第一章

 

16:期待〔3歳:LEVEL1〕
3年に渡る囚人生活を卒業し、やっと人並みの人生が始まった私の名前は「勇姫」。
助けてくれた土男流とオマケのトナリと一緒に、人里離れた山奥に逃げ込んだの。
どーやって脱獄したのかはイマイチ覚えてないんだけど、それはまーいいや。
そんなことより、土男流に両親のこととか色々聞きたい。期待と希望に胸がFカップ。
勇姫「あのさ、私の父親って一言で言うとどんな人?確か職業は「勇者」だとか…」
土男流「ん〜、「悪魔」なんだー!」

よし、死のう。
勇姫は絶望した。

 

17:希望〔3歳:LEVEL1〕
なんでも私の父は崇拝すべき「悪魔」で、土男流はそんな悪魔の弟子だったと。
そういえば誰かが「狂乱の蒼き魔王」とか言ってた記憶がおぼろげながら…。
勇姫「でも希望は捨てない!もう一つの可能性に全てを託す! は、母親は…?」
土男流「「泥棒猫」なんだー!!」

やっぱり死のう。
土男流は手加減を知らない。

 

18:不幸〔3歳:LEVEL1〕
なんでも母親の方は、慕ってた父を盗ったから「泥棒猫」だとか。いや、知らんがな。
勇姫「でもまぁとりあえず、普通の両親じゃないことはわかったよ。痛いほどに…。」
トナリ「げ、元気出せよタマ。生きてりゃいいことあるって。な?」
土男流「でも生きられる保障は無いんだー!」
トナリ「なんなんだよアンタは!?酷なこと言うにも程があるだろ!ちったぁ気を…」
土男流「こんなのでくじけてたら、師匠に会ったら二秒で自殺を考えるんだー!」

孤児で良かった。
まさかの不幸中の幸いだった。

 

19:願望〔3歳:LEVEL1〕
その後、私の父がかつて、「地球」とかゆー星を恐怖のどん底に叩き落した「大魔王」
…よりも、人々に恐れられた脅威の「勇者」だったと聞いた。聞くんじゃなかった。
勇姫「そんな親となると怖いなぁ…今後立つだろう「両親探しイベント」のフラグが…」
トナリ「あれ?でもよ、確か警備兵は「死してなお」とか…もう死んでんじゃねぇの?」
勇姫「たった今ポキリと折れたけども。」
土男流「いや大丈夫!殺して死ぬ人じゃないんだ、きっと生きてるはずだぜ!」
勇姫「でも、「はず」ってことは土男流も詳しくは知らないんでしょ?」
土男流「問題無いんだ!仮に死んでたとしても、いずれ第二第三の師匠が…」
トナリ「いや、それどこの「魔王」だよ。」
土男流「師匠はきっと生きてる。血のニオイの漂う先に必ず…!だから、会えるさ!」
勇姫は会いたくない。

 

20:事情〔3歳:LEVEL1〕
聞けば聞くほどに、私の父親は悪人だったっぽい。
死んだって説が濃厚らしいけど、土男流も詳しくは知らないみたく真相は闇の中。
トナリ「あー、ところでよ土男流さん。俺らが何で捕まってたか…知ってるのか?」
勇姫「私は単に、邪悪な父親によって監獄前に捨てられた説が濃い気が。」
土男流「違うぜ!お前は愛されて生まれたんだ!それは名前を見ればわかるぜ!」
勇姫「え…お父さんの「勇」と…あれ?お母さんは確か「盗子」じゃ…?」
土男流「姫ちゃん先輩は師匠の初恋の相手なんだー!」
勇姫「捨てられたのはお母さん説が急浮上…。」
土男流「ま、お前達の投獄には…話せば長い、事情があるんだ。」
長くなるので割愛します。

 

21:解説〔3歳:LEVEL1〕
土男流いわく、遥か昔、選ばれた者のみが扱える「天力」ってゆー力があったと。
その8大属性と力関係はこんな感じ。例えば火は氷に強くて水に弱い、的な。
[水] → [火] → [氷]
[光] ⇔ [ 闇]
[雷] ← [土] ← [風]

