第三十章

 

4-451:無念〔14歳:LEVEL45〕
背後から無職にトドメを刺したのは、なんと味方であるはずの勇者だった。
無職「ま…まさかの展開に…驚きが止まらないですが…けふっ!
大魔王「ぐっ、さ…さすがの僕も驚いたよ。完全に油断しちゃってたね。」
勇者「サラバだ無職。ろくな走馬灯も見られんだろうから首をハネてくれよう。」
無職「いちいち心にグサリとくるですね…勇者さん…。」
勇者「勇者ぁ?ハハッ、残念だったな。アイツは消えたよ…今の俺は「断末魔」だ。」
無職「ほ、ホントか嘘かわからないのが辛いです…。」
勇者「まぁ安心しろ、これからあの世はもっと賑やかになる。俺が…そうしてやる。」
無職「まったくもって…安心できる要素が無いですが…。」
勇者「よし、そんなことより続きをやろうぜ。」
大魔王「いや、僕が言うのもなんだけど「そんなこと」扱いって…。」
無職「む、無念です…。せ…せめて来世では…もう少し…素敵な…名前に……。」
最期まで報われなかった。

 

4-452:前哨〔14歳:LEVEL45〕
結局見せ場の無いまま旅立った無職。
そしてついに、悪vs悪の一騎打ちが始まるのだった。
大魔王「これでやーーっと、まともにやりあえそうだねぇ。随分待たされたけど。」
勇者「フッ、それは悪かったな。だが任せろ、ここからは一瞬だ。」
大魔王「伝説の呪い…相手にとって不足は無さそうだね。「団地妻」だっけ?」
勇者「違うわ「断末魔」だ!なんだそのちょっぴりムフフな響きは!?」
大魔王「まぁどっちでもいいけどね。宇宙一楽しい闘いを、させてくれるならさ。」
勇者「フン、この戦闘狂め。そんなことのために、よくもまぁこんな大掛かりな…」
大魔王「キミだって同じでしょ?強い者は、更に強い者を求めるもんじゃん?」
勇者「まったくわからんな。雑魚どもを虐げる快感に勝るものなど無いわ。」
大魔王「なんか僕の立ち位置が揺らぐ感じが…。」
勇者「光栄に思うがいい小僧。これが我が世界征服のための…前哨戦となろう。」
頑張れ大魔王。

 

4-453:成長〔14歳:LEVEL45〕
大魔王戦は長引きそうな感じになったので、とりあえず場面転換。
とはいえ、いい加減あっちこっち面倒なので、一つずつ締めていく方向で。
というわけでまずは、放っておいたら勝手に死んでそうな賢二戦から。
〜大魔王城10階:竜王の間〜
竜神「フゥ…やるネ。人間風情がここまでやるトハ、少し想定外だったヨ。」
賢二「ハァ、ハァ、もう、空っぽ、ですけどね…。」
竜神「さすがは我が父、ウザキを倒しただけあるネ。」
賢二「んもー!太郎さんが余計なこと言うからー!」
太郎「まぁいいじゃん。それよりさ、疑われないくらい強くなったことを喜ぼうよ。」
ライ「そうニャ!頑張った賢ニャンは誇っていいのニャ!」
下端「潜り抜けた修羅場の数が違うんスよ!マジ尊敬ッス!」
召々「憧れるよね〜♪」
賢二「ならいい加減戦ってよ!!」
相変わらずタイマンだった。

 

4-454:希望〔14歳:LEVEL45〕
どれだけ時間が経ってもやっぱり一人な賢二はやっぱり一人で頑張れ。
竜神「フム…実力は十分に見タ。認めようカ、お前は本気を見せるに相応しいヨ。」
賢二「買い被らないでぇーーー!!」
太郎「やっぱウザキの家系ってことは、「魔竜化」って線が濃厚だよね。」
召々「アハ☆ そんなベッタベタな展開だったら超ウケるね〜☆」
竜神「…やりづらいネ。」
賢二「な、なんかごめんなさい…。」
竜神「まぁいいヨ、気にせず見せようカ…ハァアアアアアアアアア…!!」
竜神は力を溜めた。
そして巨大な竜の姿に変身した。
太郎「うっわぁ…。死ぬなぁ…これは確実に、死ぬなぁ…。どうしよこれ?」
賢二「…いや、逆にちょっと…希望が沸いてきたよ。」
竜神「ナニ…?フッ、言うじゃないカ。」

