新説昔話

 

新説:鶴の恩返し
昔々 あるところに、お爺さんとお婆さんが住んでいました。

ある寒い冬の日、爺さんは町へ薪を売りに行きましたが、
さっぱり売れずにやさぐれていました。ムカついたので、
薪に火を付けて何軒かの民家に放り込んで逃げました。

やる気が無くなった爺さんは、家までの雪道を泣きながら
猛ダッシュ。すると途中で、罠に掛かって動けずにいる
一羽の野鳥を見つけたのです。

夕飯のおかずにちょうどいいと思い爺さんは罠を外した
のですが、助けられたと勘違いした野鳥は、礼を言うように
何度も嬉しそうに羽ばたいた後、勝手に逃げくさりました。

「待てー!待て野鳥ー!」と爺さんは追いかけましたが、
「そんな!手当てまでしていただくわけには…!」と、
またもや勘違いした野鳥はマッハで空に消えていきました。


数日後、ある吹雪の夜。爺さんと婆さんが家で年甲斐もなく
イチャイチャしていると、ふいに入り口をコンコン叩く音が
聞こえてきました。もう深夜だというのに太ぇ野郎です。

とりあえず一発ぶん殴ってやろうと爺さんが扉を開けると、
なんとそこには世にも美しい娘が立っていたのです。

娘「夜分にすみません。吹雪で帰れなくなってしまって…。
   すみませんが一晩泊めていただけませんか?」

子供がいなかった二人は、そのお願いを快くOKしました。
すると娘は、お礼に機を織りたいと申し出たのです。

娘「ですがお願いがあります。私が機を織っている間、
   決して中を覗かないでください。いやマジで。」

そう言うと娘は、部屋に入るとギッタンバッコンやり始めました。
そして朝になると、なんとも美しい布を抱えて出てきたのです。
その布は、町でとても高く売れました。


次の日も、そしてその次の日も、娘は決して覗くなと
言い残し、部屋に残ってギッタンバッコンやり始めました。

しかし爺さんも世界屈指の盗撮マニア。覗くなと言われて
素直に覗かないでいてはプロの名折れです。
爺さんは高性能CCDカメラを部屋中に仕掛け、娘を隠し撮りしました。

するとなんと、そこに映っていたのは娘ではなく、どこかで
見た覚えのある野鳥…そう、あの日助けた野鳥の姿でした。
野鳥は自らの羽を編みこみ、機を織っていたのです。


自分の予想に反し、爺さん婆さんが全く部屋を覗かなかったため、
娘は日に日にやつれていきましたが、二人は見なかったことにしました。
おかげで二人は大金持ちになったのです。


数日後、部屋から音がしなくなったので爺さんが部屋を開けてみると、
そこにはすっかりハゲあがってしまった野鳥がぐったりしていました。



その姿から、「ツル」という名が付いたとか違うとか。
- 完 -