外伝(玖)

 

外伝:欧剣が行く〔1〕
俺の名は「欧剣」、職業は無ぇ。まぁ「自由人(フリーマン)」とでも言っとこうか。
特に夢も希望も無ぇ世の中を、俺は怠惰に過ごしてる。生きる意味?知らねぇな。
欧剣「やっぱつまんねぇよな〜。みんな死んじまえばいいのによぉ。」
少年「ん?ハハハッ、相変わらずスレてるなぁ欧剣。お前も夢持てよ夢。」
欧剣「うっせぇよ「蓮人(ハスト)」。俺はテメェみてぇなバカにはなれねぇ。」
蓮人「笑うなら笑うがいいさ。だが俺は諦めんよ、全てを…手に入れてやる!」
欧剣「フン、全てねぇ〜…。」

蓮人「そう、全ての「オッパイ」を!!」
後の「オッパイ仙人」である。

 

外伝:欧剣が行く〔2〕
まだ生まれて10年かそこらだが、早くも人生を諦めている俺は。
なぜなら、俺は弱い。凄まじく弱いからだ。犬猫にすら勝てた例がない…泣ける。
欧剣「そんな俺が生きてて何になるよ?この戦乱の世で弱ぇとか、クソだろ?」
蓮人「諦めるな、希望はまだあるさ。「オッパイ」という名の…真の希望がな。」
欧剣「黙れよ永遠の思春期野郎。オメェの頭はそればっかかよ?」
蓮人「頭?それはもしや「乳頭」のことかな?」
欧剣「死ねよ!!」
蓮人「…まぁ、何か探せよ欧剣。目標が無いと、生きるのは辛いぞ?」
欧剣「オメェの人生も見ていて辛ぇがな。」
蓮人「ふむ…よし、大陸に出よう欧剣!きっとそれが拙者ら二人のためになる!」
欧剣「た、大陸…?」
蓮人「そう、幻の大陸…オッパ」
欧剣「無ぇよ!!懲りろよ…。」
懲りずに三千年続いた。

 

外伝:欧剣が行く〔3〕
話の流れで大陸に渡ることになった俺達は、勢いで生まれ育った島から旅立った。
行く先で何か、生きる希望みてぇなもんが見つかればいいんだが…。
〜メジ大陸:ヤイ村〜
欧剣「って、なにも一番ヤベェ大陸に来ることねぇだろうよ。「魔王」がいんだろ?」
蓮人「フン、普段いつ死んでもいいとか言ってるじゃないか。気にするな。」
欧剣「まぁいいけどさ…で?なんでこの大陸なんだよ?」
蓮人「フッ、どうせ登るなら…山は高い方がいいだろう?」
欧剣「山…?」
蓮人「そう、二つの…な。」
欧剣「・・・・・・・・。」

欧剣「…「魔王」の!?」
そして伝説となる。(悪い意味で)

 

外伝:欧剣が行く〔4〕
蓮人の無謀な挑戦に知らぬ間に、巻き込まれていた俺。聞いときゃ良かった…。
だがまぁ、確かに奴の言う通り…命は特に惜しくねぇ。そういう散り方もアリかもな。
欧剣「つーわけで、「魔王」に会いたいんだが…詳しく教えてくれねぇか?」
村人「な、なんですと…!?だがしかし何の目的で…?」
欧剣「いや、それは聞かねぇでくれ。」
村人「ふむ、「魔王」ですか…僕ら村人も大したことは知らないのですよねぇ…。」
蓮人「ならば多くは求めまい。スリーサイズを、上だけ聞こうか。」
欧剣「オメェは少し黙っててくれ。緊迫感がまるで無くなる。」
村人「ん〜…謎だらけなのですが、一つだけ…わかっていることがあります。」
欧剣「一つか…まぁいいや、教えてくれ。」

村人「彼は“男”です。」
蓮人「その発想は無かったぁああああああ!!」
蓮人は驚愕した。

 

外伝:欧剣が行く〔5〕
村人いわく、今の「魔王」は男らしい。蓮人はみるみるヤル気を失っていった。
欧剣「つー感じだが、どうするよ蓮人?」
蓮人「帰ろう。もとい、新たな山を探しに向かおう。」
欧剣「決断早ぇな…。ま、その方が助かるが。 ありがとなアンタ、おかげで帰れ…」
村人「いやぁ、そういうわけには…いかないなぁ。」
なんと!村人は魔物の姿に変わった。
魔物「「魔王」様に仇なす不届きな人間ども!この俺様が始末してくれるわぁ!」
欧剣「お、オイオイ魔物だったよオイ…。ヘタに殴られたら死ぬぞ俺?」
蓮人「…傷心の拙者は、手加減なんぞしてやれんが?」
魔物「あぁ?ギャハハ!小僧ごときが俺様を倒すだとぉ?笑わせる!」
蓮人「フン、ならば見せてくれよう。拙者が伝承されし格闘術…「オッパイ神拳」を!」
創始者は誰だ。