なんでも、その力を元に、一般人向けに開発されたのが「魔法」なんだって。
でも…時の流れと共に天力使いの力は薄れ、衰退の一途を辿ったんだとか。
土男流「ところがどっこい!急に強大な天力を持つ子供達が生まれだしたんだ!」
トナリ「そ、それが俺達…だってのか?」
土男流「そうなんだ!恐らくは親の影響が色濃いってのが専門家の見解なんだ!」
勇姫「つまり私の親はことごとく「闇」だと…?」
土男流「揺るぎないんだ!!」

揺るぎなかった。

 

22:納得〔3歳:LEVEL1〕
天力を持つ子が急に生まれ始めたのは、ここ数年の話なんだって。
中でも強大な力を持つ子は、もれなく親が名のある猛者だとか。
だからそのあたりの因果関係を解明すべく、あの監獄に捕らえて研究してたって話。
トナリ「…ん?だがよぉ、名のある猛者が子供さらわれたりするか?変じゃね?」
土男流「師匠はそんなミスは犯さないんだ!単に捨てただけなんだー!」
勇姫「やっぱりなんじゃん!さっき否定したのはなぜ!?」
土男流「捨てた理由は「盗子似だから」と…」
勇姫「じゃあなんで結婚したの!?」
土男流「まったくなんだ!!」
まったくだった。

 

23:変力〔3歳:LEVEL1〕
聞きたくもない話を聞かされまくって心が辛い昼下がり。
勇姫「でもさ…じゃあさ、なんで土男流は助けに来たの?超絶いらない子な私を…」
トナリ「頑張れよ!気を確かに持つんだタマ!」
土男流「そりゃ師匠の子だからさ!もし師匠が本当に亡き者ならなおさらなんだ!」
勇姫「父上の子だから…何?エキスでも吸おーっての…?」
土男流「おぉ!その発想は無かったんだ!」
勇姫「あったらどーしたの!?何その「新発見だぜ」的な反応!?」
土男流「お前達は、生きるべきなんだ!世界を…変える力を、持つ者として!」
トナリ「せ、世界を…」
勇姫「変える力…。」
多分悪い方に。

 

24:教育〔3歳:LEVEL1〕
真意はわかんないけど、なにやら土男流は私達を生かそうとしてるっぽい。
まぁどのみち身よりも無いわけだし、従うしか道は無い感じだけども。
勇姫「とゆーわけで、煮るなり焼くなり好きにすればいいと思うよトナリを。」
トナリ「って俺かよ!それ何の権限だよオイ!?」
土男流「ちゃんと二人とも鍛えるぜ!強くならなきゃ追っ手に殺されるからな!」
トナリ「やっぱ追っ手とか来るのかよ…。ま、脱獄囚だから当然か。」
勇姫「土男流も昔、パパさんに鍛えられたの?技とか教わったり?」
土男流「…お?」

え…弟子…?
名ばかりの弟子だった。

 

25:変化〔4歳:LEVEL1〕
春。 監獄から脱獄して1年が経ち、私は4歳になった。
修行の成果は…謎。基礎の反復だけだから、何も変わってない気がしてならない。
勇姫「変化が無いのはきっと土男流が無能だからだと思う。まったく雑魚めが。」
トナリ「いや、十分変わったぞお前。見事にグレてるぞ大丈夫か。」
土男流「オハヨウからオヤスミまで師匠の生き様を語り続けた甲斐があったぜ!」
トナリ「にしても、追っ手とか全然来ねぇよな。なんかもう大丈夫なんじゃね?」
男「捜しましたよ〜、呪われし子供達よ〜。」
来ちゃった。
土男流「ッ!!?」
勇姫「…うん、死ねばいいと思うな。」
トナリ「えっ、俺か!?俺がフラグ立てたからだと!?」
男「選択の機会を与えましょ〜。僕と共に来るか〜、それとも…この場で死ぬか。」
「死亡フラグ」まで立った。

 

26:隠密〔4歳:LEVEL1〕
来ないかと思ってたら、やっぱり来ちゃった追っ手らしき人。
勇姫「まぁとりあえず、名乗ることを許す。」
トナリ「いや、なんで上から目線なんだよ!それも遺伝の賜物か!?」
男「我が名は「禍護(カゴ)」。縁あって、その子達を預かりに来たのですよ〜。」
土男流「くっ、参ったぜ…。ちっとも気配に気づかないとは迂闊だったんだ。」
禍護「なるほど〜アナタでしたか〜。僕の手下を毎回始末してくださったのは〜。」
トナリ「なっ、じゃあこれまでも来てたのか!?それを土男流さんが陰で…」
土男流「お前達には…何も気にせず、健やかに育ってほしかったんだ。」

