外伝(参)

 

修練の章:無職編〔1〕
気づけばドップリ巻き込まれていた地球での大決戦。困ったけどやるしかないです。
今のワチじゃまだまだですが、半年もあるなら大佐さんの教えで鼻がもげそうです。
無職「でも背に腹はって感じなので捜してるですが、大佐さんは…?」
太郎「ん?あ〜…ホラ、好きじゃんあの人、シャワー。」
無職「あぁ…なんとも報われない行為ですよね…。」
下端「ところで中佐殿!これからどう修行するッスか?目指すものは何なんスか?」
無職「えと、大まかに言うなら「社会人」です。もう夢は見ないと決めたですよ…。」
太郎「フッ、じゃあ僕が育ててあげようか?こう見えて僕、レベル70だしね。」
無職「いや、「遊び人」のレベルが高いのはプラスかマイナスかというと…ですよ?」
下端「だったら自分が「戦士」のコツを教えるッス!力任せに武器を、こうっ!!」
召々「ボクでもいいよ?ヤル気は全然ないけど暇だしね♪」
ライ「いやいや、ここは王に仕えニャい「王佐」のアタチが…!」

ワチ、これでも上官なのに…。
無職は自信すら持てない。

 

修練の章:無職編〔2〕
残された隊員の方々は同情をたくさんくれたですが、強さには繋がらない感じです。
やっぱりここは、大佐さんにお願いするしかないですよ。少しでも強く…ですよっ!
無職「お…ゲフッ!お、お願いです大佐さん!ワチを鍛えてほしいですよ!」
大佐「ん?ん〜しかしねぇ、私は総合的には鍛えてきたが特に個性は無いしなぁ。」
無職「いや、お気づきでないだけで大変なモノを持っちゃってるですが…。」
大佐「それに残念だが、キミには既に…私の技術はほぼ全て見せてしまっている。」
無職「え、じゃあもしや大佐さんに教わることはもう無いのです…?」
大佐「いや、そうじゃない。そうじゃなくてキミには…凄まじくセンスが無い。」
無職「今ワチ、夢も希望も根こそぎ断たれたです…。」
大佐「いくら見せても覚えられない…弟子としては致命的だ。最悪だね!アハハ!」
無職「た、大佐さん…ワチらが使ってる1割でいいから、気を使う努力を…。」
大佐「だがしかし、諦めるのはまだ早いよ。諦めなければ望みはある!」
無職「ほ、ホントですか!?ワチもまだなんとかなるです!?」
大佐「もちろんさ。 私だって、努力で今の地位を築けたんだ。」
それは「才能」のおかげだった。

 

修練の章:無職編〔3〕
凄まじくデリカシーに欠ける大佐さんが言うには、望みはあるようで無いようで。
でもゼロじゃないなら賭けてみるしかないです。意外と諦めが悪いのが売りですよ!
無職「さ、さぁどっからでもカモンですよ!もうどんな試練にでも耐えちゃうですよ!」
大佐「あ、顔は狙わないから大丈夫。息が切れる、その防護マスクは外しなさい。」
無職「いや、それはちょっと。」
大佐「私もかつて、なぜか職に就けなかった身でね。やりたかったなぁ飲食店…。」
無職「急に何の話かわからないですが、大惨事が未然に防がれて良かったです。」
大佐「そんな折だ、やっと入れた会社で…上司から手痛い技をもらったんだよ。」
無職「その技を教えてくれるですね?でもワチに使える感じですか?」
大佐「それはわからないが、可能性はある。その痛みを知るキミだからこそ…!」
無職「い、痛み…?よ、よくわからないですけどそれは一体どんな技です…!?」
大佐「禁忌の技だよ。人を社会的に抹殺する闇の秘剣…その名も、「覇権斬り」。」

それは世間的にどうかと。
「無職」は切る側じゃない。

 

 

 

修練の章:宿敵編〔1〕
暗黒神戦を経て、自分の力不足を悟った僕は、我が師…「ポン老師」を捜していた。
数年前ぶりだったから会えるか心配だったが、なんとか会うことができたのだった。
宿敵「お久しぶりです老師。長らくご無沙汰していたことをまずお詫びします。」
老師「まずお詫びします。 …ププッ☆」
宿敵「いや、ムカつくモノマネとかいいんで。」
老師「いや〜久しいのぉ小僧よ。まだ生きとるということは、精進しとるようじゃなぁ。」
宿敵「お陰さまでなんとか日の当たる場所で活躍できてます。ホント良かった…。」
老師「ふむ…では、久々に組み手でもしてみるかね?おヌシの成長が見たい。」
宿敵「いや、僕らの場合決着つかないんで。わかっててイジめないでください。」
老師「わかっててイジめたいでください。」
宿敵「いや、どうせモノマネするならやりきりましょうよ。途中に願望が混じってる。」
老師「フォフォフォ…どうやら「好敵手」の限界に、参っとるようじゃな。」
宿敵「…お察しの通りで。何か手はありませんか?いい加減勝ちたいんです!」
老師「まぁ手は…無いではない。じゃがしかし、勝てる保証は無い上に…更に…」
宿敵「負ける危険性が出てくる…ということですね?」