 

外伝:欧剣が行く〔6〕
村人だと思っていた奴は、実は魔王の手下だった。やっぱ油断ならねぇ大陸だわ。
魔物「さぁいくぞ小僧。魔王様に逆らおうとした罪…死をもって償うがいい。」
蓮人「オイ貴様、我が「オッパイ神拳」には6つの型があるんだがどれが見たい?」
魔物「6つの型…だと…?」
蓮人「「皿型」、「半球型」、「円錐型」、「釣鐘型」、「三角型」…そして「山羊型」。」
魔物「乳の形状ではないか!なんなんだそのフザけた拳法は!?」
蓮人「ちなみに拙者は半球型…別名「お椀型」が好き。」
魔物「聞いとらんわっ!」
欧剣「ツッコミ属性のある敵で助かったわ。俺ぁもう疲れたし。」
魔物「くっ、ナメおって…!殺してくれるわぁああああああ!」
蓮人「…遅いな。」
ズボボッ!!(刺)
蓮人のカウンター攻撃。
魔物の胸に2つの風穴があいた。
魔物「ぐはぁあああ!! こ、この技名は…まさか…!」
蓮人「そう、幻の秘奥義…「陥没乳首」。」
欧剣「酷ぇな死因…。」
あんまりな最期だった。

 

外伝:欧剣が行く〔7〕
魔王に通じる魔物を倒したせいで、俺達は魔王軍に追われる身となっちまった。
いつ死んでもいいとはいっても、残虐な殺され方されちゃたまんねぇ。クソ怖ぇし。
〜メジ大陸:逆転のほこら〜
欧剣「つーわけで、しばらくここらに隠れようと思うんだがどうよ?」
蓮人「お前は…。なんでそんなに後ろ向きなんだ?もっと前を見ろよ。」
欧剣「夢ばっか見てる奴に言われたかねぇわ。テメェこそ前を見ろよ。」
蓮人「にしても…だいぶ深いな、このほこら。何か奉ってあるんだっけ?」
欧剣「知らねぇ。けどなんか…何かに、呼ばれてる気がするんだ。」
蓮人「そうか…じゃあ、爺ちゃんにヨロシクな。」
欧剣「いや、そっちじゃねぇよ。なんで死…ん?なんだあの奥の光は…?」
欧剣は謎の剣を発見した。
蓮人「ぬぐぐぐぐっ…!ダメだ、抜けないぞ。これはもしや…!」
欧剣「ああ、「選ばれた者しか抜けない伝説の剣」的なニオイが凄まじいな。」
蓮人「お?何か台座に書いてあるぞ。なになに…」
欧剣「…アレ?抜けちまった。」
蓮人「じゃ…く…「弱者の剣」?」
とっても不名誉だった。

 

外伝:欧剣が行く〔8〕
運命に導かれ、欧剣が手にしたのは、人をバカにしたような名の剣だった。
だが時が流れ、面倒なので色々と略して…こんな感じになった。
〜魔王城〜
敵兵「フン、ナメるな!そんな身の丈を越えるような大剣、小僧に振れるはず…」
ザンッ!(斬)
敵兵「なにぃいいいいいいい!?
欧剣「あ〜悪ぃな、ちょいとわけありなんだわ。」
ザシュッ!(斬)
魔王「ぐぉああああああ! ば、バカな…!このワシが…人間ごときに…!?」
青年「ハッハー!この「勇者:英雄(ひでお)」様を、ナメるな魔王風情がぁー!!」
ズバシュ!!(斬)
魔王「ぬおぉおおお…! くっ、「四天王」どもめ…何をしている…!?」
欧剣「アンタの敗因はさ…側近を、女で固めたことだ。」

蓮人「おぱーーーい!!」
女達「うぎゃーーー!!」
そして伝説となった。(悪い意味で)

 

