外伝(肆)

 

外伝:偽りの半年間〔1〕
尋常じゃない激痛に導かれ、俺は目を覚ました。顔面を中心に体中の感覚が無い。
数分後。なんとか起き上がり辺りを見回すと、そこには薄暗い空間が広がっていた。
ここは一体どこだろう? 洞窟?体内?いや、魔界や地獄という線もありえる。

麗華「やっと起きたか、勇者。」

そうか、「鬼が島」か…。
勇者は勘が冴えた。

 

外伝:偽りの半年間〔2〕
目が覚めると、笑顔で俺を見下ろす鬼がいた。どうやら全ては麗華の仕業らしい。
勇者「貴様…そうか、この俺の痛々しい様は貴様のせいか、賢…」
麗華「束の間の再会だったが、お前と会えて嬉しかった(抜刀しながら)。」
勇者「…け、賢二の姿が見えないが、ここはどこなんだ?」
麗華「ワシの隠れ家だ。お前の曲がった性根を鍛え直すため、連れてきたのだ。」
勇者「な、何を言う!俺ほど真っ直ぐな性根の持ち主がいるか!?斬るぞ貴様!」
麗華「間違った方にじゃないか。「魔王」の方面に真っ直ぐじゃないか。」
勇者「それにお前、リーダーである俺が急にいなくなったら賢二達は泣くぞ?」
麗華「安心しろ、ちゃんと代わりは残してきた。奴がうまくやるだろう。」
勇者「代わりだとぉ!?この俺の代わりになるような奴が存在するはず…」
麗華「いや、おる。 この世にあと二体しかおらん貴重なモノマネ猿…「写念獣」だ。」
ウッキー勇者はホントに猿だった。

 

外伝:偽りの半年間〔3〕
麗華の話によると、賢二達のもとには「写念獣」とかいう魔獣を残してきたらしい。
だが、そんなものは信用できん。一刻も早くアイツらの所に戻ってやらねば。
勇者「…よし、名前の件に関してはわかった。秘密にしとこう。だから俺は帰るぞ。」
麗華「待て、性根を叩き直すと言ったろう?修行をつけてやるから心して残れ。」
勇者「あん?フザけるな!こんな辺鄙な山奥に誰が残るか!」
麗華「安心しろ、「生き残れ」とは言わん。」
勇者「いや、それは言えよ!死んでも仕方がない何かをさせるなよ!」
麗華「心配するな、半年したら帰してやる。“奴”の寿命も多分そのくらいだしな。」
勇者「そんな老猿に任せたのか!?ちゃんと化けれてんだろなオイ…?」
麗華「大丈夫だ。お前も会ったらきっと驚くぞ。」
勇者「ほぉ、そんな完璧に化けるのか。」
麗華「まるで別人のようで。」
勇者「全然ダメじゃねーか!!」
麗華「お前が悪いのだ。あんな混濁状態の奴を、うまく読めるわけがなかろう?」
勇者「お前が悪いんじゃねーか!お前の鉄拳の功績じゃねーか!」
麗華「まぁとにかく、半年は帰さん。死にたくなくば…とりあえず朝飯を狩ってこい。」
勇者「くっ…!」
勇者は蜘蛛の巣に掛かった。

 

外伝:偽りの半年間〔4〕
そして厳しい修行の日々が始まった。前もそうだったがコイツの修行はハンパない。
準備運動だけで軽くお花畑が見えかけた。半年後まで生きていられるのだろうか。
麗華「よし、まずは防御からだ。とりあえず自分の盾ぐらい使いこなせんとな。」
勇者「はぁ?こんなガラクタをか? 冗談は名…顔だけにしろ。」
麗華「いや、言い直しても十分失礼だぞ。むしろ二度失礼だぞ。」
勇者「とにかく、攻撃を避けるような呪われた盾なんぞに興味は無い。剣を教えろ。」
麗華「以前、我が師が言っていた。その盾には不思議な能力があるとな。」
〔破壊神の盾〕
破壊神の牙から切り出し練成した、「斥力」を持つ強力な盾。
磁石の同極同士を近づけた時の、あんな感じで攻撃を避ける。
持ち主の力が弱いと盾が逃げたように感じる。
勇者「なっ!?じゃあ俺が貧弱だったせいだとでも言うのか!?」
麗華「言うのだ。」
勇者「くっ…! う、うるさい!俺に防御なんか必要無い!攻撃だけを教えろ!」
麗華「防御ができてこそ攻撃に気を注げるのだ。わかったらとっとと準備をしろ。」
勇者「断る!そもそもなぜ「破壊神」の装備が防具なんだ!?普通武器だろ!」
麗華「それはいずれわかる。その力を最大限に引き出した時、恐らく…」
勇者「お、恐らく…?」

