伝説の戦士

 

伝説の戦士 現る
女「キャーーー!」
男A「グヘヘヘヘ!叫んでも無駄だぜぇ〜!」
女「イヤー!誰か助けてぇー!」
乗客A「…で、でさぁ、あの話なんだけど…」
乗客B「あ、あぁ、そうだな…」
男B「ギャハハ!バカ女が!みんな見て見ぬフリさ、誰も助けなんて…」

謎「待てぇーーーーい!!」

女「えっ…!?」
男B「なっ!?だ、誰だよ今の!?」
謎「私だ。今すぐにヤメたまえキミ達。」
男A「んだよ正義の味方のつもりかコラ?何マンだよテメェ?」
謎「む?フッ、愚問を…。そんなこと、この姿を見れば一目瞭然じゃないか。」
男A「あぁ?姿って…そのスーツが何だよオイ?」
謎「我こそは企業戦士、サラリーマン!」
男B「って普通にリーマンかよ!ただのオッサンじゃねーか!」
謎「いや、タダではない…そう、タダではないのだよ!残業は!」
男B「何の話だよ!?人の話聞けよ!」
謎「たとえ悪は許しても、サービス残業は許さない!それが我ら、サラリーマン!」
男A「いや、許すなよ!冒頭で早速悪を許すなよ!」
謎「隅にいなさいお嬢さん。まるで休日、妻に掃除機で追いやられる私のように…。」
男B「って急に切なくさせんなよ!状況が容易に想像できすぎてヒクわ!」
男A「バカだ、絶対バカだよコイツ…。」
謎「フッ、私の頭脳をナメるなよ?私は今日一日で”アレ”を極めた程の男だぞ。」
男B「なっ、アレだと…!?まさかなんか、格闘技でも…!?」
謎「マインスイーパを!」
男B「仕事しろよ!一日かけて何やってんだよアンタ!?」
男A「もういいよ、やっちまおうぜコイツ。こんなオッサンなんか一発で…」
謎「フッ、やめておけ。私をあまり怒らせない方がいい。」
男A「な、なんだと…?」
謎「ストレスはこの毛根に良くない。」
男A「ってそっちの都合かよ!怒らせてほしくないだけかよ!」
謎「同期が次第にハゲていく…もうとっても不安!それが我ら、サラリーマン!」
男B「黙れよオッサン!妙に現実味のある話すんじゃねーよ!」
謎「そんな現実に、いつかはキミ達も辿り着くのだよ。」
男B「えっ…?」
謎「自分は違うと思っていた。自分の将来は、違うと…誰もが思っていたのさ。」
男A「な、なんだよそれ…。」
謎「だが気づけば毎日…満員電車に揉まれ、人ごみに揉まれ、時には揉んで…」
男A「って待て!いま明らかに変なカミングアウトが無かったか!?」
謎「波●さんやマ●オさんは夢の住人じゃない!多くの者の、未来の姿なのだ!」
男B「なっ…。」
謎「いつかは誰もが…頭頂部には毛が一本なんだ…。」
男B「ならねーよ!つーか誰もがなるならそれはそれで悩まんで済むわ!」
謎「今を…いや、未来を見たまえ若人達よ。キミ達は今、人生の岐路にいるのだ。」
男A「じ、人生の…岐路…。」
謎「後悔とは「後」で「悔」いる。悔いとは「心」の「毎」と書く…いや、意味は浮かばんのだが。」
男B「台無しだよっ!いい話に持ってく流れじゃなかったのかよ今の!?」
謎「とにかく、今ならまだ間に合う。キミ達は…私のようになってはいかん。」
男A「えっ…。」
男B「お、オッサン…。」
謎「…さて、では私はそろそろ行くとしよう。サラバだ若人達よ!」
男A「ま、待てよオッサン…!」
男B「オッサーーーン!!」

こうして彼は去っていった。


両脇を車掌に抱えられて…(痴漢容疑)