外伝:欧剣が行く〔9〕
命を狙われ続ける人生もキツいってんで、潔く殺されに魔王城へと向かった俺達。
だが途中で出会った「勇者」と意気投合し、勢いでそのまま「魔王」を討っちまった。
欧剣「ったく、ムチャクチャな強さだなぁアンタ。一瞬アンタが「魔王」に見えたわ。」
英雄「代々続く「勇者」の家系のせいかな…雑魚どもの断末魔は心地良かったぜ。」
欧剣「やっぱアンタ「魔王」だ。」
蓮人「拙者も驚いたよ。あんな強敵を…一晩で殲滅とはな…。」
英雄「フッ、お前らも十分さ。その歳でそれだけやれりゃあな。ま、俺には劣るが。」
蓮人「ほほぉ、この拙者を上回ると…?貴様に、乳の何がわかるっ!?」
英雄「嫁ならいるぞ。」
蓮人「師匠と呼ばせてください!!」
英雄「そこまで乳に執着を…ある意味見事だな。お前には何か無いのか?」
欧剣「あ?そうだなぁ…今まで夢も無く生きてきたし…よくわかんねぇ。アンタは?」
英雄「俺はまぁ、元気なガキが見られりゃそれでいいや。もうじき生まれんだわ。」
欧剣「じゃあ俺は逆に、世界の終末を見届ける!ぐれぇ言っとくかなぁ〜アハハ!」

魔王「その願い…手助けしてやろう……。」
なんと!魔王は生きていた。
魔王から怪しい何かがほとばしる。

英雄は呪われてしまった。
欧剣は呪われてしまった。
蓮人は呪われてしまった。

そして魔王は息絶えた。

 

外伝:欧剣が行く〔10〕
倒したと油断してた隙を突かれ、俺らは死に際の魔王に何かされちまった。
だが特に何も異常は感じねぇし…まぁ気にすることもねぇか。それよりも何よりも…
欧剣「これからの人生、だよなぁ。「魔王討伐」以上のビッグイベントとか無ぇだろ?」
英雄「あん?さっきの「終末を見届ける」ってのはどうしたよ?」
欧剣「どんな化けモンだよ。そんな長生きできるわけねぇだろうが。」
英雄「望みとあらば力を貸すが?」
欧剣「アンタやっぱ「魔王」だろ。」
蓮人「拙者の夢は程なくして叶うがな。世界中の生乳が、群れをなして襲ってくる。」
欧剣「どんな悪夢だよそれ…。」
英雄「ま、とりあえずウチ来いよ。どうせ行く場所も無いんだろ?部屋ぐらい貸すぞ。」
蓮人「じゃ、じゃあ…!」
英雄「嫁は貸さんが。」
蓮人「くっ…!!」
欧剣「ん〜〜…なら、とりあえず世話になっかな。とりあえず今日は…疲れたわ。」
英雄「ならば、付いてくるがいい雑魚ども!そして俺を盛大にもてなすがいいわ!」
欧剣「いや、アンタがもてなせよ。」

それからしばらくして、英雄さんには子供が生まれ…


その日、彼は死んだ。
子供はとても元気だった。

 

外伝:欧剣が行く〔11〕
そして、2500年の月日が流れた。
それはもう、凄まじく気の遠くなるような年月だった。
欧剣「枯れた…もう、完全に枯れたぜ…。胸が躍る事柄とか、全然…無ぇし…。」
乳爺「なっ、胸が躍るだとぉ!?どこだ!?どこでそんなフェスティボーが!?」
欧剣「お、オメェは変わらねぇな…。いや、見た目は尋常じゃなく変わったが。」
乳爺「フン、貴様の方が異常なのだよ。なぜ老けとらんのだ?顔色も悪いし。」
欧剣「いや、知らぬ間に頭に乳乗せてる奴に言われたかねぇよ。」
乳爺「2500年…お互い色々あったということかのぉ。肝心なことを除いて…な。」
欧剣「ああ…。まぁ、理由が理由のオメェと一緒にされたくは無ぇんだがな。」
乳爺「なにっ…!?貴様、オッパイをナメるな!いや、まぁ来るべき時には是非ナメ」
欧剣「意味が違ぇよ! ったく、いつまでも変わらねぇな…そこは羨ましいわ。」
乳爺「貴様は相も変わらず夢も希望も無い顔をしおって…情けない限りだのぉ。」
欧剣「…フッ、そうでもねぇぜ?最近やっと、一つの光明を見つけたんだ。」
乳爺「む?それはもしや…最近噂の“奴ら”のことか?」
欧剣「そう、世界に終末をもたらす災厄…十二の神。これで、死ねるかもしんねぇ。」
乳爺はまだ死ねない。

 