麗華「体を壊すぞ。」
勇者「俺がかよ!!」
ある意味武器だった。

 

外伝:偽りの半年間〔5〕
今回の修行は、防御を中心としたものになるらしい。やってられるか。俺は帰るぞ。
だが、悪から逃げるのは「勇者」のポリシーに反する。となれば、やはり…!
勇者「よし、決めた!貴様を倒して俺は山を降りる!降りるぞー!」
麗華「ふぅ…またそれか。それができぬから今こうしておるのだろう?」
勇者「うるさい!降ろせ!降ろせクソババァ!賢一の分際でナマイ…」
麗華「そうか、おろして欲しいか。ならば望み通り、三枚に下ろしてくれるっ!!」
ガキィイン!(受)
麗華「むっ…!」
勇者「フン、俺をあの頃の俺と思うなよ?先日も油断さえしてなきゃ負けなぶっ!
麗華「確かに腕は上がったようだ。だが言ったろう?防御は…まだまだだ!」
麗華の攻撃。
勇者は防御しきれなかった。
勇者「くっ、なぜ盾を支配しきれん!?ありったけの力を込めてるってのに…!」
麗華「「腕力」だけではない。魔具とは本来「魔力」で支配するもの、だっ!」
チュィン!
勇者「魔力だぁ?フン!俺は「勇者」だ、自慢じゃないが魔法に自信は無いぞ!」
麗華「「魔法力」と「魔力」は別物だ。魔力とは「魔族」の力の源を、言うのだ!」
ガィイイン!
勇者「なら余計に無いだろ!俺は真人間だ!しかも「勇者」だぞ!?」
麗華「フッ、喜べ。貴様のその禍々しさ…魔力のニオイがプンプンするわ!」
ガキィン!
勇者「ふ、フザけるな!貴様…勝手なことをぉーー!!」
勇者は自覚が足りない。

 

外伝:偽りの半年間〔6〕
一日の修行が終わると、当然のように夕飯の支度を押し付けられた。
とっても不本意だが、腹が減ってはなんとやらだ。俺としても夕飯抜きは困る。
というわけで、渋々ながら奴が罠をしかけておいたという狩場へと向かった。
勇者「…ここか。 お?罠が作動してやがる。どうやら獲物を探す手間は省け…」
声「あぁっ、やっと人が!そ、そこの人!お願いだから助けてほしいでやんす!」
勇者「…む?」
勇者は声のする方向を見た。
網に掛かった少年がもがいている。
少年「あ、アッシの名前は「門太(モンタ)」!この恩は必ず返しやす!だから…!」
勇者「チッ、人間かよ。仕方ないな…。」

今夜はコレで我慢するか。
「食べない」という発想は無いのか。

 

外伝:偽りの半年間〔7〕
夕飯用の罠に掛かっていたのは、「門太」と名乗る出っ歯の少年だった。
もちろん他の獲物を探すという線もあったわけだが、面倒なのでコイツに決めた。
麗華「…で、お前はワシにコイツを食えと、そう言うわけだな?」
門太「ひぃいいい!お、お助けぇー!!」
勇者「ああ。前に俺を夕飯にするとかほざいた貴様だ、文句はあるまい?」
麗華「まぁ経験は無いが…不可能ではないと思っている。」
勇者「奇遇だな、俺もだ。」
門太「人として!人としての倫理観的なモノは!?悪魔でやんすかアンタら!?」
勇者「俺らも一飯の危機なんだ。それともなんだ?貴様に代わりが用意できると?」
門太「だ、だったらササッと買い出しに行ってくるでやんすよ!「門番」のアッシが!」
〔門番〕
離れた場所へ一瞬で移動できる「時空の門」を開く特殊な職業。
失敗すると、女湯とかそういう怖ろしい場所に飛び出る。
開けた扉はその先からしか閉じることができない。
麗華「…胡散臭いな。」
門太「そ、そんなっ!」
勇者「ああ、臭いよ。」
門太「いや、そう略されるとちょっと!」
麗華「よし、まぁいいだろう。では今日からお前はワシらの食事番だ。」
門太「「から」!?「今日限り」って話じゃなく!?」
勇者「それは貴様の命の話か?」
門太「い、いえいえ!今日からヨロシクでやんす!(逃げよう!絶対逃げよう!)」
勇者「あ、そうそう…。」