賢二「痛みを感じる間もなく、死なせてくれそう…。」
言うんじゃない。

 

4-455:超速〔14歳:LEVEL45〕
案の定変身した竜神は、案の定クソ強かった。
いくらなんでも賢二が一人で手におえるレベルじゃなかった。
ドッゴォオオオオオン!
賢二「ぐはぁ…! つ、強すぎる…!こんなの、僕一人じゃ…!」
太郎「まぁ頑張ってよ賢者君。骨は拾ってあげるからさ。」
竜神「何を言ってル?皆殺しに、決まってるじゃないカ。」
太郎「ッ!!?」
太郎は逃げ出した。
ライは逃げ出した。
下端は逃げ出した。

だが周りを囲まれてしまった。
太郎「くっ、1対3なのに囲まれちゃうとはこれいかに…!?」
ライ「それは言っちいけニャいお約束ニャ!逆らえニャい演出ニャのニャ!」
下端「こんなの…あんまりッス…!」
賢二「いや、それは僕のセリフだけど…って、召々さんは逃げないんだ?」
召々「え〜?だって、ここからが面白いんだよね?アハ☆」
賢二(どっちの意味だろう…?)
多分悪い意味で。

 

4-456:実力〔14歳:LEVEL45〕
いつも他人事な太郎達だったが、ついに矛先が向いてしまいさぁ大変。
太郎「やれやれ、参ったね…。ついに僕らも年貢の納め時か…。」
賢二「だったら少しは頑張ってみようよ!」
太郎「フッ、そりゃもちろんさ…他人のことなら知らないけれど!」
下端「自分の身だけは必死で守る!」
ライ「それがアタチら!」
三人「自衛団」!!」
賢二「あー…そういう…」
太郎「ま、のんびり見てなよ賢者君。僕らの…真の実力をさ。」
下端「そうッス!自分らが本気を出したら…!」
ライ「目にも留まらぬ速さで…!」
やられた。

 

4-457:召喚〔14歳:LEVEL45〕
実は凄まじい力を秘めていて…という展開もなく、太郎達はアッサリ倒れた。
なんか安心した。
竜神「やれやれ、この程度で気絶かネ。他愛ないにも程があるヨ。」
召々「アハ☆ なんか面白すぎて笑えないね♪」
賢二「ま、まぁ「隙あらばボケよう」感も凄かったし…自業自得なんだけどね…。」
召々「さーてと、じゃあボクも何か召喚しちゃおっかな〜☆ 何がいいかなぁ?」
賢二「え!?えっと…とりあえず僕には優しい子で。」
召々「アハ☆ 何その無理難題☆」
賢二「無理なんだ!?」
召々「んじゃ、いっくよー! いでよ、えっとぉ〜〜〜じゃあね、「チョメチョメ」!!」
賢二「えぇっ!?」
召々は仲間を呼んだ。
掌サイズのチョメ太郎が

群れで現れた。

 

4-458:相性〔14歳:LEVEL45〕
召々が召喚したのは、なんと小さいチョメ太郎(大軍)だった。大丈夫か。
賢二「う、うわー…なんだろうこの地獄絵図…。」
召々「とってもいい子達なんだよ♪話しかけてあげて賢者様☆」
賢二「え!?え、えっと…なんかヤケに小さいけど、キミ達も「チョメチョメ」なの?」
チョメA「チョメプーー!」
賢二「その大きさじゃ、マシンガンとかバズーカ乱射…ってことは無いよね?」
チョメB「チョメッピプー!」
賢二「ダメだ、やっぱりわからない…。」
竜神「チョメチョメかネ…なかなかの連中を呼んだネ。」
賢二「えっ、そんな有名な手強さなの…!?それとも相性が…」
竜神「酢醤油が合うネ。」
賢二「そっちの!?」
竜神はペロリといった。

 