なら父情報も要らなかった。
おかげでグレた。

 

27:絶景〔4歳:LEVEL1〕
なんと、私達が知らぬ間にいつも土男流が追っ手を撃退してたっぽい。 だったら…
勇姫「さぁ土男流!やっておしまい!」
トナリ「ってだからなんで上…っつーかなんだよその悪役っぽい立ち位置!?」
土男流「…多分無理なんだ!だからお前達は、全速力で逃げるんだー!」
禍護「ほ〜、さすがに良い勘してますね〜。「人形師」の上…「人間師:土男流」。」
トナリ「に、「人間師」…本で読んだぜ。確か「統率者」とも呼ばれるリーダー格の…」
勇姫「へぇ〜、やっぱ土男流って有名人なん」
土男流「ハッ、来るなーーー!!」
土男流は勇姫をかばった。

土男流は真っ二つにされた。
土男流「がっ…!!」
勇姫「えっ…ギャーーーー!!」
トナリ「うわぁーーーーー!?」

ウギャーーーーー!!
トラウマ級の光景だった。

 

28:秘策〔4歳:LEVEL1〕
私をかばったせいで、上半身と下半身が別のアレで土男流がギャーーー!!
勇姫「ちょっ、ど、どどどギャーーーーー!!」
トナリ「落ち着けタマ! テメェ…選ばせるとか言っといて殺す気マンマンかよ…!」
禍護「いや〜違いますよ〜。普通に闘ったら厄介そうな相手だと思いましてね〜。」
土男流「ぐっ、大誤算なんだ…で、でも…この子だけは…絶対に守るん…だ…!」
禍護「ほ〜、その状態でまだ生きてるとは驚きですが〜…何かできますか〜?」
土男流「フッ…ひ、秘策は…あるんだ。い…いでよ!「トーコちゃーーーんDX」!!」
擬似母子の対面が。

 

29:永続〔4歳:LEVEL1〕
土男流が呼ぶと、空の彼方から一人の女の子が飛んできた。
足から何か噴射してるから人間とも思えないけど、なんか他人とも思えない。
勇姫「な、なにこの子…?もしかして私と何か…」
土男流「ち…違うぜ勇姫!盗子先輩はブサイクをこじらせて死んだんだ!」
DX「死なないよ!そんな不治の難病聞いたことないよ!」
トナリ「お、オイなんだよこのロボ…」
DX「ロボチガウ!」
禍護「おやおや援軍ですか〜?まったく無駄なことを…むぅ!?」
土男流は上半身だけで浮かび上がった。
何か糸的なもので吊られている。
勇姫「ギャーー!怖いよぉーーー!!」
土男流「わ、私は「人間師」…自分自身を操るくらい、わけないんだ…!」
禍護「最後のあがきですか〜。やれやれ〜、これだから熱血相手は…」
土男流「頼むぜ…トーコちゃん…。最期の…お願いなんだーー!!」
DX「…わかったよ、この子はアタシが守るよ!お兄ちゃんの名にかけて!」
未だにバグっていた。

 

30:分岐〔4歳:LEVEL1〕
土男流を残し、私を小脇に抱えた変なロボは全力疾走。
DX「早く走って!とっとと逃げないと土男流も長くはもたないよ!」
トナリ「けど逃げるったってどこへだ!?敵は強ぇ、どう考えてもすぐに…」
DX「アタシの中に入れば宇宙も越えられるよ!でも…さすがに一人乗りでさ…。」
勇姫「ッ!!」
トナリ「…チッ、そういうことかよしゃーねーな…。 おいタマ」
勇姫「行ってくるね、トナリ!」
トナリ「ってオーーーイ!!いや、確かに俺もそのつもりだったがお前…」
シュゴォオオオオオオオ!(発射)
トナリ「早ぇえええええええええ!!」
トナリは置き去りにされた。
トナリ「ふ、ふぅ…行っちまったな…。さーて、俺はどうす…」
ゴロン…
トナリ「ん…? なっ!?あ…あぁ…!!」
禍護「もう一度聞きましょ〜。行きますか?それとも〜なりますか?キミも、”首”に。」
トナリ「う…うわぁあああああああああ!!」
運命の分かれ道だった。

 

第二章