察「ってうるせぇんだよカス共が!ごちゃごちゃ言ってっとブッ殺すぞゴルァ!!」
男達「Σ( ̄□ ̄;)!?」
千察「…失礼。と、とにかく!本日集まっていただいたのは他でもありません。」
牙乱「あぁ、アレだろぉ?最近この東宇宙を賑わしてる、例の海賊どもの件だろ?」
千察「いえ、違います。本日は…」
翼呂「やはり「五剛(ゴゴウ)軍」だろう?最近の彼らの動きは、少々目に余る。」
千察「いえいえ、その件でもなく…」
男C「そうなると」
千察「喋らせろやゴルァ!!」
男Cはトイレで泣いた。

 

2-9:非道
色々あって、凶死の元から逃げ延びて半年…私は8歳になってた。
その後、この盗賊団でのんびりしてたのに、ついに追っ手が…邪魔臭いなぁもう。
勇姫「てなわけで、やっておしまいお前達!」
理孤「ほぉ、我らに楯突くと?相変わらず調子に乗っているようだ。」
勇姫「フンだ!凶死亡き今、アンタらに私を捕まえる力は無いんだよ!」
理孤「フッ…確かに、彼女がいなくなり我らの力も落ちた…だが、まだ私がいる!」
銃子「そうだよ勇ちゃんナメないでよ!私と理孤君の愛の力が合わさっちゃったりし」
勇姫「興味無し!アンタらこそ、この三年で私がどんだけ育ったかわかってる?」
理孤「いいだろう、ならば見せてみるがいい! やれぇーー!!」
兵士達「うぉおおおおおおお!!」
盗賊A「なっ…!こんなに隠れてやがっ…」
スパーーーン!!
勇姫は「バールのようなもの」を振り回した。
盗賊Aの頭が砕け散った。
盗賊C「って、ええええええっ!?」
勇姫「邪魔!!」
盗賊C「二文字で済むならまず口で言えばよくね!?」
勇姫「私の道を阻む者は、誰であれ許されない!それこそが「勇者」の特権!!」
遺伝ってこわい。

 

2-10:遺志
あれから2年半、凶死にしごかれる毎日に嫌気がさしてたけど、急に凶死が失踪。
そうしてやっと得たこの自由の身…こんな奴らに捕まって終わりになるなんて困る。
勇姫「てか、いいじゃん新しい「総帥」は「依子(ヨリコ)」で!私はもうかったるいよ!」
理孤「確かに彼女の潜在能力も底知れぬが、今の彼女には荷が重い。」
勇姫「だったらアンタがやれば!?そもそも「独裁者」が他人に頼るとか…」
理孤「凶死殿には恩がある。なれば彼女の遺志は、私が果たさねばならんのだ!」
ガキィイイン!
勇姫「くっ…!相変わらず融通が利かないわ攻撃力だけは無駄にあるわ…!」
銃子「さぁ諦めちゃって勇ちゃん!私と理孤君が力を合わせたら誰だって太刀打ち」
勇姫「実はこのドタバタが、アンタと理孤を結びつけるための芝居だとしたら…?」
銃子「任せちゃって勇ちゃん!ここは私が時間を稼いじゃったり稼がなかったりす」
勇姫「ちょっとアンタ、宇宙船探してエンジンかけといて!できる!?」
逃飛「えぇっ、僕!?いや、ゴメン僕免許とか持ってなくて…」
勇姫「ありがとう任せた!」
逃飛「聞く気が無いなら疑問系で言うのヤメてくれる!?」
勇姫「さーて、そんじゃ準備ができるまで…いっちょ遊んであげよっかな!」
まず盗賊団が壊滅した。

 

2-11:自由
逃亡の準備は見知らぬ人に任せて、時間稼ぎに一暴れしてみることにした私。
一応二年半ほど寝食を共にしてきた仲間ではあるけど、それよりも自分が大事。
兵士達「ぐへぇえええええ!お、鬼ぃいいいいいい!!
理孤「チッ、やはり容赦ない…!凶死殿は悪魔を育てようとでもしていたのか!?」
勇姫「私はね、運命とか大っ嫌いなんだよ!私はやりたいように、自由に生きる!」
理孤「フン、それが叶う身だとでも?生まれついた時より、キミに平凡な人生は…」
逃飛「えっと、お頭ちゃん!?一応それっぽいの見つけたけどー!?」
勇姫「でかしたオッサン!そのままこっちに向かって飛んでくるがいいよ雑魚め!」
逃飛「いや、僕は…でも逆らったら…もういいや、レッツ・ゴー!!」
勇姫「よいしょっと、じゃあねー理孤!もう会うことも無いだろうねー!」
宇宙船は飛び去っていった。
理孤「くっ、おのれまたしても…!」
兵士「ど、どうします理孤様?あの方向…恐らく「地球」に向かっているかと。」
理孤「地球か…そういえば以前、凶死殿が言っていたな。」
兵士「先生が…ですか?」
理孤「勇姫殿の師に相応しい者…それは”彼女”しかいないと。誰かは知らんがな。」
そして舞台は地球へ。

 

