新説昔話

 

新説:かぐや姫
昔々 あるところに、竹取りが趣味のジジイが住んでいました。

ある日、爺さんがいつものように竹を取っていると、なにやら
竹やぶの奥に、キラキラと不自然に輝く竹を見つけました。

蛍光灯にしては斬新すぎると思った爺さんは、
とりあえずその竹を持って帰ることにしました。

爺「うぉおおお!唸れ古の秘剣…必殺、竹林伐採剣!!」

誰も見ていないと思ってカッコをつけた爺さんでしたが、
ふと割った竹の中を覗くと、黄金色に輝く赤ん坊が必死に
笑いを堪えていました。

驚いた爺さんは、その赤ん坊を担いでダッシュで帰宅。
婆さんに見せると、誰の子かと激しく詰め寄られました。
爺さんには何度か前科があったのです。


その後なんとか事情を説明し、婆さんを納得させた爺さん。
ですが問題はこれからでした。この赤ん坊は一体何者なのでしょう。

とりあえず爺さんと婆さんは、話の都合上その赤ん坊を
「かぐや」と名付けました。詳しい由来は知りません。

名付けはしたものの、その後どうしてよいのかに悩まされた二人は、
竹に返すわけにもいかないし、また、子供がいなくて常々寂しいと
思っていたこともあり、そのまま育てることにしました。

二人はかぐやをたいそう可愛がり、それに応えるように
かぐやも優しく可愛く、健やかに成長していったのです。


それから十数年が経ち、気づけばかぐやもお年頃。
とても美しく育ってしまったため、爺さんは気が気では
ありませんでした。求婚する男が後をたたなかったからです。

村長の息子、長者の息子、家具屋の息子…
最後のは明らかにダジャレ狙いだと思ったので、
爺さんはシバいて庭に埋めました。


その後、家柄には何の問題も無い五人のイケメンが現れ、
それぞれ求婚しました。するとかぐやは難題を出し、
それをこなせば結婚すると言ったのです。

五人はそのお題のあまりの難しさに、贋物を作らせたりと
インチキを働きましたが、いずれもかぐやに見破られてしまい、
失敗に終わりました。

そして爺さんに庭に埋められました。


そんなこんなで全ての誘いをブッた斬っていったかぐやでしたが、
その美しさはついには帝の耳にも届いてしまい、乗り込んで
こられたのですが、かぐやはその誘いすらも即答で却下しました。

愛するかぐやが嫁いでいかないことは嬉しいと思っていた
爺さんでしたが、これほどの好条件にもピクリともしない
かぐやを見ていると、少し不安になってきました。

爺「もしかしてお前…レズっ子なのぐわっ!」

顔面にめり込むかぐやの鉄拳に、そうではないのだということを
気づかされた爺さん。ですが理由はわからず、しばらく悩み
続けました。聞くに聞けない、迂闊に聞いたら殺されます。
半ば諦めていた爺さんでしたが、その答えは意外にも早く
明らかになったのです。


それは十五夜の、月の輝く夜。
かぐやは爺さんと婆さんを集めてこう言いました。

かぐや「実は私は、月の姫なのです。
     そして今日、月に帰らねばならないのです。」

二人はぶったまげ、もともと心臓の悪かった婆さんは、
発作で病院に運ばれていきました。

残された爺さんは、月の使者からかぐやを守ろうと誓いました。
なぜならかぐやの瞳は、涙ににじんでいたからです。
帰りたくない愛する娘を、無理に引き渡すわけにはいきません。


爺さんはガッポリ溜め込んでいた全財産と全てのコネを使い、
あらゆる兵器をかき集め、月に向かって一斉射撃しました。

この容赦ない攻撃により、月面にあった基地は大破。
かぐやを迎えに向かっていた一団は、一瞬で壊滅しました。

こうしてできた巨大なクレーターは、今なお月面に刻まれています。



この事件以前には、確かに月にはウサギがいたとか違うとか。
- 完 -