老師「知らん。」
宿敵「こ、このジジイ…!」
こういう時に勝ちたい。

 

修練の章:宿敵編〔2〕
会って思い出した。そうだ、この人こういう人だったっけ。とんだ無駄骨だったな…。
宿敵「ハァ…どうやら苦労してアナタを捜したのは無意味だったらしい。帰ります…。」
老師「どうやらおヌシは、「好敵手」の本質を誤解しとるようじゃ。やれやれじゃな。」
宿敵「なっ、「好敵手」の本質だって…?そ、それは一体…!?」
老師「知らん。」
宿敵「世話になった方にこう言うのはなんだが、もし法が許すなら笑顔で殺す!」
老師「そもそも妙だと思わんかったか?「引き分け=ライバル」…成り立つかね?」
宿敵「え?あ、確かに…。「負けない」のはともかく、決して「勝てない」んじゃ少し…」
老師「そう、時に勝って時に負けて…それこそが好敵手!引き分けだけじゃない!」
宿敵「老師、それはつまり…!?」
老&宿「知らん。」
宿敵「ハイきたー!ハイ予想通りー! んもぉ〜〜!!」
老師「ふむ…さすがは我が愛弟子じゃ。どうやらワシが教えられることはもう…」
宿敵「いや、最後の教えがコレって!「モノマネ芸人」方面の教えは要らないし!」
老師「やれやれ面倒な子じゃ。」
宿敵「き、貴様ぁ…!!」
2時間モメたが引き分けた。

 

修練の章:宿敵編〔3〕
無駄骨なのはわかっていつつも、ついついムキになってしまった。僕もまだまだだ。
ここは一旦冷静さを取り戻し、よく考えてみることにしよう。本当に手は無いのかを。
宿敵「と、色々考えた結果何も無さそうなので帰ります。どうぞお元気で。」
老師「やれやれ…やはり“彼”に任せるべきかのぉ。それが一番自然やもしれん。」
宿敵「え!もしかして誰か、心当たりでも…!?」
老&宿「知ってる。」
宿敵「ハイやったー!ハイ裏かいたー! って、えっ!?ホントに知っていると!?」
老師「うむ、なかなかツワモノじゃった。きっと何かをもたらしてくれることじゃろう。」
宿敵「じゃあなぜ今まで黙って…。」
老師「そう言うな。ワシももう歳じゃ、おヌシと語らえるのも…これが最後じゃろう。」
宿敵「ろ、老師…。」
老師「嫌われてもうたしな。」
宿敵「それは自業自得かと。」
老師「さぁ行きなさい宿敵。お前の行く先に何があるのか…それは、知らん。」
宿敵は明日が見えない。

 

 

 

修練の章:冥符編〔1〕
天空の城から落ちた俺だったが、運命的にハニーと再会できた。そう、まさに運命!
そんな俺達は今、ハニーが行きたい地を目指し…あれ?これってハネムーン?
〜エリン大陸:タミ村の喫茶店〜
冥符「ふぅ〜、だいぶ歩いて疲れたねハニー。まぁちょっとのんびり休んでこうよ。」
商南「おっ、なんや懐かしい店やんか。確か勇者らと再会したんもここやったわ。」
冥符「だろ?だから結婚してくれっ!」
商南「会話せーや会話を!何をもって「だろ?」やねん!?うっとーしーねん!」
冥符「でもよく言うじゃん?「イヤよイヤよも好きです!付き合ってください!」って。」
商南「なんでウチの方から告る流れやねん!なんでそう無駄に前向きなん!?」
冥符「この世に無駄なものなんてないさ。全ては愛に繋がってる。」
商南「ハァ…せやから何度も言うてるやろ?ウチが好きなんはゼニだけやねん。」
冥符「おぉそりゃ奇遇だぜハニー!こう見えて俺の将来の夢は「紙幣」なんだ!」
商南「あ、ウチは紅茶ちょうだい。」
店員「あいよー。」
冥符「うわぉスルー!?なにその新手の愛情表現…斬新すぎてときめいたぜ…!」
商南「ちゅーかアンタ、目的忘れてへん?何しに向かってるか覚えてるん?」
冥符「ん?もちろんわかってるさ、式の話だろ?」
商南「その前に「葬」付けたろか!?真面目な話や!」
冥符「…わかったよ、行こうぜハニー。俺達の行く道…ヴァージン・ロードを。」
商南は最近痩せた。