2-12:運命
そんなこんなで、理孤の魔の手から華麗に脱出した私と見知らぬオッサン。
勇姫「とはいえ、手下も減っちゃって色々面倒だなぁ…。ねぇオッサン?」
逃飛「オッサンはやめてもらえるかな?僕はこれでもまだ22なんだよ?」
勇姫「じゃあなんなりと名乗るがいいよ。」
逃飛「僕の名は「逃飛」。職業は、そうだなぁ…「逃亡者」とでもしとこうかな。」
勇姫「なんだ「負け犬」なんじゃん。じゃあ名前は「ポチ」ね。」
逃飛「いや、だから名前は今…!」
勇姫「いくよポチ!目的地は設定されてた地球でオッケー!行ってみたかったし!」
逃飛「あ、知ってる星なんだ?」
勇姫「前に言われたんだよね〜。その星で、運命の出会いがあるとか、違うとか。」

〜その頃〜
大臣「お伝えします。先程使者より、お探しの者を連れ戻ったと連絡がありました。」
声「そうですか…良かったです。では早速、作業にあたってもらってください。」
大臣「ですが、あのような者を…一体何のために?」

絞死「フフフ、それは…秘密ですよ。」
親子二代でいじめる気か。

 

2-13:有名
目が覚めると、私は見知らぬベッドで眠ってたの。一体何がどうなったわけ…?
勇姫「ぐっ、イタタタ…って、ここはどこ…?」
逃飛「あ、気づいたんだね勇姫ちゃん。ここは僕らを助けてくれた人の城で…」
絞死「お目覚めですか?あの高さから落ちて…二人ともいい悪運をお持ちですね。」
勇姫「ッ!!!」
絞死「ん?どうしました?」
勇姫「…ううん、なんでもない。ちょっと雰囲気が知り合いに似ててさ。 アンタ誰?」
絞死「私は…アナタのお父上に、少々お世話になった者ですよ。勇姫さん?」
勇姫「なんで私の名を!?このストーカーめ!」
絞死「フフフ…自分で思っているより、アナタは有名人なんですよ。はい手配書。」
勇姫「手配書まであんの!?私まだ何も悪いことしてないのに…!」
逃飛「あんな物騒なモノ振り回しといて真顔でそう言えるとか…」
絞死「残念ながら、アナタは争いから逃げ切れません。そういう運命なのです。」
勇姫「だから私は運命とか…!」
絞死「でも大丈夫、心配いりませんよ。私がアナタに、力を授けましょう。」

よし、逃げよう。
勇姫は鼻がきいた。

 

2-14:予感
後で聞けば、なにやら宇宙船が墜落して雪の大地に突っ込んだらしい私。
この強運があれば、きっとここからも逃げられる。さっさと逃げて自由に生きよう。
勇姫「てなわけで、いくよポチ!さっさと準備して!」
逃飛「えっ、なんで逃げるの?もうじき夕飯の時間だよ?」
勇姫「食材はアンタだよ?」
逃飛「あっはっは!面白いこと言うねぇ勇姫ちゃん。」
勇姫「ねぇ知ってる?肉って叩くと美味しくなるんだって。」
逃飛「オーケーわかった、わかったからその鈍器はしまってもらおうか。」
勇姫「なんか…嫌な予感がするんだよ。何かとんでもない、”悪”の気配が…」
ギィイイイ…(扉)
ふいに扉が開いた。
勇姫「ッ!!?」
逃飛「えっ…」
勇姫「な、なに!?ちょ、待っ…」

ぎゃああああああああああああああ!!
嫌な予感は的中した。

 

2-15:歴史
ガチャ(扉)
女「ふぃ〜…やーっと終わったよ…。まったく難儀な仕事押し付けやがってもう…。」
絞死「あぁ「解林(カイリン)」さん、お疲れ様です。首尾はどうですか?」
解林「ま、手こずったけどなんとかなったよ。報酬は高くつくから覚悟しときな?」
絞死「さすがはあの「呪術師:解樹」氏の血を引くだけある…助かりましたよ。」
解林「にしても、良かったのかい?あんな邪悪な呪いを飼ってた奴に預けて…。」
絞死「夢を…妙な夢を見たのですよ。亡き父が、”彼女”に託せと…そう言う夢を。」
そして───
〜宇宙船:海皇号(カイオウゴウ)〜
兵士A「報告します!もうじき「地球」に到着する模様です、みっちゃん様!」
巳津「あ、マ〜ジでぇ〜?楽しみだね〜リッちゃん?」
離水「あ゛…?うっせぇよブス、黙ってろ。」
時は人を変え
〜宇宙政府〜
千察「私が気にしているのは、傭兵団…「隔離党」。彼らは今後、何かを起こす。」
牙乱「あ?だがよぉ、「死神の凶死」亡き今、ここ半年くれぇ大人しいだろうがよ?」
千察「ええ確かに。ですが、私が恐れているのは…「闇の王」の方なのですよ。」
翼呂「闇の…あの「狂乱の蒼き魔王」の子か。確かに資質としてはうなずけるが…」
千察「かの「大魔王:救世主」…彼に次ぐ存在に思えるのですよ、あの少女がね。」
時と人を代え

勇姫「ちょ、は、離してよ!はーなーせぇーー!!」


麗華「行くぞ、勇者の子よ。」


勇姫「いやぁあああああああああ!!」

歴史は繰り返す。



〜勇者が行く〜列伝


第二部:「七星大戦編」



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