勇&麗「わかってるよな?(抜刀しながら)」
門太は素直に帰ってきた。

 

外伝:偽りの半年間〔8〕
修行が始まりそれなりに月日は流れ、あと少しで春…そんな季節になっていた。

キン!キン!カキィン! キィン!ガキィイイン…!

麗華「…ふむ。魔力の制御はほぼ完璧か。相変わらずセンスだけはいいようだな。」
勇者「フッ、当然だ。わかったら今度は攻撃を教え…ってセンス「だけ」とは何だ!」
麗華「さぁ仕上げだ。 この岩を…見事なんとかしてみろ!」
麗華はヒモを引いた。
勇者めがけて巨大な岩が降ってきた。
勇者「フンッ、ナメるな!魔力を極めた今の俺なら、どんな攻撃もこの盾で…」
麗華「いや、剣で。」
勇者「剣でっ!?今日までの修行は一体…!?」
麗華「ホレ、早く抜け。ボヤボヤしとるとプチッと潰れて紙状になるぞ?」
勇者「くっ、ちくしょうがぁーー!!」
勇者は久々に剣を抜いた。
だがその刀身には見覚えが無かった。
勇者「なっ!?な、なんだこの細身の剣は…!?俺の大剣はどこへ!?」
麗華「それがそうさ。魔力の違いで姿も変わる…それがその剣、「魔神の剣」だ。」

勇者「ま、魔sぐぇっ!!
勇者はプチッと潰れた。

 

外伝:偽りの半年間〔9〕
久々に抜いたゴップリンの魔剣は、見る影も無く細…というか「魔神の剣」らしい。
勇者「うぐぉ…!き、貴様…なぜ貴様がこの剣のことを…!?」
麗華「先日、そのサヤと同じ模様を古文書で見たのだ。やはり本物だったか。」
〔魔神の剣〕
魔神の角から切り出し練成した、特殊な魔剣。
持ち主の魔力により強度や形状、能力が変化する。
勇者「バカな!こんな剣が魔神の剣だとぉ!?そんなっ…!」
麗華「以前のお前は魔力が拡散していた。ゆえに無駄にデカく、脆かったのだ。」
勇者「そんな本格的に呪われてたなんて!」
麗華「そっちか。お前の驚きはそっちに向いたか。」
勇者「…まぁ、強いのなら別にいっか。 よし、じゃあ今から試し斬り…」
声「師匠ー!こんな所にいたのかー!いい加減捜し疲れたんだー!」
勇者「むっ!その声は…土男流か!?」
土男流とメカ盗子が現れた。
土男流「言われた通り、五錬邪のこと調べてきたぜ!それが大変なんだよー!」
勇者「まさかホントに調べてたとは。」
土男流「えぇっ!? ひ、酷いぜ師匠! でもそんなアンタがたまらないんだ!」
麗華「勇者よ、誰なんだその娘と…そこの珍妙なロボットは?」
メカ「ロボチガウ!」
土男流「アンタこそ誰なんだぁ?人の師匠に馴れ馴れしくしないでほしいぜー!」
麗華「ワシはコイツの師匠だ。煮ようが食おうがワシのご機嫌次第だ。」
勇者「機嫌で殺すなよ!そんな不安定なモノで俺を縛るなよ!」
土男流「し、師匠の師匠!?じゃあ「大師匠」ってことなのか!?スゴいぜー!」
「大々師匠」はもっとスゴい。(違った意味で)

 