 

修練の章:冥符編〔2〕
ハニーに導かれるまま辿り着いた先は、妙な山だった。山で挙式か…うん、新しい!
じゃあ山頂に着く前に、素敵なプロポーズで求婚⇒結婚⇒挙式といくべきだろう。
〜エリン大陸:ババン山〜
冥符「頼むハニー、俺の味噌汁を作ってくれ!もしくは俺と一緒の墓に入ってくれ!」
商南「どっちもイヤやっちゅーとろうがっ!もう聞き飽きたわ!」
冥符「じゃ、じゃあ俺の…俺の味噌汁に入ってくれ!」
商南「どんな拷問やねん!その結果何がどうなんねん!?」
冥符「ん?なんか変な砦が…。もしかしてここがハニーの目的地だったり?」
商南「おぉっ!せやねんせやねん、前にもらい損ねたお宝がぎょうさんあんねん♪」
冥符「でもな〜、なんかゴッツイ錠がついて…」
ガチャ(扉)
商南「開いたで。」
冥符「す、スゴいな…。そのくらいすんなり心の扉を開いてほしいもんだが…。」
商南「さ、はよ「転送符」出しぃや。さっさとズラかるで〜!」
族長「そりゃあ困るだなぁ。オデらの歴史でもあるで。」
商南「はぁ?何が歴史やねん?んなゼニにもならん…って、しもたーー!!」
族長「まぁたオメェさんかい…。まっだぐ懲りねぇ娘っこだやなぁ。」
商南「宝があったら心が弾む…それがウチら「商人」やねん!習性やねん!」
冥符「いや、そこは「盗賊」に任せでふっ!!
商南「何がなんでももらってくでぇ〜!資産の、有効活用やっ!」
居直り強盗が現れた。

 

修練の章:冥符編〔3〕
その後、山賊と一戦交えた俺だったが、なんと山賊長は思いのほか強く…ぐふっ!
商南「な、なんでや!?なんで冥符がこんな田舎モン丸出しのオッサンに…!?」
族長「フッ、ナメるでねぇ。これでもがづでの「勇者」どは…見だ目は関係ねぇべ?」
冥符「くっ、バカな…こんなオッサンに不覚をとるとは…!しかもハニーの前で…!」
族長「けどもオメェさんもながながだぁ。いい時期に…いい拾いモンがでぎだなや。」
冥符「いい時期…?ハッ!まさか…婚期!?」
商南「アンタの頭はどんだけハートマークでイッパイやねん!他に無いんか!?」
族長「じぎに世界の危機が来る…そげな噂があっでなぁ。戦力が要るんでよぉ。」
商南「ハァ?それがウチらにどう関係すんねん?わけわからへん冗談は休み休み」
族長「金なら弾むでよぉ。」
商南「休んでてくれはったらええねん!後はこの冥符がキメるさかい! な!?」
冥符「フッ、任せてくれハニー!ビシッとキメるぜっ!」
多分通じてない。

 

 

 

修練の章:姫編〔1〕
私は姫…姫か姫じゃないかと聞かれたら、そう…姫だよ!多分…姫だよ?うん。
姫「というわけなの。」
店主「え、いや、だからそうじゃなくて…お嬢ちゃん、無銭飲食でしょ?」
姫「違うよ姫だよ。」
店主「参ったな…。あのさお嬢ちゃん、お母さんとか一緒じゃないのかなぁ?」
姫「お母さんは、3年前に…」
店主「え…ご、ゴメン。そんな事情と」
姫「30歳になったよ。」
店主「知っていたら、謝らなかったのに…。」
ゴキッ!(折)
なんと!姫の首が100度回った。
姫「うぎゅっ!」
店主「えぇーーーっ!?お、お嬢ちゃん!?生きてる!?」
妃后「姫ちゃ〜ん?いつも言ってるよね〜?ママは「永遠の10代」だ〜って♪」
店主「え、ママってことはアンタがこの子の母親かい?ちょうどいい、だったら聞い」
妃后「ハイ〜?(ニッコリ)」
店主は怖くて動けない。

 

修練の章:姫編〔2〕
何年かぶりにお母さんに会ったの。こう見えてお母さん子だから嬉しいよ。
姫「お母さんお久しぶり。少し会わない間に大きくなったよ?」
妃后「いつも言ってるよね姫ちゃん?ママのセリフを取っちゃダ〜メ。」
姫「で、どうしたの?お昼御飯ならシチューがいいよ。」
妃后「さっきたらふく食べた分の代金を払ったんだけど…じゃあアレは何?」
姫「3時のオヤツ?」
妃后「それはちゃんと3時に食べようねって教えたよね?まだお昼前だよ?」
姫「お母さんの話はいつも難しいよ。」
妃后「私はアナタの扱いが難しいよ…。」
姫「お母さんは何しに来たの?ピクニック?大パニック?」
妃后「ん〜、どっちかって言うと後者かな。 ちょっとアナタを…鍛えに、ね。」
母さんの奮闘が始まる。