4-459:決意〔14歳:LEVEL45〕
大暴れすると思われたチョメ群だったが、何の見せ場も無く食べられた。
チョメ太郎は変異体なのかもしれない。
賢二「な、なにげに期待しちゃってたのに…やけにアッサリと…。」
竜神「ふむ…やはり美味だネ。元気が出てきたヨ。」
賢二「むしろ回復しちゃってるし…!ねぇ召々さん、他には誰かいないの!?」
召々「えー?食用の子ってそんなにいないよ?」
賢二「そういう意味じゃ無しに! 今は真面目な」
ズガァアアン!
竜神の攻撃。
召々は壁に叩き付けられた。
賢二「しょ、召々さん!召々さん大丈夫!?」
竜神「諦めるがいいヨ。雑魚をどれだけ呼んでモ、私は倒せナイ。 お前が来るネ。」
賢二「…そうだね、早く治療すれば…みんなまだ助かると思うし。」
竜神「ほぉ、それは私を倒すという意味かネ?笑える冗談だネ。」
賢二「いや、僕はボケじゃないんで…笑わせる気は、ないですよ。」
賢二は涙目でキメた。

 

4-460:間違〔14歳:LEVEL45〕
勇者と同じく、ついに一人になってしまった賢二。
果たして、賢二はどのように散るのだろうか。
竜神「どうやら本気のようだネ、楽しみだヨ。もう防御はヤメるんだネ?」
賢二「そんな思い通りにいくと思ったら、大間違いですよ!」
竜神「いや、その返しはいかがなものカ。」
賢二「僕はもう、前の臆病な僕とは違うんだ。全力で…アナタを倒します!」
竜神「いいネ…ならば私ハ、この姿で相手しようカ。」
竜神は氷の竜に変形した。
竜神「フッ、「竜化:氷竜神」…我が吐息ハ、世界をも焼き尽くすヨ。」
賢二「えっ、「凍傷」的な意味で…!?」
竜神「…全てヲ、凍りつかせるヨ。」
賢二(うわー…間違えたんだ…。)
竜神「こ、殺ス…!」
賢二「僕のせいっ!?」
竜神は顔から火を噴いた。

 

4-461:願望〔14歳:LEVEL45〕
勝手に間違えて勝手に怒った困った竜神。
そして、その強さも困ったものだった。
ブフォォオオオオ…!(吹雪)
賢二「ひ、ひぃいいい…!こ、この凄い吹雪…もしかして、「豪雪竜」とかいう…?」
竜神「フン、豪雪竜ごときと並べられるとは心外だネ。もうちょっと強いヨ。」
賢二「「ごとき」とか言う割に謙虚なんですね…。」
竜神「にしてモ、さっきから防戦一方…ヤル気無いのかネ?ガッカリだヨ。死ぬカ?」
賢二「そ、そんなこと無いですよ!え、えっと…じゃあ、〔炎陣〕!」
竜神は炎に囲まれた。

賢二「どうですか!?氷だったら熱には弱いはず…!」
竜神「やれやれ、甘いネ…。絶対零度の氷ヲ、マッチの炎で溶かせるとでモ?」
賢二「くっ…!だったら」
竜神「無駄だネ。たとえ最上級の魔法だろうトモ、私の氷は溶かせナイ。」
賢二「そ、そんなことない!お師匠様の…あの、〔火炎地獄〕さえ使えれば…!」

竜神「使えれば?」
賢二「使えれば…。」

使えれば。

 

4-462:後向〔14歳:LEVEL45〕
氷竜化した竜神に、賢二は手も足も出ない感じだった。
やはり賢二ごときには荷が重い相手だった模様。
賢二「ゼェ、ゼェ…!だ、ダメだ…強すぎるよ…。〔紅蓮〕まで通じないなんて…。」
竜神「わかったロウ?その程度の魔法、試す価値も無いヨ。」
賢二「か、〔火炎地獄〕…前に「禁詠呪法」でなら使えたことはあるけど、でも…。」
竜神「出し惜しみかネ?どこにそんな余裕があるのかネ?」
賢二「だ、だって…だって、失敗したら…!もし失敗…あっ…」
竜神「フッ、隙だらけだネ。」
賢二は取り押さえられた。
竜神「終わりだヨ。もう少し楽しめると思ッ」
賢二「…ちょっと後ろ向きだけど、確率を考えるならやっぱり…こっちだよね…。」
竜神「ン?何を言っテ…?」
賢二「全てを燃やしゅ、灼熱のぉおおおおおお…!!」
竜神「ッ!!?貴様、わざト…!」
賢二「我が身に返れぇえええええええっ、〔火炎地獄〕!!」
ブォオオオオオオオオオ…!!(燃)
命懸けの自爆だった。

 