外伝:偽りの半年間〔10〕
春…。 13歳になった頃から俺は、「覇者」という名でしばらく活動していた。
土男流の調べによると、なにやら五錬邪は大規模な都市爆破を企てているらしい。
そのため俺は、仕方なく正体を隠して五錬邪に潜入することになったのである。
勇者「まったく…なんで「勇者」である俺が、そんなコソコソ動かねばならんのだか。」
麗華「仕方なかろう?お前が普通に乗り込んだら、奴は確実に起爆させるぞ。」
土男流「そうだぜ!どう考えても師匠は敵の逆鱗に触れると思うんだ!」
勇者「フッ、特技だ。」
土男流「なんで得意気なのかわからないぜー!」
麗華「聞くにその爆弾は恐らく「爆々弾々」…。大都市となれば被害は甚大だ。」
〔爆々弾々(バクバクダンダン)〕
「人神大戦」において、神を倒す秘密兵器として開発された強力な爆弾。
だが秘密にされ過ぎて日の目を見なかった。
土男流「爆弾の場所は赤錬邪しか知らないみたいなんだ!用心深い奴なんだよ!」
勇者「赤錬邪しか知らないことをお前ごときが知ってる時点でどうかと思うがな。」
土男流「酷いんだー!!」
麗華「まぁとにかく行ってこい。見事取り入って場所を聞き出し、解除してくるのだ。」
勇者「やれやれ…仕方ないか。 よし、行くぞ門太!門を開けろ!」
門太「ハイでやんす!」
ガチャッ(開)

スイカ「…ん?」
一同「うわぁーー!!」
門太は変態を召喚した。

 

外伝:偽りの半年間〔11〕
門太の開門はしばしば失敗するのだが、今回の失敗は手痛いものだった。
これから出陣という大事な時に、こんな戦闘狂の相手しているわけにはいかない。
スイカ「ほぉ、また会ったな小僧。 さぁ構えろ!それが我らが宿命!」
勇者「行くぞ門太!無視して突っ切る!!」
スイカ「フン、させるか!今日という今日は決着をつけようぞ!」
勇者「あぁっ!あんな所に…!」
スイカ「甘いわ!このワシにそんな小癪な作戦…」

勇者「何も無い!!」
スイカ「無いのかっ!?」
勇者と門太は門へと消えた。
門太は慌てて門を閉じた。
スイカ「なっ!? くっ、ワシとしたことがなんたる不覚…!」
麗華「お久しぶりです師匠。相変わらずのその性格…なんとも救いがたい。」
土男流「えぇっ!?こ、このスイカの人が大々師匠!?とってもショックなんだー!」
スイカ「…そうか、魔力を制す力を付けたか。さすがは奴の子、末恐ろしい小僧よ。」
麗華「まったくです。破壊神に魔神…神器を二つも纏い、平気な顔をしているとは。」
スイカ「む? ガッハッハ!まだまだ甘いな賢…」
ジャキン!(抜刀)
麗華「いくら師匠と言えど、それ以上言ったら食べやすい大きさにカットする!」
スイカ「…三つだ、二つではない。」
麗華「えっ…?」
スイカ「いずれわかろう。あの「兜」が、小僧にとってどれ程の意味を成すかをな。」
勇者は呪われすぎだった。

 

外伝:偽りの半年間〔12〕
スイカ野郎をかわして門に飛び込むと、そこには見知らぬ丘が広がっていた。
鉄仮面「ここは…どこだ?初めて来る場所だが、何か…何かがある気がする。」
門太「ん〜、どこでやんすかねぇ?失敗で繋がった場所はアッシにもサッパリで。」
鉄仮面「仕方ない、適当に誰か捕まえて締め上げるとするか。」
門太「いや、普通に場所聞くだけなら締め上げる必要性は…。」
声「…のは…じゃな…墓に向かってだなぁ…。」
鉄仮面「む?この声は親父と…なっ!?アイツはまさか、黒錬邪か!?」
勇者は気配を殺して近づいた。
黒錬邪「息子にこの地のことは話したのか?噂じゃ今はローゲ国にいるようだが。」
父「一応な。まぁ記憶が戻れば来るだろう。ローゲからなら多分、夏前には…」
鉄仮面「そうか、アイツが来るのは夏か。」
黒錬邪「!?」
父「なっ、その声は…!なぜお前が…!?」
鉄仮面「フッ。 久しぶりだな、親父。」
父「ゆ、勇者!?お前、いつから…!」
鉄仮面「話せば長い、説明は省くぞ。」

