第一章

 

31:決断〔4歳:LEVEL2〕


たたかう
にげる
いきなりやってきた変な男。なんかどうしようもなくおっかない…絶対殺されちゃう。
でも、なんか今は…今だけは、絶対に逃げちゃいけない気がするんだ。
勇姫「てなわけで、みんな全力でいくよ!私も全てを見せてやるっ!」
パイオツ「えっ…す、全てを!?それはつまり生まれたままの」
マジデ「黙れよマジで!状況わかってる!?」
トナリ「つーかよ、アンタ…何者だよ?」
男「我が名は「禍護(カゴ)」。縁あって、キミ達を預かりに来たのですよ〜。」
勇姫「フン、そう何度もやられると思ったら大間違いだよ!今度こそブッた斬る!」
禍護「今度こそ〜…?よくわかりませんが、生まれたばかりのキミに何の力が…」
勇姫「あるもんね!何の力かは、私にもわかんないけど!!」
タマは”おしゃぶり”を投げ捨てた。
邪悪なオーラがほとばしる。
禍護「なっ…そ、そのオーラは…まさか!?」
勇姫「…手加減は抜きだ。最初から全力で、貴様らを始末する!!」
なぜか複数形だった。

 

32:危険〔4歳:LEVEL2〕
自ら封印を解き、ダークサイドに堕ちた勇姫。
死ぬのは勇姫か禍護か、それとも罪無き仲間達か。
トナリ「や、やめろよタマ!そのモードはリスクが…!」
禍護「なるほど、もったいぶっていた理由はそれですか〜。いいんですか〜?」
勇姫「今やらねば、どのみち終わりだろう?もう後が無い…そんな気がするんだ。」
禍護「ほほ〜、根拠はわかりませんが…いい勘かもしれませんね〜。」
マジデ「ダメだってば!前にそれ外して大変なことになったじゃん…パイオツが!」
パイオツ「そう、僕が!もうあんな暴力は…ん?今のもう一度言ってくれる?」
マジデ「へ?パイオツが大変なことに…ってバカ!何言わせんのよ!?」
トナリ「オメェだって酷ぇ目に遭ったろ?まだその力に耐えられる体じゃ…」
勇姫「フン、黙るがいい雑魚めが。俺は諦めるのと誰かさんが、大嫌いなんだ!!」
果たして誰のことか。

 

33:作戦〔4歳:LEVEL2〕
体への負担は大きいが、今はそんな場合でもないので気合いで乗り切るしかない。
勇姫「いくぞ禍護、貴様は俺がブッた斬る…この「七光りモード」でな!」
トナリ「随分と開き直った命名だなオイ。確かにその通りなんだろうが。」
禍護「面白い…それが真に勇者氏の力か、見せていただきましょ〜。」
勇姫「断る!! さぁやってしまうがいいトナリ、マジデ、その他!」
トナリ「って結局俺らかよ!?」
マジデ「流れ読まないにも程があるしマジで!」
パイオツ「というかなんで略されたの僕!?」
禍護「やれやれ仕方ない…まずは雑魚のお片づけですかね〜。」
勇姫「さぁいけ!トナリは右、マジデは左、そしてパイオツはどこか遠くへ!」
パイオツ「なんで!?」
単に邪魔だった。

 

34:合体〔4歳:LEVEL2〕
いくら力を解放したとはいえ、どう考えても一人で勝てる相手じゃない。
ここはまず雑魚どもで様子を見て、その屍を踏み越えて俺は強くなる!
勇姫「ありがとうみんな!貴様らのことは…決して忘れない!」
マジデ「死ぬ前提なのやめてくれないマジで!?」
トナリ「いくぜパイオツ、合体技だ!」
パイオツ「え…いや、さすがにそっちの領域にはまだ…」
トナリ「違ぇよ!俺の”風”にテメェの”氷”を合わせって意味だってば!やるぞ!!」
トナリとパイオツは力を合わせた。
猛吹雪が禍護を襲う。
禍護「ん〜、なかなかですが、まだまだですね〜…後ろのキミ?」
マジデ「ってバレてるとかマジどへっ!?
ズッガーーーン!!
勇姫「マジデーーー!! よし、じゃあ次!」
ト&パ「ドライ!!」
マジデは壁に刺さっている。