4-463:宿命〔14歳:LEVEL45〕
賢二の頭脳プレー(?)が見事にハマり、業火に飲み込まれた竜神。
たまらず氷竜化を解き、のた打ち回ったのだった。
竜神「ぐぉおおああアアアア…!お、おのれェエエ…!小癪なァアアアア…!!」
賢二「・・・・・・・・。」
竜神「フ…フフ…だがイイ、これデ…私ノ…」
賢二「…ぶはっ!ゴホゴホッ…!」
竜神「なっ…!?バカなッ、あの火力デ、生身の人間が生き残れるハズ…!」
賢二「ぼ、僕の防御癖を…ナメないでほしいな…ぐふっ!」
竜神「ハハハッ…!それでこそ我が一族の好敵手…面白いネ、最高だヨ!」
賢二「僕は…最悪な体調ですけどね…。」
竜神「こうなったラ、我が最強の姿で殺してあげるヨ。全力で…お相手するネ。」
パァァアアアアア…!(輝)
竜神は全身から剣が生えた竜に変化した。
その姿は、見るからに最強だった。

竜神「最強形態「剣竜」…悪いが今度コソ、さよならネ。」
賢二(あぁ…僕は死ぬのか…。悔しいなぁ…アレ?悔しい…?)
竜神「泣いてるのかネ?ヤメてクレ、最期まで強者でいるがいいヨ。」
賢二(「怖い」じゃなくて、「悔しい」か…。僕も少しは、変われたのかな…。)
竜神「さらば宿敵ヨ。キミと闘えたこと…誇りに思おウ。」

賢二(ゴメン勇者君…僕、先に待ってるよ…。 あ、勇者君は「地獄」か…)


竜神「死ネ。」





ガキィイイン…!


竜神「なっ…!?」

これより数年の後―――

賢二「えっ…?」

逃れ難き、死の恐怖が降りかかるだろう。

竜神「チッ…邪魔が、入ったカ。」

救い手がいるとすれば、唯一人。

賢二「た、助けに…来てくれたんだね…良かった…。」

その傍らに在るは、“剣”…



暗殺美「賢二君に、何してんのさっ!?」

勇者じゃないんかい。

 

4-464:時稼〔14歳:LEVEL45〕
賢二のピンチに現れたのは、なんと勇者ではなく暗殺美だった。
勇者に託して死んだ麗華の立場が無かった。
竜神「やれやれ、あの局面で邪魔かネ…まったく無粋な女もいたものだヨ。」
暗殺美「フン、ほざいてんじゃないさ。じきにアンタは「無様」な男に早変わりさ。」
賢二「あ、ありがとう…暗殺美さん…。助けに…来てくれて…。」
暗殺美「べ、別にアンタのためじゃないさ!たまたま飛ばされただけさ!死ねっ!」
賢二「ご、ごめん…。」
暗殺美(いやーーーん!!)
竜神「さて…どうしたものかネ。今の気分は最悪なんだガ?」
暗殺美「少しだけ時間稼ぐさ!アンタも賢者見習いなら回復くらい勝手にやれさ!」
賢二「あ、うん…!」
竜神「その靴…「風神」のニオイがするネ。少しはやれるのかネ?」
暗殺美「少しは…?フン、少しくらいで許してもらえると思ったら、大間違いさっ!」
暗殺美はブチ切れている。

 

4-465:男前〔14歳:LEVEL45〕
といわけで、賢二が回復する時間を稼ぐことになった暗殺美だった。
暗殺美「さぁドンと来いや!別に来ないなら来ない方が助かるけどもさ!」
竜神「サクッと殺すヨ。」
暗殺美「いい度胸さ!剣が多いほど有利とか思ったら大間違いだと教えてやるさ!」
竜神「ほぉ、言うじゃないカ。何か勝算でもあるのかネ?」
暗殺美「そんなのアンタが教えろやぁあああああああ!!」
竜神「フッ、無駄なことヲ…」
暗殺美の攻撃。
竜神に100のダメージ。
竜神「なっ、ナニッ…!?」
暗殺美「全身堅くちゃ動けもしない…そんな奴は関節部分を狙うのが定石なのさ。」
竜神「…フッ、面白いネ。甘く見たことを詫びようカ。」
暗殺美「フン、頭が高いのさ。溶岩が吹き出るまで地中深く、頭下げろさ!」
賢二より男らしい。

 

第三十一章