外伝:欧剣が行く〔12〕
最近、宇宙から「神」と呼ばれる奴らが突如現れたらしい。人々は恐怖に震えてる。
これはチャンスだ。これで世界が滅んでくれれば、俺はやっと…死ねるんだ…。
欧剣「つーわけで、俺は期待してるってわけよ。もう後はのんびりしてりゃあいい。」
乳爺「いや、だが「終末を“見届ける”」…だろう?参加しないで良いものかどうか。」
欧剣「ま、マジで…?」
乳爺「しかも、各地で神討伐のため戦士達が立ち上がっとると聞くしのぉ。」
欧剣「じゃあ、どうすれば…?」
乳爺「揉みに行こう。」
欧剣「2500年…人を変えるにゃ十分な年月なんだがな…。」
乳爺「拙者、討伐軍に加わろうと思う。名声を得れば揉める機会も増えよう。」
欧剣「違った意味で揉めそうだがな…。」
乳爺「で、お前さんはどうする?」
欧剣「そうだなぁ〜…確かにこの絶好の機会を、台無しにはさせたくねぇなぁ。」
乳爺「よーし、ならば…行くか!」
欧剣「おぉ!」
そして伝説となる。(いろんな意味で)

 

外伝:欧剣が行く〔13〕
そんなこんなで、俺と蓮人は神と戦う戦士として参戦することになった。
正義の味方じゃねぇ。隙を見て、討伐軍を内側から崩してやろうってのが魂胆だ。
次第に、俺を「十賢人」だか言う奴まで出てきやがった。複雑だが順調って感じだ。
だが、少し思惑と違ったこともある。「勇者:救世主」…凄まじく強ぇ奴がいやがった。
あと、「錬金術師:錬樹」ってのもヤベェ。神に片っ端からトドメ刺してやがる。
他には、「教師:理慈」に「賢者:無印」…どいつもこいつも化け物揃いだ。
このままじゃ終末どころじゃねぇ。なんとか…手を打たなきゃならねぇな。

そういや、「邪神」の乳を揉んだ奴がいるとも聞いた。そうか、奴は…やったのか。
残念ながら服ごしだった。

 

外伝:欧剣が行く〔14〕
討伐軍の実力が予想以上で、こりゃヤベェかなとも思ったが、少し希望が出てきた。
「魔神:マオ」…コイツは規格外だ。あの巨体にあのパワー、間違いなく最強だ。
実力見るために特攻かけたら、咆哮で粉々にされた。復活に何日もかかったぜ。
だが、おかげで確信した。コイツなら、世界を終わらすことができるに違いねぇ。
〜魔神の上〜
欧剣「つーわけで、悪ぃがオメェにゃここで…死んでもらうぜ。」
救世主「キミは…欧剣さんですね?ここは危険ですから、僕に任せて…」
欧剣「ハハハッ!人生経験豊富な分、勘はいいんだ。全部気づいてるっての。」
救世主「ッ!!?」
欧剣「目ぇ見りゃわかるさ。その目は、誰かを守ろうって奴の目じゃねぇよ。」
救世主「…やれやれ、まさか見抜かれるとは…。僕もまだまだなんだなぁ…。」
欧剣「真意はどうあれ、結果的に世界を救われちまうのは都合が…悪いんだわ!」
ジャキィイイン!(受)
救世主「くっ、その大剣を軽々と…!「十賢人最強」の座はダテじゃないんだねぇ。」
欧剣「フッ、「最強」か…。俺にとっちゃ、なんとも皮肉な称号だぜ…なぁ相棒?」
救世主「剣に話しかけるとか…痛い人?」
欧剣「う、うるせぇよ!演出の一種だよ演出の!」
救世主「全く意味がわからないけど…謙遜?強者ゆえの自信?」
欧剣「フン、言うな…泣けてくる。」
〔弱者の剣〕
弱い者ほど強くするという不思議な魔剣。
強くなるのはよっぽどの雑魚だ。

 

外伝:欧剣が行く〔15〕
救世主は凄まじく強く、健闘虚しく俺は負けちまった。そして俺は、社会的に死んだ。
心臓とか動いてねぇから、拾われた俺は死者として処理されちまったってわけだ。
まぁ有名になりすぎたし、裏で動くにはその方がいいんだが…ちっとばかし複雑だ。
結局…魔神は封印され、救世主も消えた。道連れにされたって線が有力だろう。
待ちわびた死のチャンスは、完全に無くなっちまったってわけだ。泣けてくるぜ…。
だが、俺は諦めねぇ。いつの日にか、また再びチャンスは訪れるはずなんだ。

きっと現われる。世界を終末へと導く…悪魔のような、化け物がな。
そして五百年後…

彼は、勇者と出会う。

 

第二十七章