 

35:報酬〔4歳:LEVEL2〕
トナリ達の攻撃の隙にマジデが…というありがちな作戦は空振りに終わった模様。
まったく雑魚どもめが。こんな奴らに任せておいても埒が明かない。
禍護「おやおや、もう打つ手なしですか〜?あっけないですね〜。」
勇姫「フン、情けない奴らめ。」
トナリ「オメェどっち側だよ!?立ち位置おかしいだろ今に始まった話じゃねぇが!」
勇姫「さぁ次は貴様が命をかけるがいい、パイオツ。」
パイオツ「え、いや…僕の力じゃちょっと…」
勇姫「報酬はパンツで。」
パイオツ「オーケー、この身に代えても。」
トナリ「安ぃよ!?もうちょい割に合った報酬望めよオイ!」
パイオツ「フッ、わかってないな。男ってのはね、エロスのためなら…死ねるんだ!」
※特殊な人に限る。

 

36:補助〔4歳:LEVEL2〕
その後、なんだかんだでパイオツもKOされたのだが、面倒なのでそこは省略。
勇姫「パイオツ…憐れな男よ…。トナリのパンツごときのために…。」
トナリ「って俺のだったのかよ!?死んでたらマジ浮かばれねぇなアイツも!」
禍護「やれやれ、遊んでいる場合ですか〜?」
勇姫「フッ、それはこっちのセリフだ。貴様こそ…遊んでていいのか?」
知らぬ間に足元に魔法陣が。
禍護「…ほほ〜、ふざけているように見せて小癪な手を…やりますね〜。」
勇姫「ま、本気を出すと体がついてこないんでなぁ。この手の補助が要るんだよ。」
禍護「なるほど、肉体を強化する類の…面白い。」
トナリ「そのために俺らをオトリに…怖ろしい。」
勇姫「さぁ、準備は整った。貴様らはこれから、地獄を見ることになるだろう。」
トナリはどの意味で見るのか。

 

37:挑発〔4歳:LEVEL2〕
前に一度暴れて死ぬ思いをしたため、その対策として用意した闇の魔法陣。
あの土男流って奴の手帳にあったものだが、何度か試したが結果は上々だ。
勇姫「まぁ実戦で使うのは初めてだがな。光栄に思うがいい雑魚めが。」
禍護「ですが、僕がこの陣から離れたら意味が無いのでは〜?」
勇姫「出ないさ、貴様はな。ここで逃げたらまた親父に負けたことになる…違うか?」
禍護「そうですか〜?」
勇姫「ハッハッハ!おいトナリ、お前からも言ってやってくれよ、「それは困る」と。」
トナリ「困っちゃうのかよ!そんなスッカスカなプランだったのかよ!?」
禍護「ま、いいですけどね〜。”力”しか継いでいないキミに、僕を倒す”技”は」
勇姫「フッ、ならば見せてくれよう!この俺の…「刀神流操剣術」をなぁ!!」
禍護「ッ!!? そ、その技は彼の…!なぜ…」

読んでて良かった「土男流メモ」。
完全にハッタリだった。

 

38:驚愕〔4歳:LEVEL2〕
土男流の手帳にあった技名を適当に言ってみたところ、予想以上の反応が。
勇姫「ふむ、こうなったら通せなくなるまで通すしかないな、このハッタリを!」
トナリ「えっ!?いや、なら口に出すなよ黙ってやれよ!」
勇姫「さぁ食らうがいい!必殺、「一刀両断剣」!!」
勇姫の攻撃。
禍護は100のダメージを受けた。
勇姫「なぜ当たった!?」
トナリ「ってオメェが驚くのかよ!?」
禍護「ぐっ、技名と全く違う太刀筋…フェイントですか〜、さすが彼の子ですね〜。」
トナリ「タマ…オメェの親父さん、よっぽど残念な性格してたんだな…。」
禍護「ですが〜、同じ手が何度も通じる僕ではないですよ〜?」
勇姫「安心しろ、一度通じたのがむしろ驚きだったくらいだ。」
禍護「さて〜…では今度は、こちらの番ですかね〜。」
勇姫「フッ、いいだろう!来い!!」
二人はボコボコにされた。