 

修練の章:姫編〔3〕
なんか知らないけど、お母さんがハッスルし始めたよ。疲れることはとっても困るよ。
妃后「とか考えてると思うけど、ママ手加減しないから覚悟してね。」
姫「私は湯加減にはこだわる方だよ。」
妃后「まったく…。なんでそんなにポヤポヤしてるのかなぁ?やっぱりマオのせい?」
姫「フッフッフ…」
妃后「えっ…?」
姫「フェックチュン!」
妃后「まずはその困った性格を、もうちょっと人並みにしなきゃだね…。」
妃后の掌から不思議な光がほとばしった。
姫「うぎゅ〜!お、お母さん…?頭がイタタタ〜!」
妃后「マオのカケラが残ってるのかも。だから私の「退魔」の魔法で…追い出す!」
姫「にゅぅ〜〜〜!! う゛ぅ……ぅ…ハッ!!」
妃后「さぁどうかな姫ちゃん?目は覚めた?」
姫「…うん、わかってるよ。時が…来たようだね…。」

姫「3時のオヤツ。」
妃后「…アレ?」
だが何も起こらなかった。

 

 

 

修練の章:勇者編〔1〕
姫ちゃんの…いや、お義母さんのおかげで、なんとか自由に動けるようになった。
まぁ肉体の修練は無理だが、霊体でも経験は積める。面倒だが修行でもしようか。
〜ギマイ大陸:ナンデン神殿〜
勇者「というわけで俺は旅をしている。見た目は半透明だが気にするな。」
兵士「え、うわっ、化け物…!? って、あれ?まさかキミ…勇者君?」
勇者「む?なんだ貴様、この俺のファンクラブ通信の定期購読者か?」
兵士「いや、その存在すら知らなかったけど…じゃなくて、僕は「駐屯科」にいてさ。」
勇者「駐屯科…?ほぉ、まさかこんな所で学園校の人間に会えるとはなぁ。」
兵士「まぁ駐屯科の厳しさは冒険科とは違ったしね。」
勇者「ふむ、この俺に向かって「死ね」とはいい度胸だ。」
兵士「そんな人だって噂で持ちきりだったよ…。ま、今じゃ他の噂で聞くけどさ。」
勇者「フッ。なんだ、世界最強の実力者とでも言われてたか?」
兵士「え、いや、その…実力で…」
勇者「ほぉ、実力で?」

兵士「「魔神」の名を勝ち取ったと。」
意外と噂じゃなかった。

 

修練の章:勇者編〔2〕
神殿の入り口で、なにやら俺が妙な噂になっていると聞いたがまぁ気にしまい。
くだらんことは放っといて、俺が今以上に強くなる道だけを探して突き進もう。
勇者「というわけで貴様、俺を強くするがいい。手段は問わんが痛くしたら怒るぞ。」
神官「なっ、出たな化け物…!亡霊の分際で神殿に乗り込んでくるとは笑止!」
勇者「あん?誰が亡霊だ!ナメた口きいてると三代たたるぞ!」
神官「思いっきり亡霊の返しじゃないか! だが悪いな、こう見えて僕は独身だ!」
勇者「いや、胸張って言えるセリフじゃねーよ。」
神官「だがしかし神官は鬼じゃない。さまよえる亡霊よ、悩みがあるなら聞くが?」
勇者「俺は力を欲している。肉体が復活した時、奴らを斬り刻める力をなぁ!」
神官「やはり邪悪な輩か!まさか貴様、この神殿に封じている「契約獣」を…!?」
勇者「ほぉ、そんなのがいるのか。」
神官「くっ!この私の口を無理矢理割らせるとは、なんと卑劣な…!」
勇者「お前一回病院で診てもらえよ。」
神官「フフッ、だが甘いな!封じた部屋の扉は誰にも開けられ…って、いない!?」
勇者はすんなりスリ抜けた。

 

修練の章:勇者編〔3〕
神殿のとある部屋の中には、「契約獣」と呼ばれる獣どもが封じられていた。
聞いた話じゃ、使いこなせば武器になったり防具になったり、お得な奴ららしい。
だが、一生に一体としか契約できないようなので慎重に選ぶ必要がある。
まぁ俺ほどの男の目にとまる奴がいたとしたら、ショボいはずは無いんだがな。
獣A「キ、キェエエエエエエ!!」
獣B「ガゴォオオオオオ!!グァオッ!!」
獣C「グギャアアアアアアアアオッ!!」

フッ…みんな懐かん。
勇者は選ばれなかった。

 

第六章