父「いつからそんな顔に!?」
黒錬邪「似てないな。」
鉄仮面「仮面だよ!!」
勇者はキッチリ説明した。

 

外伝:偽りの半年間〔13〕
なぜか一緒にいた親父と黒錬邪。面倒だったが一応いきさつを説明してやった。
父「そうか、五錬邪の目を欺くために…ん?だが黒錬邪は良かったのか?」
鉄仮面「さぁ構えろ黒錬邪!偶然居合わせた自分の罪を呪うがいい!」
父「な、なんという強引な責任転嫁なんだ!親の顔が見てみたいぞ!」
黒錬邪「大丈夫、もう見飽きた。」
父「安心しろ勇者、コイツは大丈夫だ。悪に走ったのは他の…弱い連中だけさ。」
黒錬邪「いや、違うぞ凱空。一人だけ…“奴”には気をつけねばならん。」
父「む?“奴”? 誰なんだそれは?」

黒錬邪「俺、だ。」
黒錬邪の攻撃。
親父の胸を貫いた。
鉄仮面「なっ!? 親父ぃーー!!」
父「ぐふっ! だ、大丈夫だ勇者!心配…するな…!」
鉄仮面「いや、してないがな。」
父「なぜにっ!?」
黒錬邪「ずっと隙をうかがっていた。やはり息子の前では気が緩んだな、凱空。」
鉄仮面「昔の友も今は敵…か。やはり信じられるのは自分…と姫ちゃんだけだな。」
黒錬邪「お前達は、いずれ必ず障害となる。今ここで死んでもらおうか。」
鉄仮面「フン、片方は手負いとはいえ2対1…貴様に勝機があるとは思えんな!」

父「…ん?(漫画を読みながら)」
1対1のバトルが始まった。

 

外伝:偽りの半年間〔14〕
凄まじく強いと聞いていた黒錬邪だったが、思ったよりも動きが悪かった。なぜだ?
鉄仮面「フン、貴様ホントに強いのか?さっきから攻撃にためらいが見られるぞ。」
父「だ、ダメだ!油断は禁物だぞ!(漫画を読みながら)」
鉄仮面「テメェこそな!」
父「あぁー!だから言ったじゃないかペドソン!」
鉄仮面「しかも漫画の話かよ!!」
黒錬邪「調子に乗るな。俺が本気を出せ…う゛っ、うぉおお…!」
鉄仮面「む?なんだ貴様、腹でも痛いのか?」
黒錬邪「た、倒せ小僧…俺が…俺であるウチに…早く!」
鉄仮面「なにっ、どういう意味だ?自分の中に別なる自分がいるとでも…?」
黒錬邪「ぐっ…!チッ、まだ自我が残って…!」
鉄仮面「なんだかわからんが、とにかくチャンス! 食らえ!!」
勇者の攻撃。

親父に300のダメージ。
父「なぜにっ!?
鉄仮面「目障りだった!!」
黒錬邪「…待たせたな、今度こそ死んでもらおう。恨むなら父を恨め。」
鉄仮面「フッ、もはや恨みつくしたさ。余った分は貴様に注いでやろう。死ねぇ!!」
勇者は剣を構えた。
黒錬邪は槍を構えた。

親父は二冊目を取り出した。

 

外伝:偽りの半年間〔15〕
その後、あんなことやこんなことが適当にあってとにかく黒錬邪を倒すことができた。
黒錬邪を警察士に引き渡した俺達は、親父を一応病院にブチ込み、丘を発った。
そして着いたのは、五錬邪の本拠地があるという「シジャン王国」。目的の地だ。
なんとかうまいこと連中の仲間になって、爆弾の場所を聞き出さねばならない。
だが、俺も「勇者」だ。できるだけ無駄な血は流さず、平和的に解決したいものだ。
勇者は「拷問大全集」を取り出した。

 

第十三章