 

39:小傷〔4歳:LEVEL2〕
ある程度抵抗はしたものの、攻撃が当たらず勝負にならなかった。
やはりコイツの言うとおり、力だけでどうにかなる相手じゃないらしい。
禍護「さぁ〜、どうしますか〜?手加減するのももう飽きましたが〜?」
勇姫「フン、俺は「勇者」…命乞いするくらいなら素直に死を選ぶぞ、トナリの。」
トナリ「ってなんで俺のだよ!?」
勇姫「ま、殺すなら今しか無いだろうな。いずれ俺は貴様の最大の脅威となるぞ。」
禍護「そうですか〜?」
勇姫「その慢心が命取りなんだよ。小さな傷から、死ぬことだってあるんだぜ?」
禍護の頬から傷が。
トナリ「なっ…いつの間に…!?」
勇姫「フッ、俺に聞くな。」
トナリ「って偶然の賜物かよ!!」
禍護「…確かに、殺したい気持ちには…なってきましたね〜。」
勇姫「フン、最初っからだろうが。 知らんのか?嘘つきは、地獄行きだってなぁ!」
じゃあ勇姫も危険だ。

 

40:油断〔4歳:LEVEL2〕
つい煽ってしまったこともあり、敵もようやくマジモードになった模様。
だが、「本気を出せば勝てる」…そんな油断こそが、俺の勝機へと繋がるのだ。
勇姫「さぁいくぞ雑魚野郎!食らえ、我流必殺剣…「一刀油断剣」!!」
禍護「おやおや〜、背後がガラ空きですよ〜?」
勇姫「ハッ!しまった油断を…」
トナリ「ってオメェがすんのかよ!?」
禍護の攻撃。

パイオツのカウンター攻撃。
禍護に200のダメージ。
トナリ「えっ…なんでオメェが…!?」
勇姫「貴様ごときが!?」
パイオツ「ひ、酷い言われ様だね…。そんな意外なキャラなんだ…。」
禍護「…チッ、この僕が背後を許すとは…何者なんですかキミは〜?」
パイオツ「フッ、僕かい?僕は…」

勇姫「変態だ!!」
変態だ。

 

41:異変〔4歳:LEVEL2〕
俺のピンチを救ったのは、なんとあのパイオツごときだった。
一生の汚点にもなりかねない事態だが、まぁ今死ぬよりは若干マシだろうか。
勇姫「だが偶然も二度は続くまい。貴様は大人しく…」
パイオツ「いや、下がってて勇姫ちゃん。ここは僕に任せてもらうよ。」
勇姫「ば、バカなっ…いつも背後でパンチラの機会を覗っているパイオツが…!?」
トナリ「パンツ姿の時は必死でパンティーラインを凝視してるあのパイオツが…!?」
パイオツ「えっと、他の印象は無いのかな…?」
禍護「やれやれ、活気付いてしまいましたね〜。ですがそれも…むっ!?」
禍護は足元を見た。
なんと!足首まで凍っていた。
勇姫「なっ、それはまさか…!」
パイオツ「フッ、そう…」
勇姫「反射を利用してパンチラを!?」
トナリ「相手も状況も何もかもおかしいだろうがよ!?」
禍護「これは計算外ですね〜…。”星”を持たぬ子供が、これ程の力を持つとは…。」
パイオツ「退いては…くれないかな?できるなら僕も、本気は出したくない。」

おかしい…パイオツが変だ。
変なのは普段だが。

 

42:向風〔4歳:LEVEL2〕
なんだか少し…いや、かなりおかしい。あのパイオツがパイオツらしくない。
禍護「どうやら意外な所に〜、もっと面白い実験体がいたようですね〜…面白い!」
パイオツ「フッ、甘いね。大気の水よ、集まりて剣と化せ…「氷柱剣」!」
ガキィイイン!!
トナリ「な、なんだよアイツ…あんな奴だったのかよ…!?」
勇姫「…解せんな。あのパイオツが、あんなに強いはずがない。」
トナリ「けどよ、現に目の前で…」
勇姫「ありえんな。もしマジデが見たら、「マジで!?」と驚くところだ。」
トナリ「それただの恒例行事じゃねーかよ!もうちょっと何か無ぇのかよ!?」
勇姫「あんな幼い体ながらも大人に引けをとらんパイオツ…変だとは思わんか?」
トナリ「ああ…確かに変だが、誤解を生む表現はなるべく避けてくれ。」
勇姫「きっと何かある。そして、恐らくそれは…追い風ではない。」
パイオツは信用が無い。

