怪人エロスさん

 

 
あの人のおかげで、僕らは色々なことを知ったんだ。
ためになったことや、ちょっと知りたくなかったこと…色々と教わった。
もう会えないかもしれないけど、できるならこの思いを伝えたい。

ありがとう、エロスさん。
 

 

- 1 -
ウチの学校に、新しい先生が赴任してきた。主担当は保健体育。
前の学校では、なんと「エロスさん」とか呼ばれていたらしい。一体どんな変人なんだろう。

「みなさんこんにちは、新任の『江戸スガオ』です。好きな装備は『ガーターベルト』です。」

え、エロスだ…!
 

 

- 2 -
新任の挨拶から、とんでもない発言をブッ放したエロスさんこと江戸先生。
いくら性に目覚め始めた中学生とはいえ、いきなりそれはドン引きだった。 だけど…
彼が去り際に放った一言は、僕達を性に走らせた。

「俺のエロ本か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世のエロスをそこに置いてきた!」

そして僕らは、『大風俗時代』に突入した。
 

 

- 3 -
その衝撃さゆえ、その日の昼休みはエロスさんの話題で持ちきりだった。
そしてガキ大将キャラである『勇馬』の発案で、誰かが保健室へ乗り込むことになった。
目的はもちろん先生のお宝の場所。そのためにはまず、先生の分析が必要だからだ。

決議は膠着し長時間に渡ったが、ついに、ある一人の勇者が名乗りを上げた。
彼の名は『太一』。クラスでも人一倍性に興味津々な、ちょっとしたデブだった。
「俺、この作戦がウマくいったら…亜美ちゃんに告白するんだ。」
そんな見事な死亡フラグを残し、教室から去っていった彼…。

背中を見つめる亜美ちゃんの冷たい視線が、今も忘れられない。
 

 

- 4 -
太一が教室を出てから、僕らはどんな展開になるのかを皆で予想しあった。
挨拶はあんなだったけど、意外とまともなんじゃないかという意見が多かった。
怒ったりしそうな怖いキャラにも見えなかったし、案外協力的なのかもしれない。
というかそもそも、先生なんかを怖がるほど最近の中学生はヤワじゃないんだ。

などと話しているうちに、勇者太一が帰還した。
彼は俯き押し黙り、そしてポツリとこう言った。

「…オッパイ揉まれた。」

こ、怖ぇ…!
 

 

- 5 -
皆の予想の枠を超える反応をかましたエロスさん。でもまだ僕らの敗北は決まってない。
『デブ=オッパイ揉まれる』の方程式は証明済み数式…別に驚くべきことでもないんだ。
僕らの考えを察知して、ちょっとビビらそうとしただけかもしれないじゃないか。

「部屋に入った時さ、なんか真剣な顔で辞書の淫語に…赤線引いてた。」

やっぱり怖ぇ…!
 

 

- 続 -