 

43:矛盾〔4歳:LEVEL2〕
その後数分が経過したが、相変わらず善戦しているパイオツ。
表情から察するに敵も全力ではないっぽいが、遊んでいるようにも見えない。
勇姫「やはり妙だ。脇役が主役より目立つなんぞ、あるはずがないのだ!」
トナリ「フッ、そうかよ…ならいっちょ、試してみるかなぁ!」
トナリは勇姫のスカートをめくった。
トナリは痛恨の一撃を受けた。
トナリ「ぶべらっ!!
勇姫「こっ、こここ殺すっ!!貴様の一族は三代先まで殺す!!」
トナリ「ぐふっ、す、すまねぇ…だがひ孫できてから殺すとか気の長ぇ話だなオイ…。」
パイオツ「まったく…。気が散るから大人しくしててもらえない?」
勇&ト「ッ!!!」
勇姫「誰だ貴様!?ことパイオツに限って、今のリアクションはありえない!」
トナリ「ああ、俺もそう思うぜ。人としてありえねぇのがアイツの特徴なんだよ!」
パイオツ「いや、それは…」
勇姫「それにそもそも…奴は俺のことを、”勇姫ちゃん”とは呼ばんしなぁ。」
パイオツ「…やれやれ、バレちゃいましたか。やはり情報不足だとキツいですねぇ。」
パイオツは少女へと姿を変えた。

「氷の王」の少女だった。

 

44:不去〔4歳:LEVEL2〕
やはり予想通り、パイオツはパイオツではなく、その正体は見知らぬ少女だった。
何者かはわからんが、先程までの身のこなしを見るに、タダモノでは無いだろう。
勇姫「オイ小娘、誰だ貴様は?本物のパイオツはどうした?」
少女「ん〜、あと10年くらい待てませんか?」
トナリ「そっちの本物じゃねぇよ!人間の方の…確かに命名が悪ぃが!」
少女「あの木陰で眠ってますよ。恍惚の笑みを浮かべ、ヨダレを垂らしながらね。」
トナリ「そりゃ間違いねぇな…そっちが本物だわ。」
禍護「その顔…あの施設から盗んだ資料にありましたね〜。「氷の王」ですか〜。」
勇姫「”王”…なるほど、ならばガキの分際で強かったのもうなずける。」
禍護「おや、知らぬ仲なのですか〜?ならばなぜ助っ人のようなマネを〜?」
少女「逃げ回るだけの弱者なら見捨てたんですが…ちょっと気が変わりましてね。」
禍護「…目的は?」

少女「この子は私の…オモチャにします。」
一難が二難に増えた。

 

45:悪魔〔4歳:LEVEL2〕
「氷の王」らしき謎の少女は、味方かと思いきや敵かもしれない今日この頃。
勇姫「フン、人をオモチャにするだと?ふざけるな!それは俺の趣味だ!」
トナリ「いや、オメェがふざけんなよ!今までそんな認識だったのかよ!?」
少女「やれやれ、弱いのに口だけは一人前ですねぇ。」
勇姫「な、なんだとぉ!?」
禍護「興味深い子ですね〜。どうです?僕を「摂政」にしてみませんか〜?」
少女「いや〜要りませんよ。人生経験ならとりあえず足りてますから。」
勇姫「フッ、面白いことを言う。オイ貴様、名を何と言う?」
少女「名前ですか?ん〜、まだ決めてないんですよね〜。」
禍護「何を意味不明な〜…むっ、その”呪印”は、まさか…!」
少女「そうですねぇ…まぁ不本意ながら、「転生」の前はこう呼ばれてましたがね…」
トナリ「て、転生…!?」



少女「「死神の凶死」と。」

悪魔が復活してた。

 

第二章